chats
sequence
footnote
stringlengths
163
3.16k
meta
dict
[ [ "お母さまに、何かちようだいッて、なぜ言はなかつたの?", "言つた。", "言つたのに下さらなかつたの?", "うちには何にもないんだよ。" ], [ "ぢやァ、なぜお家になんにもなかつたの?", "とうちやんは、もうからねえんだよ。母ちやんと、小ちやい子は、びようきなんだもの。だから食へねえんだ。" ], [ "なぜ、お父さまは、おいしいものを買つて来いと言ひつけないの?", "お金がねえんだ。", "では伝票にすればいゝぢやないの?" ], [ "ね、神さまのこと、一ぺんも話して下さらないの、お父さまは。", "うん。神さまなんて、あるもんかいッて、おこるとさういふよ。" ], [ "きみ、神さまにおいのりをすれば、何でもして下さるんだよ。こんばん、おねんねをするまへにおいのりをしてごらんよ。あすの朝、大きな三日月パンを下さいましつて。さうすれば、きつと下さるんだよ。ね。ね。", "三日月パンがどこへ出る?", "それは、どこにでもさ。テイブルの上にでも、チョコレイトのそばにだつても。――チョコレイトなんかない? それぢやストーヴの上にだつて、ちやんとおいてあるよ。", "でも、父ちやんがとつちやふよ。それよか、あすこんとこの岩の下の穴ん中から出るといゝや。おれがさがしに来るから。" ], [ "お母ちやま、神さまに何かおねがひすれば、いつでも下さるのね。", "それや、下さるわ。むりなことでなければ。そして、しんからおねがひすれば。" ], [ "お母ちやま、ちよつと浜へいつて来てもいゝ?", "まあ、何でけさは、そんなに早くからいくの? おゝ、いゝお天気だこと。ぢやァいつてらつしやい。先生がおいでになつたらよびますから。" ], [ "パン、おいしかつた?", "うん。でも神さまがもつて来たんぢやねえぞ。おれ、おめえが穴の中へつッこむのを見たぞ。" ] ]
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版    1978(昭和53)年11月30日初刷発行 底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第五巻」文泉堂書店    1975(昭和50)年9月 初出:「赤い鳥」赤い鳥社    1929(昭和4)年2月 入力:tatsuki 校正:伊藤時也 2006年7月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045192", "作品名": "乞食の子", "作品名読み": "こじきのこ", "ソート用読み": "こしきのこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「赤い鳥」1929(昭和4)年2月", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card45192.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本児童文学大系 第一〇巻", "底本出版社名1": "ほるぷ出版", "底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日", "入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "校正に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "鈴木三重吉童話全集 第五巻", "底本出版社名2": "文泉堂書店", "底本初版発行年2": "1975(昭和50)年9月", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "tatsuki", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45192_ruby_23454.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45192_23819.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "なぜだめだ", "あのししは、これまでいろんな人がとろうとしましたが、どうしてもとれません。ですから、いくらあなたが欲しいとおぼしめしても、とてもだめでございます" ] ]
底本:「古事記物語」角川文庫、角川書店    1955(昭和30)年1月20日初版発行    1968(昭和43)年8月10日31版発行    1980(昭和55)年9月30日改版19刷 初出:女神の死「赤い鳥」赤い鳥社    1919(大正8)年7月    天の岩屋「赤い鳥」赤い鳥社    1919(大正8)年8月    八俣の大蛇「赤い鳥」赤い鳥社    1919(大正8)年9月    むかでの室、へびの室「赤い鳥」赤い鳥社    1919(大正8)年10月    きじのお使い「赤い鳥」赤い鳥社    1919(大正8)年11月    笠沙のお宮「赤い鳥」赤い鳥社    1919(大正8)年12月    満潮の玉、干潮の玉「古事記物語上卷」赤い鳥社    1920(大正9)年12月    八咫烏「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年1月    赤い盾、黒い盾「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年2月    おしの皇子「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年3月    白い鳥「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年4月    朝鮮征伐「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年5月    赤い玉「古事記物語下卷」赤い鳥社    1920(大正9)年12月    宇治の渡し「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年6月    難波のお宮「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年7月    大鈴小鈴「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年8月    しかの群、ししの群「赤い鳥」赤い鳥社    1920(大正9)年9月    とんぼのお歌「古事記物語下卷」赤い鳥社    1920(大正9)年12月    うし飼、うま飼「古事記物語下卷」赤い鳥社    1920(大正9)年12月 ※「八俣の大蛇」の初出時の表題は「赤い猪 」です。 ※「八咫烏」の初出時の表題は「毒の大熊」です。 ※「朝鮮征伐」の初出時の表題は「神功皇后」です。 ※「白日子王」に対するルビの「しろひこのみこ」と「しらひこのみこ」の混在は、底本通りです。 入力:jupiter 校正:鈴木厚司 2001年11月19日公開 2014年8月2日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001530", "作品名": "古事記物語", "作品名読み": "こじきものがたり", "ソート用読み": "こしきものかたり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-11-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card1530.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "古事記物語", "底本出版社名1": "角川文庫、角川書店", "底本初版発行年1": "1955(昭和30)年1月20日、1968(昭和43)年8月10日31版", "入力に使用した版1": "1980(昭和55)年9月30日改版19刷", "校正に使用した版1": "1989(平成元)年10月30日改版31刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "jupiter", "校正者": "鈴木厚司", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/1530_ruby_5501.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-08-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/1530_54106.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-08-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "そんなことならいゝんですけれど、私はそれはへんな夢を見たんです。あなたがニズニイからかへつていらしつて、帽子をおぬぎになると、おつむりの髪がすつかり白髪になつてる夢を見たんです。", "はゝゝそれはけつこうな前兆だよ。まあ〳〵見てお出で。品物をすつかり売り上げて、土産を買つて来るから。" ], [ "わしを生き殺しにしたあいつだ。あいつをかばつてやる必要はさらにない。あいつも私を苦しめた代価をはらふのがあたりまへだ。……しかし私がしやべつてしまへばあいつはそくざになぐり殺されてしまふにきまつてゐる。わしはあいつを商人殺しの悪ものだときめてゐるものゝ、まん一それが私のかんちがひであつたとしたら、よけいな告げ口をして、あいつを殺させるのも罪なわけである。ともかくしやべつたところで、けつきよく、わしに何の得が来るわけもない。", "おい、おぢいさん、どうだ。ほんとうのところを言へよ。あの穴をほつたのはだれだ。" ], [ "おまいに何を許すのだ。", "おれはほんとうに悪ものだ。あの商人を殺して、ナイフをおまいの袋の中へ入れこんだのは、このおれだよ。あのとき、おれはおまいをも殺さうとしたのだ。ところが外で物音がし出したので、ナイフをおまいの袋の中へつッこんで窓からにげ出したんだよ。" ], [ "このとほりあやまる。どうぞ許してくれ。神さまのためだと思つて、おれの罪を許してくれ。おれは、あの商人を殺したことを名乗つて出るつもりだよ。さうすればおまいも許されて故郷へかへれる。そのかはりどうか、これまでおまいを苦しめたことだけは許してくれ。おいイワン、ほんとうに許しておくれ。", "ふゝん、口だけであやまるのはぞうさもないことだ。だけれど、まあ考へて見ろ。わしはおまいのおかげで、今日まで二十六年の間苦しい目を見て来たんだよ。今になつてかへると言つてどこへかへるのだ。わしのにようぼはもう死んでしまつた。小さいときに分れた子ども二人は、もうわしの顔もおぼえてはゐない。わしはかへらうつたつて、かへるところはないよ。" ] ]
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版    1978(昭和53)年11月30日初刷発行 底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第六巻」文泉堂書店    1975(昭和50)年9月 初出:「赤い鳥」赤い鳥社    1924(大正13)年11月 入力:tatsuki 校正:伊藤時也 2006年7月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045186", "作品名": "ざんげ", "作品名読み": "ざんげ", "ソート用読み": "さんけ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「赤い鳥」1924(大正13)年11月", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card45186.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本児童文学大系 第一〇巻", "底本出版社名1": "ほるぷ出版", "底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日", "入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "校正に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "底本の親本名1": "鈴木三重吉童話全集 第六巻", "底本の親本出版社名1": "文泉堂書店", "底本の親本初版発行年1": "1975(昭和50)年9月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "tatsuki", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45186_ruby_23419.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45186_23823.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "ごめん下さい、王さま。ぐづ〳〵してゐると、お命があぶないので、私もこのとほり、着物も着ないでとんでまゐりましたのです。私は家へかへつて湯をあびてゐました。すると私の魔術の手鏡が大声をあげてよぶではありませんか。私が何の秘密でもさぐり出し、さきのことまで見ぬくのはじつはみんな、その小さな手鏡に聞くのです。鏡は、大変だ〳〵、早く王さまを浴場の外へお引き出しせよ、くづれる〳〵、屋根がくづれる、といふもんですから、一生けんめいにとんでまゐりましたわけです。", "ほゝう、さうだつたか。おかげで、おれもあやふく命をひろつた。あゝあぶなかつたね。おまへが一分間でもおくれたら、おれはりつぱに死骸になつてゐるところだ。", "まつたく、私といたしましても、こんなうれしいことはございません。しかし陛下、それと一しよに、私は最早、たゞのつまらない人間になつてしまひました。あんまりあわてゝとび出すはずみに、あの、かけがへのない魔術の鏡を下へおつことして、粉みじんにくだいてしまひました。" ] ]
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版    1978(昭和53)年11月30日初刷発行 底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第四巻」文泉堂書店    1975(昭和50)年9月 初出:「赤い鳥」赤い鳥社    1927(昭和2)年2月 入力:tatsuki 校正:林 幸雄 2007年2月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045188", "作品名": "ダマスカスの賢者", "作品名読み": "ダマスカスのけんじゃ", "ソート用読み": "たますかすのけんしや", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「赤い鳥」1927(昭和2)年2月", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-04-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card45188.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本児童文学大系 第一〇巻", "底本出版社名1": "ほるぷ出版", "底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日", "入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "校正に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "底本の親本名1": "鈴木三重吉童話全集 第四巻", "底本の親本出版社名1": "文泉堂書店", "底本の親本初版発行年1": "1975(昭和50)年9月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "tatsuki", "校正者": "林幸雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45188_ruby_26071.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-02-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45188_26257.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "あの、今日は午過ぎから、みんなで大根を引きに行ったんですの", "どの畠へ出てるんですか。――私ちょっと行ってみましょう", "いいえ、もうただ今お長をやりましたから大騒ぎをして帰っていらっしゃいますわ" ], [ "どうもやっぱり頭がはきはきしません。じつは一年休学することにしたんです", "そうでございますってね。小母さんは毎日あなたの事ばかり案じていらっしゃるんですよ。今度またこちらへお出でになることになりましてから、どんなにお喜びでしたかしれません。……考えると不思議な御縁ですわね", "妙なものですね。この夏はどうしたことからでしたか、ふとこちらへ避暑に来る気になったんですが、――私はあまり人のざわつくところは厭だもんですから。――その代り宿屋なんぞのないということははじめから承知の上なんでしたけれど、さあ、船から上ってそこらの家へ頼んでみると、はたしてみんな断ってしまうでしょう。困ったんですよ" ], [ "それでしかたがないもんだから、とうとのこのこ役場へやって行ったんでした。くるくる坊主ですねここの村長は", "ええ、ほほほ", "そしたらあの人が親切に心配してくれたんです", "そしてここの小母さんに、私は母というものがないんだから、こんな家へ置いてもらったらいいのですがって、そうおっしゃったのですってね", "そうでしたかなあ。とにかく小母さんを一と目見るとから、何かしら懐しくなったんです", "そんなにおっしゃったものですから、小母さんもしおらしい方だと思って、お世話をする気になったんですって", "私は今では小母さんが生みの親のように思われるんですよ。私の家にいたって何だか旅の下宿にでもいるような気がするんですもの", "小母さんも青木さんはあたしの内証の子なんだかもしれないなんて冗談をおっしゃるんですよ", "あ、いつか小母さんが指へ傷をしたというのはもう直ったのですか", "ええただナイフでちょっと切ったばかりなんですから" ], [ "何の事なんです、これは", "ほほほ", "フジサンというのは", "あたしでございます", "ああ、お藤さんとおっしゃるんですか" ], [ "そしてあなたが何でお泣きになったんです?", "いいえ、嘘ですの、そんなことは", "燐寸を探していらっしゃるんですか。私が持っています" ], [ "なぜそうするんでしょう", "みんなそうするんですわ。おや、羽織に紐がございませんわね" ], [ "兄さん、もっと真っ直ぐ", "私の顔が見えるの?", "見えるとも、そら笑ってらあ。やあい" ], [ "今電話がかかりましてね、……", "ああ今言っちゃいけないんだよ兄さん。あれは姉さんには言われないんだから", "何でしょう。人が悪いのね" ], [ "ええ、この狐め", "何でわしが狐かい", "狐じゃい。知らんのか。鏡を出してこの招牌と較べてみい。間抜けめ" ], [ "それでは佐世保からはるばる来たんですか", "いいえ、あの娘だけは二た月ばかり前から、この対岸にいるんです。あなたでも同じですけれど、こんなになると、情合はまったく本当の親子と変りませんわ", "それだのにこの夏には、あの人の話はちょっとも出ませんでしたね", "そうでしたかね。おや、そうだったかしら", "そして私の事はもうすっかりあの人に話してあるようですね" ], [ "さっきもね、初やから、お嬢さんは存外人に恥かしがらない方だとかなんとか言ってからかわれたんでしょう。そうするとね、だってあの方はもうよくお知り申してる方なんだものってそう言うんですよ。それでいてまだずいぶん子供のようなところがあるんですからね", "私だって何だか、はじめて会った人のようには思えませんよ。――まだ永く逗留するんですか", "あの娘ですか。そうですね……いったい今度こちらへまいったというのが……" ], [ "それはそうですけれど、どうせこちらへ運ばなければならないのでしょう?", "ええ", "ではこの押入には、下の方はあたしのものが少しばかりはいっておりますから、あなたは当分上の段だけで我慢してくださいましな", "………", "ねえ", "ええ" ], [ "どこで目っけたんです? たった一本咲いてたんですか", "どうですか。さっき玉子を持ってきた女の子がくれてったんですの。どこかの石垣に咲いていたんだそうです。初やがね、これはこのごろあんまり暖かいものだから、つい欺されて出てきたんですって" ], [ "本当にもう春のようですね、こちらの気候は", "暖いところですのね" ], [ "私ただ今お邪魔じゃございませんか", "何がです?", "お手紙はお急ぎじゃないのですか", "そうですね。――郵便の船は午に出るんでしたね" ], [ "だって下駄がないじゃありませんか", "あたしだって足袋のままですわ" ], [ "あれは鳩じゃありませんか", "ほほほほ、あれじゃないんですの。あたしね、ほほほほ", "どうしたんです?" ], [ "何を?", "何でもないことです。――先達あたしがこちらへ渡ってくる途中でね、鴎が一匹、小さな枝切れへ棲って、波の上をふわりふわりしていたんですの。ちょうど学校なぞにある標本を流したようでしたわ" ], [ "芝生に何か落ちてるんでしょうか", "あたしがさっき撒いておいたんです。いつでもあそこへ餌を撒くんです", "あ、あれは足をどうかしてるようですね" ], [ "お嬢さん", "何?", "いいや、男のお嬢さんじゃわいの", "まあ。今お着換えなさるんだわ", "私がどうした", "冗談は置いて、あなたは蟹を食べなんしたか", "いつ?", "ほほほ、鴎のような話ね。――蟹を召しあがれば買ってくるつもりなの?", "ええ、はあ買うたるのよの。午に煮ようかと思うんでがんさ。はあじきにお午じゃけに。――食べなんしたことががんすのかいの", "食べるけど、あれは厄介なばかりでしかたがないや", "おいしいものですけれどね", "それはうもうがんすえの。それにこのごろは月がないころじゃけになおさらうまいんでがんすわいの。いいえ、ほんとでがんすて。月夜にはの、あれが自分の影に怖れてびくびくするけに痩せるんでがんすといの" ], [ "ほほほ", "おもしろいな、それは", "そんなら食べなんすか", "食べるよ" ], [ "何が", "でもたった今これを始めたばかりですから", "ついでに仕上げてしまいたいのですか", "いいえ、そうじゃないのですけど、何だか小母さんにすまないから。――あたし行きたいんですけれど", "では行けばいいじゃありませんか", "そんなことはかまわないんですけどね、あたしこちらへまいってから、いつも鬱いでばかりいて、何一つろくにお手伝いしたこともないんでしょう" ], [ "もう一と月からになるのですのに、ずっと私そんなでしたものですから、今日は気分はいいし、私の方からそう言って、これを言いつかったのですのに", "かまわないや、そんなことは" ], [ "あなたお背に綿屑かしら喰っついていますよ", "どこに?", "もっと下", "このへんですか", "いいえ", "大きいのですか" ], [ "おや、いつ?", "よその伯父さんが連れに来たんだ", "どんな伯父さんが" ] ]
底本:「日本文学全集18 鈴木三重吉 森田草平集」集英社    1969(昭和44)年9月12日発行 初出:「ホトトギス」    1906(明治39)年5月 入力:土屋隆 校正:小林繁雄 2005年10月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001532", "作品名": "千鳥", "作品名読み": "ちどり", "ソート用読み": "ちとり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-11-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card1532.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本文学全集18 鈴木三重吉 森田草平集", "底本出版社名1": "集英社", "底本初版発行年1": "1969(昭和44)年9月12日", "入力に使用した版1": "1969(昭和44)年9月12日", "校正に使用した版1": "1975(昭和50)年6月7日", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "土屋隆", "校正者": "小林繁雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/1532_ruby_19833.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-10-27T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/1532_20039.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-10-27T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "私にはこれという商ばいはございません。ただ人の出来ないことがたった一つ出来るだけでございます。", "では、その人に出来ないことというのはどんなことです。", "なに、たいしたことではございません。私はぶくぶくという名前で、いつでも勝手なときに、ひとりでにからだがゴムの袋のようにぶくぶくふくれます。まず一聯隊ぐらいの兵たいなら、すっかり腹の中へはいるくらいふくれます。" ] ]
底本:「鈴木三重吉童話集」岩波文庫、岩波書店    1996(平成8)年11月18日第1刷発行 底本の親本:「鈴木三重吉童話全集」文泉堂書店    1975(昭和50)年9月初版発行 入力:今泉るり 校正:Juki 2000年2月15日公開 2005年12月27日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "000549", "作品名": "ぶくぶく長々火の目小僧", "作品名読み": "ぶくぶくながながひのめこぞう", "ソート用読み": "ふくふくなかなかひのめこそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2000-02-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card549.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "鈴木三重吉童話集", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1996(平成8)年11月18日", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年11月18日第1刷", "底本の親本名1": "鈴木三重吉童話全集", "底本の親本出版社名1": "文泉堂書店", "底本の親本初版発行年1": "1975(昭和50)年9月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "今泉るり", "校正者": "Juki", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/549_ruby_20952.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-12-27T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/549_20953.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-12-27T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "だいぶゐるやうです。少くとも六ぴきはをりますでせう。", "ほゝう? ではつかまへてくれますか。", "はい。私がよびますと、わけなく出てまゐります。", "ふゝん? では、さつそくよび出して見て下さい。" ], [ "何でございます。", "はッは、その蛇はほんとにこの家にゐたのかい。", "ごらんのとほりです。" ], [ "さ、この中へ入れてくれ。", "それは、しかし……", "何がそれはしかしだ。私の家の中にゐたものなら、どこまでも私のものぢやないか。おまいにはとにかく三十ピアスターのお金を上げるから、蛇だけはだまつてこの中へお入れなさい。それをぐづ〳〵お言ひだと、へんなことになつてしまふよ。そのわけを話さうかね。" ], [ "もうゐませんか。", "まだをります。" ], [ "この部屋にはもうをりません。", "では、どこにゐる?" ], [ "あすこに一ぴきゐるやうなにほひがします。", "ぢや、いつて見よう。" ] ]
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版    1978(昭和53)年11月30日初刷発行 底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第六巻」文泉堂書店    1975(昭和50)年9月 初出:「赤い鳥」赤い鳥社    1923(大正12)年7月 入力:tatsuki 校正:林 幸雄 2007年2月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045185", "作品名": "蛇つかひ", "作品名読み": "へびつかい", "ソート用読み": "へひつかい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「赤い鳥」1923(大正12)年7月", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-04-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card45185.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本児童文学大系 第一〇巻", "底本出版社名1": "ほるぷ出版", "底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日", "入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "校正に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "底本の親本名1": "鈴木三重吉童話全集 第六巻", "底本の親本出版社名1": "文泉堂書店", "底本の親本初版発行年1": "1975(昭和50)年9月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "tatsuki", "校正者": "林幸雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45185_ruby_26072.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-02-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45185_26259.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "それでは何が悲しいの?", "だつて父さまは、もうこゝへかへつては入らつしやらないんだもの。", "うゝん、さうぢやない。父さまはぢきかへると仰つた。", "それから私も、もうお家へかへらなければならないのよ。かへつたら、もう二度と出ては来られない。" ], [ "しかし、あの子はお乳がないとこまるから、母さまのそばにゐた方が仕合だ。それでは四人で一しよにくらしていかう。", "でも母さまは、そのあくる晩と、またあくる晩に、二人ともつれてつてしまつたの。ゆうべは、私をつれに来たけれど、私は父さまがかはいさうだから、いかないと言つたの。" ] ]
底本:「日本児童文学大系 第一〇巻」ほるぷ出版    1978(昭和53)年11月30日初刷発行 底本の親本:「鈴木三重吉童話全集 第三巻」文泉堂書店    1975(昭和50)年9月 初出:「星の女 世界童話集第三編」春陽堂    1917(大正6)年8月 入力:tatsuki 校正:伊藤時也 2006年7月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045180", "作品名": "星の女", "作品名読み": "ほしのおんな", "ソート用読み": "ほしのおんな", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「星の女 世界童話集第三編」1917(大正6)年8月", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/card45180.html", "人物ID": "000107", "姓": "鈴木", "名": "三重吉", "姓読み": "すずき", "名読み": "みえきち", "姓読みソート用": "すすき", "名読みソート用": "みえきち", "姓ローマ字": "Suzuki", "名ローマ字": "Miekichi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1882-09-29", "没年月日": "1936-06-27", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本児童文学大系 第一〇巻", "底本出版社名1": "ほるぷ出版", "底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日", "入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "校正に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷", "底本の親本名1": "鈴木三重吉童話全集 第三巻", "底本の親本出版社名1": "文泉堂書店", "底本の親本初版発行年1": "1975(昭和50)年9月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "tatsuki", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45180_ruby_23452.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000107/files/45180_23820.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "さよか。そないお談義やつたら、また今度の折にしてもらひまつさ。わてらその日稼ぎだすよつて、忙しおますからな", "それぢや、猫の子があまり可哀さうだとはおもひませんか" ] ]
底本:「泣菫随筆」冨山房百科文庫43、冨山房    1993(平成5)年4月24日第1刷発行    1994(平成6)年7月20日第2刷発行 入力:林 幸雄 校正:門田裕志 2003年3月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004350", "作品名": "黒猫", "作品名読み": "くろねこ", "ソート用読み": "くろねこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-04-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card4350.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "泣菫随筆", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫43、冨山房", "底本初版発行年1": "1993(平成5)年4月24日", "入力に使用した版1": "1994(平成5)年7月20日第2刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "門田裕志", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4350_ruby_9502.zip", "テキストファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4350_9544.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "亭主、麦熬しでもできるかい", "はい、出来立ての熬しがございます。一服立てて進ぜませうか", "さうか。では早速頼む", "承知いたしました" ], [ "も一ついかがでございます", "いや、もう沢山だ" ], [ "小壺とおつしやるのは、熬し入れのことでございますか。はい、はい。承知いたしましたとも。お望みなら譲つて進ぜませう", "譲つてくれるか。それは有難い。幾らにしてくれるな", "こんながらくたをお譲りいたしたからといつて、別にお鳥目をいただくやうな親爺ぢやございません" ] ]
底本:「泣菫随筆」冨山房百科文庫43、冨山房    1993(平成5)年4月24日第1刷発行    1994(平成6)年7月20日第2刷発行 入力:林 幸雄 校正:門田裕志 2003年3月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004352", "作品名": "小壺狩", "作品名読み": "こつぼがり", "ソート用読み": "こつほかり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-04-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card4352.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "泣菫随筆", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫43、冨山房", "底本初版発行年1": "1993(平成5)年4月24日", "入力に使用した版1": "1994(平成6)年7月20日 第2刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "門田裕志", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4352_ruby_9501.zip", "テキストファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4352_9545.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "手元に持合せてゐましたら、喜んで御用立てするのですが、あいにく一通も……", "お持ちになりませんか。", "持ちません。本当の事を申すと、質屋に入れる程な金目のものがないんですね。", "御戯談でせう。" ] ]
底本:「日本の名随筆 別巻18 質屋」作品社    1992(平成4)年8月25日第1刷発行    1997(平成9)年5月20日第3刷発行 底本の親本:「薄田泣菫全集 第五巻」創元社    1939(昭和14)年3月発行 入力:門田裕志 校正:大野 晋 2004年11月4日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004903", "作品名": "質屋の通帳", "作品名読み": "しちやのつうちょう", "ソート用読み": "しちやのつうちよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-12-08T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card4903.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆 別巻18 質屋", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1992(平成4)年8月25日", "入力に使用した版1": "1997(平成9)年5月20日第3刷", "校正に使用した版1": "1992(平成4)年8月25日第1刷", "底本の親本名1": "薄田泣菫全集 第五巻", "底本の親本出版社名1": "創元社", "底本の親本初版発行年1": "1939(昭和14)年3月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "大野晋", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4903_ruby_16846.zip", "テキストファイル最終更新日": "2004-11-04T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4903_16925.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2004-11-04T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "誰かね、あの老人は。", "あれが田中正造だよ。鉱毒事件で名高い……" ], [ "あすこに変なものがぶら下っている。あれは何というものかしら。", "変なもの。どれ。どこに。" ], [ "それはいいことだ。少くとも大阪のような土地では、旅人で暮されたら、その方が一等幸福らしいね。", "僕は時々駅前の料理屋へ入って食事をしますが、そこの店のものに旅人あつかいをされると、僕自身もいつの間にかその気になって、この煤煙と雑音との都会に対して旅人としての自由な気持をとり返すことが出来るんです。僕はどんな土地にも、人生そのものにも、土着民であることを好みません。旅人であるのが性に合ってるんですよ。" ], [ "そうですよ。ほんとうに苦労知らずですよ。私もこの頃病院の仕事があまり多過ぎるので、過労のせいか、身体が思わしくないものですから、自宅に帰っているうちだけでも、仕事を忘れて暢気に暮したい。それには糸瓜でも眺めて、そののんびりした気持を娯んだらよかろうと思って、今年の夏は裏の空地へ糸瓜の種を蒔いてみました。ところが……", "どうでした。出来ばえは。", "お話になりません。生る糸瓜も、生る糸瓜も、小指のように細い、おまけに寸の伸びない、まるで胡瓜のような奴ばかりなんです。毎日糸瓜でも見て、その暢気そうな気持を味いたいと楽しんでいただけに、栄養不良の瘠っぴいを見ると、どうも気が気でなく、毎日いらいらさせられるばかりなので、何事も予期通りにはゆかないものだと思いました。", "どうしたわけでしょう。土でも合わなかったかな。", "土が合わない。あんな暢気な奴でも、そんな選り好みをしますか。" ], [ "さあ、どれほどありますかな。一向測ってみないもんですから……", "へえ、折角あんなに伸びてるものを、それでは少し無関心に過ぎるじゃありませんか。しかし、ほんとうのことをいうと、糸瓜を植えて楽しもうという心は、寸を測るなどは、無用の沙汰とするかも知れませんね。" ], [ "ほう。糸瓜の下が円く掘下げられていますね。あれを見ると、僕うちの親父が上野の動物園にいた時分のことを思い出しますよ。", "おとうさんは、動物園にもいられたんですか。" ], [ "それならば早速受取ってつかわし、大事に貯えおくようにいたせ。", "さあ、貯えると申しましたところで、あんなに沢山な水樽では……" ], [ "誰だ。わしを呼ぶのは。", "わしだ。お前のまえに立っている石だよ。", "なに、石だって。" ], [ "お前か。さっきからわしを呼んでるのは。わしは今睡りかけているところなんだ。", "それはすまなかった。お前に逢ったら、一度訊いてみたいと思うことがあるもんだから。" ], [ "何か。お前が訊きたいというのは。", "ほかでもない。わしは随分ながくここに住んでいるが、よくお前が驢馬に乗って、そこらを駆けて往くのを見ることがある。おそろしい速さだね。", "速いはずだ。一日五万里を往くのだから。" ], [ "どこからでもない。わしが自分の法力でこしらえたのだ。わしはそういう馬が是非一頭ほしく思ったから。", "なぜまたそんな途方もない馬をほしがったのだ。" ], [ "わしもこの頃になって、やっとそう思い出したよ。幸福というものは外にあるものじゃない。ここぞと思うところに落ちついて棲んでいれば、初めてそこに幸福というものが……", "それはお前にしては出来過ぎたほどの思いつきだ。どうだい、いっそここに落ちついて、わしと一緒に棲んじゃ。お前にしても、もう一生のつづまりをつけてもいい歳だよ。驢馬の始末なら、明日にでも通りがかりの旅商人に売り払ったらいいじゃないか。" ], [ "やっぱり幸福を求めて……", "そうだ。幸福を求めて。……こんなにして方々駆けずり廻って、やがて死ぬのが、わしの一生かも知れない。でも、わしは出かけなければならない。" ], [ "お酒も何ですが、どうか画の方を……。", "画の方……何か、それは。" ], [ "昨日一日合併相撲を見ましたが、大阪方の若島は強いですね。手もなく荒岩を投げつけましたよ。荒岩の一生にあのくらい手綺麗に投げられたことは、二度とないかも知れません。ことによると、常陸山なぞもやられないにも限らない……。", "若島はいい力士ですが、常陸山に勝とうなどとは思われない。" ], [ "いや、勝つかも知れない。", "分でゆくと、まず七三かな。", "いや、そんなことはない。五分五分だ。", "まさか……。" ], [ "いや。そうお賞め下さるがものはありません。今度こそ初めて常陸関のずばぬけて強いのに驚きました。実は私五日も前からあの人が、今日の相撲につりに来るということを聞いて知っていましたのです。", "ほう、誰の口から。", "常陸関自身の口から。あの人は決して嘘を言いません。つると言ったが最後、外の手が出せる場合でもそれをしないで、つりぬくという気象ですから、私は安心してそれを防ぐ工夫ばかしをこらしました。顔が合って四つに組むと、常陸関はすぐにつりに来ました。私はかねての工夫通り外掛で防ぎました。二度目にまたつりに来ました。今度もどうやら持ちこたえました。すると、三度目のあのつりです。とうとう牛蒡抜きにやられてしまいました。いやはや、強いのなんのといって、とてもお話になりません。" ], [ "Kさん。あなたさっき門司からの帰りには、薄田君を訪ねるといってましたね。", "ええ、訪ねます。何か御用でもおありでしたら……。" ], [ "あなたにはいいものを上げます。私の原稿よりかもずっといい……。", "何でしょう。原稿よりかもいいものというと……。" ], [ "先生。これに一つお名前を書いていただけませんでしょうか。", "名前。" ], [ "承知仕りました。夫人はいつ頃当地にお着になりますお見込で……", "今晩の五時には、間違いなく乗込んで来るはずです。" ], [ "そうです。未完結のままで。", "そりゃいかん。そんなものを棺に納めたら、かえって故人が妄執の種となるばかりですよ。" ], [ "どなたのお言葉か知りまへんが、一代男をとは殺生だっせ。これを灰にして見なはれ。世間にたんとはない西鶴物が、また一部だけ影を隠すわけだすからな。それにこんな手持のよい一代男は、どこを捜したかて、滅多に見られるわけのものやおまへん。わてがこれを先生に納めたのは、つい先日のことだしたが、その時の値段が確か千五百円だしたぜ。", "ほう、千五百円。そない高い本とは知らなんだ。どれ、どれ……。" ], [ "梨畑を掘り返すにはまだ早い。もっと御祈念を積みなさい。", "御祈念はいたしとります。" ], [ "何と言って御祈念している……。", "神様。どうぞ私の梨畑を……。" ], [ "見らるるとおり、あのように松が枯れかけて来た。何かいい薬はないものかしら。", "薬はいろいろあるにはあります。が、どれもこれもあまり効力といってはないようです……。" ], [ "そんな薬よりも、ずっと効力が見えるものが一つあります。もっともこれは私の秘伝でございますが……。", "そうか。秘伝と聞けば、なお更それを聞きたいものだて。", "それは、和尚さま、お経にある文句なのです。" ], [ "和尚さま。澍甘露法雨の澍の字が樹になっていますよ。", "ほい。わしとしたことが、これは失敗ったな。" ], [ "薄田さん。あなたお弟子をお持ちですか。", "弟子――そんなものは持ちませんよ。" ], [ "あの向日葵はロシヤ種でしょう。あの実をロシヤ人が噛み割る方法を御存じですか。", "いや、知りません。どんなにします。" ], [ "そこに多少の虚偽が含まれてはいないでしょうか。", "多少の虚偽はあっても構いません。おかげを喜ぶ度合が強くさえありましたら、嘘から真実が生れ、二二が五ともなれば、七ともなるのでございますよ。" ], [ "奴さん、もうそろそろ旅に出たくなって、そこらの池から、闇にまぎれてぬけ出して来たのさ。", "へえ、それじゃ、お前もそんな長旅をしている一人なのか。そうとは知らないで、草鞋で踏みつけてすまなかったな。" ], [ "そんなにいわれるなら、これから仕事に取りかかろうから、もう一度あの鶏をお貸下げが願いたいものだな。", "それはならぬ。お前のことじゃもの、また御鶏を酒手に代えまいものでもない。" ], [ "は、は、は、は。そんなに心配だったら、お前様が附添になってござらっしゃればいいじゃないか。", "なるほどな……" ], [ "下谷高岸寺に、ある頃弟子僧二人あり。一人は律義廉直にして、専ら寺徳をなす。一人は戒行を保たで、大酒を好み、あまつさへ争論止まず、私多し。ある時什物を取出し売るを――ひどい奴があったものですな。まるで此寺の雲水そっくりのようで……。", "むだ口を利かんと、後を読みなさい。" ], [ "あるとき、什物を取出し売るを、一人の僧見て諫を加へけるに、聞入れざれば、この由住持に告げ、追退け給はずば、ために悪しかりなんと言ふ。住持先づ諭し見るべしとて、厳しく戒めたるままにて捨て置きぬ。又あるとき仏具を取出し売りたるに、いよいよ禍ひに及び、わが身にもかからん間、彼のものに給はずんば、我に暇給はるべしと頻りに言ひける程に、住持涙を浮べ、さあらば、願ひのままにその方に暇をつかはすべし。悪僧は今暫し傍におきて諭すべしといふに――これは手ぬるい。ねえ、老師。少し手ぬるいじゃござんせんか。", "どうでもいい、そんなことは。早く後を読み続けなさい。" ], [ "どうじゃ、わかったか。修業の足りない雲水が、悪いことをしたからというて、寺を追い出すのは、それは罪を重ねさすようなものなんじゃ。", "どうも相済みません。" ], [ "いや、家がないことはない。お前には世間というものがある。しかし寺を追い出された雲水には、何も残っていないのじゃ。", "これからはきっと慎みますから、今度ばかりはどうぞ……" ], [ "これは、これは。宗匠でいらっしゃいましたか。とんだ粗相をいたして、まことに相済みません。", "丿観どの。老人はとかく脚もとが危うてな……" ], [ "復讐は簡単だよ。これから人間の画かきどもが何を描こうとも、おれ達はわざと気づかないふりをして外っ方を向いているんだ。そうすれば、おれ達がいくらそそっかしいにしたって、以前のように騙かされようがないじゃないか。騙かされさえしなかったら、どんな高慢な画かきにしても、手前味噌の盛りようがないんだからな。", "大きにそうかも知れんて。じゃ、そうと決めようじゃないか。", "よかろう。忘れても人間に洩らすんじゃないよ。", "これでやっと復讐が出来ようというもんだ。" ], [ "さあ、これを送ってやりねえ。吾ながらよく出来たよ。", "ありがとう存じます。お祖父様がどんなにか喜ぶことでしょう。" ], [ "お早う。上機嫌ですな、先生。", "先生だって。おいおい、何だってそんなにあらたまるんだい。今朝に限って。" ], [ "それじゃない。もっと外にもあるだろう。", "あるとも。俳句の上手な一茶という男も知ってるよ。", "その男はどこで知ったのだ。" ], [ "そんな人は知らないよ。ねっから記憶がないようだ。", "記憶がないはずはない。あの人の名前をお前に忘れられたら、大変なことになる……" ], [ "ほんとうのことをいうと、おれはぶらんこをしていたんだよ。道風さんにはすまないけど、唯それだけのことなんだ。", "ぶらんこ……" ], [ "慾のない小伜めが。一家一族の面目ってことを知りくさらねえのか。", "それは知っている。だが、おれは嘘は言いたくないのだ。それに買いかぶられるのが何よりも嫌なんだ。" ] ]
底本:「艸木虫魚」岩波文庫、岩波書店    1998(平成10)年9月16日第1刷発行 底本の親本:「艸木虫魚」(普及版)創元社    1929(昭和4)年発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:本山智子 校正:小林繁雄 2002年12月23日作成 2012年3月13日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "003309", "作品名": "艸木虫魚", "作品名読み": "そうもくちゅうぎょ", "ソート用読み": "そうもくちゆうきよ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card3309.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "艸木虫魚", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1998(平成10)年9月16日", "入力に使用した版1": "1998(平成10)年9月16日第1刷", "校正に使用した版1": "1998(平成10)年12月15日第2刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "本山智子", "校正者": "小林繁雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/3309_ruby_8192.zip", "テキストファイル最終更新日": "2012-03-13T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "3", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/3309_8193.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2012-03-13T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "3" }
[ [ "この缶は何うしたのだい。うちで扱つたことの無い代物ぢや無いか。", "左様で御座います。扱つた事はありません。" ], [ "西園寺さんに会へつていふのかい、何だつてあの人に会はなければならないんだね。", "お会ひになつたら、屹度面白い話があるでせうよ。", "何だつて、そんな事が判るね。" ], [ "君、僕も既う結婚後十三年になるよ。", "へえ十三年にもなるかな。それはお慶い。", "有難う。何しろ十三年目だからね。", "早いもんだな。", "ほんとにさ。十三年目なんだからね。", "可笑しいぢやないか、十三年目が何うかしたのかい。", "うん何だか子供が出来さうなんだよ、何しろ十三年目だからね。" ], [ "見違へる程美しいぢやないか、何うしたんだね。", "いえね、貴方にお別れすれば、独身でも居られないしと思つて、嫁入口を捜しに往つたんですわ。", "怖しく早手廻しだな。良いのが見つかつたらう。" ], [ "私はタゴオル家へ二晩泊つた。その晩詩人は歌を唱つた。", "僕はタゴオルの寝言を聞いた。寝言がすつかり韻が踏んであつたには驚いた。", "私はタゴオルの外套を見た。左のポケツトには『詩』が入つて居り、右のポケツトには『哲学』があつた。財布は――財布は確か洋袴の隠しにあつたやうに思ふ。", "詩人は僕の前で欠伸をした。あの欠伸が解るのは、日本で野口米次郎氏位のものだらう。" ], [ "相馬君つて毎日どんなにして暮してるね。始終独語でも言つてるのかい、蟹のやうに。", "独語も言つて無いやうだね。", "ぢや何をしてゐるね。" ], [ "東京へお往きやす言うて、誰ぞお伴でもおすのかいな。", "いゝえ、私一人です。" ], [ "無代ぢや見せないや、こゝに書いてある僕の名を読んだら見せる。", "生意気な小僧だな、どれ〳〵。" ], [ "内藤ボシンぢやないか、さあ〳〵褒美を見せろ。", "ボシンぢや無いや。", "ぢやイヌサルか。" ], [ "貧乏なり、乞食物貰ひ入る可からず", "文盲なり、詩人墨客来る可からず" ], [ "君達は何だつて、こんな処へ集つてるんだ、蠅のやうに。御馳走が彼方で待惚けてるぢやないか。", "彼方て何処です。", "判つてるぢやないか。パウリスタだよ。" ], [ "や、いゝ葱だね。序でに気の毒だが、扇子の古いのを一本発見出して呉れないか。", "扇子? 扇子を何うするんだい。" ], [ "お止しなさいよ、叔父ちやん。天国へ行くには油が足りない事よ。", "さうか油が足りないか。" ], [ "ふん、関係しとつた。何うしたんや、それが。", "△△はん、死によつたぜ。", "さよか。" ], [ "俺かの、俺は当年九十三になる。", "してみると……" ], [ "これあ君、赤栴檀ぢやないか、何うも素的なものを炷いてるね。", "え、赤栴檀だつて!" ], [ "や、有難う。今だから言ふがこの香こそ名代の赤栴檀だよ。", "え、赤栴檀だつて。" ], [ "汝は燕の不在に燕の巣に入り、夜の十二時過ぎ迄も話し込み早く帰れよがしに取扱はれても、それを自分に対する尊敬と思ふ程、それ程自信の深い好人物だ。", "人の見限つた女でも、欲しければ貰つてやつても可い。然しまだ籍が抜けないのに態々離婚訴訟の渦中に飛び込んでその女の旅先までも追ひゆき、女の家へは行き度くないからだと呆け顔。そして実は何うだ、探偵の報告によると、口に婦人のやうな声を出させて、度々ほくろの鼻をのつそりと女の門に入れるのはいつも午後の九時過ぎからである。汝薄のろの哲学者よ……兎角汝は人の亭主の明巣を狙ひたがる。" ], [ "阿母さんですか、阿母さんは貴女、亡くなりましてから、今日で三月余りにもなりますよ。", "え、お亡くなりですつて。でも、私は昨夜芝居でお目に懸りましたが……", "まさか。" ], [ "爺や、御精が出るね。お前こちらの奥様のお宅に長らく御奉公してるの。", "さうですね。もう相応になりますな。", "こちらはお給金は善いのかい。", "いや、もう漸と食つて往けるだけでさ、てんと詰りません。" ], [ "私の坐る席が一つ明いてます、何ならお使ひになつても苦しくありません。", "有難う、何処で御座います。" ], [ "もう小一時間も立たせやがる。これだけの閑があつたら地獄へでも用達に往けら。", "電鉄の杉山め、車輛を処女のやうに労はつてるから可笑しい。" ], [ "馬越は何処に居るだらう。惜しい物を手離したもんだな。", "確か大連に旅行してる筈だ、電報をやらうか。", "よからう。皆で一緒に笑つてやれ。" ], [ "ええ、御前、これは光悦の赤茶盌で御座いますが、形が俵形で面白いと存じましたから、一寸お目に懸けます。", "なに光悦の赤茶盌ぢやと。" ], [ "京都は寒いですね、すつかり風邪を引いちやつて……", "それは可けませんね、私も二三日前から少し風邪気味なんですが……" ] ]
底本:「完本 茶話 上」」冨山房百科文庫、冨山房    1983(昭和58)年11月25日第1刷発行    1984(昭和59)年11月15日第8刷発行 底本の親本:「大阪毎日新聞」    1916(大正5)年4月12日~12月22日 初出:「大阪毎日新聞」    1916(大正5)年4月12日~12月22日 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「6月30日」、「7月28日」に「(夕)」がないのは、底本通りです。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 ※底本凡例に、「内容は別個で題を同じくする作品は題名の直下に*印を付し、*印の数の違いによって弁別することとした」とあります。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2013年5月7日作成 2014年6月7日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046615", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "02 大正五(一九一六)年", "副題読み": "02 たいしょうご(せんきゅうひゃくじゅうろく)ねん", "原題": "", "初出": "「大阪毎日新聞」1916(大正5)年4月12日~12月22日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2013-06-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46615.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 上", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1983(昭和58)年11月25日", "入力に使用した版1": "1984(昭和59)年11月15日第8刷", "校正に使用した版1": "1998(平成10)年3月25日第12刷", "底本の親本名1": "大阪毎日新聞", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1916(大正5)年4月12日~12月22日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46615_ruby_50368.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-06-07T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46615_50730.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-06-07T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "まあ、お気の毒どすえなあ。宅で忘れとる間に、あんな大きうおなりやしたのやさうどす。描いてお上げやすいな、早く。", "さうだつてなあ、大急ぎで一つ描くかな。" ], [ "伯父ちやん、何だつてそんなに耳を引張るの。", "うむ、一寸困つた事が出来たでの。", "いつも困ると、伯父ちやんは耳引張るの。" ], [ "はい世話になつてゐる家と申しますと、七軒も御座いませうか。", "七軒か、よしよし。" ], [ "阿父様、これ誰方なの。", "それは米国の大統領ルウズヴエルト氏だ。" ], [ "この写真を移したのは汝さんかい。", "私よ。", "何か理由があつたのかい。" ], [ "知りませんよ、バビロンの塔だなんて。", "何かの本に無かつたですか。" ], [ "いや解りました。塔といふからには高い建築物です。恰ど浅草の十二階のやうな……", "さうだ〳〵、よく覚えてゐたね。" ], [ "俺だ。", "俺だ〳〵。やつぱり俺だよ。" ], [ "驚いたね、昨夜だつたぢやないか。", "さうよ、だからさ、勉強しないと目端が利かなくなるんさ。" ], [ "お帰り、いくらです。突然に、何にするの。", "えゝ、十円。" ], [ "十円、何を買ふの。", "えゝ、万年筆を買ふんです。", "ちと高過ぎはしなくて。" ], [ "栖鳳さんは店と特別の関係がおすもんやさかい……", "ぢや百円も払つたかな。" ], [ "そやから僕もこの頃ぢや代議士なぞすつかり絶念めてしまうて、画家として立たうと思つてるのや。", "画家に?" ], [ "焼物つて、君それなんか。", "さうだよ。", "ぢや瀬戸物ぢや無かつたんだな。失敗つた。" ], [ "要らん事を言ひなさるな、俺には夙から妾宅はあるぢやないか。", "へえ、さやうで御座いましたか、ちつとも存じませんので。" ], [ "船頭、位は無事に授けたぞ。この後ともSは大事にして遣はせ。", "畏まりましてございます。" ], [ "それぢやカインとアベルも其処に居ますね。", "無論です。", "ダビデとゴライアス――あの二人も居ませうね。" ], [ "クロムウエルと査斯一世――あの二人も居るでせうね。", "居るでせうとも。確に居る筈です。", "ナポレオンとウエリントンも一緒に居る筈ですね。", "居る筈です。多分打揃つて神様の前へ引き出されるでせう。" ], [ "千葉め、とうと亡くなつたつてな。", "さうだつてね。ところで内の孔雀だね、那女に知らせたものか知ら。", "どうせ知らさなきやなるまいが、まあ僕は止さう、お冠でも曲げられると事だからね。" ], [ "でも世間には旅で死ぬる人さへあるぢやありませんか、現に二三日前も維也納で……", "維也納で何かあつたんですか。" ], [ "維也納で客死した日本人があります、名前は確か千葉とか言ひましたつけ。", "えゝ千葉ですつて……" ], [ "何うしたのです、それは。", "耳朶に怪我をしたものだから、縫つて貰はうと思つて来たのだが、余り手間取るから寧そ食つてしまはうと思つて。" ], [ "えゝ、お帰りは九月の初旬頃だつて事に承はつてゐますよ。", "何ですつて、九月の初旬……" ], [ "何用かな。", "広告の新案につきまして、些とばかし考へついた事がありますさかい……", "新案か、新案に碌なものはないが、まあ話してみなさい。" ], [ "ふむ、生命保険つて、そんな結構なもんかね。", "全く結構づくめなもので御座いますよ。就いては何卒一つ……" ], [ "小山内さんは居らつしやいますでせうか。", "小山内は私ですが、誰方でいらつしやいますか、貴女は。" ], [ "違ひます、違ひます。僕と違ひますよ。", "いゝえ、違ひません、お顔に見覚えがあるんですもの。" ], [ "ちよいと坊や、お前ワシントンのお家を知つてるかい。", "知つてるよ。" ], [ "これを真直にお往きよ、さうすると自然にワシントンのお家の前へ出ら。", "有難う、坊やは善い児だね。" ], [ "先生、是非貴方にお知らせ致したい事があるんです。", "何だね、乃公に知らせたいつてえのは。" ], [ "要するに、三界は渾てこれ一心ぢや、寒いといふ心、暑いといふ心、心頭を滅却すれば火もまた凉しぢや。", "火もまた凉しだつて……巧い事を言つたもんだな、成程さう聞いてみると万事が心一つだわい。" ], [ "これはまた以ての外のお言葉かと存じます。御老中様には御存じないかも知りませぬが、あの紐と申しますのは、徳川のお家の長いのを寿くために、長目に致してございますので、唯今のお言葉で伺ひますと、まるでお家が早く滅びましても……", "もう可い。解つた、解つた。" ], [ "少しばかり字が多過ぎるやうですね。", "ええ、心持が有り余るもんですから。" ], [ "折角のお越しぢや、これから一緒に猪狩に出掛けようぢやないか。", "そらお出でなすつた。" ], [ "えゝ〳〵、さうなんだわ。恰ど貴方で十三人目よ。", "十三人目!" ], [ "宗仙さん、これは拙僧の腕でござりまするぞ。", "や、これはどうも、飛んだ粗忽を……" ], [ "御前、私近頃鶉のためにすつかり弱り切つてゐるのでございます。", "ほう、何ういふ理由かな。" ], [ "でも、先生、私だつて。“God save the Queen ……”位はわかりますよ。", "ほう、わかるか、それならまんざらでもないな。" ], [ "――君に聞きますと、大層私のものがお好きださうで、大きに有難う。", "いえ、何う仕りまして。……" ], [ "あのう、戦争では貴方も独逸人を幾人かお殺しなすつて?", "はい、五人ばかし遣つ付けましたよ、夫人。" ], [ "ちよいと、このお手なの、独逸人を殺したと仰有るのは。", "まあそんなものでせう。" ], [ "貴郎、呉々も言つておきますが、日曜日には忘れないやうに屹度教会へ往らつしやいよ、ね、よくつて。", "うむ、往くとも。屹度往くよ。" ], [ "貴郎、ほんとに此処なの、これまでいつも入らしつたていふのは。", "さうだよ、ほんとにこゝだよ。" ], [ "湖上の美人――あれは何うです、佳い詩だとはお思ひになりませんか。", "傑作ですわ、エレン姫の美しい事……" ], [ "ぢや、The title mart は何うですね、スコツトの……", "あ、あれですか、あれも三度ばかし読みましたつけ。" ], [ "それは君止した方がよからうぜ、屹度失敗するに極つてるからね。何故といつて、読者の地盤はもうすつかり開拓されちまつて、君の新聞が入る余地が残つてゐないぢやないか。", "成程、それもさうだがね、まあ思ひ立つた事だから行つてみるさ。" ], [ "そない遠方だつか。そやつたら止めなはらんかいな。", "止めるとも、私な英吉利いふたら、東京の少し向うかと思うてた。" ], [ "そない言はんと、まあ考へとみやす。私にしても、貴方にしても、これまで大石さんには、たんとお金を儲けさせて貰うてまつしやろ、それを今更……", "あゝ、さうだつか……そやつたら貴方のは商人道や……" ] ]
底本:「完本 茶話 上」」冨山房百科文庫、冨山房    1983(昭和58)年11月25日第1刷発行    1984(昭和59)年11月15日第8刷発行    「完本 茶話 中」冨山房百科文庫、冨山房    1983(昭和58)年11月25日第1刷発行    1986(昭和61)年7月30日第7刷発行 底本の親本:「大阪毎日新聞」    1917(大正6)年1月7日~12月17日 初出:「大阪毎日新聞」    1917(大正6)年1月7日~12月17日 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「無中」と「夢中」の混在は、底本通りです。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 ※底本凡例に、「内容は別個で題を同じくする作品は題名の直下に*印を付し、*印の数の違いによって弁別することとした」とあります。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年6月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046616", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "03 大正六(一九一七)年", "副題読み": "03 たいしょうろく(せんきゅうひゃくじゅうしち)ねん", "原題": "", "初出": "「大阪毎日新聞」1917(大正6)年1月7日~12月17日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-07-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46616.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 上", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1983(昭和58)年11月25日", "入力に使用した版1": "1984(昭和59)年11月15日第8刷", "校正に使用した版1": "1998(平成10)年3月25日第12刷", "底本の親本名1": "大阪毎日新聞", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1917(大正6)年1月7日~12月17日", "底本名2": "完本 茶話 中", "底本出版社名2": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年2": "1983(昭和58)年11月25日", "入力に使用した版2": "1986(昭和61)年7月30日第7刷", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46616_ruby_53776.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-06-22T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46616_53817.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-06-22T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "どうだ、諸君、吾々のために氷砂糖を下さらうていふ和田垣先生の健康を祝さうぢやないか。", "よからう、大いに祝さう。", "和田垣博士万歳!" ], [ "先生、羅馬字が何うか致しましたか。", "いや、なに矢張り羅馬字に限るといふ事ですよ。" ], [ "真実ですよ。天国には結婚なんてものはありません。", "何故でございます。" ], [ "どうも素晴しい人気でございますよ。", "貴方も今晩は入らしつて?" ], [ "先生、わたし先日或る所で貴方の御製作を拝見して、覚えず絵に接吻しましたわ。", "ほゝう、何だつてまた接吻なぞなさいましたね。" ], [ "私たつた今読むだばかしだが、ここにこんねえな話が載つとるだよ。何でもはあ、市の富豪が牝牛一匹の画に一万四千弗とか払つたつてこんだ。嘘吐くにも程があるだよ。", "何だつて、それが嘘なんだ。" ], [ "ぢや、手つ取り早く言つたら、その筋の御用だから、唯働きしろと仰有るんですね。", "ま、そんなものです。何しろ政府の御用で、名誉の次第ですからな。" ], [ "談話の都合では、今晩あたり原(敬)めがまた遣つて来るかも知れんぞ。", "原さんがですか……" ], [ "拭いただよ。それが何うしただ。", "お前さん、これを何と思つてるの。", "国旗だと思つとるだよ。", "国旗を何と思つてるの。", "唯の布片だと思つとるだよ。" ], [ "先生、私はあなたに握手がして戴きたいばかりに、一週間ばかし毎日のやうにこゝでお待ち受けしてたのでございます。", "あ、さうでしたか。" ], [ "大阪に深い馴染のある方やないとあきまへんな。", "さうだすとも、大阪に深い馴染のある方やないとあきまへん。" ], [ "相変らず貧乏で困つてるやうですな。", "さうか、気の毒なもんぢやな。" ], [ "それぢや賄の分量が足りないとでも言ふのか。", "いいえ、賄は十分にありますので。" ], [ "僕が友人の未亡人さん達の世話を焼いてるのを、何とか言つてる人もあるさうなが、君は聴かんかい。", "結構ぢやないか、相手は君だあね、誰が何といふもんかね。", "さうかなあ、それで漸と安心した。" ], [ "あの男が誰だかつて事がお判りですかい。", "いや、判りません。" ], [ "癒りましたか。", "いゝえ、昨日よか悪いやうですわ。" ], [ "癒りましたか。", "はい、お蔭ですつかり快くなりました。" ], [ "いかゞ取り計らひませう。幾らかお与り下さいませんでせうか。", "手の内をかい、いけないよ、そんな事は。", "でも、金が物言ふといふ事がございます、別けてこんな輩には……" ], [ "ウヰルソン氏ですか、無論好きません。", "何故です。" ], [ "爺さん、この村では子供は余り居ないと見えるね。", "居ましねえだよ、孩児は。" ], [ "余り生れないのかな。", "あんまり生れねえだよ。", "どんな割合で出来てるか知ら。" ], [ "旦那、一体あの梅の樹はどうして呉れるだね。", "どうもしないよ。あの儘さ。" ], [ "だつて、お前様、高い金出して、俺がの買取つたぢやねえか。", "さうさ、買取るには買取つたが、家は邸が狭いから、いま迄通りお前の許に預けておく積りだ。" ], [ "ちよいと、姐さん、一番目が好い男つ振だわね。", "わて二番目は嫌ひよ、色が真つ黒けやわ。", "ね、ちよいと、三番目は意気ぢやなくて。", "まあ、厭やわ、六番目見なはれ兎のやうな耳やわ。", "七番目も悪いわね。脚が長くつて。" ], [ "さう承はつてみると、亡くなつた先生お一人がおいとしいわね。", "真実だわねえ。" ], [ "私機械の方をやつてみたいんです。", "機械係は熱くて苦しいもんだよ。", "どんなに熱くたつて、苦しくたつて構ひません。" ], [ "ところで、日当は一日一弗しか出ないが承知かな。", "日当なんか幾らでもよござんす。" ], [ "あんたは西洋人のお友達をお持ちかい。", "いいえ、持ちません。", "それは可けない、友達は西洋人に限る、私などはこんなに西洋人のお友達を持つてるよ。" ], [ "乃公に診て貰はうと思ふには、生命が二つ無くちやならんが、それは御存じだらうな。", "へえ、生命が二つ?" ], [ "それから馬鈴薯料理もなかなか美味く食べさせますよ。", "さう、結構だわね。" ], [ "おい、何だつて、そんなに静粛してるんだい。僕は先刻から君がやつて来るのを見てたんぢやないか。すると今地面に這ひ屈んだね。君を撃つと言やしまいし、僕はバヴアリヤ生れだよ。", "さうか、今晩は。" ], [ "人間ぢやない、何だね。それでは。", "狗なんでげす。" ], [ "お前身体は健康かね。", "はい、健康でございます。" ], [ "一体軍人に必要な健康とは、どんな事なのか知つてるかい。", "勁い脚を有つてる事です。" ], [ "違ふね。軍人の健康といふのはそんな物ぢやない。", "ぢや、遠視の利く眼の事でせう。", "それも違ふね。", "ぢや頭のいゝ事でせう。", "違ふよ。" ], [ "それぢや、どんな事なんです。", "いゝ歯を持つてる事だよ。" ], [ "何をお願ひしたものだらうな。", "何をお願ひしたものでせうね。" ], [ "私は耶蘇信者なんです。いつかは屹度神様にお目に懸るでせうが、その折彼得は私を天国に上げる前にこの五十弗の請取証を見せろといふに定つてゐます。その折請取証が要るからといつて、まさか地獄のなかを捜し廻る訳にも往きませんからね。", "請取証を取るのに、何だつて地獄の中を捜し廻らなければならんのだね。" ], [ "何だ、昼間逢つたお客ぢやねえか、お前釣りをしてるんだね。", "うむ釣りをしてるよ。" ], [ "お前今日ウイリングさんと温室に長らく入つてたやうだね。さうでせう。", "ええ、入つてたわ。あたし自分ではそんなに長らくとも思はなかつたけど……阿母さん見てらしつたの。" ], [ "ところが、あいにくその本が手許に無いんだ。", "誰れかにお取り替へにでもなりましたんで。" ], [ "唯今奥様はどちらに入らつしやいます。", "妻ですか、妻なら多分この電話の片つ方に懸つてるかも知れませんよ。" ], [ "誰か外の人が自分の外套と間違つて入れて置いたんだね。", "何うしたもんだらう。" ], [ "ぢや、軍律をお読みになつた事がありますか。", "無い。無いが、何うしたんだ。" ], [ "いや、違ひます。もつと〳〵珍しい物です。", "それぢや、鱁鮧だらう、あれも吾輩大好きさ。" ], [ "入らつしやいまし。貴方様の御用は?", "羊皮の手套を一つ。" ], [ "あなたはお客扱ひがお上手でいらつしやるやうね。何ならこゝで暫くお手本を見せて戴けないでせうか。", "よろしい、承知しました。" ], [ "毎度御贔屓に預かりまして……今日は何か……", "わたし洗濯の利く白手套が欲しいんですが……" ], [ "まあ、お上手だわね、貴方これ迄屹度どこかの売子だつたんでせう。そしてお店へ雇はれたくつて、今日往らしたのぢやなくつて。", "さうかも知れません。" ], [ "だつて、君、うちの阿父様は鈴木に入るかも知れないんだもの。入つたら二番目だと言つてたよ。", "そんな事誰に聞いたんだよ。", "家で聞いたんだよ。僕まだ外にいろんな事を聞いてら。" ], [ "真実ですよ、奥さん。", "失礼ですが、あなたもそのお一人なんですか。" ], [ "私の運命をお決めになりたいと申しますと……", "はい、創作家としての貴女の運命を決めたいのです。" ], [ "条件と仰有いますと……", "あなたも知つて居るだらうが、麹町に金尾文淵堂といふ書肆が居る。あすこの主人に娘さんを娶さないかね。さうするときつと私の原稿をあげる。" ], [ "続金色夜叉といへば、どこの本屋でも屹度顫ひつきますから事情を話して本屋から前金を借り受けるんですね。えゝ、貸しますとも、それは屹度貸しますよ。", "本屋から前金を借りる。それも一つの方法だが、それはそれとして君の方の原稿料は?" ], [ "君、何か忘れ物をしてやしないかい。", "忘れ物?" ], [ "ほんのぽつちりでは御座りまするが、五百両だけ御寄進申し上げまする。", "さうか、よし〳〵。" ], [ "和尚様、五百両と申しましたところで、当山におかせられましては何のお役にも立ちますまいが、私にとりましては聊か身分に過ぎた寄進かと存じまする。就きましては何か一言の御挨拶を下されましても……", "礼が言つて欲しいと言ふのか。" ], [ "ヘツケル! ヘツケル教授といへば名高い学者だ。それに就いて一つお頼みがあるんだが、もしか彼地で教授にお会ひだつたら、記念のために何でもよろしい、あの人の手蹟が貰つていたゞけまいか知ら。", "よろしい、承知しました。" ] ]
底本:「完本 茶話 中」冨山房百科文庫、冨山房    1983(昭和58)年11月25日第1刷発行    1986(昭和61)年7月30日第7刷発行 底本の親本:「大阪毎日新聞 夕刊」    1918(大正7)年2月16日~12月20日 初出:「大阪毎日新聞 夕刊」    1918(大正7)年2月16日~12月20日 ※「無中」と「夢中」の混在は、底本通りです。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 ※底本凡例に、「内容は別個で題を同じくする作品は題名の直下に*印を付し、*印の数の違いによって弁別することとした」とあります。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年6月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046617", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "04 大正七(一九一八)年", "副題読み": "04 たいしょうしち(せんきゅうひゃくじゅうはち)ねん", "原題": "", "初出": "「大阪毎日新聞 夕刊」1918(大正7)年2月16日~12月20日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-07-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46617.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 中", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1983(昭和58)年11月25日", "入力に使用した版1": "1986(昭和61)年7月30日第7刷", "校正に使用した版1": "1999(平成11)年11月15日第10刷", "底本の親本名1": "大阪毎日新聞 夕刊", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1918(大正7)年2月16日~12月20日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46617_ruby_53786.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-06-22T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46617_53827.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-06-22T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "さうだつてね。講和大使には打つて附けの人だね。", "さうともさ。クレマンソウが忘れてゐてさへくれなかつたらね。" ], [ "千円も包むかな。", "はい、承知仕りました。" ], [ "和尚は素人だから、千円も包まなければならないのだ。それを職業にしてゐる黒人だつたら、極つた相場といふものがあるからね。", "成程、恐れ入りましてございます。" ], [ "兄さん、そないくよ〳〵考へてばかしゐても仕やうおまへんぜ。もつと気を大きく持ちなはれ。", "私もそない思うてんのやが、つい那女の事が思はれるもんやよつてな。" ], [ "これぢや、迚も歩けさうにありませんから、も少し先きまで御一緒に願はれますまいか。", "それは可かん。何分時間が差逼つてゐるんだから。" ], [ "御主人は在らつしやいますか。", "あいにくと、今日は不在でございますので。貴方さまは?" ], [ "なに、君の方が僕に待ちぼうけを食はせたのぢやないか。", "え、待ちぼうけだつて。", "さうだよ。待ちぼうけぢやないかね。" ], [ "まあさ、そんなに言はないで手を貸しておくれよ、私だつて神信心しない事があるもんかよ。", "いや、信じなさらない、その証拠にはいつもマリヤ様の悪口を言うてゐなさる。", "いや、違ふよ、私は実際信心家なんだ。" ], [ "それぢや、そこで羅馬教の掟を読みあげてみなさるがいい。さうすりや助けないものでもない。", "読みあげるともさ。ぢや、お聴きよ。" ], [ "榊原政職だつて。君はその人を閣下扱ひにしたのかい。", "したともさ。陸軍少将で、おまけに先輩ぢやないか。" ], [ "こつちですよ、宅は。", "いえ、私はこちらの方で……そんなら失礼致します。" ], [ "蝸廬といふ語があるね、僕も書物のなかではよくこの語に接してはゐるが、今日は眼の前にその蝸廬といふものを見て来たよ。", "へえ、どんな者が住むでゐました。" ], [ "柏原文太郎つて、ほんとに失敬な奴だ、僕はあんな非紳士的な男をまだ見た事がないよ。", "非紳士的つて、どんな事をしたんだい。" ], [ "あの小間使は君のお弟子なんですか。", "はあ、弟子ですよ、歌もなか〳〵やりますよ。" ], [ "箕面の話かい、それは。", "は、さやうでございます。" ], [ "どうも貴方の眼力には恐れ入りましたよ。言はれる通りの方角から兎が飛び出すんですからね。", "なに、まぐれ当りさ。" ], [ "道路が悪い。", "いや、善いにも悪いにも、大阪にはてんで道路といふものが無いのだ。" ], [ "気保養だなんて、まだ〳〵そんな気楽な真似は出来ないよ。これからうんと稼いで金でも蓄まつた後の事なんだね、それは。", "ぢや幾ら位蓄まつたらいゝんですね。世間の噂では先生はお金持だといふ事ではありませんか。" ], [ "それだけの御用に態々お出で下すつて恐れ入ります。お女中にでもお持たせ下されば結構ですのに。", "いえ、どう仕りまして。お大事の御本の事でございますから。" ], [ "かなり難かしいことが書いてあるらしいが、お前にこんな本が解るかい。", "はい、解ります。" ], [ "おゝ、女将か、何しに来てゐるね。", "先生をお迎へにだわ。" ], [ "大きな団体客つてどこに居るんだらう。", "それは乃公の事だよ。" ], [ "お賞めにあづかつて有難いが、実は自分ではあの作をそんなにいいものとは思つてゐません。例の小松ですな、あの小松をもう五分ばかり左の方に寄せると、全体の感じがすつかり違つて来て、もつとよくなるかも知れませんが……", "へえ、小松を五分ばかし……" ], [ "西山、わしにも一つキユビイさんの顔真似をして見せてくれんか。", "え、キユビイさんですつて。" ], [ "スペンサアはどうした、まだ居るかい。", "はい、あちらでお待ちでございます。", "さうか、うい奴だ。この詩はなか〳〵うまく出来てゐるわい、褒美として二十磅ばかし取らするがよいぞ。", "畏まりました。" ], [ "スペンサアはどうした、まだ居るだらうな。", "はい、あちらでお待ちでございます。", "さうか、うい奴だ。褒美としてもう二十磅取らするがよいぞ。" ], [ "スペンサアはどうした、まだ居るだらうな。", "はい、あちらでお待ちでございます。", "さうか、褒美としてもう二十磅取らするがよいぞ。" ], [ "先生私がお頼みしましたのは芽張柳の画どしたな。", "さうです、確に芽張り柳でしたよ。", "でも、先生、この画は芽張り柳ぢやなうて、青柳どすな。" ], [ "それはめでたいの。ゆつくり往つて来るがいゝ、幸乃公の馬もあいてるから、あれに乗つて往くとしたらどうぢや、馬丁に案内して貰つての。", "え、あの馬をお貸し下さいますか、それに馬丁さんまで……まあ、旦那様お有りがたうございます。" ], [ "こんなわけでございますが、父上と叔父上と、どちらが真実なのでございませう。", "どちらも真実だ。" ], [ "御主人、お前さんのところへ、こなひだから二度ばかり手紙を出しておいたが、受取つてくれましたか。", "はい、確に拝見しましたよ。" ], [ "先生、お粗末でございますが、これを召しあがりながら何か一つ……", "有難う。" ], [ "え、輪転機?", "さうです、まるで輪転機のやうに早いんでさ。", "さうですか。" ], [ "さうだね。狂人の事なら、まあ大抵の事は知つてるよ。", "ぢや、訊きますが、狂人と天才との見さかひはどこでつきますね。" ], [ "あなたは日本人かな。", "さうです、日本人です。" ], [ "スツツトガルトへ行くつもりです。", "スツツトガルト? それは丁度よい。私らもこれからあそこへ往かうと思つとるところだ。" ], [ "パデレウスキイさん、洋琴つてなかなか好いものですね。私も大好きです。", "ほゝう、結構ですね。" ], [ "十二箇月考へぬいても、お前はまだ結婚したいつて言ふんだね。", "はい、早く身を固めた方がいいかと思ひまして。" ], [ "君、つかん事を訊くやうだが、姑蘇城外の蘇の字だね、あれは艸冠の下の魚と禾とは何方に書いた方がほんとうだつたかな。", "蘇の字かい、あれは魚が右にあらうと、左にあらうと同じだよ。" ], [ "あなたは唯今迄雲を御覧になつてゐましたか。", "見てゐました。" ], [ "あれ程井戸水の事を厳しく言つておいたのに、矢張り近い方のを汲み入れたと見えますね。", "そんな筈はなからうと存じますが……" ], [ "二度まで洗つて来いといふものを、なぜ洗つて来ない。", "洗つて来ました、二度とも。", "洗つたものがなぜそんな汚い手をしてゐる。" ], [ "市長さん、結構なお天気で御座いますな。", "市長さん、何てまあ立派なお狗でせう。" ], [ "君かへ、今俺を呼んだのは。", "うん俺だ" ], [ "あなた、わたしの蝙蝠傘はどうなすつたの。", "蝙蝠傘? 知らないよ、そんな物。" ], [ "王様、毎度恐れ入りますが、また上布を取り替へさせていたゞき度いと存じまして。", "上布だと、やつと今取替へたばかしぢやないか。" ], [ "私も出来るなら東京に居たいと存じまして。", "私達も同じやうな希望でゐます。" ] ]
底本:「完本 茶話 下」冨山房百科文庫、冨山房    1984(昭和59)年2月28日第1刷発行    1988(昭和63)年7月25日第7刷発行 底本の親本:「大阪毎日新聞 夕刊」    1919(大正8)年1月5日~8月31日 初出:「大阪毎日新聞 夕刊」    1919(大正8)年1月5日~8月31日 ※「無中」と「夢中」の混在は、底本通りです。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年9月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046618", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "05 大正八(一九一九)年", "副題読み": "05 たいしょうはち(せんきゅうひゃくじゅうきゅう)ねん", "原題": "", "初出": "「大阪毎日新聞 夕刊」1919(大正8)年1月5日~8月31日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-10-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-15T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46618.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 下", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年2月28日", "入力に使用した版1": "1988(昭和63)年7月25日第7刷", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年 7月27日第9刷", "底本の親本名1": "大阪毎日新聞 夕刊", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1919(大正8)年1月5日~8月31日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46618_ruby_54499.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-09-11T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46618_54450.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-09-11T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "さあ、これから大いに談じよう、誰か面白い世間話をして聞かせて呉れんかな。", "おもしろい世間話といふと――" ], [ "いやに気むつかしい顔をして黙りこくつてゐるな、何か話したらどうだい。", "ぢや、お話しませう。" ], [ "O君、君は今婆さんが名前を呼ぶと、亀がひよつくり顔を出すと言つたな。", "うむ、言つたよ。", "一たいどう言つてその亀を呼ぶのかね。" ], [ "駄目だ、駄目だ、前歯をすつかり抜かなくちや駄目だよ。", "背中を金槌でどやしつけたら、一息に吐き出さないかしら。", "こりやとても駄目だ、助かりつこはない。早く親類にでも知らせてやらなくちや。" ], [ "危ない。何をする。", "かうするんだ。" ], [ "私は貴女を愛します。と言つただけだつたよ、話しは。", "まあ。そんなことを言つたの。そしてその人は今どこにゐらつしやるの。" ] ]
底本:「完本 茶話 下」冨山房百科文庫、冨山房    1984(昭和59)年2月28日第1刷発行    1988(昭和63)年7月25日第7刷発行 底本の親本:「サンデー毎日」    1922(大正11)年4月23日~8月27日 初出:「サンデー毎日」    1922(大正11)年4月23日~8月27日 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年10月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046619", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "06 大正十一(一九二二)年", "副題読み": "06 たいしょうじゅういち(せんきゅうひゃくにじゅうに)ねん", "原題": "", "初出": "「サンデー毎日」1922(大正11)年4月23日~8月27日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-11-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46619.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 下", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年2月28日", "入力に使用した版1": "1988(昭和63)年7月25日第7刷", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年 7月27日第9刷", "底本の親本名1": "サンデー毎日", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1922(大正11)年4月23日~8月27日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46619_ruby_54705.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46619_54750.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "家の建築費は、みんな自分で稼ぎ溜めたのか。", "はい、みんな自分で稼ぎました。" ], [ "和尚だつたら、その位な出版費は誰か寄付する人がありさうなもんですが……", "はい、寄付やら何やらで、出版費はちやんとまとまつて調達出来てゐましたんでございますが、間に立たれたお方に悪い人がございましてね……" ], [ "あなた、何でもいゝから短い文句を一つ言つてみなさい。そしてそれをどんな風にいひかへたなら、命令法になるかためしてみますから。", "馬が車をひいてゐます。" ], [ "アメリカニズムだつて。", "さうさ。まあ考へて見たまへ、君達は素つ裸でこの国にうまれて来たらうが、僕達はぼろぼろだつたけれど、ズボンを一著に及んでたんだからね。君達はまた何といふことなしにやつて来たのだらうが、僕達はこれでお金を儲けようて目的があつたんだからね。" ], [ "嘘はつきましねえ。そこの墓石の下で神様と悪魔とが、死人を分けてござるだよ。", "何を、馬鹿な。" ], [ "なんの音なの、今の……", "あなたの髪の毛から電気が起きた、その音なの。" ], [ "書道の方からは、五合庵の良寛と一緒にいはれる坊さんですよ。", "へえ、良寛と一緒に……" ], [ "いや、文字通りに全く不可能なんです。", "どうしてそんな広言が吐けますか。" ], [ "先生、私は進化論者ですが、今日はこの世界の創造について先生と一つ議論をたゝかはせたいと思つてあがりました。", "そいつは大問題ですな。" ], [ "してみると、さういふ御議論も、あなたの死と一緒に消滅するんですか。", "ま、そんなものでせう。", "それは結構ですな。そんな結構なことはありませんよ。" ], [ "ホツパア氏にお尋ねするが、あなたの職業は俳優でしたね。", "さうです。" ], [ "三ちやん、君どこから来たんだい。", "神戸から。" ], [ "やつぱし、吾人は神に信頼すでいゝんでせう。ね、皆さん、さうぢやなくつて。", "私もさう思ふわ。" ], [ "アブラハム爺さん、お早うございます。", "イサク爺さん、お早うございます。", "ヤコブ爺さん、お早うございます。" ], [ "いいわよ。私死んで天国へ往つたら、この問題は何とか片づけてみせるから。", "死んでから、どうして……" ] ]
底本:「完本 茶話 下」冨山房百科文庫、冨山房    1984(昭和59)年2月28日第1刷発行    1988(昭和63)年7月25日第7刷発行 底本の親本:「東京日日新聞」    1925(大正14)年4月15日~7月2日夕刊    「サンデー毎日」    1925(大正14)年7月26日    「文芸春秋」    1925(大正14)年11月号 初出:「東京日日新聞」    1925(大正14)年4月15日~7月2日夕刊    「サンデー毎日」    1925(大正14)年7月26日    「文芸春秋」    1925(大正14)年11月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 ※底本凡例に、「内容は別個で題を同じくする作品は題名の直下に*印を付し、*印の数の違いによって弁別することとした」とあります。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年10月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046620", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "07 大正十四(一九二五)年", "副題読み": "07 たいしょうじゅうよ(せんきゅうひゃくにじゅうご)ねん", "原題": "", "初出": "「東京日日新聞」1925(大正14)年4月15日~7月2日夕刊<br> 「サンデー毎日」1925(大正14)年7月26日<br> 「文芸春秋」1925(大正14)年11月号", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-11-04T00:00:00", "最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46620.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 下", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年2月28日", "入力に使用した版1": "1988(昭和63)年7月25日第7刷", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年 7月27日第9刷", "底本の親本名1": "サンデー毎日", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1925(大正14)年7月26日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "東京日日新聞", "底本の親本出版社名2": " ", "底本の親本初版発行年2": "1925(大正14)年4月15日~7月2日夕刊", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46620_ruby_54709.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46620_54754.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "そんなにどつさり注文してくれるなら、旦那さま、一つ七弗五十仙づつに、しときますべえ。", "七弗五十仙。それはまたなぜだ。", "これ二三百もつくらんならんと思ふと、思ふだけでもいやになりますからの。" ] ]
底本:「完本 茶話 下」冨山房百科文庫、冨山房    1984(昭和59)年2月28日第1刷発行    1988(昭和63)年7月25日第7刷発行 底本の親本:「苦楽」    1926(大正15)年9月1日    「文芸春秋」    1926(大正15)年10月号 初出:「苦楽」    1926(大正15)年9月1日    「文芸春秋」    1926(大正15)年10月号 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年10月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046621", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "08 大正十五(一九二六)年", "副題読み": "08 たいしょうじゅうご(せんきゅうひゃくにじゅうろく)ねん", "原題": "", "初出": "「苦楽」1926(大正15)年9月1日<br> 「文芸春秋」1926(大正15)年10月号", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-11-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46621.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 下", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年2月28日", "入力に使用した版1": "1988(昭和63)年7月25日第7刷", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年 7月27日第9刷", "底本の親本名1": "苦楽", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年9月1日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "文芸春秋", "底本の親本出版社名2": " ", "底本の親本初版発行年2": "1926(大正15)年10月号", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46621_ruby_54713.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46621_54758.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "しかし、帽子をかぶらないのが、そんなにをかしいことかしら。", "でも、町を行く人はみんな帽子をきてるぢやありませんか。", "さうかなあ。" ], [ "忘れ草――むかしから随分やかましくいはれたものだが、岸に生ふてふといふからには、多分水草に相違ありますまい。私は葦か何かの異名だらうと思ひます。", "あながち岸といふ詞にこだはる必要はありますまい。私は紫苑か何かの……", "いや、紫苑ぢやありますまい。私は萱草ぢやなからうかと……", "紫苑や萱草はあまりに丈が伸びてゐて、風情がなさ過ぎます。もつと小さくて哀れの深い……", "忘れ草。忘れ貝。忘れ水。――住吉には物忘れをするのにいろいろ都合のいいものがあるとみえますな。どれ一つを持つてゐても、われわれには調法です。" ], [ "一体貫之卿は、忘れ草といふものがどんな草か知つてゐたのでせうか。", "いや、知つてはゐなかつたのでせう。住の江の忘れ草が何であるかといふことは、津守家の口伝で、世間のものはただ勝手にそれを想像してゐるに過ぎなかつたのですからな。", "なぜまた、そんなものを秘密にしたのでせうな。うつかりすると、口伝を受けた人が、物忘れをせぬとも限らぬのに……" ] ]
底本:「完本 茶話 下」冨山房百科文庫、冨山房    1984(昭和59)年2月28日第1刷発行    1988(昭和63)年7月25日第7刷発行 底本の親本:「サンデー毎日」    1930(昭和5)年1月5日~1月26日 初出:「サンデー毎日」    1930(昭和5)年1月5日~1月26日 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 ※底本凡例に、「内容は別個で題を同じくする作品は題名の直下に*印を付し、*印の数の違いによって弁別することとした」とあります。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年10月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046624", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "11 昭和五(一九三〇)年", "副題読み": "11 しょうわご(せんきゅうひゃくさんじゅう)ねん", "原題": "", "初出": "「サンデー毎日」1930(昭和5)年1月5日~1月26日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-11-10T00:00:00", "最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46624.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本茶話 下", "底本出版社名1": "冨山房", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年2月28日", "入力に使用した版1": " ", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年 7月27日第9刷", "底本の親本名1": "サンデー毎日", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1930(昭和5)年1月5日~1月26日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46624_ruby_54719.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46624_54764.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "何をする。", "何も致しません、あなたのお悪いお癖を直したいばつかりでございます。" ], [ "そんな姿をして人通りのなかをお帰りになりましたの。", "うむ、帰つて来たよ。" ], [ "先生は何方にいらつしやいました。", "何方へ行つたか、そんな事が判つてたまるものか。" ], [ "うるさい坊主だな。", "うるさいと思召したら、どうぞ御喜捨を……" ], [ "そんなに煙草が好きなのかい。だが、パイプだけはよく掃除しなくちや。さもないと口が臭くつていけない。", "口が臭くたつて構はねえだ。" ], [ "変ですね。", "どうも少し変つてゐるやうです。", "少しどころぢやありませんよ、あまり変り過ぎてゐます。" ], [ "どうも感心しちまひました。いや全く感心しましたよ。ね、お前だつてさうだらう。", "ほんとにさうですわね。" ], [ "してみると、50とあるのは、サンチイムぢやなくて、フランですよ、吃度。", "フランでせうか。驚いたなあ、それではちつとも廉かない。" ], [ "Kさん、甚だ相済みませんが、三百フランばかりお持合せでせうか。", "あいにく持合せがないんです、実はお廉いやうにうかがつたものですから。" ], [ "先生は遅いね。", "うん、遅い。どうしたんだらう。", "腹が空いた。そろそろ酒でも始めて待つことにしようか。", "よからう。" ], [ "堪らんて、一体どうしたんだい。", "浄瑠璃好きや言ひなはるから、ちつとは語られるのんかと思つてましたんやが。" ], [ "そんな気儘を言ふものぢやない、あの人は東京では名代の義太夫道楽なんだから。", "そら知つてまんねやけど、とてもわての手にはおへまへん。" ], [ "どうも変な義太夫だんな。", "さうだつせなあ、まるで牛が吼えるやうやおまへんか。", "まあ、黙つて聞きなはれ。だんだん変になつて来ますよつてなあ。", "わて、もうかなひまへん。" ], [ "しかし、百両といへば大金ぢや。賽銭にはちと多過ぎるやうぢや。", "かも存じませんが、しかし百両の金を懐中にしてゐたのでは、私も少し重すぎるものでございますから……" ], [ "長曾我部といふ男は妙な奴でね、手つ取り早く言ふと、領土蚕食主義者なのです。先づ自分の領地に麦を播いたとする。刈入時になると、お構ひなしに隣の畑にまで鎌を入れる。畑の持主が怒り出せば、ぐづぐづ言ふなら腕づくで来いといつた風に、直ぐに武力で争ふ。そして吃度勝つ。次の年にはまた新しい畑に麦を播く。そして刈入時になると、また同じ事を繰返す。で、その度に段々と巧みに領地を殖やしていつた男ださうですよ。", "ははは。猾い奴だな。" ], [ "承知仕りました。夫人はいつ頃当地にお着きになりますお見込で……", "今晩の五時には、間違ひなく乗込んで来る筈です。" ], [ "これはこれは、アナクシメネス先生。先生は悪い日に参られた。わしはたつた今、けふ一日は誰の言葉にも耳をかさぬといふ誓を立てたばかりのところぢや。", "さやうでござりますか。さうとは存ぜず私は王様の力で、あの小アジアの市を木端微塵に叩き毀していただきたいと存じ、それをお願ひに上つたのでござりますが、お言葉を承はつてみればそれも致方のないこと、早速生命冥加な市に告げ知らせるでござりませう。" ] ]
底本:「完本 茶話 下」冨山房百科文庫、冨山房    1984(昭和59)年2月28日第1刷発行    1988(昭和63)年7月25日第7刷発行 底本の親本:「新版茶話全集下巻」創元社    1942(昭和17)年4月20日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年10月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046625", "作品名": "茶話", "作品名読み": "ちゃばなし", "ソート用読み": "ちやはなし", "副題": "12 初出未詳", "副題読み": "12 しょしゅつみしょう", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-11-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card46625.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "完本 茶話 下", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年2月28日", "入力に使用した版1": "1988(昭和63)年7月25日第7刷", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年 7月27日第9刷", "底本の親本名1": "新版茶話全集下巻", "底本の親本出版社名1": "創元社", "底本の親本初版発行年1": "1942(昭和17)年4月20日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46625_ruby_54723.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/46625_54768.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-10-13T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "はい、神戸の者でございます", "神戸の奴か。ぢや、法隆寺は初めてぢやの", "はい、仰せの通り初めてでございます。どうも御立派なものでございますな" ], [ "一人で見て歩いたつて、お前たちに何が解るもんか。今この男を(と、老人はちよつと顎で私のはうをしやくつて見せながら)中宮寺へ案内してやるところぢやから、お前も一緒についてきたがよからう", "有り難うございます。それぢやお供させていただきます" ], [ "さつきの神戸の奴はどうしたらう。お前知らんかの", "存じませんよ。本堂までは一緒に来てゐたやうでしたが", "あいつには外套を持たせてあるのぢやが" ] ]
底本:「泣菫随筆」冨山房百科文庫、冨山房    1993(平成5)年4月24日第1刷発行    1994(平成6)年7月20日第2刷発行 底本の親本:「太陽は草の香がする」    1926(大正15)年発行 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年5月16日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "048325", "作品名": "中宮寺の春", "作品名読み": "ちゅうぐうじのはる", "ソート用読み": "ちゆうくうしのはる", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-06-18T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card48325.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "泣菫随筆", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1993(平成5)年4月24日", "入力に使用した版1": "1994(平成6)年7月20日第2刷", "校正に使用した版1": "1994(平成6)年7月20日第2刷", "底本の親本名1": "太陽は草の香がする", "底本の親本出版社名1": " ", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/48325_ruby_30630.zip", "テキストファイル最終更新日": "2008-05-16T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/48325_31494.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2008-05-16T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "どこからやつて来たかな。あまり見馴れない奴だが……", "あの羽を見ろ。まるでクリイムのやうだ。" ], [ "はて、こいつも肥後守ぢや。", "ほい、お次もさうぢや。" ], [ "あなたは山に籠つてから、めつたに外へ出らられぬやうだが、山では何をめし上つてゐられますな。", "さよう。山での食物なら、先づ赤米、白塩、緑葵、紫蓼――といつたやうなところで……" ], [ "では沈嘉則は。", "うむ。沈か。あいつは俺の同郷の後輩ぢや。若いに似ずかなり頭のいい男での。詩のよしあしもよくわかるやうぢや。こなひだも俺の近作を見せたら、ひどく感心しをつたやうぢやて。", "へえ。", "何がへえぢや。をかしい物のいひ方をするな。", "でも、何だか変ですから。", "何が変ぢや。談してみい。" ], [ "なに。そんなことをいつてゐたか。お前。それはほんたうのことぢやらうな。", "ほんたうですとも。そんな作りごとが申されるはずがないぢやありませんか。", "さうか。そんな奴ぢやつたか。野郎。一つ思ひ切り懲しめてやらなければ……" ], [ "あれは偽書ださうだよ。", "やつぱりさうだつたか。いふことがあまり穿鑿に過ぎると思つた。", "怖ろしいことだ。そんな男にかかり合つては大変だ。" ], [ "お前ひとり、何だつて李を採りに往かないんだ。嫌ひなのかい。", "だつて、小父さん。あの李まづくつて、食べられやしないんだよ。", "いつか採つて食べたのかい。", "いいや。だつて小父さん、あんな路傍で、あんなにたんとなりながら、今まで誰にも盗まれずにゐたなんて、きつと味がまづいにきまつてゐるぢやないの。" ], [ "どうしたんだね。", "いえね。けふ蓼酢にこの葉を使つてみたところが、ちつとも辛味が利かないんです。人に聞くと、ぼんつく蓼といふのださうで……", "ぼんつく蓼だつて。", "はい。一向辛味が利かないところから、馬鹿者扱ひされたのでせうよ。うちにはぼんつくは要らないから、いつそ引つこぬいてやりませうか。", "いや。抜かなくともよい。ぼんつくの一本ぐらゐあつたつていい。" ], [ "達磨だ。", "黒猫だ。" ], [ "なります。なります。来年はきつとなりますから、切り倒すことだけはお免し下さい。", "そんなら待たう、来年まで。" ], [ "ちつともをかしかない。金柑だつて偶には泣きもしようぢやないか。子供なんだもの。", "なるほど、子供だつたのか。" ], [ "ちゆ。ちゆ。……", "ちつ。ちつ。……" ], [ "降つた。降つた。十年ぶりの雪だな。", "ひどい寒さだ。二十年ぶりだつていふぢやないか。" ] ]
底本:「独楽園」ウェッジ文庫、ウェッジ    2009(平成21)年12月28日第1刷発行 底本の親本:「独楽園」創元社    1934(昭和9)年発行 入力:kompass 校正:美濃笠吾 2011年7月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "052090", "作品名": "独楽園", "作品名読み": "どくらくえん", "ソート用読み": "とくらくえん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2011-08-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card52090.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "独楽園", "底本出版社名1": "ウェッジ文庫、ウェッジ", "底本初版発行年1": "2009(平成21)12月28日", "入力に使用した版1": "2009(平成21)年12月28日第1刷", "校正に使用した版1": "2009(平成21)年12月28日第1刷", "底本の親本名1": "独楽園", "底本の親本出版社名1": "創元社", "底本の親本初版発行年1": "1934(昭和9)年", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "美濃笠吾", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/52090_ruby_43619.zip", "テキストファイル最終更新日": "2011-07-24T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/52090_44478.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2011-07-24T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "おい、今のは蟇蛙じゃないか。", "いいえ、すっぽんどっせ、あんたはん。" ] ]
底本:「日本の名随筆17 春」作品社    1984(昭和59)年3月25日第1刷発行    1997(平成9)年2月20日第20刷発行 底本の親本:「太陽は草の香がする」アルス    1926(大正15)年9月発行 入力:門田裕志 校正:大野 晋 2004年9月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001522", "作品名": "初蛙", "作品名読み": "はつがえる", "ソート用読み": "はつかえる", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-11-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card1522.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆17 春", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1984(昭和59)年3月25日", "入力に使用した版1": "1997(平成9)年2月20日第20刷", "校正に使用した版1": "1997(平成9)年2月20日第20刷", "底本の親本名1": "太陽は草の香がする", "底本の親本出版社名1": "アルス", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年9月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "大野晋", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/1522_ruby_16563.zip", "テキストファイル最終更新日": "2004-09-26T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/1522_16656.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2004-09-26T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "あなたは山に籠つてから、めつたに外へ出られぬやうだが、山では何をめし上つてゐられますな。", "さよう。山での食物なら、先づ赤米、白塩、緑葵、紫蓼――といつたやうなところで……" ] ]
底本:「日本の名随筆59 菜」作品社    1987(昭和62)年9月25日第1刷発行    1997(平成9)年5月20日第8刷発行 底本の親本:「独楽園」創元社    1934(昭和9)年4月発行 入力:門田裕志 校正:大野 晋 2004年11月4日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004897", "作品名": "春菜", "作品名読み": "はるな", "ソート用読み": "はるな", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-12-08T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card4897.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆59 菜", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1987(昭和62)年9月25日", "入力に使用した版1": "1997(平成9)年5月20日第8刷", "校正に使用した版1": "1987(昭和62)年9月25日第1刷", "底本の親本名1": "独楽園", "底本の親本出版社名1": "創元社", "底本の親本初版発行年1": "1934(昭和9)年4月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "大野晋", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4897_ruby_16849.zip", "テキストファイル最終更新日": "2004-11-04T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4897_16926.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2004-11-04T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "山雀の巣だよ", "それを捕つてかへらうといふのかい", "さうだよ", "ならぬ、そんなこと" ], [ "よしんば山がお前さんのものだつて、巣くつてる鳥まで自分のものだとは言ふまい", "いや、言ふとも。わしの山にゐる小鳥は、みんな俺のものだ。指一本差さしはせんぞ" ] ]
底本:「泣菫随筆」冨山房百科文庫43、冨山房    1993(平成5)年4月24日第1刷発行    1994(平成6)年7月20日第2刷発行 入力:林 幸雄 校正:門田裕志 2003年3月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004349", "作品名": "山雀", "作品名読み": "やまがら", "ソート用読み": "やまから", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-04-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card4349.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "泣菫随筆", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫43、冨山房", "底本初版発行年1": "1993(平成5)年4月24日", "入力に使用した版1": "1994(平成6)年7月20日 第2刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "門田裕志", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4349_ruby_9504.zip", "テキストファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4349_9548.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "お母さんですか、お母さんは貴女、亡くなりましてから、今日で三月あまりにもなりますよ。", "え、お亡くなりですつて。でも、私は昨夜芝居でお目に懸りましたが……", "まさか。" ] ]
底本:「日本の名随筆 別巻64 怪談」作品社    1996(平成8)年6月25日第1刷発行 底本の親本:「薄田泣菫全集 第四巻」創元社    1939(昭和14)年2月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:土屋隆 校正:門田裕志 2006年3月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001526", "作品名": "幽霊の芝居見", "作品名読み": "ゆうれいのしばいみ", "ソート用読み": "ゆうれいのしはいみ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-04-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card1526.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆 別巻64 怪談", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1996(平成8)年6月25日", "入力に使用した版1": "1996(平成8)年6月25日第1刷", "校正に使用した版1": "1996(平成8)年6月25日第1刷", "底本の親本名1": "薄田泣菫全集 第四", "底本の親本出版社名1": "創元社", "底本の親本初版発行年1": "1939(昭和14)年2月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "土屋隆", "校正者": "門田裕志", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/1526_ruby_21708.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-03-20T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/1526_22311.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-03-20T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "私は小堀政一と申して、宗匠の流れを汲む茶人の一人でございます", "ほう、茶をやられるか。それは奇特なことぢやな" ], [ "宗匠、ここでお目にかかりましたのを御縁に、ちよつとしたことをお訊ね申したいと思ひますが……", "何か訊ねたいといはつしやるか" ] ]
底本:「泣菫随筆」冨山房百科文庫43、冨山房    1993(平成5)年4月24日第1刷発行    1994(平成6)年7月20日第2刷発行 入力:林 幸雄 校正:門田裕志 2003年3月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004351", "作品名": "利休と遠州", "作品名読み": "りきゅうとえんしゅう", "ソート用読み": "りきゆうとえんしゆう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-04-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card4351.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "泣菫随筆", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫43、冨山房", "底本初版発行年1": "1993(平成5)年4月24日", "入力に使用した版1": "1994(平成6)年7月20日第2刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "門田裕志", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4351_ruby_9503.zip", "テキストファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/4351_9549.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2003-03-24T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "はて、こいつも肥後守ぢや", "ほい、お次もさうぢや" ] ]
底本:「泣菫随筆」冨山房百科文庫、冨山房    1993(平成5)年4月24日第1刷発行 底本の親本:「独楽園」創元社    1934(昭和9)年 入力:本山智子 校正:林 幸雄 2001年7月6日公開 2006年1月2日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "003386", "作品名": "侘助椿", "作品名読み": "わびすけつばき", "ソート用読み": "わひすけつはき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-07-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/card3386.html", "人物ID": "000150", "姓": "薄田", "名": "泣菫", "姓読み": "すすきだ", "名読み": "きゅうきん", "姓読みソート用": "すすきた", "名読みソート用": "きゆうきん", "姓ローマ字": "Susukida", "名ローマ字": "Kyukin", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1877-05-19", "没年月日": "1945-10-09", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "泣菫随筆", "底本出版社名1": "冨山房百科文庫、冨山房", "底本初版発行年1": "1993(平成5)年4月24日", "入力に使用した版1": "1993(平成5)年4月24日第1刷", "校正に使用した版1": "1997(平成9)年7月20日第2刷", "底本の親本名1": "独楽園", "底本の親本出版社名1": "創元社", "底本の親本初版発行年1": "1934(昭和9)年", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "本山智子", "校正者": "林幸雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/3386_ruby_21027.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-01-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000150/files/3386_21028.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-01-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "では、さようなら、プール。", "おやすみなさいまし、アッタスンさま。" ] ]
底本:「ジーキル博士とハイド氏」新潮文庫、新潮社    1950(昭和25)年11月25日発行    1962(昭和37)年8月10日24刷 ※「捜」と「搜」の混在は、底本通りです。 入力:kompass 校正:松永正敏 2007年2月16日作成 2011年4月29日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "033205", "作品名": "ジーキル博士とハイド氏の怪事件", "作品名読み": "ジーキルはかせとハイドしのかいじけん", "ソート用読み": "しいきるはかせとはいとしのかいしけん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 933", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-03-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/card33205.html", "人物ID": "000888", "姓": "スティーブンソン", "名": "ロバート・ルイス", "姓読み": "スティーブンソン", "名読み": "ロバート・ルイス", "姓読みソート用": "すていいふんそん", "名読みソート用": "ろはあとるいす", "姓ローマ字": "Stevenson", "名ローマ字": "Robert Louis", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1850-11-13", "没年月日": "1894-12-03", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "ジーキル博士とハイド氏", "底本出版社名1": "新潮文庫、新潮社", "底本初版発行年1": "1950(昭和25)年11月25日", "入力に使用した版1": "1962(昭和37)年8月10日第24刷", "校正に使用した版1": "1962(昭和37)年8月10日第24刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "松永正敏", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/files/33205_ruby_26003.zip", "テキストファイル最終更新日": "2011-04-29T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/files/33205_26197.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2011-04-29T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "2" }
[ [ "お前は奴の名前を知らなかったんだな、そうだろ?", "そうですよ。" ] ]
底本:「宝島」岩波文庫、岩波書店    1935(昭和10)年10月30日初版第1刷発行    1956(昭和31)年6月30日第17刷発行 ※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。 その際、以下の置き換えをおこないました。 「亦→また、既に→すでに、於いて→おいて、於ける→おける、甚だ→はなはだ、以て→もって、殆ど→ほとんど、度々→たびたび、漸く→ようやく、極く→ごく、傍→そば、暫く→しばらく、直ぐ→すぐ、真直→まっすぐ、何故→なぜ、殊に→ことに、更に→さらに、尤も→もっとも、勿論→もちろん、益々→ますます、猶→なお、早速→さっそく、遂に→ついに、此処彼処→ここかしこ、彼処→あすこ、尚→なお、所謂→いわゆる、忽ち→たちまち、何処→どこ、彼奴→あいつ、何時→いつ、苟も→いやしくも、悉く→ことごとく、如何→いか、尚更→なおさら、筈→はず、誰→だれ、頗る→すこぶる、即ち→すなわち、咄嗟→とっさ、全く→まったく、著→着、ハンヅ→ハンズ、乃至→ないし、謂わば→いわば、彼方此方→あちこち、此奴→こいつ、駈→駆、差支え→さしつかえ」 ※「燈」と「灯」の使い分けは、底本通りです。 ※一部、ルビを補いました。 ※入力に際しては、「宝島」新潮文庫(佐々木直次郎・稲沢秀夫訳)を参考にしました。 入力:kompass 校正:伊藤時也 2009年8月12日作成 2012年2月23日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "033206", "作品名": "宝島", "作品名読み": "たからじま", "ソート用読み": "たからしま", "副題": "02 宝島", "副題読み": "02 たからじま", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K933", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-09-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/card33206.html", "人物ID": "000888", "姓": "スティーブンソン", "名": "ロバート・ルイス", "姓読み": "スティーブンソン", "名読み": "ロバート・ルイス", "姓読みソート用": "すていいふんそん", "名読みソート用": "ろはあとるいす", "姓ローマ字": "Stevenson", "名ローマ字": "Robert Louis", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1850-11-13", "没年月日": "1894-12-03", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "宝島", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1935(昭和10)年10月30日", "入力に使用した版1": "1956(昭和31)年6月30日第17刷", "校正に使用した版1": "1950(昭和25)年9月20日第12刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/files/33206_ruby_35590.zip", "テキストファイル最終更新日": "2012-02-23T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/files/33206_35955.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2012-02-23T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "2" }
[ [ "それからたくさんおもちゃを買ってちょうだいなママ", "でもたくさん買うだけのお金がないんですもの" ], [ "ママくたびれました", "私もですよ、どこかで水を飲みましょうね" ], [ "そうです、ねむっていらっしゃるんです", "花よめさんでしょうか、ママ", "そうです花よめさんです" ], [ "あれが鳩の歌った天国ですか、いったい天国とはなんでしょう、ママ", "そこはね、みんながおたがいに友だちになって、悲しい事も争闘もしない所です", "私はそこに行きたいなあ" ] ]
底本:「一房の葡萄」角川文庫、角川書店    1952(昭和27)年3月10日初版発行    1967(昭和42)年5月30日39版発行    1987(昭和62)年11月10日改版32版発行 初出:「小樽新聞」1914(大正3)年1月1日 ※誤植が疑われる以下の箇所を、1991(平成3)年6月10日改版40版発行の底本をもとに直しました。 ○巳旦杏《はたんきょう》→巴旦杏《はたんきょう》 ○足が滅入《めいり》りこみます。→足が滅入《めい》りこみます。 入力:土屋隆 校正:鈴木厚司 2003年7月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004993", "作品名": "真夏の夢", "作品名読み": "まなつのゆめ", "ソート用読み": "まなつのゆめ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K949", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-08-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001062/card4993.html", "人物ID": "001062", "姓": "ストリンドベリ", "名": "アウグスト", "姓読み": "ストリンドベリ", "名読み": "アウグスト", "姓読みソート用": "すとりんとへり", "名読みソート用": "あうくすと", "姓ローマ字": "Strindberg", "名ローマ字": "August", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1849", "没年月日": "1912", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "一房の葡萄", "底本出版社名1": "角川文庫、角川書店", "底本初版発行年1": "1952(昭和27)年 3月10日発行", "入力に使用した版1": "1987(昭和62)年11月10日 改版32刷", "校正に使用した版1": "1981(昭和56)年11月10日 改版23版", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "土屋隆", "校正者": "鈴木厚司", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001062/files/4993_ruby_11268.zip", "テキストファイル最終更新日": "2003-07-06T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001062/files/4993_11314.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2003-07-06T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "お嬢ちゃんはまだほかにご兄弟がおありですか?", "いいえ,全部であたし一人きりなの" ] ]
底本:「ドイツ語研究 第1号」三修社    1979(昭和54)年12月1日発行 底本の親本:「基礎ドイツ語(四月號)」三修社    1953(昭和28)年4月1日 ※底本は横組みです。 ※底本では、「”」の二点は文字列の左下に、「“」の二点は右上に、置かれています。 ※対訳部分は、左に独文、右に和訳の二段組みで組まれていますが、本テキストでは独文の下に和訳を配置しました。 ※誤植を疑った箇所を、底本の親本の表記及び「ドイツ語研究 第2号」三修社、1980(昭和55)年発行の「第一号訂正」欄によって、あらためました。 入力:nimmer 校正:vor 2016年6月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "049946", "作品名": "移轍(Anakoluth)", "作品名読み": "いてつ(アナコルート)", "ソート用読み": "いてつあなこるうと", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 845", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2016-07-25T00:00:00", "最終更新日": "2016-06-23T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001402/card49946.html", "人物ID": "001402", "姓": "関口", "名": "存男", "姓読み": "せきぐち", "名読み": "つぎお", "姓読みソート用": "せきくち", "名読みソート用": "つきお", "姓ローマ字": "Sekiguchi", "名ローマ字": "Tsugio", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1894-11-21", "没年月日": "1958-07-25", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "ドイツ語研究 第1号", "底本出版社名1": "三修社", "底本初版発行年1": "1979(昭和54)年12月1日", "入力に使用した版1": "1979(昭和54)年12月1日", "校正に使用した版1": "1979(昭和54)年12月1日", "底本の親本名1": "基礎ドイツ語(四月號)", "底本の親本出版社名1": "三修社", "底本の親本初版発行年1": "1953(昭和28)年 4月1日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "nimmer", "校正者": "vor", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001402/files/49946_txt_59449.zip", "テキストファイル最終更新日": "2016-06-22T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001402/files/49946_59489.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2016-06-22T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "どうして?", "台湾坊主で、あの丸髷はかつらなんだ" ] ]
底本:「日本の名随筆 別巻11 囲碁2[#「2」はローマ数字、1-13-22]」作品社    1992(平成4)年1月25日第1刷発行 底本の親本:「日本評論」    1940(昭和15)年3月号 入力:葵 校正:柳沢成雄 2001年8月24日公開 2005年12月27日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001542", "作品名": "本因坊と私", "作品名読み": "ほんいんぼうとわたし", "ソート用読み": "ほんいんほうとわたし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 795 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-08-24T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000268/card1542.html", "人物ID": "000268", "姓": "関根", "名": "金次郎", "姓読み": "せきね", "名読み": "きんじろう", "姓読みソート用": "せきね", "名読みソート用": "きんしろう", "姓ローマ字": "Sekine", "名ローマ字": "Kinjiro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1868-04-01", "没年月日": "1946-03-12", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆 別巻11 囲碁Ⅱ", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1992(平成4)年1月25日", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "日本評論 1940年3月号", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "葵", "校正者": "柳沢成雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000268/files/1542_txt_20954.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-12-27T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000268/files/1542_20955.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-12-27T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "なんでございますか、大変なお話って?", "一口には云えないのです", "なんですか?", "順序を追って話さなくては解りません。寒いですから歩きましょう。歩きながら話しますから、公園の方へ行きましょう" ], [ "ええ、散歩についやしているのです", "なぜ?", "なにも考えず、街をぶらぶら歩きながら、通りすがりの人の顔を見るのが私の道楽なのです。私は絵を見るよりも骨董品をつつくより、いろんな人の顔を見て歩くのが好きなのです", "まア!" ], [ "日本人の顔も悪くはないが、本当に陰影があって面白いのは外国人の顔です。ことに白人や印度人の顔はいつまで見ていても倦きませんね。そこへ持って行くと、日本人の顔は未製品です。深味がない。日本人の顔よりまだ支那人の顔の方が面白い。少くも日本人のように、かさかさしていなくて、油を塗ったような丸味があるです。それは丁度、日本の焼物と支那の焼物の差と同じですね。私は明るい顔は好きですがいつも冷笑を浮かべた狡猾な顔は好きません。日本人にはそれがよくあるです。それよりも寧ろ陰気な淋しい顔の方が真面目で気持がいいと思います", "失礼ですが御用事と云うのはなんでございますか? あたし、早く帰りたいのですけれど――", "いや、これが要点に入る前置きなのです。前置きなしには話せない。だしぬけに要点を話したら、屹とあなたが吃驚なさって、私を信用して下さらないと思います" ], [ "なんですか?", "あなたは私の顔に興味をお感じになって、絵をかくためにモデルになってくれと仰有るのでしょう?", "いいえ、少し違います。まア、もすこし辛抱して聞いて下さい。私は夜なぞじッと自分の顔を鏡に映して見るのが好きです。そして長い間、自分の顔を見ている中に、私は自分の運命を予言できるようになりました", "どうして?", "予言と云うのは少々大袈裟ですが、とにかく、自分の顔色や、眼元に表れた口では云えぬ繊細な感じで、長い未来のことまでは解らなくても、二三日後の運命ぐらいは、どうにかこうにか読めるようになったのです。私は東洋の易や人相学や、西洋の骨相学や手相学も一通りは研究してみましたが、それらからは何の得るところもありませんでした。私の方法は人の顔をちょっと見た時の感じ、その感じからいろんなことを端的に直感するのです。そしてまたそれが、非常によく当るのです。そして私は毎日沢山の人の顔を見て歩いている中に、ふと今日あなたの顔を見たのです。私はあなたの顔を見た時、自分の目を疑うほど驚きました", "死の相でも表れていたのですか?", "いいえ", "ではどうして?", "私はあなたの顔を一目見て、これが私の妻となる人だと知りました" ], [ "ブレークの場合とは違います。彼は突発的に妻を直覚したのですが、私のは今日だけは直覚でも何でもない。実は以前に幾度もあなたを見たことがあるのです。今夜はじめて見るのではないのです", "どこで見たのです?", "幻で見ました。私には随分前から、時々自分の妻の顔を見ようと思って、静な部屋で眼をつぶる習慣があったのです。すると私の眼の前に、何時も同じ幻が現れて来ました。それは右手に高い黒い倉庫のような建物があって、あたりが黄昏のように暗いのに、向うの空が青く晴れて、その空を背景にして、一人の女が立って、私の方を見ながら招くように微笑しているのです。私はその女の顔をいつでもはっきり見ることが出来ます。巴旦杏型のぱっちりした眼はどこか私が子供の時に死んだ母の眼に似ていて、頬から頤にかけた線に、何とも云えぬ素朴な優しみがあります。そしてその顔全体が、あなたの顔とちっとも違わないのです" ], [ "宮地君は二ヶ月前から発狂していたのです。それが三日前に何処へ行ったか、帰って来なくなったのです。何しろ精神病者ですから、打遣って置くわけに参りません。随分心配しています", "なに、御安心なさい、私が徹底的に調べれば直ぐ行方は解ります。失礼ですが貴方は?", "私は暮松と云つて、宮地君の昔からの友人で、今まで二人でこの工場を経営して来ました", "宮地さんの経歴は?", "両親が莫大の資産を残して早く死んだので、宮地君は中学を出ると伯父と相談の上で米国へ行き、シカゴ大学で製氷術を研究して、日本へ帰って私と一緒にこの工場を起したのです。この工場を起して今年で五年になります", "精神病者としての兆候は?", "宮地君が発狂したのは、余りに製氷に熱中したからだろうと思うのです。その熱心は次第に烈しくなって、ことにこの二ヶ月以来と云うものは白熱的で、そばで見ていられないほどでした。氷の前に立った宮地君は、まるで宝石の前に立った宝石屋のようでした。また実際宮地君は氷を宝石とでも思っているらしく、光線を受けて奇妙な光を発する複雑な角度を持ったいろんな氷を作って楽しんでいました。一時間も二時間も氷の前に立って、黙って見つめているようなことがよくありました。それに神経が非常に鋭敏になりまして、工場の男が鋸で氷を切っていると、その音を聞くと自分の体を鋸で切られるようだと云って、急いで逃出したこともあるぐらいです。以前は私と一緒にこの事務室で事務を取ることも多かったのですが、最近では午前中は工場で氷をつつき、午後になると毎日かかさず散歩に出て、街をぶらぶら歩いていました" ], [ "ここに海底の写真のようなものがございましょう? 縞鯛が一列に泳いでいて、下の方から細長い海草が蛇のようにのた打っています。けれどもこれは海底の写真でもなければ、水槽の写真でもないのです。よく見ると海草のうねりに一種の幾何学的リズムがあって、装飾的に図案化されているのが解ります。これは装飾用の氷柱の写真なんです", "成程", "それからこれは写真ではよく解りませんが、この点のようなものが皆いろいろの色なんです。虹の七色を配列したのです。宮地君はこの色彩の配列を考えるのに殆ど一週間の間も食事も忘れるほど頭を捻っていました。彼がひどい神経衰弱に罹ったのは、この氷柱を作った頃からです" ], [ "もう部屋はこの他にはありませんか?", "はあ、事務室と工場と、女中部屋と台所と浴場と、それからこの部屋と、みんな御覧に入れました" ], [ "この家には、今はどこにも電燈がついていないでしょう?", "昼は電燈を点けません", "電線から来る電力は、どこにも使ってないのですね?" ], [ "はあ", "それァ、不思議だ! ちょっとこちらへ来てごらんなさい" ] ]
底本:「「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌10」光文社文庫、光文社    2002(平成14)年2月20日初版1刷発行 初出:「新青年」博文館    1928(昭和3)年1月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:川山隆 校正:noriko saito 2012年11月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "052467", "作品名": "凍るアラベスク", "作品名読み": "こおるアラベスク", "ソート用読み": "こおるあらへすく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「新青年」博文館、1928(昭和3)年1月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2013-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001568/card52467.html", "人物ID": "001568", "姓": "妹尾", "名": "アキ夫", "姓読み": "せのお", "名読み": "あきお", "姓読みソート用": "せのお", "名読みソート用": "あきお", "姓ローマ字": "Senoo", "名ローマ字": "Akio", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1892-03-04", "没年月日": "1962-04-19", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌10", "底本出版社名1": "光文社文庫、光文社", "底本初版発行年1": "2002(平成14)年2月20日", "入力に使用した版1": "2002(平成14)年2月20日初版1刷", "校正に使用した版1": "2002(平成14)年2月20日初版1刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "川山隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001568/files/52467_ruby_49652.zip", "テキストファイル最終更新日": "2013-01-01T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001568/files/52467_49653.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-01-01T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "また、あなたは、雨の降る日お客が来ないからというので、私の所へ話しに来られたが、その雨の降るひまな時に、なぜ小僧に休暇を与えないか、それがいけない。雨が降るからひとつ今日は活動でも見てこいよ、と小遣いの一円もやれば、どんなによかったかしれないじゃないか", "その活動も芝居も見てはいけない、と私は言いました。", "それじゃ、うちでは誰も親切にはしてくれないし、外では活動も見られないということになると、小僧は小遣いをごまかして、へたな女でも引張るということになるのは当り前ですよ。" ], [ "私はお辞儀をしてもらってもためにならんから、別に言わないのだ", "でも、お辞儀をする方がいいですな" ], [ "お前、来てどうだい、中村屋と外でちがったところはお辞儀をしないだけか。", "そうですね", "中村屋では喧嘩をしないことになっているんだが", "そうですね。中村屋へ来て一年になりますが、喧嘩を、そういえば見たことがありませんね。", "これだけいて喧嘩をしないということは、お辞儀をしないことの帳消しにならんかね。", "なるほど、そうですね。" ], [ "中村屋が今日になるまでは数十年という永い歳月をすごしたが、この間よくまたお店の主義をかえられずに来ましたね", "どこよりも一番よいものをということが開業した時からの信条で、これを頑張り通されぬようだったら商売はしないという堅い決心でやって来ました。これが私の道楽でもあり、儲ける、儲けぬということよりも、なんでも日本一よいものを作って売るということで一生懸命だった。それが誇りでもあった。", "然し品がよければ高く売らなければ引合わないし、高ければ売行きは悪い。そうすると、経営上の点で最初の理想通りに頑張り通すことは出来なくなって来る。ついに迷い出す。方針をかえたくないという、危い瀬戸際を何度も往復されましたでしょう", "それは少し苦痛もあった。いくらよい品を作っても、そう急に認められるものではないし、相当永い間の辛抱を要する。だからたいがいの人が辛抱しきれなくなって最初の方針を破ってしまうのだが、そこで方針をかえるということは、結局今までの犠牲が虻蜂とらずに終るばかりでなく、かえって信用をおとす結果となる。だからよいと信じて着手したことはトコトンまでやって見なければいけない。いったい多くの人は成功をあせりすぎるようだが、一足飛びに成功しようとしたってそううまく行くものではない。", "経営上の苦心談をきかして頂きたい", "他よりも良い品を作るには、他よりも腕のすぐれた職人を入れなくてはならない。和菓子では風月堂に九年も職長をした菓子界でも相当知られていた男を職長に迎えて思う存分に腕を振わせた。材料の仕入などは私の所がどこよりもやかましいと仕入先からいわれたくらいだ。だから私の店でこしらえたものは他のどこのよりよいと信じている。ところが、ある時、ニューヨークで偶然にもうちの羊羹と虎屋の羊羹とが一所で味を比較されたことがあって、その批評によると、うちの方がよくないという情報が私の耳に入った。そこで私は早速職長を呼んで訳を話した。ところが職長はどうしてもそんな筈はないといって頑張るので、試食比較してみると、なるほどかわっていない。そこでいろいろ原因を調べて見たが分らない。ところがうちの羊羹の方が虎屋のものより形が甚だ小さいために、外観が貧弱に見えて如何にも味までが劣っているように見られたのであるということがわかった。そこで今までより形を三倍大きくしたところが非常に評判がよくなった。これは一例であるが、私は頑固のようだが、いろいろの人の意見を努めて聴くことにしている。悪いと思えばすぐ改める。昔からのしきたりなどにこだわってはいない。以前の話だが、店の者が近くへ引越した某邸へ御用聞きに行った。ところがそのお邸ではとりつけの店があるからというので、てんで中村屋など眼中にないという風で、剣もホロロの挨拶だった。店員はくやしがって帰って来たが、それから四五日するとそのお邸から電話で菓子の注文があった。不思議に思いながら行ってみると、そこの奥様が出てこられ、先日の非礼を詫びられて、これからひいきにしてくれるとの話であった。よくわけを聞いてみると、そのお邸では、最近よそから貰うおつきあい物の菓子がほとんど中村屋のものだったので、あらためてとりつけの店の品と試食してみたところ、何ら遜色がない、しかし価は廉いというので、店へ注文されるようになった。しかしこうして認めて貰うまでにはなかなかの努力と苦労があるものである。", "主人が店頭に出て金を受取ったり、品物を渡したりしているようなことでは駄目だというのはあなたの所論だそうで、お店にも滅多に顔を出されぬと聞いていますが、それはあなたのように立派な御子息がお店を切回わしていられるから、そういうことをいっていられるのではないだろうか" ], [ "中村屋だけはデパートみたいに近代化されているので店員は恵まれている訳ですね", "うちの店は御覧の通りおかげさまで非常に忙しい。店員たちはほとんどスキがない。そこで、パン、和洋菓子、喫茶、食事等にわたって各部門ごとに一人当りの製造高や販売高を調べると、製造高から見ると従来の日本菓子の職人は一日一人二十円くらいのものだがうちではその二倍四十三円くらいこさえている。といった具合で私の標準としているレベルよりも、製造販売ともに平均一割一分ほど余分に働いてくれている状態である。だから店員達も相当つかれる。そこで、働く時間は短くして早くしまわせる。その代わり時間中は一生懸命やって貰う。その方が能率的である。よく店員など使うのに少しでも遊ばせて置くのはもったいないとか、時間を長く使うほど得だとかいうふうに考えてずいぶん長時間働かして喜んでいる主人がある。また職長になると、あながち自分が手を下して仕事をするばかりが能でないのだが、何とか忙しそうに手をつけていないと主人が気に入らぬ。人間だからそう長時間ハリツメて働ける訳のものではない。正直に真剣にいうてもそんなに永く働いていたら身体がまいってしまう。適度に休養して身心にユトリを与えてよく働くというふうの人でなければ決して大成しない。あせってハリキっているばかりが能じゃない。ある有名な雑誌社では少年社員に休み時間を十分に与えずに永く使うそうだし、ある婦人雑誌でも社長が時間を超越して頑張っているので、社員達はオソレをなしているそうだが、使う方ではそれで能率が一段とあがっているつもりで喜んでいるだろうが、真剣に働く真面目な者にはとても勤まるものではない、だから真面目な者はやめてしまって要領のいい人間だけが残ることになる。そして三時間で出来る仕事を一日中引きのばしてみたり要領よくサボったりする。これはむしろ当然のことである。使う方になってみれば永く店に頑張っているのも面白かろうが、使われる方ではやりきれぬ。そこは使われている者の気持を汲んでやらねばならない。むやみに長時間コキ使うことは発展性のある真面目な社員を逃がして要領のいい人間しか集め得ないで、大局的に非常な不利に相違ない。もう一つ、雇人の四十人も使っている大きな店の主人公の話であるが、この人がまた粘り屋で毎日十一時すぎまで店に頑張っている、そこで雇人の閉口していることはいうまでもなかろうが、御家庭の奥様までコボしているありさまだ。この人は店の仕事に自分が手を下さぬと気が済まぬ、人に任せておけない性分なのである。まことに責任感の強い商売熱心には敬服するが、それで能率があがっているかというに事実は反対だ。主人がちょっといないと、あれも出来ぬ、これも分らぬという訳で、その間雇人は手をあけて無駄をしている。とにかく非常に不利である。だから主人は雇人を信頼して大胆に任せることは任せてしまわねばいけない。大将がいないと兵卒は一歩も動けぬようでは軍は負けである。", "店員を叱ることがありますか" ], [ "支店を絶対に出さないという主義はどういう理由です", "中村屋が支店を出さぬということはべつに深い理由はないが、小売商過多の業界へ支店など出来るだけ出さぬ方がお互いのためだと考えている。例えば百貨店などにしても、地方へ支店を出して尨大な建築や近代的設備に莫大な金を投じているが、多くは算盤がとれていまいと思う。多少算盤がとれている支店があったにしても当然本店へ行くべき客を分けて貰っているので、ようやく赤字を免がれているという支店もある。デパート全体にとって支店はあながち有利なものでないと思う、しかもそれがために地方の小売商人などはどれだけ苦しんでいるか分らない。とすれば結局己れを利せず人を苦しめている外何物もない支店政策は、無駄な投資だと思う。我々にしても、いまでも田舎廻りの役者でもあるまいから檜舞台へ出て見たい気もするが、さて銀座あたりへ出るとなれば二三十万の金は用意してかからねばならず、それを投じたからといって果して収支償うかどうかが疑問である。しかも既存の同業者に与える打撃も相当多かろうと思う。かように考えると、いい加減で仏心をおこして、余り勢に乗じない方がよかろうと思う。", "いまの小売商は救われて行くと思われますか、またデパートについてどう考えられますか", "古いありきたりの行き方をしていたのでは小売商は衰滅するよりほかあるまいと思う。何しろ小売商人は多すぎる。小売商の平均売上高は一ヶ年五千円弱ということだそうだが、一日十五円程度の売上ではなかなかやっていけない。そこで娘を働きに出すとか、内職的にやるとかしてどうにかやっている。それがまた商売に積極的に身を入れない理由にもなるわけで、日本の小売商の進歩しないゆえんでもある。米国の小売商売は日本の約五倍くらい売っている。日本の小売商、ひいて中小企業であるが――これらの前途にはまた多くの困難が横たわっている。その一つに百貨店とか産業組合とかいう大資本のものが、それぞれ自給主義をとって行くということをあげることが出来る。だからといって小売商人の前途をむやみに悲観する訳ではない。小売商人は経費の節約によって百貨店と対抗して行くことが出来ると思う。百貨店のあの設備その他では売り上げの二割五分の経費はどうしてもかかるのであるから、そこを小売商は徹底的に切り詰めて対抗して行けば行けると思う", "百貨店などは純益課税で、小売商人は売上高標準で税金を課しているといったやり方では担税能力から見て非常に不公平のように考えられる。つまり力のないものが、余計に重荷を負わされているという傾向があるように思うが、この点については", "その傾向はたしかにある。だから売上高の何分というふうにして累進課税を課す方が案外公平かも知れない。私の目の子勘定だけでも百貨店を入れて一億二千万円程度の税収入はある見込みである。ともかく一番苦境にある小売商人の税負担を軽くして販売経費を幾分でも低下させてやることは、衰亡途上にある小売商に活を入れるゆえんだと思う。", "小売商の経営上について、例えばショウ・ウインドなどにしても日本の商店がいたずらに外国模倣式でギコチない感がするが、外国ではショウ・ウインドなど廃してかえって売上げを増している店があるということですが、それらについてのお話を聞かして頂きたい", "元来ショウ・ウインドというのは、外国が初めでもなんでもない。日本では天ぷら屋など昔から店さきで揚げていて、匂いと実物で客を吸収している。これは立派なショウ・ウインドである。建具屋が店頭で仕事をしているのもその一例である。ところが近来どこの商店でも飾り窓などに馬鹿な金をかけることが流行で、狭い間口の店まで貴重な売場面積をショウ・ウインドに占領されているようだが、あれなどは考え物だと思う。かえって実物をただちにお客様の手にとって見られるという風にした方が、効果的だと思う。それから経費の節減ということで思いついたが、私の店で包紙に非常に金がかかるので調べてみた。ところが二十銭の折も一円の折も同じ包装紙を使っているというようなわけで、包装紙だけでも二十銭の場合だと一割もかかっていたが、これをそれぞれ相当の包紙を使用することに改めて経費の節減を計った。さすがはこういう点ではデパートは進歩したもので、コスト販売経費などはなかなかよく研究している。売場のカウンターの高さとか通路、照明の具合などは我々はデパートに教えられるところが非常に多い。接客のサービスとか、仕入れだとか、デパートに教えられる。こうした不断の研究を怠たらぬことが肝要だと思う。現在の小売商はデパートに較べると著しく進歩がおくれている。これは研究して経営を合理化して行かねばならぬ事と思う。", "中村屋の繁昌ぶりでは一ヶ年の売上高も相当巨額なものでしょうし、従って純益も莫大なものでしょう" ] ]
底本:「相馬愛蔵・黒光著作集4」郷土出版社    1981(昭和56)年6月5日初版発行 底本の親本:「私の小売商道」高風館    1952(昭和27)年11月25日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※誤りを疑った箇所は、原則として正しいと思われる形に書き替えた上で、底本の形を注記しましたが、以下は「ママ」とするにとどめました。 ○「朋輩から一歩も二十歩も」は、底本の親本でもこの形で通っており、正しい形を特定することにはためらいを感じたので、「ママ」としました。 ○「和気靄々」は、底本でも、底本の親本でも「和気靄々」で通っていたので、これが著者の意図した表記と考え、「ママ」としました。 ○底本は親本にみる「膏盲」をなぞった上で「こうもう」とルビをふっていました。正しい形として、「膏肓《こうこう》」を選ぶか、「膏肓《こうもう》」とするべきか、判断が付かなかったので、「ママ」としました。 ○「しかうして」は底本の親本では、「然して」です。正しい形を選ぶ際、親本にそって「しかして」とするべきか、底本のみを考慮して、「しこうして」とするべきか、判断が付かなかったので、「ママ」としました。 ※「高等実業学校卒業者の職業別」で、合計の数字が合わないのは底本通りです。 ※見出しの字下げのばらつきは、底本通りとしました。 入力:門田裕志、小林繁雄 校正:富田倫生 2004年12月11日作成 2011年4月4日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "043527", "作品名": "私の小売商道", "作品名読み": "わたしのこうりしょうどう", "ソート用読み": "わたしのこうりしようとう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 673", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001147/card43527.html", "人物ID": "001147", "姓": "相馬", "名": "愛蔵", "姓読み": "そうま", "名読み": "あいぞう", "姓読みソート用": "そうま", "名読みソート用": "あいそう", "姓ローマ字": "Soma", "名ローマ字": "Aizo", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1870-11-08", "没年月日": "1954-02-14", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "相馬愛蔵・黒光著作集4", "底本出版社名1": "郷土出版社", "底本初版発行年1": "1981(昭和56)年6月5日", "入力に使用した版1": "1981(昭和56)年6月5日初版", "校正に使用した版1": "1981(昭和56)年6月5日初版", "底本の親本名1": "私の小賣商道 ", "底本の親本出版社名1": "高風館", "底本の親本初版発行年1": "1952(昭和27)年11月25日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "小林繁雄、門田裕志", "校正者": "富田倫生", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001147/files/43527_ruby_17326.zip", "テキストファイル最終更新日": "2011-04-04T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001147/files/43527_17334.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2011-04-04T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "へえ、林檎林が出来るか。だが、この界隈ぢや昔から林檎つてことは聞かないな、俺等の地方にや適かないんぢやないかね。なあにさ、そりや、どうせ旦那衆の道楽だから何だつて構はないやうなもののな。", "ほんとによ。林檎がこの土地に適かうが適くまいが、そんなこと俺等に何の関係もないこつたが、その為めに、俺等が永年作り込んだ地面を、なんぼ自分の所有だといつて、さうぽん〳〵と無造作に取上げられたんぢや、全くやりきれやしない。", "第一、勿体ないやね。こんな上等な土地を玩具にするなんて、全くよくないこつた! それには些つと広過ぎるよ。" ] ]
底本:「現代日本文學大系 49 葛西善藏 嘉村礒多 相馬泰三 川崎長太郎 宮路嘉六 木山捷平 集」筑摩書房    1971(昭和48)年2月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版12刷発行 初出:「新潮」    1917(大正6)年10月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:林 幸雄 校正:noriko saito 2010年2月18日作成 2011年10月25日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "050183", "作品名": "新らしき祖先", "作品名読み": "あたらしきそせん", "ソート用読み": "あたらしきそせん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「新潮」1917(大正6)年10月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-03-31T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/card50183.html", "人物ID": "001082", "姓": "相馬", "名": "泰三", "姓読み": "そうま", "名読み": "たいぞう", "姓読みソート用": "そうま", "名読みソート用": "たいそう", "姓ローマ字": "Soma", "名ローマ字": "Taizo", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1885-12-29", "没年月日": "1952-05-15", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代日本文學大系 49 葛西善藏 嘉村礒多 相馬泰三 川崎長太郎 宮路嘉六 木山捷平 集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1973(昭和48)年2月5日", "入力に使用した版1": "1985(昭和60)年11月10日初版第12刷", "校正に使用した版1": "1985(昭和60)年11月10日初版第12刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/50183_ruby_37474.zip", "テキストファイル最終更新日": "2011-10-25T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/50183_38303.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2011-10-25T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "道中はどうだったな。信州の山々は今はちょうど青々と茂り合っていて、さぞ気持がいい事だったろう。……新聞でみると浅間山がこの頃だいぶ穏でないように書いてあるが、よっぽどさかんに煙をふき出しているかね。", "そうですね。私が通った時には、ちょうど煙が見えませんでしたが、汽車へ乗り込んで来たその土地の人の話では、何でもひどい時には上田の町あたりまでも灰が降って来るという事ですね。それがために今年はあの地方の養蚕がまるで駄目だという事です。", "そうか。", "桑の葉が灰だらけになってしまうのだそうです。", "なるほど……。" ], [ "何しろ、十五六時間も汽車に乗り通したんでは、さぞ疲れた事だろう。", "え、おかげさまで、今朝はとんだ寝坊をしてしまいました。つい、今しがた起きたばかりなんです。", "はゝゝゝ" ], [ "どうなるのですの?", "そんなに気をもむ事なんか少っとも無いんですよ。お前はもういいんだから、あっちへ行っておいで。", "でも、わたし……。", "どうしたの? お前、母さんがいいようにして上げるのだから、お前なんかが心配などするのではありませんよ。ね、房子。――それから、兄さんが目を覚ましたら此室へ来てくれるようにって云っておくれ。誰にも知れないように、そっと云うのですよ。" ], [ "ほんとにそれだけで良いのかい。……あとでまた何か云い出したって、妾はもう知りませんよ。それですっかりよくなるのだね、ほんとに?", "はい。" ], [ "むやみに快楽を追おうとする所にいっさいの紛雑が生ずるのだ。苛れば苛るほど、藻掻けば藻掻くほどすべてが粗笨に傾き、ますます空虚となってゆくばかりだ。そうではないか。むしろ、常に我々を巡りややともすれば我々に襲い掛ろうとしている所の数知れない痛苦と心配とから離脱しようという事を希うべきだ。すべての悪しき雲のはらわれた後にこそ誠に『晴やかな平和、ゆるぎなき心の静けさがある。』のではあるまいか。", "絶えざる修養によって迷を去らねばならぬ。そしてもっとも正しい生活に入る事を思わねばならぬ。そうすれば不安や恐れが無くなるのであろう。間違がないという事より強い事はない。泰然として他の何物からも煩らわされるという事がなくなるであろう。", "それからまた、我々は高尚にならねばならぬ。滅び易き形や物に淡くなり、永く続くであろうところの心と美とは濃くなってゆく事が必要である。こういう風にして初めて限りもなく都合の良い友情とか善意とかいうものが広く成り立つのである。そうなれば、自分一個人だけではなく、我々の住んでいる社会全体がいかにも滑らかに滞りなく愉快なものとなるであろう。" ], [ "己れの自我が無いところに全実在が何でありましょう。", "たった『一日』しか願わない人間があったとしましたら……。", "そうです。二度と帰って来ない決心で進んで行くとします。――一ツの埒を破り、また他の埒を越え、こうして限りなく突撃し、拡大してゆくとします、そういう事をする性質をおのずから具えた者があったとしたらどうしましょう。封じる事を厳しくすればするほど、抑える事を重くすればするほど、いよいよ爆発するような事があったとしたら?", "みんなといっしょに居る事に堪えないような人があったとしたら、そしてその人はみんなの中に混り込んでいればいるほど悲しく淋しくなって来て、どうしてもそれに堪え得られないとしましたら……。", "崇き憤り!", "際涯なき自由!" ], [ "やはり医者がよかろうと思うのだ。とにかく、こうしてこれまでやって来たのだし、このままあとを絶やすのも惜しいと思ってね。それに、そうなれば私もいっしょにやる人ができてどんなに好都合だか知れやしないしね。", "は。", "あの子も、来年はもう十三歳になるんだ。あと二年で女学校へ入るだろうし、それから四年するともう卒業するのだ。月日の経つのはほんとに早いものさ。そういうている内についそんな時がやって来るのだ。", "は。" ], [ "その時には、またその時にする事があるでしょう。", "と、いうと?", "さあ。" ], [ "しかし、私共がまたどこかで新らしい先祖となって行ったら、それで同じことではありませんか。――私などの考ではこういう事はできるだけ自由な、どうでもいいような気持ちでいられるのが一番幸福だと思うんですがね。", "あゝ、厭だ。もう、そんな話しは止しにしよう。……そんな事を考えるとほんとに心細くなってしようがないから。……だから妾はいつもそう思っているんですよ。どうかして妾は誰よりも先きに死んでゆけばいいとね。……あとに一人ぼっちで残されたりしたら妾、ほんとにどうしよう。……" ], [ "俺というこの人間はいったい何なのだ。何をしているのだ。嘗つて何をしたか。そしてこれから先、何をしようとしているのか。……", "俺が今、この岩蔭に身を隠したとする、そうしたら誰がこの俺を探しに来る?……", "ここで今、俺がピストルかなんかで胸を貫いて死んだとする。そうすればどうなるというのだ。……房子が泣くであろう。母と父とが泣くであろう。それが何日続くか。……そしてそれはいったい、何の為めに泣くのか……", "いったい、この俺という存在に何の意味があるのだ。何を意味しているのだ。ほんとに、この俺という存在にどういう価値があるのだ。……全実在と俺とはどういう点で結びつけられているのだ。……俺でないところの大きな実在が、今、かくのごとく明らかに見えている。" ], [ "いゝえ、そんな事ってありません。それじゃ、警察署へ云ってやって大勢応援して貰えばいいでしょう。", "ところが、こんな事はこの村ばかりというのではないからね。どこもここも一帯にそうなんだから。", "それだからと云って、そんな……そんな、", "房子、そんなにお前のように心配したものでもないよ。家の者にはどんな事があっても手出しなんかしやしないのだから、召使いの者共にほんのちょいと調戯ってみるだけなのだよ。", "いゝえ、いゝえ、放って置くという法はありません。決して。……まったく許す事のできない悪い事です。それは泥棒よりも悪いんです。人殺しよりも悪うございます。そうですとも確かに。……人殺しよりも悪うございますとも。……世界中で一番悪るい事です。一人残らず縛り上げてしまうがいいのですわ。", "そう一図にお前のように云い初めたって……。" ] ]
底本:「日本短篇文学全集 第29巻」筑摩書房    1970(昭和45)年7月30日第1刷発行 初出:「早稲田文学」    1914(大正3)年7月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:kompass 校正:林 幸雄 2007年8月15日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045648", "作品名": "田舎医師の子", "作品名読み": "いなかいしのこ", "ソート用読み": "いなかいしのこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「早稲田文学」1914(大正3)年7月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-10-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/card45648.html", "人物ID": "001082", "姓": "相馬", "名": "泰三", "姓読み": "そうま", "名読み": "たいぞう", "姓読みソート用": "そうま", "名読みソート用": "たいそう", "姓ローマ字": "Soma", "名ローマ字": "Taizo", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1885-12-29", "没年月日": "1952-05-15", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本短篇文学全集 第29巻", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1970(昭和45)年7月30日", "入力に使用した版1": "1970(昭和45)年7月30日第1刷", "校正に使用した版1": "1970(昭和45)年7月30日第1刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "林幸雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/45648_ruby_27859.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-08-15T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/45648_27947.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-08-15T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "それに八十二だつて云や、年齢に不足はねえんだからの、まあ、目出度え方なんだ。", "ほんだてば。", "八十二でゐさしたつて、え?", "あ、さうだ、と。", "ほう、それにしちや、まあ、とんだ岩畳なもんだつたの! 仕事ぢや、何をやらしても若いもんと同じこんだつた。" ], [ "三途の川あたりだらうかなう?", "なんぼ足が早いつたつて、十万億土つていふから、さうは行かれめえてば。", "なあに、さうでねえと。瞬きしるかしねえうちに向ふへ行きつくもんだつてこんだ。", "そんな事だつたら、何で脚絆だ、草鞋だつて穿かせてやることがあらうば。", "七日七夜の間は、魂が、まだ家のまはりに止つてゐるもんだつてこんだよ。", "さうだかも知れねえ。", "どれが当つてゐるか、坊様にお尋ね申してみるが、いつちいゝ。" ], [ "爺さんな、わるくすると、地獄街道をどん〳〵行つてしまつたかも知れねえてば。", "なんしてや?", "極楽の道は人通りがすくねえんで草だらけだつてこんだからなう。", "呑気もんだから、そんなことに気がつかれめえも知れねえ。", "さうだてば、真直ぐに、ぶら〳〵と、いつもの鼻唄かなんかでの。", "爺さんの鼻唄か、はつはつはつは。", "ほつほつほ……。", "ばか云ふもんでねえ。おどけでも地獄へおちるなんて、かわいさうによ。……あゝあ……なむあみだぶつ、なむあみだぶつ。", "道を間違はつしやらねえやうに、せつせと鉦を叩けや!" ], [ "だつて、そんな話が出るたんびに、爺さんな、いつも云つてゐさしたつけよ。『極楽なんて真平だ。』つて。『年百年中、蓮のうてなとやらの上に、お行儀よくかしこまつて坐りこんでゐるなんて、俺がやうながさつ者にや、とても勤まるめえ。』つてよ。", "爺さんの云ひさうなこんだ。", "そして、云ふことが面白え、『俺、これで大した悪働いてゐねえから、どつちみち、大した苦患に遇ふこともあるめえ。それどころか、地獄にや、ほれ、でつけえ人煮る釜があるつてこんだから、俺がやうな薪割稼業は案外調法がられめえもんでもねえ。』ツてんだ。", "はゝゝ、そんなら、爺さんな、あの世へ行つてからも、薪割でおつ通さうツて考でゐさしたんだつたか。", "いや、さう云や、よう割らしたもんだつたなう!", "ほんにさ、この何十年が間つてもの、村中の薪つて薪、みんな、あの爺さん一人で割らしたんだからなう。", "それから、柴まるけるんだつて、それから、根つ子掘りだつて、みんな、まるで爺さん一人の受持ちみてえにして頼んでゐたもんでねえか。", "さう云や、俺、近いうちに、二三日も来て貰えてえと思つてゐたんだのに、思ひがけなく、ころつと逝かしつたんでなう、ほんに、はや!", "俺がとこでも、根つ子掘りの約束をして置いて呉れさしたんだつたのに、よ。" ], [ "なむあみだぶ、なむあみだぶ。", "いゝお天気で結構なこんだ。", "今度は珍しく永く続いたもんだ。今日で五日目かの?", "もう、雨は要らねえ、これから、照つただけが儲けだ。", "爺さんはいゝ時に死なしたもんだ。", "これこそ、ほんとに、爺さんの生涯の功徳といふもんだ。藁も薪もから〳〵に干てゐるから、さぞ、よう燃えさつしやるこつたらうてば。", "ならうことなら、俺も、こんな日に死にてえもんだ!", "はゝゝゝ、我家の婆さんが、何を云はつしやることやら。縁起でもねえ、……しかし、婆さんや、お迎が来たら、そんな、あとの心配なんかしねえで、いつでも心持よう行つてくらつしやい、や。どんな風雨の時だつて、俺、お前のこと半焼のまゝになんかして置かねえから、の。", "さうだとも、さうだとも。", "みんな、そんな話し、もう止めさつしやい。信じんが何よりだ。後生さへ願つてゐれば、それでいゝんだつてこんだ。……なむあみだぶ、なむあみだぶ。" ], [ "おどけ者の與平次爺さんが居なくなつたんで急に村が淋しくなるこんだらう。", "いつも、馬鹿ばつか云つて、みんなを笑はしてゐさしたつけが、ほんに、あんな頓智のいゝ人つてあつたもんでねえ。", "さう云や、先だつても、飛んだ可笑なことを云つてゐさしたつけよ。だしぬけに、『死なば今だ。』つて云はつしやるんだ。『どうして、え?』つて訊くと、真面目な顔で、M(村の名)の勇助――ほれ、この春、死んだ歌唄ひさ。――あれが、現今、閻魔の座に直つてゐるからだつてんだ。" ], [ "なあるほど、それで、そのまゝ、あの勇助奴が閻魔様つてわけだね。", "はゝゝゝ、これは面白えや。", "何だつて、え?", "はつはつは。", "ほつほつほ。" ], [ "それで、爺さんな、勇助と顔馴染だから、悪いやうには取計つてくれめえつてんだよ。それでも、もしかして、先方で白つぱくれてゐやがつたら、『やい、勇助!』つて、地獄中に響きわたるやうな大声で呶鳴つてやるんだつて云つて、自分でも可笑しがつて大笑ひしてゐさしたつけがよ。", "はゝゝゝ、勇助と與平次爺さんとでは、全く、はや、うめえ取組だ!" ] ]
底本:「現代日本文學大系 49 葛西善藏 嘉村礒多 相馬泰三 川崎長太郎 宮路嘉六 木山捷平 集」筑摩書房    1971(昭和48)年2月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版12刷発行 初出:「野の哄笑」    1922(大正11)年9月 入力:林 幸雄 校正:noriko saito 2010年2月18日作成 2011年10月25日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "050184", "作品名": "野の哄笑", "作品名読み": "ののこうしょう", "ソート用読み": "ののこうしよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「野の哄笑」1922(大正11)年9月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-03-31T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/card50184.html", "人物ID": "001082", "姓": "相馬", "名": "泰三", "姓読み": "そうま", "名読み": "たいぞう", "姓読みソート用": "そうま", "名読みソート用": "たいそう", "姓ローマ字": "Soma", "名ローマ字": "Taizo", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1885-12-29", "没年月日": "1952-05-15", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代日本文學大系 49 葛西善藏 嘉村礒多 相馬泰三 川崎長太郎 宮路嘉六 木山捷平 集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1973(昭和48)年2月5日", "入力に使用した版1": "1985(昭和60)年11月10日初版第12刷", "校正に使用した版1": "1985(昭和60)年11月10日初版第12刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/50184_ruby_37473.zip", "テキストファイル最終更新日": "2011-10-25T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/50184_38304.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2011-10-25T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "新聞だと? 配達夫か", "新聞記者です" ], [ "昨日の市内版へ、もう少しで君の記事が載るところだったよ。すんでのことでさ", "新聞配達夫水に溺るってね" ], [ "何かうまいことでも見つかったかね", "それどころではない、僕は社をやめてしまったよ", "え? どうして?", "あんまりけちなことばかりで、退屈で退屈で我慢が出来なくなってしまった", "それで、どうしようというのだ", "どうと言って別に当てなんかあるものか。――まあ、二ッちも三ッちもならなくなるまではこうしているさ。その先はどうにかなる。口入れ屋へでも何でも出かけるんだ" ] ]
底本:「日本の文学 78 名作集(二)」中央公論社    1970(昭和45)年8月5日初版発行 ※「日本文學全集 70 名作集(二)大正篇」(新潮社、1964)を参考に、誤植が疑われる以下の箇所を直しました。 ○つくつぐあたりを見廻した。→つくづくあたりを見廻した。 ○わかわかする気忙《きぜわ》しいような→せかせかする気忙《きぜわ》しいような ※「袖《そで》ふれ合うも多少の縁」は底本のままとしました。(上記異本も同様。「多少」は一般には「多生」または「他生」) ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:土屋隆 校正:林幸雄 2004年5月18日作成 2008年3月9日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "042289", "作品名": "六月", "作品名読み": "ろくがつ", "ソート用読み": "ろくかつ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「早稲田文学」1913(大正2)年12月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-06-16T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/card42289.html", "人物ID": "001082", "姓": "相馬", "名": "泰三", "姓読み": "そうま", "名読み": "たいぞう", "姓読みソート用": "そうま", "名読みソート用": "たいそう", "姓ローマ字": "Soma", "名ローマ字": "Taizo", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1885-12-29", "没年月日": "1952-05-15", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の文学 78 名作集(二)", "底本出版社名1": "中央公論社", "底本初版発行年1": "1970(昭和45)年8月5日", "入力に使用した版1": "1970(昭和45)年8月5日初版", "校正に使用した版1": "1979(昭和54)年3月15日6版", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "土屋隆", "校正者": "林幸雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/42289_ruby_15591.zip", "テキストファイル最終更新日": "2008-03-09T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001082/files/42289_15660.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2008-03-09T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "宇宙が丸いものか四角いものか知ってる者はまだ誰もありはしない。だから人間は嘘をついても大丈夫だ。博士だとか教授だとかいふ者はみんな嘘をついておまんまにありついてゐるのだね。ニュートンだのアインシュタインだのッて、引力だとか相対性原理だのッて、小むづかしい名前をくッつけて理窟をこねると、それでオカマをおこしちゃふんだからね。何もアインシュタインを頼まなくッたッて、そんな事は朝飯前から分り切ってらアね。家賃がたまるとたちまち悶着が起きる。追立だとか執行だとかね、これ即ち相対性だからサ、絶対なら何も何年家賃を溜めたってどこからも苦情がくるわけはないんだからね", "ハハハハハ" ], [ "日本にだってカーネギーが一人ぐらい出てきたっていいんだ。実はワシがなるつもりだったんだが(聴衆笑ふ)。イヤ、ほんとだ、ワシがある発明をしたんだね、するとワシには金がなくてそれをやる訳にゆかない。だから一緒にやる人間が出てきた。ところがどうだね、大当たり大成功だね。俺にはちっとばかり金をくれたきりで、その男はもう毎日自動車で、ツラッター、ツラッター(身振をする)と走らしてる。発明した当人はコンナ始末でサ。ウン、けどもワシは腹が大きいから、そんなこと屁とも思はないよ。自動車飛ばすのが嬉しい奴には、飛ばさしておくさ", "フフフフフ" ], [ "ほんとだよ、乞食だッて三菱だッて変りゃアないんだよ。寝て、起きて、飯を食って、女を抱いて、酒を飲んで、何をするッたッて、それ以上のことができるわけのもんぢゃないからねエ", "乞食にゃア女ア抱けねえだろ" ], [ "冗談いっちゃアいけないよ。そんなことはナンでもない話だ。ただ俺はソンナことをしたいとは思はないだけの話だが、みんな乞食だって嬶もあれば、妾を持ってる者もあるよ。この浅草にだって、杖をひッぱたきながら浪花節を語って、何万両貯めてる親分もゐるんだからネ。君らは何んでも社会的事象の表面ばかりしか見ないから駄目なんだよ、ウン……乞食ッたってこれは立派な職業だよ", "ハハハハハハハ", "そんなに喜んぢゃいけない、笑ひ事じゃアない。みんなつまらない事なら喜んでるから困るねえ。小説だの講談だのでも、樋口苦安だの、三日目落吉なンて、飴に黒砂糖なすったやうな、ベトベトねつッこいのを嬉しがってるんだからねぇ。世の中の行進は、科学的に小細工を積み重ねてゆくんだから、みんな科学者にならなければ駄目だ。でなければ引ッ込んで瞑想家になるか、浅草の乞食になるかだよ", "よせやい" ] ]
底本:「日本の名随筆85 貧」作品社    1989(平成元)年11月25日第1刷発行    1991(平成3)年9月1日第3刷発行 底本の親本:「添田唖蝉坊・知道著作集2 浅草底流記」刀水書房    1982(昭和57)年8月25日第1刷発行 ※疑問箇所の確認にあたっては、底本の親本を参照しました。 ※拗促音を小書きする扱いは、底本通りです。 入力:渡邉つよし 校正:門田裕志 2001年9月20日公開 2006年5月19日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "003222", "作品名": "乞はない乞食", "作品名読み": "こわないこじき", "ソート用読み": "こわないこしき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-09-20T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000368/card3222.html", "人物ID": "000368", "姓": "添田", "名": "唖蝉坊", "姓読み": "そえだ", "名読み": "あぜんぼう", "姓読みソート用": "そえた", "名読みソート用": "あせんほう", "姓ローマ字": "Soeda", "名ローマ字": "Azenbo", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1872-12-25", "没年月日": "1944-02-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆85 貧", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1989(平成元)年11月25日", "入力に使用した版1": "1991(平成3)年9月1日第3刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "添田唖蝉坊・知道著作集2 浅草底流記", "底本の親本出版社名1": "刀水書房", "底本の親本初版発行年1": "1982(昭和57)年8月25日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "渡邉つよし", "校正者": "門田裕志", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000368/files/3222_ruby_3894.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-05-20T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000368/files/3222_16153.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-05-20T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "主エホバいう、《われは生く、汝等ふたたびイスラエルにおいて、この諺を用うることなかるべし。》", "夫れ、すべての魂は我に属す、父の魂も子の魂も我に属するなり、罪を犯せる魂は死ぬべし。" ], [ "天地の微妙な力の影響はいかに広大で深遠なものだろう!", "われわれはそれを認めようと欲するが、われわれはそれを見ない。それを聞こうと欲するが聞かない。事物の本質と合体していてそれと離すことはできない。", "この力は、人をして宇宙のうちにあってその心を浄めて神聖化し、晴れ着にあらためてその祖先に犠牲と供え物とをささげしめる。それは微妙な智慧の大海である。それらは到るところに、われわれの上に左に右にある。それらはあらゆる側においてわれわれを取りかこむ。" ] ]
底本:「森の生活」岩波文庫、岩波書店    1979(昭和54)年5月16日改版第1刷発行    1994(平成6)年11月15日第30刷発行 ※「註文」と「注文」、「痩」と「瘠」の混在は、底本通りです。 ※ページを参照している箇所は、該当する見出しを記載しました。 入力:Cavediver 校正:砂場清隆 2019年6月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "054189", "作品名": "森の生活――ウォールデン――", "作品名読み": "もりのせいかつ", "ソート用読み": "もりのせいかつ", "副題": "02 森の生活――ウォールデン――", "副題読み": "02 もりのせいかつ――ウォールデン――", "原題": "WALDEN, OR LIFE IN THE WOODS", "初出": "", "分類番号": "NDC 934", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-07-12T00:00:00", "最終更新日": "2019-06-28T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001209/card54189.html", "人物ID": "001209", "姓": "ソロー", "名": "ヘンリー・デイビッド", "姓読み": "ソロー", "名読み": "ヘンリー・デイビッド", "姓読みソート用": "そろお", "名読みソート用": "へんりいていひつと", "姓ローマ字": "Thoreau", "名ローマ字": "Henry David", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1817-07-12", "没年月日": "1862-05-06", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "森の生活", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1979(昭和54)年5月16日改版", "入力に使用した版1": "1994(平成6)年11月15日第30刷", "校正に使用した版1": "1994(平成6)年11月15日第30刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "Cavediver", "校正者": "砂場清隆", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001209/files/54189_ruby_68437.zip", "テキストファイル最終更新日": "2019-06-28T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001209/files/54189_68486.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2019-06-28T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "人をさがしているのじゃ", "人って、そこらあたりをたくさん通っているじゃアありませんか" ] ]
底本:「般若心経講義」角川文庫、角川書店    1952(昭和27)年9月30日初版発行    1967(昭和42)年5月30日改41版発行    1973(昭和48)年3月30日改版12版発行 ※校正には「角川文庫」(1979(昭和54)年7月30日改版22版)を使用しました。 ※底本巻末の著者による「注」、「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」、「同 和訳」は省略しました。 入力:多田克也 校正:大野晋、Juki 2006年9月15日作成 2016年5月10日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001543", "作品名": "般若心経講義", "作品名読み": "はんにゃしんぎょうこうぎ", "ソート用読み": "はんにやしんきようこうき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 181 183", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-11T00:00:00", "最終更新日": "2016-05-10T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000269/card1543.html", "人物ID": "000269", "姓": "高神", "名": "覚昇", "姓読み": "たかがみ", "名読み": "かくしょう", "姓読みソート用": "たかかみ", "名読みソート用": "かくしよう", "姓ローマ字": "Takagami", "名ローマ字": "Kakusho", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1894", "没年月日": "1948", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "般若心経講義", "底本出版社名1": "角川文庫、角川書店", "底本初版発行年1": "1952(昭和27)年9月30日", "入力に使用した版1": "1967(昭和42)年5月30日改41版、1973(昭和48)年3月30日改版12版", "校正に使用した版1": "1979(昭和54)年7月30日改版22版", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "多田克也", "校正者": "大野晋、Juki", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000269/files/1543_ruby_23872.zip", "テキストファイル最終更新日": "2016-05-10T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000269/files/1543_24303.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2016-05-10T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "再発ですか", "ええ、故郷へかえって山など駈け歩いたものですから" ], [ "水虫のようですね", "いいえ、これは私がたくさんお裁縫したからですの、針でちょっと刺したところが、こんなになって癒りませんの", "ふむ、それは打棄とかないで、すぐ手当をしてもらいなさい" ], [ "もうだいぶお家から見えませんね", "ええ、私も毎日毎日私の窓から見える野道の方を見詰めていますの、長兄の白麻の洋服はどんな遠くからでも見わけられますもの", "もう、そう云っている間に来られるかもしれませんよ", "でもたいてい、あなたのおじさまの姿が歩いてこられるんですもの", "もう見分けられますの", "ええ豆粒みたい遠くからでも。おじさまはご親切ね、私の掌の傷をあんなに心配したりして" ], [ "どうも見当がつきませんよ", "では双葉さんは" ], [ "君の眼はどだい節穴だよ", "そうかい", "ちと確りしろ。ところで双葉さんは大袈裟だなァ、ちとヒステリカルじゃ" ], [ "今にとよ子さんも達者になれば、いくらでもお友達はできますよ", "そうでしょうか" ], [ "え? どうしたのさ。病院に入ってこうしてお医者や看護婦さんにお世話になっていて、何が不足? いったい附添さんが要るほど悪くなったと云うの", "いいえ、私は知らないの。病院の方で定めてそう通知したものとみえるわ" ], [ "なぜ黙っているの。相変らず強情ね。それなら帰りますよ", "ごめんなさい嫂さん。矢張り私は今苦しいんだもの", "え? 苦しいんだって。そんなに動けなくなっているの", "動くとせつないの。だから病院と相談してから帰って下さいな" ], [ "………", "いずれ次兄さんかおたきさんにもこっちへ来てもらうから、それまで待っとくれ、ね? 待つでしょう?" ], [ "この前はじめてお前が病気を出した時、次兄さんがどんなに心配したかおぼえているだろうね。六円五十銭もするソマトーゼを服ませたり、一切五銭もする鯛のさしみをたべさせたり、お前だって忘れはすまい。円座が欲しいと云えばそれも買い、良い布団だってこの次兄さんの方で受持って作ってやったろう。どんな物入りだって構わずに、何んでもしてやったではないか。それだのになんてまあ不養生したもんだ。こんなに悪くなっては情けないではないか", "………", "お前が丈夫になって、いい娘になってくれたと思って、あの頃は次兄さんは実にうれしかった。だからアパートの費用だってどんなに出し甲斐があったか知れない。癒ってくれたればこそのたのしみであったというものだ" ], [ "何しろ兄なぞは故郷を出てから、しばらくはあの娘の生れたことも知らなかったくらいで、私なぞもごく幼さい時から別れていましたんで、妻なぞは、あの娘が母と一緒に上京してきた時になって、はじめてこんな妹があったのかと、驚いたくらいでしてね……", "折角あんなにおおきくおなりになったお妹さんでしたに御病気なすって、ほんとにお察しいたします", "これからというたのしみもありましたがなア" ], [ "何分よろしくお願いします。私も只今重要な技術に携っていまして、人を督励しているような立場にもいますので、なかなか見舞いにも来られませんが", "ほんとに病人がでますと、たいへんですね。私たちにもおぼえのあることで、そこは充分お察しいたします", "そう有仰っていただくと、思うようにしてやれないで恥かしくなりますが、何分年のゆかない者のことなんで、いろいろ教えてやって下さいまし" ], [ "ね、何か欲しいものはないの、次兄さんが直ぐ表へ出て買ってきてあげるよ", "………", "お云い、云ってごらん。え? なんでも遠慮なくお云い" ], [ "それなら下痢止めの高価い良い薬が、ちゃんと買ってやってあるではないか、何故あれを使わない", "あれと同じ炭末なら、病院でも服んでいるの" ], [ "置かないでしょ、え?", "………", "置くの、置かないの、なぜ黙っているの", "………" ] ]
底本:「鷹野つぎ――人と文学」銀河書房    1983(昭和58)年7月1日発行 底本の親本:「限りなき美」立誠社    1943(昭和18)年11月発行 入力:林 幸雄 校正:土屋 隆 2002年5月5日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "003219", "作品名": "草藪", "作品名読み": "くさやぶ", "ソート用読み": "くさやふ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2002-05-23T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000116/card3219.html", "人物ID": "000116", "姓": "鷹野", "名": "つぎ", "姓読み": "たかの", "名読み": "つぎ", "姓読みソート用": "たかの", "名読みソート用": "つき", "姓ローマ字": "Takano", "名ローマ字": "Tsugi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1890-08-15", "没年月日": "1943-03-19", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "鷹野つぎ――人と文学", "底本出版社名1": "銀河書房", "底本初版発行年1": "1983(昭和58)年7月1日", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "限りなき美", "底本の親本出版社名1": "立誠社", "底本の親本初版発行年1": "1943(昭和18)年11月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "土屋隆", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000116/files/3219_ruby.zip", "テキストファイル最終更新日": "2002-05-23T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000116/files/3219_6489.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2002-08-26T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "ぼんやりしているのが、とてもたのしくてね", "いろいろお悲しみにならないが、よろしうございます。亡くなった坊やのおためにも" ], [ "小谷さんは九州のお生れでしたね、海岸ですか", "長崎ですの" ], [ "お家をはなれて、こういうお仕事を持つには、あなたにもお考えがあったんでしょうねえ", "私はすべてを主に捧げておりますから、家も両親も兄弟も、もう私に戻れとは申しません。私の堅い決心は皆の心をも動かしましたの。もう私は病者の友となり、主に仕える歓びでいっぱいでございます" ], [ "小谷さんは信者なんでねえ", "たいへん良いことじゃありませんか", "そうですよ、お母さんも感心しているんだけれど、あまりその方面の話はまだしていないの。どうもこのせつぼんやりしていたくてねえ", "人間の微力という自覚からも信仰にはいれると思うけど", "小谷さんのは、初めから献身的なんですよ", "いや、ほかの人の場合では" ], [ "小谷さん、私がひとりになって了うとこれから毎日窓ばかり見て過すんですよ", "よく退屈なさいませんこと。とにもかくにも永遠を語るものには、最も慰められます" ] ]
底本:「鷹野つぎ――人と文学」銀河書房    1983(昭和58)年7月1日発行 底本の親本:「限りなき美」立誠社    1943(昭和18)年11月発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:林 幸雄 校正:土屋 隆 2002年5月5日作成 2011年4月19日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "003218", "作品名": "窓", "作品名読み": "まど", "ソート用読み": "まと", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2002-05-23T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000116/card3218.html", "人物ID": "000116", "姓": "鷹野", "名": "つぎ", "姓読み": "たかの", "名読み": "つぎ", "姓読みソート用": "たかの", "名読みソート用": "つき", "姓ローマ字": "Takano", "名ローマ字": "Tsugi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1890-08-15", "没年月日": "1943-03-19", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "鷹野つぎ――人と文学", "底本出版社名1": "銀河書房", "底本初版発行年1": "1983(昭和58)年7月1日", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "限りなき美", "底本の親本出版社名1": "立誠社", "底本の親本初版発行年1": "1943(昭和18)年11月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "林幸雄", "校正者": "土屋隆", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000116/files/3218_ruby_6319.zip", "テキストファイル最終更新日": "2011-04-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000116/files/3218_6490.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2011-04-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "2" }
[ [ "此辺はなア菜種となア梨子とを沢山に作りまつせ。へー燈心も沢山に作ります。燈心はナー、あれを一遍よう乾かして、其から叩いてナー、それから又水に漬けて、其から長い錐のやうなもので突いて出しやはります。其から又畳の表にもしやはりまつせ。長いのから燈心を取りやはつて短かいのは大概畳の表にしやはります", "畳の表には藺をするのぢやないか。燈心草も畳の表になるのかい", "いやな旦那はん。燈心草といふのが藺の事つたすがな" ], [ "あこが三輪のお山で。初瀬はあのお山の向うわきになつてます。旦那はんまだ初瀬に行きやはつた事おまへんか", "いやちつとも知らないのだ。さうかあれが三輪か。道理で大変に樹が茂つてゐるね。それから吉野は", "吉野だつか" ], [ "あの高い山は知つとゐやすやろ", "あれか、あれが金剛山ぢやないか。あれは奈良からも見えてゐたから知つてる" ], [ "お前大変よく知つて居るのね。どうしてそんなによく知つて居るの。皆な行つて見たのかい", "へー、皆んな行きました" ], [ "さう、誰と行つたの、お父サンと", "いゝえ", "お客さんと", "いゝえ。そんな事聞きやはらいでもよろしまんがナア" ], [ "旦那はん、あんたはんお出でやすのなら連れていておくれやすいな、ホヽヽヽ私見たいなものはいやだすやろ", "いやでも無いが、こはいナ", "なぜだす", "なぜでも", "なぜだす", "こはいぢやないか", "しんきくさ。なぜだすいな、いひなはらんかいな", "いゝ人にでも見つからうもんなら大変ぢやないか", "あんたの", "お前のサ", "ホヽヽ、馬鹿におしやす。そんなものがあるやうならナー。……無い事もおへんけどナー。……ホヽヽヽヽ、御免やすえ。……アヽ電報を忘れてゐた。お風呂が沸いたらすぐ知らせまつせ" ], [ "小僧サン、塔に登りたいものですが……", "塔にお登りやすの、きたのうおまつせ" ], [ "欄干のところで結構です", "さうだつか。露盤のとこに出ると畝火の方がよく見えまんがなア" ], [ "あの坊さん君知つてるのですか", "あれなあ、私の兄弟子の了然や。学問も出来るし、和尚サンにもよく仕へるし、おとなしい男やけれど、思ひきりがわるい男でナー。あのお道といふ女の方がよつぽど男まさりだつせ。あのお道はナア、親にも孝行で、機もよう織つて、気立もしつかりした女でナア、何でも了然が岡寺に居つた時分にナア、下市とか上市とかで茶屋酒を飲んだ事のある時分惚れ合つてナア、それから了然はこちらに移る、お道はうちへ帰るしゝてナア、今でもあんなことして泣いたり笑つたりしてますのや。ハヽヽヽ" ], [ "旦那はん毛布なんかおかぶりやして、寒むおまつか", "少しうたゝねをしたので寒い。それに今晩は馬鹿に静かだねえ。お道さんは来ないのかい", "今晩は来やはりまへん。そら今筬の音がしてますやろ、あれがお道はんだすがな", "さうかあれがお道さんか" ], [ "二処でしてゐるね。其に音が違ふぢやないか。お道さんの方はどちらだい", "そらあの音の高い冴え〳〵した方な、あれがお道さんのだす", "どうしてあんなに違ふの。機が違ふの", "機は同じ事つたすけれど、筬が違ひます。音のよろしいのを好く人は筬を別段に吟味しますのや" ], [ "あれでナア、筬の音もよろしいし唄が上手やとナア、よつぽど草臥れが違ひますといナ", "あんな唄をうたふのを見るとお道サンもなか〳〵苦労してゐるね", "ありや旦那はん此辺の流行唄だすがナ、織子といふものはナア、男でも通るのを見るとすぐ悪口の唄をうたうたりナア、そやないと惚れたとかはれたとかいふ唄ばつかりだす" ], [ "どこへ行きなはる", "高野へお参り", "ハヽア高野へ御参詣か。夜さり行きかけたらほんまにくせや", "お父つはんはもう寝なはつたか", "へー休みました" ] ]
底本:「近代浪漫派文庫 7 正岡子規 高浜虚子」新学社    2006(平成18)年9月11日第1刷発行 入力:門田裕志 校正:荒木恵一 2014年4月10日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "049627", "作品名": "斑鳩物語", "作品名読み": "いかるがものがたり", "ソート用読み": "いかるかものかたり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-05-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card49627.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "近代浪漫派文庫 7 正岡子規 高浜虚子", "底本出版社名1": "新学社", "底本初版発行年1": "2006(平成18)年9月11日第1刷", "入力に使用した版1": "2006(平成18)年9月11日第1刷", "校正に使用した版1": "2006(平成18)年9月11日第1刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "荒木恵一", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/49627_ruby_53297.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-04-10T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/49627_53341.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-04-10T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "少し熱い湯を出しますがよろしいでせうか。", "よろしうございます。" ], [ "少し熱くし過ぎましたか知ら?", "いえ、結構です。" ], [ "私は一軒家を借りて家族と一緒に住まつてゐます。", "今橋を渡つてお出のやうでしたが、川向うにお住居ですか。", "さうです。あの水車の向う側の家を借りてゐます。" ] ]
底本:「近代浪漫派文庫 7 正岡子規 高浜虚子」新学社    2006(平成18)年9月11日第1刷発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:門田裕志 校正:高瀬竜一 2017年3月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "049628", "作品名": "落葉降る下にて", "作品名読み": "おちばふるしたにて", "ソート用読み": "おちはふるしたにて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-05-27T00:00:00", "最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card49628.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "近代浪漫派文庫 7 正岡子規 高浜虚子", "底本出版社名1": "新学社", "底本初版発行年1": "2006(平成18)年9月11日第1刷", "入力に使用した版1": "2006(平成18)年9月11日第1刷", "校正に使用した版1": "2006(平成18)年9月11日第1刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "高瀬竜一", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/49628_ruby_61326.zip", "テキストファイル最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/49628_61369.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "喜安璡太郎はお前知っといじょうが。あの男から講演を頼まれたので今それを遣って来たところよ。", "そうかな。何を講演おしたのぞ。" ], [ "それではお前と私とは目的が違う。今まで私のようにおなりとお前を責めたのが私の誤りであった。私はお前を自分の後継者として強うることは今日限り止める。つまり私は今後お前に対する忠告の権利も義務もないものになったのである。", "升さんの好意に背くことは忍びん事であるけれども、自分の性行を曲げることは私には出来ない。つまり升さんの忠告を容れてこれを実行する勇気は私にはないのである。" ] ]
底本:「回想 子規・漱石」岩波文庫、岩波書店    2002(平成14)年8月20日第1刷発行    2006(平成18)年9月5日第5刷発行 底本の親本:「子規居士と余」日月社    1915(大正4)年6月25日発行 初出:一~四「ホトトギス」1911(明治44)年12月号~1912(明治45)年3月号    五~六「ホトトギス」1912(大正元)年5月号~6月号    七「ホトトギス」1912(大正元)年8月号    八「ホトトギス」1912(大正元)年10月号    九「ホトトギス」1913(大正2)年1月号    十~十一「ホトトギス」1914(大正3)年12月号    十二~十四「ホトトギス」1915(大正4)年1月号~3月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※表題は底本では、「子規居士《しきこじ》と余」となっています。 ※十~十一の初出時の表題は「子規居士追懐談」です。 入力:門田裕志 校正:仙酔ゑびす 2009年12月29日作成 2017年6月2日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047740", "作品名": "子規居士と余", "作品名読み": "しきこじとよ", "ソート用読み": "しきこしとよ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "一~四「ホトトギス」1911(明治44)年12月号~1912(明治45)年3月号<br>五~六「ホトトギス」1912(大正元)年5月号~6月号<br>七「ホトトギス」1912(大正元)年8月号<br>八「ホトトギス」1912(大正元)年10月号<br>九「ホトトギス」1913(大正2)年1月号<br>十~十一「ホトトギス」1914(大正3)年12月号<br>十二~十四「ホトトギス」1915(大正4)年1月号~3月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2017-06-02T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card47740.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "回想 子規・漱石", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "2002(平成14)年8月20日", "入力に使用した版1": "2006(平成18)年9月5日第5刷", "校正に使用した版1": "2008(平成20)年1月10日第6刷", "底本の親本名1": "子規居士と余", "底本の親本出版社名1": "日月社", "底本の親本初版発行年1": "1915(大正4)年6月25日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/47740_ruby_37633.zip", "テキストファイル最終更新日": "2017-06-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/47740_37658.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-06-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "西洋に行くとそんなものが必要なのですか。", "貴婦人と握手などする時には膏手では困りますからね。" ] ]
底本:「回想 子規・漱石」岩波文庫、岩波書店    2002(平成14)年8月20日第1刷発行    2006(平成18)年9月5日第5刷発行 底本の親本:「漱石氏と私」アルス    1918(大正7)年1月13日 初出:「ホトトギス」    1917(大正6)年2~6月号、9月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※〔〕内の編集者による注記は省略しました。 入力:門田裕志 校正:仙酔ゑびす 2009年12月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047741", "作品名": "漱石氏と私", "作品名読み": "そうせきしとわたし", "ソート用読み": "そうせきしとわたし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「ホトトギス」1917(大正6)年2~6月号、9月号", "分類番号": "NDC 910", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-01-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card47741.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "回想 子規・漱石", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "2002(平成14)年8月20日", "入力に使用した版1": "2006(平成18)年9月5日第5刷", "校正に使用した版1": "2008(平成20)年1月10日第6刷", "底本の親本名1": "漱石氏と私", "底本の親本出版社名1": "アルス", "底本の親本初版発行年1": "1918(大正7)年1月13日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/47741_ruby_37653.zip", "テキストファイル最終更新日": "2010-01-01T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/47741_37678.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2010-01-01T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "そりや幾らでもあるものでせう。又極親切な或下宿屋の女將を私知つてゐますから", "さうか、そりやあ何よりぢや。お前の學問の邪魔をしてはすまぬが、これからいろ〳〵世話にならにやならぬ" ], [ "腹膜炎を併發したやうですな。腸出血をやりましてね。それに心臟が非常に弱つてゐるから餘程氣を附けないと", "それでは昨夜から腹が痛むといふのは腹膜炎の爲めですか" ] ]
底本:「俳諧師・續俳諧師」岩波文庫、岩波書店    1952(昭和27)年8月25日第1刷発行 初出:「國民新聞」    1909(明治42)年1月~6月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:青空文庫 校正:酒井和郎 2016年3月4日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "051369", "作品名": "続俳諧師", "作品名読み": "ぞくはいかいし", "ソート用読み": "そくはいかいし", "副題": "――文太郎の死――", "副題読み": "ぶんたろうのし", "原題": "", "初出": "「國民新聞」1909(明治42)年1月~6月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2016-05-14T00:00:00", "最終更新日": "2016-03-04T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card51369.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "俳諧師・續俳諧師", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1952(昭和27)年8月25日", "入力に使用した版1": "1952(昭和27)年8月25日第1刷", "校正に使用した版1": "2010(平成22)年2月23日第3刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "青空文庫", "校正者": "酒井和郎", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/51369_ruby_58785.zip", "テキストファイル最終更新日": "2016-03-04T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/51369_58828.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2016-03-04T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "もう東風が吹くね。", "さようでございます。もうこのあんばいではすぐ暖かになります。" ] ]
底本:「俳句とはどんなものか」角川文庫、角川学芸出版    2009(平成21)年11月25日初版発行 底本の親本:「俳句の作りやう」実業之日本社    1952(昭和27)年4月10日改版初版発行 初出:「ホトトギス」    1927(大正2)年5~10月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年3月7日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "055509", "作品名": "俳句とはどんなものか", "作品名読み": "はいくとはどんなものか", "ソート用読み": "はいくとはとんなものか", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「ホトトギス」1927(大正2)年5~10月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-04-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card55509.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "俳句とはどんなものか", "底本出版社名1": "角川文庫、角川学芸出版", "底本初版発行年1": "2009(平成21)年 11月25日", "入力に使用した版1": "2009(平成21)年 11月25日初版", "校正に使用した版1": "2010(平成22)年 5月5日再版", "底本の親本名1": "俳句の作りやう", "底本の親本出版社名1": "実業之日本社", "底本の親本初版発行年1": "1952(昭和27)年4月10日改版", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/55509_ruby_53142.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-03-07T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/55509_53180.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-03-07T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "死というものは分らないけれども、人が死んでしまって、無に帰してしまうとは考えない。仮りに宇宙が生きているとすると、どこまでもその宇宙の一分子となって残る、という事だけは考えられる。分子といったところで形のあるものではなく一つの精力となって残る。それがどんなものになるのか分らないがとにかく一つの精力となって残る。私はそんなことをただぼんやりと考えておる。", "生死の問題なんか近代思想ではないでしょうね。", "そんな事は考えないでしょう。実際主義ですから。" ], [ "お寒うございます。", "よい天気でございます。" ] ]
底本:「俳句への道」岩波文庫、岩波書店    1997(平成9)年1月16日第1刷発行 底本の親本:「俳句への道」岩波書店    1955(昭和30)年1月20日発行 初出:俳句への道「玉藻」    1952(昭和27)年6月~9月、1954(昭和29)年9月    客観写生(客観写生―主観―客観描写)「玉藻」    1952(昭和27)年1月    花鳥諷詠「玉藻」    1952(昭和27)年2月    新人を恐れず「玉藻」    1952(昭和27)年3月    客観写生(再)「玉藻」    1952(昭和27)年4月    最も新を欲している「玉藻」    1952(昭和27)年5月    いずれも宇宙の現れの一つ「玉藻」    1952(昭和27)年7月    他の文芸と俳句「玉藻」    1952(昭和27)年8月    伝統的なもの「玉藻」    1952(昭和27)年9月    雑感(一)「玉藻」    1952(昭和27)年10月    雑感(二)「玉藻」    1952(昭和27)年11月    私の標語「玉藻」    1952(昭和27)年12月    極楽の文学「玉藻」    1953(昭和28)年1月    客観写生(又)「玉藻」    1953(昭和28)年2月    理論は実行のあと「玉藻」    1953(昭和28)年3月    俳諧九品仏「玉藻」    1953(昭和28)年4月    客観描写「玉藻」    1953(昭和28)年5月    客観写生と主観描写――立子へ――「玉藻」    1953(昭和28)年6月    立子の句(節録数句)「玉藻」    1954(昭和29)年1月    雑感(三)「玉藻」    1953(昭和28)年7月    笹子会諸君「玉藻」    1953(昭和28)年11月    地獄の裏づけ「玉藻」    1953(昭和28)年12月    諷詠「玉藻」    1954(昭和29)年1月    慧眼の士のみ「玉藻」    1954(昭和29)年2月    歌を忘れたカナリヤ「玉藻」    1954(昭和29)年3月    俳人の交遊「玉藻」    1954(昭和29)年4月    求道ということ「玉藻」    1954(昭和29)年5月    真ということ「玉藻」    1954(昭和29)年7月    難解の句「玉藻」    1954(昭和29)年8月    俳話小話(一)「ホトトギス」    1948(昭和23)年7月    俳話小話(二)「ホトトギス」    1948(昭和23)年9月    俳話小話(三)「ホトトギス」    1949(昭和24)年7月    俳話小話(四)「ホトトギス」    1949(昭和24)年9月    村岡籠月君に答う「玉藻」    1954(昭和29)年10月    花鳥諷詠論に誇りを持つ「玉藻」    1954(昭和29)年10月    『青』への言葉「青」    1954(昭和29)年10月    北海道の俳人へ言伝(一節)「玉藻」    1954(昭和29)年11月 ※〔〕付きの編集部による補足は省きました。 ※「研究座談会」は省きました。 入力:kompass 校正:仙酔ゑびす 2014年2月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "055609", "作品名": "俳句への道", "作品名読み": "はいくへのみち", "ソート用読み": "はいくへのみち", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-03-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card55609.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "俳句への道", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1997(平成9)年1月16日", "入力に使用した版1": "1997(平成9)年1月16日第1刷", "校正に使用した版1": "2009(平成21)年1月26日第14版", "底本の親本名1": "俳句への道", "底本の親本出版社名1": "岩波書店", "底本の親本初版発行年1": "1955(昭和30)年1月20日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/55609_ruby_53015.zip", "テキストファイル最終更新日": "2014-02-27T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/55609_53062.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-02-27T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "小鳥が鳴いているようですが、あれは何鳥ですか", "ひわです。他の小鳥もおりますがひわが一番多うございます" ], [ "ほととぎすも鳴きますか", "鳴きます" ] ]
底本:「日本八景 八大家執筆」平凡社ライブラリー、平凡社    2005(平成17)年3月10日初版第1刷 底本の親本:「日本八景―十六大家執筆」大阪毎日新聞社・東京日日新聞社    1928(昭和3)年8月15日再版 ※「趣」と「趣き」、「吾《わ》が」と「わが」、「新らしく」と「新しく」の混在は、底本通りです。 入力:岡村和彦 校正:sogo 2018年3月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "057110", "作品名": "別府温泉", "作品名読み": "べっぷおんせん", "ソート用読み": "へつふおんせん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 915", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2018-04-08T00:00:00", "最終更新日": "2018-03-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card57110.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本八景 八大家執筆", "底本出版社名1": "平凡社ライブラリー、平凡社", "底本初版発行年1": "2005(平成17)年3月10日", "入力に使用した版1": "2005(平成17)年3月10日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2005(平成17)年3月10日初版第1刷", "底本の親本名1": "日本八景―十六大家執筆", "底本の親本出版社名1": "大阪毎日新聞社、東京日日新聞社", "底本の親本初版発行年1": "1928(昭和3)年8月15日再版", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "岡村和彦", "校正者": "sogo", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/57110_ruby_64296.zip", "テキストファイル最終更新日": "2018-03-26T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/57110_64345.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2018-03-26T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "いつ上京したのです。", "昨日でした。すぐ横浜に行って又引返して来たのです。", "いつ出帆するのです。", "二十三日です。" ], [ "何日かかります。", "五十六、七日かかるそうです。", "それ位で行けるのですか。", "喜望峰を廻って行くとその位だそうです。" ] ]
底本:「大東京繁昌記」毎日新聞社    1999(平成11)年5月15日 初出:「東京日日新聞」    1927(昭和2)年3月15日~31日 入力:門田裕志 校正:仙酔ゑびす 2009年12月4日作成 2013年8月2日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047742", "作品名": "丸の内", "作品名読み": "まるのうち", "ソート用読み": "まるのうち", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日", "分類番号": "NDC 915", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-01-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/card47742.html", "人物ID": "001310", "姓": "高浜", "名": "虚子", "姓読み": "たかはま", "名読み": "きょし", "姓読みソート用": "たかはま", "名読みソート用": "きよし", "姓ローマ字": "Takahama", "名ローマ字": "Kyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1874-02-22", "没年月日": "1959-04-08", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "大東京繁昌記", "底本出版社名1": "毎日新聞社", "底本初版発行年1": "1999(平成11)年5月15日", "入力に使用した版1": "1999(平成11)年5月15日", "校正に使用した版1": "1999(平成11)年5月15日", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/47742_ruby_37699.zip", "テキストファイル最終更新日": "2013-08-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001310/files/47742_37751.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-08-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "2" }
[ [ "しょうがないッて", "てんで子供だぜ、なんにも知らないまだ子供だぜ" ], [ "――では、何ですか", "わからない" ], [ "――だって", "嫌いだわ。男の癖に", "――すみません" ], [ "――つまんないから", "ふーん" ], [ "いい年って、失礼だが", "ほんとに失礼だわ" ], [ "どうしてやめるのかしら", "だって、踊っていたってしょうがないんですもの", "しょうがないといえば、しょうがないが……", "――焼けたわ。お皿" ], [ "お酌しましょうか", "――いや、どうも" ], [ "あたしも、お酒飲もうかしら", "あんた、いけるの?" ], [ "盃を持ってらっしゃい", "――あまり飲めないんだけど" ], [ "おや、おや、ミーちゃん。大丈夫?", "大丈夫ってなアに", "なんだか知らないけど", "大丈夫よ" ], [ "お姉さんも、こっちへ来ない。一緒に飲まない?", "――大変ね" ], [ "――あんまり荒れないでちょうだい", "荒れるかもしれない" ], [ "あたし、なんだか、急に但馬に会いたくなった", "恋人?" ], [ "ところがねえ、簡単に会えないの", "どうして" ], [ "そりゃ、つらい。どこにいるの", "――静岡", "静岡、ふーん" ], [ "あんたは、じゃ今でも、気障な言葉だが、舞台の情熱をなくしたわけじゃないんだね", "あたし、できたら一生踊ってたい" ], [ "いいや、まだ殺されねえ。――でも、もうすぐ殺されるよ", "そうか。しからば、急いで食わざなるめえ" ], [ "たったいま、おたくが倉橋さんだって聞いたんだけど、――驚いたわね", "いま聞いた?", "ドサ貫ちゃんが教えてくれたの" ], [ "――いずれ話すわ", "焦らさないでくれよ" ], [ "一緒に行こうかしら。いい?", "――どうぞ" ], [ "ネタ取り?", "そうじゃない" ], [ "――上海にいる", "上海に?" ], [ "――おたくの前の奥さんと出来る前の話だわ", "ほう" ], [ "ええ、私と同じにT座にいたの。その時分、大屋五郎さんもT座にいて……", "で、妹さんは今は……", "――死んじゃったわ" ], [ "いや、会ったわけではないんですが", "そうだ、但馬はユーリイだ" ], [ "左翼崩れ?", "そうなんですよ。――僕は左翼が嫌いだから、その方のことをよく知らないんだが、但馬は左翼の芝居の方をやっていたらしい。――その時分、但馬はまだ学生で。しまいに、但馬は学校をやめて、芝居から政治運動の方にもいったらしいんですね。そいで左翼が駄目になると但馬は浅草へ転げ込んで来たんですわ。但馬としては、新しい生活を見出そうというつもりだったんでしょうな" ], [ "やりますかな", "――倉橋君。僕は金を持ってないんだが、ありますか", "ええ、少しぐらいなら" ], [ "その人の細君というのと、田島町のお好み焼屋で知り合いになって……", "惚太郎、――じゃないですか" ], [ "朝野君は、あすこへ……", "この頃は行かんですが……" ], [ "泡盛いこうじゃないですか", "金は二三円ありますが。そうだ。お好み焼屋へ行きましょうか", "いや、いや" ], [ "惚太郎のおやじ、――奴さんは、あれでなかなか大した芸人なんですぜ、今じゃお好み焼屋のおやじでくすぶっているですがね", "戦争の怪我で舞台に出られないとか……", "いや、それがね、それがなんですわ。出られないというのは、まんざらウソでもないらしいが。――保定でやられたんだってね。奴さん、工兵で、――話を聞いたでしょう。聞かない? 聞いてごらんなさい。そりゃ面白いから。実に勇敢だったらしい。いい話を、そりゃフンダンに聞かせてくれますよ。もっとも、巧く持ちかけないと、――奴さんの機嫌のいい時をねらって、話をひき出すようにしないと、変った男だから、自分ではなかなかしゃべろうとしないですな。――腿ンところなんですね。それで帰されたんだが、――病院にずっといて、癒ったから家へ帰ったんだろうが。見たところなんでもないようで、やはりまだ舞台に立つと、――ながく立っていると、痛んでくるとか痺れてくるとか。で、まだ当分出られないと言っているが、本人の気持じゃ、もう漫才の舞台に出たくない、舞台はいやだ、そんな気持じゃないのかしら。といって、お好み焼屋のおやじで満足しているわけじゃないし……" ], [ "じゃ、明日、一緒に楽屋へ行こう。倉橋君を小柳雅子に会わせよう。そして一緒に外へ出て、お茶でも飲もうじゃないですか", "…………" ], [ "バカね、朝野さんたら……", "ほんとじゃないか", "箒だらけは、ほんとだけどさ", "手拭の話、いつか自分でしたじゃないか", "あら、そう、――そう言えば、そうだったわね" ], [ "――や、どうも", "先月の、あれは講談世界でしたか、御作を非常に面白く拝見したのがありましたが……" ], [ "――この人がね、湯たんぽを買おうかしらと言うんで……", "湯たんぽ?" ], [ "小柳君も今度K劇場から出る慰問団で支那へ行くんだってね", "――ええ" ], [ "いつ出発するの", "明治節の日", "どこから、――東京駅? ふーん。送って行くかな。何時?", "――三時" ], [ "肌? 肌の音?", "うん", "肌、――さアて。皮膚のハダですな。なるほど、なんというんだろう。――待てよ、ハダだね。身体ハップこれを父母に受くと……。髪とハダを傷つけちゃいけないと。ハップ。ハツは髪で、――ハダはプじゃなかったですかね。いや、いけねえ。プは皮膚のフか" ], [ "裸だとすてきよ。真白でスベスベしていて……", "――これはつらい", "女の私だって惚れぼれするくらい" ], [ "伝法院の庭というと……", "庭園ですよ", "庭園というと……", "区役所の前の", "ああ、あすこですか。まだ……", "入ったことがない? 駄目ですな", "…………", "なかなかいいですよ。倉橋君は浅草を何も知らんですな。――あれは小堀遠州が作ったとかで、京都の桂離宮と同じ、回遊式庭園というんだそうで" ], [ "うん", "あたしも入ったことないわ。話は聞いてるけど" ], [ "いいお庭?", "そりゃ、いいさ" ], [ "最近、公園のなかに、あちこち、弓場ができたですな", "――ほほう", "ほほうッて、倉橋君は気がつかんですか。――駄目ですな" ], [ "早くおあがりよ。(そして私にも)さめると、まずいですよ。――戦争の影響ですかな", "え?", "弓場はね。――きっとふえると思うですな。きっと流行するに違いない。もともと矢場は浅草名物で、――昔の矢場と今の弓場とはもちろん違うけど、まあ、その復活とも言えるですな", "なるほど" ], [ "美妙斎などは矢場の女と問題をおこしたり、――その美妙斎に矢場遊びの手ほどきをしたのは、なんでも幸田露伴だという話だが、露伴というのは、当時矢場の遊びやそのあとからできたいわゆる銘酒屋をひやかすそのうまさにかけては、美妙斎などとてもおッつかない遊び人だったそうで、今の露伴からは想像もつかんことですな", "なるほど", "どうです。ちょっとした随筆のネタになるじゃないですか。奪っちゃいやですよ。――いや、書いたってかまわんです", "…………" ], [ "小柳雅子なんて、あんなの、倉橋君、――てんで子供で、頼りなくてつまらんじゃないですか。それとも倉橋君は熟さない果実を食うのが趣味ですか", "食う? そんな、――僕は" ], [ "カマトト?", "あんたもなかなかカマトトの感じですな", "カマトトッてなんですか" ], [ "てんで新派悲劇じゃないですか。いまいましいったら、ありゃしない", "む――" ], [ "あたし、泣いちゃったの", "泣いた?", "ええ、今し方、ワーワー泣いたところなんですの。眼が赤いでしょう" ], [ "そこへね、先生今度O館をやめて私たちのところへ入った踊り子さんが、トランクを持って、ベソをかきながら楽屋へやってきたんですの。その人もO館でみんなとサンザ泣いて別れてきたばかしのところなの。来てみると、こっちではドンちゃんがワーワー泣いているでしょう。だもんで、その人、また悲しくなって、トランクをおッぽり出して、ワーワー泣き出しちゃったの。ドンちゃんと抱き合ってワーワー、ワーワー。そいで、あたしたちも悲しくなっちゃって、一緒に泣き出しちゃって、楽屋中みんながワーワー、ワーワー。それはもう大変な騒ぎ", "ふーん", "そいで、眼が真赤になっちゃったの" ], [ "なアに", "ここへ瓶口さん、来なかったかしら", "さあ、僕も今来たところで……" ], [ "ドサ貫と組もうと思っとるんですがね", "ほう", "ミーちゃんが、ところが、いけないと抑めているらしいんで、奴は但馬さんのところへ、どうしたもんかと、――つまりお伺いですな。但馬大明神に手紙でお伺いを立てているらしいですよ", "なぜとめるんです。身体が悪いから……", "いいや、――(末弘は、細君のいる台所にチラと横眼をやって、小声で)おちるからというわけですよ。人間、一度落ちたら、もう浮び上れない、ミーちゃんはそう言うんですな。たしかに、それはそうですがね" ], [ "そいで美佐子君のご亭主の但馬君に、その……お伺いを立てるなんて妙ですね。邪恋の相手の亭主に、そんな……", "邪恋はよかった。ヒェッヘッヘッ……" ], [ "で、美佐子君は今どこに住んでるんですか", "実家へ帰ってまさ。但馬さんが病気で郷里へ行っちまったので……", "実家は、この辺……", "いや、玉の井の傍ですよ" ], [ "楽屋へ行くの、僕はよしましょう", "――どうして", "………", "そうですか。じゃ……" ], [ "向うから刑事らしいのが来たの。こっちは何もいやしいことはないから……", "あやしい、だろう?", "ああそうか" ], [ "何か、いい芸名ないでしょうか", "さあ", "ひとつ考えて下さいな。何か時局風なのを……", "時局風……", "ええ、この間こういうのを聞いたんですがね。――国を護る。それを二つに分けて、クニヲにマモル。うめえ名前を付けやがったと感心したですがね。これも、ついこの間役者から漫才さんに転向した口で……" ], [ "そうそう、ミーちゃんが『惚太郎』に来てて、あんたが見えないだろうかと言ってましたよ", "何か用事……", "別に用事ッてないようでしたがね", "あとで行ってみましょう" ], [ "では、ドイツ語では、豚のことを……", "ドイツ語か。――ドイツ語では、ハムちゅうねん", "あ、なるほど", "よう覚えときなさい", "では、フランス語では", "ソーセージやがな" ], [ "それ、――倉橋さんが書いたの?", "うん", "雅子、知ってんの", "――僕の恋人" ], [ "レヴィウの方がいいのかな。あの人はO館に出ていたんですッてね", "それがね、可哀そうに奴の惚れてた踊り子を、そこの座長に取られちまってね。そいで奴さん、ヤケになって座長と喧嘩して、おん出ちまったんです。気が弱そうに見えて、あれでムキなところがあって。そうそう先生はもと小説家志望だったらしいですな。今でもまだ気があるのかもしれない。おたくの小説なんか、よく読んでいますよ。――あら、もうお銚子は空か" ], [ "やるんだったら、会費はこっちもめいめいに払うという方がいいですね", "では、宣伝部が金を出すといったら、それはお酒の方へ回しますかな。――とにかく、ちょっとK劇場の楽屋へ行ってみんですか。小柳雅子が留守だから、倉橋君は行く興味はないですかな" ], [ "先生、マの字はいないわよ", "マの字?" ], [ "朝野さん、なんか会をやるんですって?", "ああ、――誰に聞いた?", "瓶口さんから" ], [ "瓶口さん、こう言ったわよ、その会にあたしたちを呼んで、芸者がわりにお酌をさせるんだって、朝野さんが言ってたッて。――いやだわ。そんな芸者のまねみたいなことをするの", "そんなこと、おれ、言やしないよ" ], [ "ねえ、先生", "――は" ], [ "ねえ、先生。会をやって下さるんですッてね。ぜひひとつお願いします。正直に言いますが、あっしたち、今が一番大事なところで、――ここでグンと乗り出したいとおもうんで、――それには、どうしても先生方の後援がないと……", "いやア……", "そんなこと言わないで、ねえ、可愛がって下さい。お願いですから、あっしたちをひとつ売り出させて下さい" ], [ "いま張り切らなきゃ、張り切るときはないんですよ", "――人気が出てきたからなア", "ここでぐッと、のしちまわないッと……", "そうだよ、そうだよ" ], [ "栄ちゃんは、やめました", "やめた?", "百合ッぺに追い出されたようなもので……", "ほう" ], [ "――振り返ったのが、いけなかったのね、きっと。危いと思って、軒下の方へよけたんだけど、よけた方へ自転車がわざとのようにやってきて、ドシン!", "まあ、馬鹿にしているわね" ], [ "おかしな栄子さん", "だって、自分でもおかしいのよ、考えてみると。あたし、思わず、ごめんなさいと言っちゃったの", "まあ……", "おかしいけど、――わかるでしょう" ], [ "栄ちゃんは、いい子だったがな", "いい女にはいい女でしたがね。でも店にとっては、――栄子と百合子と喧嘩した場合どっちを取るかということになると、百合ッペの方が客扱いがうまいですからね。栄ちゃんの方が古いことは古いし、可哀そうだったけど、どうも……" ], [ "この間まで女優さんだったのだ", "なアるほど" ], [ "あすこはムーラン・ルージュの人がやっているんですってね。――倉橋さんは、あのカフェーのおなじみで?", "いや、一度行ったきり、この間初めて" ], [ "――おや、倉さん", "――おや、ゴロちゃん" ], [ "この頃、僕は銀座に出ないから", "ラララン……。えれえ豪遊なアストラカンかなんか着込んで、大変なもんですわ" ], [ "――で、今はゴロちゃんと一緒?", "それなんで" ], [ "ねえ倉さん、――あたし、なんかオカしいかしら", "オカしい?" ], [ "気がついて見ると、驚くなかれ、なんにもないんだ。そしてドロン", "何がないのさ", "道具。鮎ちゃんの道具。利口な女ですね、あの女は。――あの女は豪遊な道具を持ってるなア", "はじめから話してくれよ" ], [ "寂しかった? こう言うんですよ", "フンフン、上海から帰ってね", "ああ、寂しかったよ。(これはゴロちゃんの言葉のはずなのに、女の声のようにして言って)ところがね、鮎ちゃんは、諸君驚くなかれ、あんまり驚かせろ! 上海で男をつくって、その男と手に手を取って帰ってきたんだが、ちっともそんな気振りを見せない。だから、こっちはちっとも知らない。そのうち鮎ちゃんは自分の道具をひとつふたつとアパートから運び出して、気がつくと、なんにもない。そしてそのまま、鮎ちゃんはあたしンとこからドロン……", "気がつくと、てのはおかしいね" ], [ "冗談じゃない", "だから、ほらさっき言ったでしょう。自分でも少しオカしいと思う時もあるって" ], [ "だってエ、――馬鹿にしていると帰ろうと思ったところ、そこの、芸者衆だったらお出先と言うのね、お出先の女中さんにまあまあと頼まれちゃって。お客さまが、ああおっしゃるんだから、ひとつ頼むって言われちゃって", "お客さま? なアに、そのお客さまは" ], [ "なんの宴会なの。――どこ? そのお座敷は", "○○の△△荘" ], [ "ミーちゃんは舞台から離れてるといったって、まだ芸人なのよ。芸人は芸を売ればいいのよ。女中に頼まれたからってお酌なんかすることないのよ。――そんな軍需景気の奴なんかに、浅草の芸人をなめさせるようなまねをしちゃ駄目", "お姉さん" ], [ "ごめんなさいね。――あたし……", "あやまることなんかないわよ。ミーちゃんはさぞかしいやな気持だったろうと思うと、あたしもつい腹が立って……。ミーちゃんが勝気なのは、あたし知ってる。よくよくだったろうと思うと、あたしだって腹が立つのよ。――お酒を大分飲まされたらしいわね。苦しそうね", "ミーちゃん。水やろうか" ], [ "――え?", "一晩借りるのが十銭", "――なるほど" ], [ "――楽屋泊りも、今思い出すと楽しかった", "…………", "お座敷で踊って、おいモダンさん、俺の方にも酌してくれナンテ言われるようになっちゃ、おしまいね。来年はいっそ旅に出ようかしら" ], [ "――それとも、いっそ末弘さんと夫婦になって漫才でもはじめようかしら", "夫婦?", "ええ、末広さんと組んで……" ], [ "熊手には入船と出船があるんですッてね", "ふーん", "芸者家なんかは出船、料理屋なんかは入船……", "――なるほど" ], [ "あたし去年もこの熊手。ほんとうは倍のを買わなきゃいけないんだけど……", "僕もそうだ" ], [ "うん、どうするかな", "飲むんなら、つきあうわよ。あたしも飲むわ", "だったら喜久家へでも寄ろうかな" ], [ "………", "ミーちゃんとかぎらない。浅草の女に手を出すようなことはしないで下さい" ], [ "浅草の女に手を出すなとさっき君は言ったが、――誤解されるといけないから、ひとつ君に言っとこう。僕は踊り子さんでひとり好きな人がいるんだ。ただ好きなだけで、どうこうしようというわけではない。しかしその僕が好きだというのが変な工合に君の耳に伝わってもなんだから言いますがね", "誰です", "K劇場の小柳雅子", "マーちゃん?", "うん、マーちゃん" ], [ "玲ちゃんが真中、マーちゃんは一番下の妹", "君、それ、ほんとかね", "うそ言ってどうするんです", "だって、なんぼなんでも美佐子君の妹とは……。美佐子君は今まで何もそんなことを……。僕が小柳雅子のファンだってことを美佐子君は知っているはずだ。だのに、そうしたことをミーちゃんは何も……", "言わない。……", "おくびにも出さないんだ", "…………", "君、かついでるわけじゃあるまいね", "そんな……" ], [ "あれは、サーちゃんじゃないかな", "――そうだ。サーちゃんはマーちゃんと同じK劇場だから、あんた知ってるんですね" ], [ "それからお銚子だ", "はアい。それからお銚子一本" ], [ "おい、お銚子は", "はい、ただいま" ], [ "朝、便所に立ったら郵便が来てて原稿が送り返されているんですな。いや毎度のことで慣れてはいるんだが、その原稿は自信があったんで、ちょっと参ったですな。寝床に戻ったが、もう眠られない。――おい、ズー、どうした", "はい、ただいま", "ユーモア小説なんですがね。こういう話なんで。名前はあえて秘するが、ある小屋の踊り子さんの家へ、ちょっと用事があって行ったんですよ。僕が、――寒い晩だった。実話なんですよ。行くと、生憎その子はまだ帰ってなくて、お婆さんがひとりで寝ている。おッ母さんかも知れないが要するに年寄りで、玄関からまる見えの煎餅蒲団から起き出してきて、すぐ帰るだろうから、さあどうぞ、お上り下さい、むさくるしいところですが、どうぞ、どうぞというわけ。実際むさくるしいひどく世話場の家で、上ると、――外は寒いでしょうね。いま熱いお茶を出しますから……。つまり大変な歓迎振り。どうぞおかまいなくと言ったが、婆さんはこれは煎餅蒲団などと違ってなかなか上等な茶器を揃えて、さて立ち上ったので、台所へ行って湯を沸かすのかと思うと、さにあらず、煎餅蒲団のなかに手を押し込むじゃないですか。おや、何をするのかと思うと、湯たんぽを取り出した。薄汚いボロで包んだ湯たんぽ。そいつを、よいしょと抱えて僕の前に坐った。あれあれと思っていると、ボロをめくって、湯たんぽの口を出し口金を外しにかかった。え? と眼を丸めた時は急須の上に湯たんぽの口を当てがって、驚くじゃないですか、今の今まで婆さんが足を当てていた湯たんぽの湯を、どくどくッと……。いや全く魂消たのなんのって。だが婆さんはケロリとしたもんで、湯たんぽの湯でお茶を出すと、へい、どうぞ。はあとは言ったが、心のなかではゲッといったですな。婆さんは自分の茶碗にもその気持の悪いお茶をついで、――冷めないうちにどうぞ。そう言うと、平然として自分の茶碗を取り上げて、コクリと呑んで、ああ、おいしい。――ああ、おいしいは僕の創作ですがね。どうです、この話は", "ふうむ" ], [ "書きにくいでしょうな", "それを、やっと書いたんです。さっきは自信があると言ったが、自信より苦心ですな。とても苦心しただけに突っ返されると、くやしくて……" ], [ "白昼酔っ払って行くのは、どんなものですかね", "かまわんじゃないですか", "しかし……" ], [ "行ってみようじゃないですか", "さあ……" ], [ "ふうむ", "五百円でほんとに飛行機が買えるとでも、思ってんのかもしれないが。――いやなかなか難しいですわ" ], [ "あれは天中軒トコトンさんのおかみさんで……", "ほう", "ここの地方をやっているんですよ" ], [ "トコトンさんは健在?", "相変らずですわ", "相変らず紙袋貼り……", "それからチョコチョコ走り……" ], [ "見ると、お女郎さんがその車を囲んで何か買っているんですね。何を買うのかしらと、僕は近づいてみた。近づいて見ると、――まだ化粧をしてないので、夜見ると綺麗なお女郎さんたちも黄色くむくんだ顔をしている。あの顔の色は、実にいやな色ですね。日に当らないせいか、それとも、……。いや。そんなことはどうでもいい。お女郎さんたちは車を囲みながら、日向ぼっこをしているんですよ。高いわね、まけないなどと雑貨屋のおじさんに言ったりして、なかなか買わない。察するところ、雑貨屋が来たというので、それを口実にして陽に当るために外に出たようで……。でも、そのうち一人が安い楊枝入れを買った。それを囲んで、日向ぼっこをしているのが他に数人いるわけで、そのうちの一人が店の方を振りむいて、何か言った。何か買わねえずらといった田舎弁。で、僕は何気なく店の方に眼をやると、――店の上り口の、ちょうどそこまで陽がさしこんでいるギリギリのところの板の間に、お女郎さんたちが鏡台を持ち出して髪を結っている。髪を結いながらでも、陽に当ろうというわけなんですね。陽ッてそんなものかと、陽のありがたさを初めて知らされた感じだった。そして眼を外にむけると、店の前に盆栽が並べてあるじゃないですか。一日中、陽の当らない家ン中に押し込められている盆栽。それを陽にあててやっている。盆栽は、ほんのひとときの喜びながら、じっと陽の恵みを楽しんでるといった恰好だった。僕は、その盆栽にお女郎さんを感じた。同時に、同じことだが、お女郎さんに哀れな盆栽を感じたですね。――以来僕は盆栽というものが嫌いになった。盆栽の趣味を枯淡とかなんとか言うのはうそですね。むごたらしいもんじゃないですか", "書けるですな。その風景は" ], [ "ミーちゃんにお会いで?", "――いや" ], [ "マーちゃんにお会いですか", "――いや" ], [ "但馬さんが来るそうですよ", "ほう" ], [ "あたしは代りに、郷里へ帰ろうかとおもってます", "代りに?" ], [ "ミーちゃんは花屋敷に入りました", "花屋敷?", "花屋敷が今度復活するそうで。なんでも浅草楽天地という名前になるとか。そこのショウに入ることになったんです", "それはよかった", "でもね、見世物小屋の踊り子ではね、どんなもんですかね。僕もミーちゃんから誘われたが、断わりました" ], [ "どうしたも、こうしたも、――困るなア、こういう時にはちゃんと浅草にいてくれなくちゃ", "どうもすみません。仕事をしてたもんで", "仕事を? 仕事はアパートでするんじゃないんですか。アパートは仕事場に借りたんじゃないんですか。何か他の目的で借りたんですか" ], [ "誰もいやしないんだ。みんな、京都にすッ飛んじまって。誰もいないんじゃ、こっちも会なぞできやしない", "誰もいない?", "残っているのは雑魚ばかり。今夜の会に出て貰おうと思った連中は、『愉快な四人』にしろ何んにしろみんないやしない。それがまた一日違いなんだから、全く肚が立つ話じゃないですか。昨日の晩まで、ちゃんといたくせに、――今日が初日だもんで、ドロンにもってこいだったんですな。昨夜舞台をあげると、こっそり抜け出して、そのまま夜行に乗り込んじまったらしいんで" ], [ "つい先刻、瓶口から、駅で書いたらしい詫びの端書が来たけど、そんなもの貰ったってしょうがない", "瓶口……", "小柳雅子ももちろん一緒に京都へ行っちまったですよ" ], [ "サーちゃんは?", "サーちゃんは残った", "ふうん" ], [ "三州屋には三十人前後と言ってあるんだが。もう来ないですかな。――倉橋君は案外顔がきかんのですな", "……?", "倉橋君の顔でぞくぞく集まってくるかと思っていた" ], [ "――実は今日、合羽橋通りで但馬に会ったですよ。もしかすると、あいつ、この会に来やしないかと思ったが……", "ほう、但馬滋がね", "彼のかみさんが、彼を東京へ呼び寄せたらしい", "呼び寄せた?", "但馬がそう言っていた" ], [ "姉妹二人に同時に触手を延ばすとは、いや達者なもんですな", "朝野君", "言葉が過ぎたですかな。――嶺美佐子は、しかし倉橋君に、――嶺美佐子の方からどうやら惚れたらしいですね", "……………", "それで自分でこわくなって、但馬をあわてて呼んだらしい", "但馬君がそんなことを君に……", "そうとは言わないが", "でもそんなようなことを……?" ], [ "でも、倉橋君はお酉さまの晩に吉原でもって、嶺美佐子と大分シンネコだったというじゃないですか", "……" ], [ "ゴロちゃん!", "ゴロちゃんと呼べば、倉さんと答える" ], [ "ありがとう", "今日、ここで会があると聞いて、ここへ来ればおたくに会えると思って……" ], [ "上海へ飛び、鮎ちゃんは。――驚き", "また上海へ行った?", "全くの驚き。チクオンキ" ] ]
底本:「如何なる星の下に」講談社文芸文庫、講談社    2011(平成23)年10月7日第1刷発行 底本の親本:「日本の文学 57 高見順」中央公論社    1965(昭和40)年5月5日発行 初出:「文藝」    1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号 ※「第二回 風流お好み焼」の章末「次のページに掲げられた挿絵のような風景」に対応する挿絵は、画家の三雲 祥之助の著作権により割愛しました。 入力:kompass 校正:酒井裕二 2016年7月26日作成 2017年2月8日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "057023", "作品名": "如何なる星の下に", "作品名読み": "いかなるほしのもとに", "ソート用読み": "いかなるほしのもとに", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2016-08-17T00:00:00", "最終更新日": "2017-02-08T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001823/card57023.html", "人物ID": "001823", "姓": "高見", "名": "順", "姓読み": "たかみ", "名読み": "じゅん", "姓読みソート用": "たかみ", "名読みソート用": "しゆん", "姓ローマ字": "Takami", "名ローマ字": "Jun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1907-01-30", "没年月日": "1965-08-17", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "如何なる星の下に", "底本出版社名1": "講談社文芸文庫、講談社", "底本初版発行年1": "2011(平成23)年10月7日", "入力に使用した版1": "2011(平成23)年10月7日第1刷", "校正に使用した版1": "2011(平成23)年10月7日第1刷", "底本の親本名1": "日本の文学 57 高見順", "底本の親本出版社名1": "中央公論社", "底本の親本初版発行年1": "1965(昭和40)年5月5日", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "kompass", "校正者": "酒井裕二", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001823/files/57023_ruby_59517.zip", "テキストファイル最終更新日": "2017-02-08T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001823/files/57023_59554.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-02-08T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "ちょいと、兄さん", "ちょっと、ちょっと、眼鏡の旦那" ], [ "ちょっと寄っといでよ", "ほらほら、ちょっと、ここをのぞいてごらんよ" ], [ "お前んちは何人だい?", "団体さん?" ], [ "そりゃ、来るわよ", "そうかい。悪かったね" ], [ "初見世か", "クララさん" ], [ "お客が来てるのよ。営業中よ", "空くまで、待ちぼけか" ], [ "オサトでも食うか", "オサツ?" ], [ "ヤキイモじゃねえよ。スシだよ。スシでも食うか", "おばさんに、そいじゃ、頼んでこよう。何人前?", "適当に注文しな" ], [ "ビールも飲むぞ", "あいよ" ], [ "どこの生れだ", "東京です", "うそつけ", "ほんとよ", "言葉に訛りはないな。東京はどこだ", "よしなよ、砂馬さん" ], [ "男にだまされたのか", "知らない……", "いくつだ", "十九", "いい肌をしてるようだな" ], [ "どこへ行くんだ", "ちょっと", "ちょっと、なんだ", "フントウバだ" ], [ "四人集まんなきゃ、話にならない", "四人のうちから選ぼうというの? 選び直すの?", "そうじゃないんだ", "おトコつけるのは、あたしとクララさんときまってるんでしょう? だったら、あんた……", "そうでもないんだ" ], [ "そうでもない?", "ゼニを出しゃ、いいだろう。ゼニを", "ゼニ、ゼニ言いなさんな。いくらくれるつもりなの?", "そっちのサービス次第だ", "どういうサービス?", "四人ともここへ寝るんだ", "ここへ?", "狭いけどな", "四人とも?", "ハダカで寝るんだ", "ハダカを並べといて、どうしようっての?", "分んねえのかねえ" ], [ "ジャンケンをして順々に……", "冗談言っちゃ、いけないわよ" ], [ "冗談を言ってんじゃない。ほんきだ", "ほんきらしいから、こっちも言ってんのよ。いやらしい", "そうムキになるなよ。面白いじゃねえか", "お客さんには面白いかもしれないけど、こっちは、ちっとも面白かないわよ" ], [ "馬鹿におしでないよ", "馬鹿になんか、しやしない。愉快に遊ぼうてんだ", "あたしたちだって、人間ですよ。犬畜生じゃないんですよ" ], [ "帰るぞオ", "はーい" ], [ "おスシはもう頼んだんだから、お金は払って貰わなくちゃ……。そっくり包んで、持ってって貰いましょう", "いらないよ" ], [ "とんだ時間潰しをさせて悪かった。オブ代も置いてこう", "下さるものはいただきますよ" ], [ "年増をひとり。それにこの友だちに、若い子をひとり。それからあと二人呼んでくれ", "四人ですか?", "五人だっていいよ", "今はみんな、忙しいんで、二人にして下さいな。気に入らなかったら、そう言って貰えば、ほかの子をまた回します", "四人買うんだ。誰かのホンベヤで、みんな一緒に寝るんだ" ], [ "それは旦那、いけませんね", "いけないことはないだろう。それだけのことはするぜ" ], [ "それは、旦那、困りますねえ", "困るって、誰が困る? お前さんが困るのか", "わたしが困るんでしたら、わたしひとりが困る分なら、かまいませんがね" ], [ "そんなこと言って、お前さんがかけあえないと言うんなら、じかに言う。お前さんがかけあわないんなら、俺の口から言う", "おっしゃってごらんなさい。塩をまかれるだけですよ" ], [ "ここには、ここのしきたりがあります", "そういう遊びは法律で禁止されてるのか", "そうじゃありませんがね。ここではお茶漬はご法度なんですよ", "おいらんが、なじみ客の友だちと寝ちゃ、そりゃまずいだろう", "ですからお客さんにもお願いして、同じ家で、あいかたを変えることはおことわりしているのです。そういうのさえ、うるさいんですから、まして……", "誰がうるさい" ], [ "いくら、卑しい稼業をしているわたしたちでも、そんなあさましいことは、ねえ……", "いやかねえ。そうかねえ" ], [ "淫売と女郎と、どうちがうんだ。女郎は淫売をしてないのか。いや淫売なんかさせてないと言うのかい", "そんなこと、言やしません", "女郎屋のほうが高級だと思ってやがる。とんでもない思い上りだ。淫売のほうが、どのくらい親しみがあるか分らない。淫売を馬鹿にしやがると承知しねえぞ", "でしたら、あんたさんのお好きなそっちへ行って、遊んでらっしゃいな" ], [ "車を拾って、大急ぎで行こう", "もう、よそうや", "なに言ってるんだ。おい。加柴、ついてこい" ], [ "二人はかえすんでしょう? こんな時間に可哀そうですね", "四人ともお泊りをつけてやる", "それにしたって……", "いや、四人ともひきうけてやる", "あら、まあ、精力絶倫……" ], [ "早くも見破られたな", "それでしたら四人でもかまいませんわね", "かまわないだろう", "うちは、かまいませんけど", "芸者がどう出るか" ], [ "旦那から芸者衆にかけあってごらんなさい", "ことわられても、もともとだな" ], [ "芸者衆だって、旦那の持ちかけようでは、きっと面白がって……", "面白がるか", "旦那の腕次第ですよ", "そう言わないで、手助けしてくれ。それが仲居のつとめじゃないか" ], [ "腕とお金次第……", "よーし、はりこもう" ], [ "物好きな方がいらっしゃるもんですね。お客さまのほうでもお二人一緒――は珍しいですね", "客が一人で芸者が複数は珍しかない?", "それだって、珍しいですけど" ], [ "もっと珍しいから、もっと芸者も面白がるだろう", "案外、そうかもしれませんね" ], [ "興味がなくなっちゃった", "そこが加柴のいけないところだ", "いけなくても勘弁してくれ" ], [ "兄さんはヤーさまじゃないけど、カタギでもないわね", "なんだろうね" ], [ "そのうち、自信ができたら言うよ", "自信って?", "お金ができたら……" ], [ "クララ", "照子と呼んで。照子があたいの本名……", "え?" ], [ "照子", "四郎さん" ], [ "この間、名刺をくれたじゃないの", "名刺を?" ], [ "下で貰ってくる", "いらないよ" ], [ "サックなんかいらねえったら", "駄目よ" ], [ "兄さんは、まさか、文士じゃないでしょうね", "まさか?", "文士じゃないわね", "まさかとは、なんだい" ], [ "慷堂先生というんだがね。砂馬さんの名前の慷と同じ字を書くんだ。それに堂", "面白い姓だな", "名前でなくって号なんだ。なんだか、これは偉い先生らしい", "商売はなんだい", "さあ、なんと言うか" ], [ "支那浪人だ", "右翼か" ], [ "それが、いちがいにそう言えないんだ。昔は共和主義者だったそうだ。日本を共和政体にしろと主張して、ムシ(牢屋)にカマれたり(入獄)して、それから支那へ渡ったんだそうだ", "テキヤはおおかた右翼だろう?", "テキヤはそうだが", "そのテキヤの大親分のところで、その慷堂先生とかに会った?", "そうなんだ" ], [ "今のままで行くと、砂馬さんも単なるリャク屋になってしまうかもしれない。その砂馬さんに慷堂先生を会わせようというのは、ほかでもない。この日本の革命は、力とやはり結びつかないと駄目だと砂馬さんは言っている。俺はその説に何も賛成じゃない。俺たちは俺たちでやって行くが、砂馬さんには砂馬さんの考えている革命の道を歩かせてもいいと思うんだ", "そのために、砂馬さんを慷堂先生とやらに近づけようというのか", "慷堂先生は陸軍の若い将校の間に隠然たる勢力を持ってるんだ", "だから、なんだというんだ" ], [ "ねえちゃん。ザクをくんな", "ネギよりナマ(肉)がもうすこし食いてえな" ], [ "ヤチモロたあ、なんだい", "ど助平ってことよ", "ど助平か" ], [ "川向うの女にラツて(惚れて)夢中だというじゃないか", "そうなんだ" ], [ "その女を見せたいんだ。見てくんないか", "チェッ。言わせておけば……ひでえヤチグレだ" ], [ "おめえのほうは、どうだい", "組合かい", "うまく行ってるかい" ], [ "夜這いに対抗するために、俺は工場の連中と研究会をやろうと思っている", "研究会って、おめえが労働者を教えるのか" ], [ "なんせ、夜這いの奴らが、アナは無理論だなどとぬかしやがるから、やっぱり、その、俺自身もアナーキズムの自由連合主義の理論を一緒に勉強し直そうと思ってるんだ", "勉強だ?" ], [ "勉強で革命ができるかよ", "そりゃ、そうだが", "おめえは生じっか、中学なんか出てるもんだから、大分、インテレかぶれのところがあるな" ], [ "俺だって、一度は生命を投げ出そうとしたことのある身体だ。今だって、いざと言えば……", "よし分った。そう大きな声でタンカばるな", "組合の仕事だって、俺は身体を張ってやってるんだ。テロリストがそんなみみっちい……組合なんか相手にして、と言うんだったら、まだ、いいが", "悪かった。俺はただ、おめえが研究会なんて言うからよ。おかしくってさ", "研究会は、いけねえのか", "いけねえとは言わねえが", "俺は、今の仕事に身体を張ってやる以上、ボルの奴らに負けたくないんだ", "理窟で負けたくないのか", "そうじゃない。実行だ実行だでは、それだけじゃ、工場の連中がついてこないんだ", "ついてこない?" ], [ "その質のために、俺はアナーキズム理論の研究も大切だと思うんだ", "それで、おめえが先生になって……?", "俺は研究会の世話を焼くだけだ。俺も一緒に研究するんだ、玉塚英信を俺は呼んでこようと思ってる", "玉塚? ああ、あの三文詩人か", "詩人としちゃ、三文詩人かもしれないが" ], [ "アナーキストとしちゃあ、理窟をこねるほうだ。筆も立つし口も達者だ", "そりゃそうだろう。あいつはたしか大学出だ" ], [ "大学まで出といて、なぜ俺たちの仲間になんかなりたがるんだ", "ボルの夜這いには、大学出のほうが多い", "ボルみたいに口ばかり達者な奴を作らねえようにするんだな" ], [ "いないのに、なんだって……", "さっきはいたんだ。いたじゃないか", "シャッポを投げれば、コウモリがまた出てくると思ったのか", "そうでもないが", "なにを言ってんだ", "コウモリを取った経験ないのか", "知らんな" ], [ "コウモリは、ああして取るんだ", "ふーん" ], [ "客が来てるのか", "奥にいるんだよ" ], [ "なんだい", "あのね" ], [ "ここのクララという女を、俺は女房にしたいと思ってるんだ", "バシタ(女房)に?", "身うけしたいんだ", "身代金はいくらだ" ], [ "オテ百パイとはまた、随分よく出したもんだ。いいタマなんだな", "見りゃ分る" ], [ "マリちゃん? それとも富江姐さん?", "いいんだ。誰も呼ばなくてもいいさ" ], [ "オブでも飲んで、俺は帰るんだ", "そうお" ], [ "ヒモがついてるんじゃねえかな", "ヒモが? ついてたって、かまわねえ" ], [ "気立てのいい子だぜ。ヒモがついてるような女とは思えないが", "それが臭えのさ。そういう子にかぎって、男の食い物になるんだ", "俺の女に、ケチをつけようってのかい", "おめえの眼も節穴になっちまったのか", "俺はあの女を、どうあっても、俺のものにしてみせる" ], [ "どこかへ行ってきたのか", "うちへ、ちょっと……" ], [ "うち? 照ちゃんのうちはどこなんだ", "うちなんかないわ" ], [ "家出しちゃったんだもの", "家出したうちへ、今日、行ってきたのか", "行きゃしないわよ" ], [ "四郎さんのうちはどこ?", "本郷だ", "本郷はどこ?" ], [ "千駄木町の下宿屋にいるんだ", "下宿屋に? いいわねえ" ], [ "遊びに行っていい?", "いいとも" ], [ "きたないとこだけど、おいでよ", "おスシ持って、行くわ" ], [ "さ、おトコつけましょう", "いやなこと言うなよ", "いやなの?", "言葉がいやなんだ", "じゃ――抱いて" ], [ "今日は、兄さん、あれ、いいわ", "あれ?" ], [ "あたいは兄さんが好きになっちゃったらしい", "らしいとはなんだ" ], [ "今度は兄さんが、あたいの着物、ぬがして……", "あいよ" ], [ "あたいも、兄さんが好き。好きになっちゃ、いけないんだけど", "いけない?", "こんな商売してて……", "何を言ってるんだ。俺は照ちゃんと結婚したいと思ってるんだ", "結婚なんか、できないわ", "照ちゃんの借金を、俺は……" ], [ "なんとか言わないか", "うれしいわ" ], [ "四郎さんのおうちで、許してくれるかしら?", "俺たちの結婚か。大丈夫だよ" ], [ "四郎さんのほんとのうちは、田舎なの?", "田舎? どうして", "本郷に下宿してると言うから……", "学生みたいか" ], [ "東京だよ", "東京なの?", "麻布の四の橋だ" ], [ "おやじは小さな鋳物工場をやってんだ", "いいわねえ" ], [ "あたいのお父うさんは浪人……", "浪人?", "さっきの人、ヤーさまね?", "同志さ" ], [ "兄さんの言葉は忘れないわ。あたいをそんなにまで思ってくれて……", "俺はすぐ金を作って、照ちゃんを迎えに来るよ" ], [ "クララさーん", "はーい" ], [ "どこ、行った", "もう、やめたわよ" ], [ "この間、ちょうど、その男が来てたんだよ。そのこと耳打ちしようかとも思ったんだけどね", "クララはどこへ行ったんだ", "そんなこと知らないよ" ], [ "技工組合の丸万君じゃないか", "帆住先生……" ], [ "君もまだ、アナーキズムを信奉してるのかい", "もちろんです", "アナーキズムはさっぱり振わんな" ], [ "そのツラはなんだ", "ヒモがついてやがった" ], [ "支那浪人の娘が、銘酒屋奉公をしているのか", "自分のお父つぁんは支那浪人だと言ってたんだ", "銘酒屋の女の言うことを、加柴は真に受けてるのか", "聞いてくれるくらいは――聞いてくれたっていいだろう", "支那浪人の斎田慷堂に、同じ仲間の娘が淫売をやってるかと聞くわけか" ], [ "右翼とのつながりもあって、それで助かったのだろう", "そのじいさんは、両方に顔なのか", "顔というよか、じいさんの思想が土台、ふたつの面を持っている。一筋縄ではいかないじいさんだ" ], [ "悲堂、歌堂、慷堂、慨堂という支那浪人の四人組のひとりだ", "悲歌慷慨か", "四人とも自由民権論者だったらしい。自由民権運動の挫折から、大陸へ志をのばそうとしたのだと、それは自分で言ってたが" ], [ "張継君もその屋上演説事件の現場で、いったん、つかまったが、仲間の支那人が奪い返してくれた。それで京都へ逃げたのだが、そこでつかまって、日本を追われることになったのだ。京都へ逃げるときにすでに国外追放を覚悟していたのだろう、わしたちにラファエットたれと言った", "ラファエット?", "フランスの将軍で革命家さ。フランスからアメリカに渡って、アメリカの独立革命に大いに尽力した人物だ。本国へ帰ると、ラファエットはアメリカですでに試験ずみの方法でフランスの革命を指導した。張君がそのラファエットを云々したのは、支那革命を援助して、日本の革命の参考にせいということだな", "支那革命は成就しましたが……" ], [ "日本の革命は……", "未だ成就せずか" ], [ "シロ負けたあ", "シロ、シロ、弱いシロ" ], [ "何か用か", "いいや、ちょっと遊びに来たんだ", "奥で待ってなよ" ], [ "四郎はまだカタギにならないのか", "カタギ?", "嫁でも貰って、早く身を固めちゃ、どうだ" ], [ "それで……?", "知らせていいもんかどうか、分んないから、ごまかしといた。知らせていいんなら、今度訪ねて来たとき、教えておく" ], [ "対支非干渉のスローガンで、無産政党は共同闘争に出ているが、スローガンや声明だけじゃ駄目だな。大衆闘争に盛りあげなくちゃ……", "そうなんだ。俺たちのほうも、アジ・プロ活動を一生懸命やってるがね。今の様子では、どうかな。相手が軍刀を持った内閣じゃ、とても、おさえ切れないだろう", "居留民保護の名目で、出兵か", "その名目でとどまればいいが……", "いやねえ" ], [ "不景気の打開を外国侵略で解決しようというのね", "帝国主義の当然の方法だな" ], [ "この北槻中尉はレーニンの研究家だ", "先生" ], [ "この加柴君は福井大将を狙撃した虚無主義者の仲間だ", "ふむ" ], [ "北槻中尉も、なかなかの激情家だな", "だって、先生……", "わしだって、大杉栄とつきあいのあった男だ", "先生が?" ], [ "カタキ同士の君たちを、そのうち、わしが仲良くして見せる。国を憂えている点では同じさ", "国を……?" ], [ "あの狙撃事件のとき、君は一体いくつだったのだ", "十九です", "十九?" ], [ "あれは、わしがまだ子供の時分のことだ。わしの国でも民権論者が暴動をおこしたから、子供心にも覚えてはいるが、あれは、明治十……七年か", "でも砂馬さんが先生は自由民権論者だったと……", "それは、わしの先輩の悲堂先生などのことだ" ], [ "わしを、いくつだと思っとるのだ。三年前、君らの仲間が福井大将を襲ったとき、わしはちょうど五十だった", "へーえ、わりと若いんだな。見たとこ、ずいぶん老けてんのに……" ], [ "先生は支那で苦労なすったので、きっとお年以上に……", "オベンチャラ言ってらあ" ], [ "跡目をついだ蒋介石は、軍官学校の資金を第三インタナショナルから貰ってた義理もあってか、その夏にクーデターをやって、反共産派を追っ払ったくらいなんだから、もちろん、その西山会議派――張継君たちのことだが、その言うことなんか聞きやしない。共産党と手を切れなんて言う決議には、一顧だに与えなかった。蒋介石としては共産党を操るつもりだったんだろうな。事実、国民党と共産党の両方を操って、権力を握った。だが、その結果はどうだ。獅子身中の虫が、逆に国民党に噛みついてきよった。武漢には共産党政府ができてしまった。あわてた蒋介石は、今になって、駆共を叫び出してる始末だ。共産党を利用するつもりが、逆に共産党に利用されたのだ。馬鹿な話だ", "どうなんでしょうか。共産党の勢力はかなり強いらしいんですが" ], [ "なーに、一時は猖獗をきわめても、共産党が天下を取れるわけはない", "でも、孫文が容共政策を取ってから、ほんのまだ数年ですのに、たちまち農村までが赤化して……", "農村は、そりゃ、すぐ赤化するさ。土地解放は、タナからボタ餅だからな", "ですから、国民党が今さら駆共を叫んでも……" ], [ "わしも土地解放には賛成なのだ。革命は賛成なのだ。日本も土地解放が必要だ。今のような状態では、百姓が悲惨すぎる。北槻中尉も農村の出身だから、そこは分るだろう", "よく分ります", "日本にも革命がぜひとも必要なのだ。ただし、わしの考えている革命は赤色革命ではない" ], [ "共産党は全く面白いことをやりおる。武漢では、裸婦遊街という痛快な催しをやりおったそうだ。女性解放のデモンストレーションだ。素っ裸になって遊街――デモンストレーションを行なおうというのだ。これはさすがに、ほんとに裸になって出て来た勇敢な女はたった八人しかいなかったそうだが、いやはや、こういうのを乱七八糟(めちゃくちゃ)――一方では恐怖政治をしといて、一方ではこんなバカなことをする共産党が永続きするわけがない", "裸男遊街はやらんのですかね" ], [ "猪沢……?", "それが君の探しとる娘の父親の姓だ", "すると、瀬良は母親の姓ですか" ], [ "それは袁世凱討伐のために軍をおこしたのですね", "そうだ。わしたち日本の同志も身命を賭して援助した辛亥革命は、清朝顛覆の永年の目的は達したのだが、その結果は袁世凱の野望に力をかしたようなことになってしまった。これではいかんと、大正二年に李烈鈞が第二革命の火蓋を切って、各地に反袁軍が蹶起したのだが、袁世凱の弾圧でこれも敗れた。そのため、孫文、黄興等は一時、日本に亡命の余儀なきに至ったものだ" ], [ "勝ち誇った袁世凱はみずから帝位に即こうとした。ここで帝政が実現したら、中華民国は雲散霧消、そうさせてはならぬと、わしらは支那に渡って反袁革命軍に身を投じた。わしはさきに話に出た梶川悲堂と青島に行った", "それが東北革命軍ですか" ], [ "革命軍になくてはならぬものは武器弾薬だ。それの調達を日本のわしらが引き受けた。日本で調達して、わしらはそれを支那人に送ろうと企てた。これはついこの間のような気がするが、左様、わしがちょうど四十のときだったな", "武器の入手は、先生、軍からの払い下げでなかったら、不可能だったでしょうが" ], [ "閣下としては、日本のほうから支那革命を援助するという形になっては、それはお困りだろうと思うが、もし支那のほうから、支那革命を援助してくれという意味ではなく、ただ日本にものを買いに来た場合も、日本政府としては、それは支那革命を援助することになるからという理由で、絶対許さないというご方針ですか", "支那自体がどうしようと、それは内政上の事柄だから日本政府のとやかく言うべき筋合いではない。だからまた、君ら個人が支那のために尽力するのは自由だが、日本政府までが一役買っていることにされては迷惑だ。とにかく、今日の話は何も聞かなかったことにする" ], [ "日本の軍人――しかも現役の軍人で、この革命軍に援助を惜しまなかった人もあのころはいたものだ。坊子駐屯の連隊長などは職を賭して革命軍を助けておった。列強の餌食になっている支那の真の自立こそは、東洋の平和のために欠くべからざる条件だというわしらの信念に共鳴したのだ。支那のその自立のためには革命が必要なのだ。中華民国という新しい建国が必要なのだ。軍人の身ながら、それを助けようというのがいたのだ。日本では、しかし、支那を植民地のごとくに見とる列強の尻馬に乗って、あとからでもこそこそ、分け前にあずかろうなどと、そんななさけない、あさましい考えの者もおる。そうした支那侵略の手先になるのを潔しとしない軍人もおったのだ", "はっ" ], [ "君は、兵役はどうなのだ", "クジのがれです" ], [ "支那メシ屋をやっとるよ", "へー?", "なに、なかなか立派な支那メシ屋だ", "それにしても……", "そうだな。悲堂先輩は支那のために、一身をなげうって、いや一生をなげうって尽してきた。それが今日、その支那は排日の、打倒日本帝国主義のと……いや、支那だけが悪いのじゃない。それにしても、支那に一生をかけた梶川悲堂には、たまらんことだな" ], [ "あれもただのテキヤじゃなくて、革命家だったようだな", "同志です" ], [ "今でも彼は革命家です", "しばらく会わんが、元気かな" ], [ "いずれは名もない三文文士にちがいないんで、タマさんなんかは知らないかもしれないがね。玉の井の女をイロ(情婦)にしてて――それを最近、よそへクラ替えさせたんだが、そんな文士の噂を聞いたことはないかい", "さあねえ" ], [ "暴力はよせよ", "なに言ってやがる", "四郎さんに僕も会って、とっくり話がしたいと思ってたんだ" ], [ "かんじんの話の、まだ返事を聞いてないね", "文士のことかい" ], [ "知らなきゃ、いいんだよ", "四郎さんが川向うの女に惚れて通っているという話は聞いてたが……", "そうかい。どうせ俺が惚れる相手は、淫売ぐらいなもんなんだ", "文士の噂は聞いてないね" ], [ "僕の噂を、四郎さん、聞かなかったかい?", "タマさんも女に惚れたのか", "そんな話ならいいんだが" ], [ "俺はいま弁証法を勉強してるんだ", "唯物弁証法……?", "だからって、アナーキストを廃業したわけじゃない", "廃業なんて言うなよ", "廃業なんかしないよ", "廃業なんて言葉を使うなって言うんだ", "僕はアナーキストとして弁証法を勉強してるつもりなのだ", "大学を出て、まだ勉強してるのか" ], [ "弁証法的アナーキズムというのを僕は考えたいんだ", "考える……? 行動を考えろよ", "その行動のための、もっとしっかりした理論が、僕らには必要だと思うんだ。そのため僕は弁証法的唯物論を勉強してるんだ", "勉強で革命ができるかよ" ], [ "斎田さんとこで、加柴はだいぶ、オダをあげたようだな", "タイヘイ(兵隊)がいやがったからさ", "兵隊……?", "北槻とかいう……", "兵隊じゃなくて、あれは将校だ", "あ、そうか" ], [ "どっちにしても嫌いだね", "なにしに行ったんだ", "あの家へ行くと、いつもキスが出る。よほど、みいりがいいんだな", "いつもって、そんなに行くのか", "まだ二回だけどね。一回は砂馬さんと一緒だ", "今度また一緒に行ってみよう", "いつも床の間の前に、置き物みたいにすわってて、なんで稼いでるのかな", "ひとのことより、自分の生活はどうなんだ" ], [ "下宿屋にいれば、メシだけは食える", "ドヤヒン(下宿料)は?", "払ってない", "そいじゃ、下宿屋もネをあげてるだろう" ], [ "なるほどねえ。加柴の四郎さんに、そうやって、あばれられちゃ、かなわねえからな", "いいや、あばれやしない。おとなしいもんだ" ], [ "そいで、今の砂馬さんは、あのころとはちがって、自分をぶっつけて行けるものが見つかったわけか", "まだ、その、見つけた、つかんだと、はっきりは言えないがね" ], [ "砂馬さんはあの北槻中尉と仲良しなのかい", "どうして?", "斎田さんは、あの中尉を俺とも、そのうち、仲良くしてみせると言った。今はカタキ同士でも、国を憂える点では同じだと言った", "加柴はそれでなんと答えた", "別になんにも……" ], [ "あれは軍人のくせに、すこしボルかぶれのほうじゃないかな", "そうじゃないだろう。いや、そうじゃない", "だってレーニンを研究してるとか……", "参考にしてるんだろう。あの北槻中尉は俺にこう言ってた。軍人として国のために命を捧げるのはいいが、今の日本の、金儲けしか眼中にないような資本家階級のために命を捨てるんではやりきれない。奴らの手先をつとめさせられるのは、かなわない。こう言うんだが、あれも俺と同じ水呑み百姓のせがれなんだ。今のような世の中では、百姓が可哀そうだ。地主に搾取されてる百姓も惨めなら、資本家に搾取されてる労働者も惨めだ。彼らを縛ってる鎖を断ち切るために、世の中の立て直しが必要だと、こう言うんだ。自分たち軍人が、喜んで命を捧げられる国にしなければならない。今みたいでは、兵隊に向って、国のために命をささげろと言うのが苦痛だ。これでは、兵隊を戦場に連れて行って、むざむざ殺すのに忍びない……", "なるほどねえ。分るね。砂馬さんの言葉じゃないが", "なんだ、その皮肉な言い方は" ], [ "北槻中尉の言うことは、そこまでは俺たちと同じなんだが……", "北槻中尉は錦の御旗をぶっ立てて革命をおこそうと言うんだな。黒旗や赤旗じゃなくて……" ], [ "砂馬さん。それは、ちょっとちがうどころか、根本的にちがうね", "軍を、しかし、抱きこんだら強いからな", "だからって、ツァーを中心に推し戴くなんて……。ロシアだってテロリストの究極の敵はツァーだったんだ", "いや、ツァーの国とはちがうからな。そろそろ、なまずが煮えたぜ" ], [ "ロシアのテロリストと言えば、ゲルシュニの話を斎田さんはしなかったか", "俺が聞いたのは、もっぱら支那革命の話だ。ゲルシュニと斎田さんと、どんな関係があるんだ" ], [ "さ、兄さん", "うん" ], [ "どうしたんだろうな、酔いすぎたかな", "兄さんは、これでオトナになるのよ" ], [ "俺はもうオトナだい", "ほんとのオトナになるのよ。そんときに、いっぺんは、こういうことがあるものらしいわ", "そうか。ほんとのオトナになるのか" ], [ "軍隊のことはよく知らないが、自分たちで勝手に武力が行使できるのだろうか", "勝手に?", "命令系統はどうなっているんです。命令なしに武力の行使が許されるのだろうか", "戦闘綱要に、ちゃんと独断専行ということが許されている" ], [ "大杉栄を殺した軍人どもと、おめえは乳くりあって……なんてことだ", "乳くりあうなんて、変な科白を言やあがる", "大杉先生にすまねえとは思わねえのか", "それは、こっちの言いたかった科白だ。大体、砂馬さんを慷堂先生にひきあわせたのは、丸さんじゃないか。俺が慷堂先生と知りあったのも、そのためだ", "砂馬さんはあのままじゃリャク屋になりさがってしまう、あのときはそう思ったからなんだ。砂馬さんはどうしてる", "支那へ行った", "支那へ何しに?", "支那から満州へ潜入したようだ" ], [ "俺は、四郎さんにだけは俺たちと一緒に、黒旗を守って貰いたかった", "丸さん。俺はたとえ軍人とつきあおうと、俺の胸ン中には、ちゃんと黒旗がぶっ立ててあるんだ", "俺はたとえ俺ひとりになっても、黒旗を守って行くんだ" ], [ "自分らの手でやはり独断専行すべきだ", "軍の上層部は信用できない" ], [ "誰が切るか", "あたしがやろう" ], [ "あんた方はまだまだ大事な仕事をして貰わねばならん身体だ", "若いくせに老成ぶったことを言う" ], [ "この座をはずしてくれ", "どうして……", "君を内紛の巻きぞえにしたくない" ], [ "トロゲンだ", "へ?", "吉原だよ。早くやってくれ" ], [ "旅って、どこへ行くんです", "遠くへ行くんだ" ], [ "あたしは年季があけたら、兄さんと世帯を持ちたいと思ってたのよ", "へっ? もてるねえ", "ほんとよ。兄さんさえ、その気になってくれたら……でも、兄さんはおいらんを女房にする気なんかないわね", "そんなことはない", "ほんと?" ], [ "みたいなとは、なんだ", "ごめんなさい" ], [ "あたし、畳屋さんから後妻にって、話がかかってるんです", "畳屋……?", "どうしたらいいかしら" ], [ "なーに、それ?", "なんでもない。さきに行っといでよ。あとで、ゆっくり……" ], [ "兄さんったら、こんなものを……", "しーっ" ], [ "どこへ行く", "京城……" ], [ "どういう公用だ", "こんなところでは言えんな" ], [ "軍の公用……", "軍……?" ], [ "憲兵でなかったら、尋問に答えない? 憲兵を呼んでくるか", "呼んで貰ってもいいが" ], [ "そいじゃ新町へいらっしゃい", "新町と言うと?" ], [ "お客さん、猫が好きなんですか", "ああ……" ], [ "お客さんは猫が好きなんですね", "そうでもないが", "いえ、好きなのよ。ほら、あんなに甘えて……", "え?" ], [ "また東京へ帰るんですか", "うん", "東京はいいところでしょうね", "うん", "あたしを連れてって貰えないかしら" ], [ "帰るとき、一緒に……", "なんだって" ], [ "あの猫、どこへ行ったろう", "お客さんは、なんのご用で京城へ……?", "気味が悪い猫だな。この家の猫かい", "いいえ", "のら猫か", "京城に、あたし、姉に呼ばれて来たんだけど、いやだわ、朝鮮なんて――" ], [ "姉さんは――なにしてるの", "料理屋で働いてんです。あたしはどうせ働くんなら、東京で働きたいんです", "俺みたいな若僧でなく、ほかのお客さんに頼めよ", "そうですか" ], [ "お客さんのほうで何かあたしに頼むことない?", "俺のほうから……?", "頼みたいことない?", "ないね", "そんならいいんです" ], [ "何か用かい", "いえ" ], [ "来たか", "ええ" ], [ "でも、大丈夫……", "なにが大丈夫……" ], [ "あけてごらんなさい", "なんだって……" ], [ "あたしがちゃんと隠しといたから大丈夫", "どこへ隠したんだ" ], [ "昨日、この部屋の掃除をしてたら、そこに変なものがあるんで、何かしらと?", "あけて見たのか" ], [ "頼まれたらそのとき、ちゃんと前もってあたしが預かってあげたのに……。預かってあげようと思って聞いたのに、お客さんたら、何も頼むことないと言うから、あたしはそのまま放っておこうと思ったの。でも、憲兵が来たとき……", "なに、憲兵が来たのか" ], [ "そうよ。こういう男がいるだろう、部屋はどこかって。お帳場でそう言ってるの。そのとき、あたし、何も頼まれもしないのに、よけいなことをするみたいだったけど、あれを持ってかれたら大変だろうと思って、憲兵が部屋に行かない前に、さっとここへ駈けあがって、見つからないうちにあれを持ち出しといたの", "そうか。そいつは、すまなかったな" ], [ "そいじゃ、あれは、トランクのなかに……", "いいえ。あんたが持ってちゃ、あぶないわ" ], [ "あたし、東京へ行きたいの。一緒に連れてって……", "お尋ね者の俺と一緒に、東京へ……?", "お客さんはなみのお尋ね者じゃないわね", "大泥棒か", "泥棒なんかじゃない" ], [ "誰か呼んでくれ", "はいはい。いい子を出しますから、可愛がってやって下さいな" ], [ "うれしいわ", "なにがうれしい", "だって兄さんを、あたし、前から好きだったの。でも、ねえさんがいたんで逢えなかったの" ], [ "暑いから、傍に寄るなよ", "薄情ね", "暑いから暑いと言うんだ", "あーら、こわい顔……", "こわいのは、これからだ" ], [ "いや! 乱暴ね", "素人みたいなことを言うない", "憎らしい。わざと、そんな乱暴な……", "乱暴は俺の地だ", "初会だというのに、ねえ、兄さん、そんな手荒な真似しないで。気分が出ないわ", "俺には気分なんかどうでもいいんだ。俺がほしいのは、おめえの○○○○だけだ" ], [ "なんだ、パイパンか、おめえは", "ごめんなさい" ], [ "見せ物じゃないわよ", "なに言ってやがる。見られるのがいやなら、○○○○も、ことわったらどうだ" ], [ "ひとをなぶりものにする気なの", "ヨリガマシか。言うことをきかねえからだよ", "こんないけすかないお客、はじめてだ", "俺もこんなおいらんは、はじめてだ" ], [ "よし、お礼に着物を買ってやろうか", "何のお礼?" ], [ "暑いから、氷でも飲もうか", "歩きましょうよ" ], [ "なーに", "いや、兄さんとは驚いたな", "じゃ、なんて言うの" ], [ "俺にはちゃんと名前があるんだ。加柴四郎。通称四郎さん", "四郎さんは、いい人なのね", "なんだい、そりゃ。悪い男だと思ったのか", "悪い人だと思ったら、一緒に東京へ出てこない", "ピストルは返したよ" ], [ "あの晩、お女郎屋さんへ行ったんでしょう? 東京へついた晩……", "どうして分る?", "お女郎屋さんが好きなのね", "そうでもないさ", "京城だってすぐお女郎屋さんへ行ったじゃないの", "男だもの", "男の人って、みんな、お女郎屋さんが好きなの?", "ほかの話しようや" ], [ "うまいとこ、見つけたな", "お店?", "よかったな。自分で見つけたのかい", "あたしだって、東京に知り合いがないわけじゃないわ" ], [ "四郎さんの家へ遊びに行ってもいいかしら", "きたねえ下宿だ", "行っちゃ、いけないの?", "いけなかないよ。でも、あんまり、きたないから……。近いうちに綺麗な下宿にかわる。もうちょっと待ってくれ" ], [ "姉さんに手紙出して、残してきたあたしの荷物のこと頼んだけど、驚いたでしょうね。姉さんはきっと怒ってるわ", "怒るより、心配してやしないかな", "そうねえ。だけど、それは、そんなでもないでしょう", "しっかりしてるから大丈夫、そう思ってるかな", "姉さんとは血のつながりはないの", "肉親の姉さんじゃない?", "あたしはおっかさんの連れ子なの" ], [ "四郎さん", "なんだい" ], [ "なにすんだ", "四郎さん、カタギになって", "浪花節みたいだな" ], [ "猪沢市太郎に会った", "あの照子の……? どこで?", "奉天でホテル住まいをしているんだが、豪勢な暮しぶりだったぜ", "娘をガセビリにしといて……" ], [ "おやじはそんなこと知らないんだ", "それがどうしておかしいんだ。無責任なおやじだ", "相変らずだな、加柴は" ], [ "まさかおやじに向って、娘さんはガセビリになってるとは言えないから、俺の同志の加柴四郎という男が、あんたの娘さんと恋仲だったと、まあ、そんなふうに言っといた", "恋仲……?", "そんな話のおかげで猪沢さんとは親しくなって、大変に世話になった。加柴のおかげかな" ], [ "悲堂先生にも会ったぜ", "というと、今度の満州行きは慷堂先生の内命でも受けて……?" ], [ "俺が満州に行ってる間に、加柴も北槻中尉などと同志づきあいをはじめたようだな", "うん。それは、俺としてはだね" ], [ "いいんだよ。俺が言いたいのは、それだったら、三下みたいな役目に甘んじてるのは、どんなもんかね。加柴の四郎さんともあろう者がチンピラ扱いされちゃ、俺たち全体のコケンにかかわる。どうだ、俺と一緒に大仕事をやる気はないか", "阿片の密培地へもぐりこんだのか?", "奥地へはあぶなくて行かれなかった" ], [ "国事からはほんとにもうすっかり手をひいたのかな", "国事……?" ], [ "だから、招待もされたのだろう", "排日の真っただ中に乗りこんだわけか" ], [ "悲堂先生の話を聞くと、現在の右翼の大物のほとんどは支那革命の援助者だ。面白いもんだな", "面白い……?", "自由民権論者が国家主義者になっている。日本とはそういう国なんだ。今に見てろ、今度は社会主義者が国家主義者になる", "俺のことを言ってるのか" ], [ "悲堂先生は自由民権運動に挫折して、支那革命に身を投じた。自分の主義主張を支那革命のなかに生かそうとしたんだ。その支那革命が成就して、やっと今日のような形になったと思うと、やれ排日だ、打倒日本帝国主義……", "そのため、せっかくの支那革命の援助者たちを国家主義者にしてしまった? 大アジア主義の志士を右翼の国家主義に追いこんだのは支那のせいだと言うわけか", "悲堂先生は国家主義者にはならないで、支那メシ屋になった", "すると慷堂先生は……?" ], [ "もっともお値段も高いや。たった十分間で――二人一組だけど、相場は十三円。白系ロシア人が変な日本語で、お祝儀二円と言やがって、十五円ふんだくられた", "二人一組というと?", "そこへ行くと女が十人ばかり出てきて、ずらっと並んだなかから、すっ裸にしたい女を、こっちで二人選ぶんだ。その二人が別室で裸踊りをやって見せる……" ], [ "踊りがすむと、案内のロシア人がジョロカイ五円と言やがった。ジョロカイと日本語で言う。裸踊りの女は淫売もしてるんだ。見るのは十五円で、寝るのは五円、寝るほうが安いのはおかしいが、裸踊りとコミになっていて合計二十円ということらしい", "二人一組のジョロカイか", "それはひとりだよ", "どんなあんばいだった?" ], [ "ウソつけ!", "ほんとさ。あんまり露骨な裸踊りを見たら、なんだか胸が悪くなって、いやンなっちゃった。それにジョロカイ五円と言ったって、いざとなるとまたふんだくられそうだし、そんなに金はないから……", "それにしたって、よくそんな金が……" ], [ "こうして採集したヤニを、今度は油紙に豆油をしいた上に流して、一寸ぐらいの深さにしといて、そいつを二日間直射日光に当てる。ヤニをかきまわしながら乾燥させると、アメのように固まってくる。これが阿片だ。太陽の熱が高ければ高いほど、だからかきまわす回数が多いほど、良質の阿片が取れる。このキのままのが極上の大煙――向うじゃ阿片をそう言ってるんだが、普通の阿片は四分の一ぐらい、リャオズ(料子)と言って混ぜものがしてある。この阿片を取るためにケシの種子をまくのは四月の末頃で、七月の中ごろから収穫がはじまって、八月には新製品が出回る……", "その期間は、ちょうど砂馬さんが行ってた間だ", "ケシには花が赤いのと白いのとがあるが、阿片を取るケシは白い花のほうだ。森の奥に、ぽっかりと白い花畑があって、すごく綺麗なもんだ", "なんだって砂馬さんは阿片などに目をつけたんだ。儲かるからか", "それだけじゃない。儲かることも、すごく儲かるがね。この話は誰にもしゃべっちゃ、いけねえ。いいか。慷堂先生にも、これだけは極秘だ" ], [ "猪沢市太郎と同じ口かもしれんな", "猪沢さんにハルビンで会ったそうです", "おや、そうか。そいじゃ、もうすでに猪沢の仲間入りをしたのか", "悲堂先生にもお会いしたそうです", "それは梶川悲堂から聞いた。砂馬君を面白い男だと言っとったが" ], [ "砂馬君は無理にすすめんほうがいいな", "はあ", "砂馬君には何も言わんほうがいいね" ], [ "君の朝鮮行きの意図は、ばれてるようだな", "クロビイに――いえ、あの、憲兵にですか", "尾垣派の連中にだ", "尾垣派の連中があたしをつけねらっているんでしょうか", "今のところ、そんな気配はないが" ], [ "いえ、そんなことありません", "そうか" ], [ "慷堂先生は何も、一身の栄達のためにどうこうしようという人ではありませんからね", "そうか" ], [ "よく分るが、後始末をどうするつもりだ。無責任に放り出して、自分だけいい子になろうというのはどんなものか", "いい子になどなろうとは思っておりません", "死ぬのは、いつでも死ねる" ], [ "武器爆薬は俺が軍から取ってきてみせる", "ヤマアラシ(暴動)か", "ボルの奴らがもし出しゃばってきたら、ひっつかまえて銃殺だ", "そいつは痛快だ" ], [ "そいつは四郎さん、痛快にはちがいないが、まごまごするとファッショの手助けをすることになりゃしないか", "逆にこっちで利用するんだ", "錦旗革命を黒旗革命にもってこうと言うのか" ], [ "砂馬さんはなんて言ってた", "これは丸さんだけにしか打ちあけてない。みんなに知らせて、事前にばれたりしたら、おしまいだ。テキヤの仲間を集めておいて、すぐさま八方に飛べるようにして貰いたいんだ", "よし来た。合点だ。そいで……?", "軍の蹶起とともに東京は大混乱に陥る。そのとき、東京の要所要所に火をつけて火災をおこすんだ。これを丸さんの同志にやって貰うんだ。ホンテラシ(マッチ)一本でやれる仕事だ。手のたりないことなど、気にする必要はない", "なるほど、火つけ役か。ヤマアラシの火つけ役か", "米騒動の時だって、たったひとりのおかみさんが、米屋をやっつけろと叫んだだけで、あのすごい焼き打ちがはじまったんだ。日ごろ、不満を胸にいっぱいためている民衆の、その胸に火をつければ、いっぺんに爆発する。たちまち暴動だ" ], [ "多年の間、民衆を苦しめてきた奴をひとりひとり――外国の革命みたいに、銀座通りの街燈に、しばり首にしてぶらさげてやるんだ。どうだ、痛快じゃないか", "すげえなあ" ], [ "あの刑事も探し出して、しばり首にしてやる", "サツは、そのとき、どうなってんだ?", "サツは蹶起軍の指揮下にはいる。文句は言わせねえ" ], [ "ヤマアラシだけが俺たちの目的じゃない。街の暴動をおこすと同時に、工場を俺たちの手で奪取して、各工場ごとに革命委員会を作らなくちゃならない", "そうなると、ボルが出てくるな", "丸さんはどうしてそう弱気なんだ。ボルの奴らは、日ごろ、景気のいいお題目は唱えているが、それで暴動がおこせたかと言うんだ。人民の革命的エネルギーがどうのこうのとか、経済闘争を通して政治闘争へとか、うまいようなことを口では言ってるが、革命的エネルギーを実際に暴動へもって行けるのは誰だ。ボルの奴らじゃなくて、俺たちだ。それを見た労働者たちはみんな、実行力のある俺たちに、わーっとついてくる。第一、俺たちには武器がある。兵隊の中にも革命委員会ができて、それが工場の委員会へどしどし武器を供給する" ], [ "どうせ一遍でうまく行くわけはないさ", "なんだって?", "成功が目的じゃない。暴動こそが俺たちの目的だ", "ふむ" ], [ "しっかり頼むぜ、四郎さん。軍人をおだてて、アゲツギ(お世辞)でコマ(だま)して、うまいこと、事をあげさせるんだ", "ありゃ、なんだ" ], [ "人を殺すときは、どんな気がするもんかなあ", "殺す前?", "やっぱり、そうだ", "なにが、そうなんだ", "さすがに奥床しい。やっぱり、やってるね" ], [ "だったら、自分たちの仲間に、はいれなかったはずだ", "みんな、人をばらしたことのある連中ばかりか。それなら、コロシの気持を聞くことはないでしょう", "一向に自慢しないその精神は見上げたものだ。主義者出だと聞いたけど……" ], [ "なんだ、この野郎", "あんたには、何か憑いてるね" ], [ "ツイてる?", "憑きものだよ" ], [ "憑きもの……?", "だから、そんなにうなされるんだ", "うなされてやしねえ、馬鹿野郎!" ], [ "あんたに憑いてるのは、猫かな", "猫……?", "犬だな" ], [ "犬がついてる?", "あんたはイヌ年じゃないね", "ウマだい", "イヌ年の女に惚れちゃ、いけないね", "大きなお世話だ" ], [ "憑きものをおとさなくちゃ……", "俺には死神が憑いてんだ", "それは、あの人……" ], [ "あの人とちがって、あんたは――運が強い", "悪運か? おだてたって駄目だい", "ちょいと、ちょいと" ], [ "あんたの眼は、猫の眼みたいに光ってる", "猫が憑いてるからだろう" ], [ "猫の眼が、夜光るのは、何も猫の眼から光が出るわけじゃない。外の光が猫の眼を光らせるんだ。それと同じように、あんたの眼が光ってるのは……", "ちょいと待った。猫の眼は、まっくらな闇のなかでも光ってるぜ", "まっくらじゃ光らない。きっと、どこからか、光をうけて……", "いや、まっくらななかで光ってた。俺がこの眼で見たんだ", "そいつは、きっと、あんたの眼が光ってたからだろう。その光で、猫の眼が光ったのだろう", "やっぱり気ちがいだ", "あんただって正気じゃない", "いいよ", "犬なんかにとっつかれるのは、あんたが何かにとっついてるからだ" ], [ "あんたが、それをやめりゃ、憑きものも、あんたから離れるね", "きいたような口を……", "だって、あんたの眼が猫みたいに光ってるのは、憑きものがついてる証拠だ。それで光るのさ", "お前さんは一体なんだ", "あんたは、あたしを知らないのかい", "知るもんか" ], [ "あたしは、あんたを知ってる。よく知ってる", "うそつけ", "あんたと、おつきあいはないがね。あんたの憑きものとは仲よしだ", "こりゃ、ほんものの気ちがいだ", "気ちがいじゃない。ひょうたん池のアビルだよ" ], [ "浴びる?", "池のアヒルだろう" ], [ "今日のシンブンはなんだい", "控訴院だ" ], [ "どこから回ってきた?", "富坂……" ], [ "クロ……?", "クロ(有罪)にはちげえねえ" ], [ "そういうおめえはクロトンビ……", "悪かったな。こっちがクロなら、そっちはアカイヌ(放火)……" ], [ "アカはアカでも、アカ(凶器)を持ったアカデ(強盗)もいる……", "アカが三枚……アカタンときたね" ], [ "梅のアカよろしは、もうはいってら", "あんたのことか? アカキリ(錠前切り)……?", "俺のことじゃねえ。俺は梅毒じゃねえ", "ウメはどいつだ……", "ウメ印でもいいや、俺はアカガイ(女陰)が食いてえなあ", "アカガイでなくて、アカ鬼(検事)にもうじきお目にかかれらあ", "そいでアカ落ち(刑務所入り)……", "赤いオベベか" ], [ "玉塚さんに会った。豚箱で", "静かにしないか" ], [ "こいつを捨ててくんな。ムシがついてる……", "ムシが?", "あんたのことじゃないよ" ], [ "ガセビリ……?", "淫売だい", "知ってら、そんなことは", "知ってて、娘をガセビリにするとは、ひどいオヤジがあったもんだ", "そいつは俺も知らなかったんだ", "俺が娘さんに会ったときは、もうガセビリになってたんだ。可哀そうに……", "俺はちっとも知らなかった。だから俺は満州から出てきて娘を探してるんだ。娘をどこへやった?", "知らねえよ。もう手遅れだよ" ], [ "誰かにもう、どこかへ売られちまったよ", "売ったのはお前さんじゃないのか", "冗談言うない。いくらコゲ(零落)たって、スケコマシ(女を売り飛ばす)をするような俺じゃねえ" ], [ "どうだ、猪沢君の意見は? 軟弱外交の賛成者としては、どうかね", "それは昔のことですよ" ], [ "商売上からそうなったのか", "矢萩さんにかかると、ボロクソだね" ], [ "ひとつセンバ(温泉場)へでも行って休養してくるんだな。ひと休みしたら、どうだ、俺と一緒に仕事をしないか", "軍の派閥争いからは手をひいたほうがいい……?" ], [ "仕事ってのはどういう……? 人殺し? 人殺しの仕事?", "なんだ、その科白は?" ], [ "俺も人が殺したいね", "加柴!" ], [ "砂馬さんは俺が猪沢さんの娘をどうかしたみたいに言ったようだな。いやだねえ", "猪沢君の娘……?" ], [ "あんた、やったら", "加柴、もうやめろ。すこし、のぼせあがってやがる" ], [ "加柴は昔からのあたしの仲間で、残念ながら猪沢さんには……", "売れねえか" ], [ "なんだ、また何か見えるか。憑きものでも見えるか?", "何しに来たんだい", "ご挨拶だねえ。お前に会いに来たんだ", "そうか、それはすまなかったな。加柴の四郎さん", "ほ、なれなれしく言うじゃないか", "もっとなれなれしく言えば、俺に頼みがあって来たのかと思った", "しょってやがる", "死神をしょってるね、四郎さんは" ], [ "何の商売だ", "あたしは予言者……" ], [ "アビルの言うことに間違いはない", "あとで会いたいね。どこかで飲んでら。どこがいいかな" ], [ "あんたの家は本郷かい", "いいや、ちがう", "本郷でつかまったそうだが……", "つかまったんじゃない", "アビルとはなんだい。羅漢のほうがいいな", "ダビデの勇士アビル……" ], [ "よしゃがれ", "こわい顔……" ], [ "素敵。あたしの見た眼に狂いはなかった", "なに言ってやがる。ホンヤマ(男色)は俺の趣味じゃねえ", "そんな話じゃないのよ" ], [ "ねえ、兄さん", "よせったら", "そうお。いやなら、よすけど、聞いたほうが、きっと兄さんには、いいんだけど", "なんの話だ", "大事な話……兄さんにとって大事な話" ], [ "その顔は、人を殺したがっている顔……", "きいたような口を……" ], [ "じゃ、殺してよ", "お前さんを?", "殺してもいい。殺してくれない?" ], [ "さあ、なんて言ったらいいかねえ", "いいのよ" ], [ "今だって可愛がってくれる人があるんだから……", "俺の知ってる奴か", "実のある人……ずっと、あたしを愛してくれてるわ", "アビルのことか", "アビル……?" ], [ "こわくなったの?", "逃げたくても、もう手遅れだと言いたいのか", "いい度胸。素敵ね" ], [ "あたしは客ひき……", "ダキか、おめえは", "あたしは抱かれたい……", "カモと見られたか。俺は金なんか持ってない", "カモは向うで、ネギしょって待ってるわ", "あいにく俺は、ハナっぱしは強くても、ハナのほうは強くない", "ハナっぱしさえ強ければ……", "それにしても、話が大分ちがってきたな", "そうでもないのよ" ], [ "これに移るのかい", "ええ" ], [ "波ちゃん。波ちゃん", "四郎さん?", "波ちゃん。波ちゃん" ], [ "どうしたの? 四郎さん", "波ちゃん", "はーい", "波子……", "はーい", "波子に会いたい" ], [ "なんかあったのね、四郎さん", "会って話す。来て貰えるかい?" ], [ "あたしんとこへ今日、変な人が来たのよ。四郎さんのことで……", "サツ――警察の奴か" ], [ "また警察に追われてるの? そんなときじゃないと四郎さんは……", "この前も、そう言えば、俺がつかまりそうなときに、波ちゃんが助けてくれたな" ], [ "四郎さんの下宿へ行きましょうか", "下宿は駄目だ" ], [ "まだ、もとの下宿なの?", "うん" ], [ "誰が来たんだい、波ちゃんとこへ?", "その人、四郎さんをかくまってあげるって……" ], [ "自分の身の始末は自分でつける。ひとりで……", "ひとりで、どこかへ?", "波ちゃんに俺は別れを告げに来たんだ", "いやあねえ。股旅映画みたい……" ], [ "あたしの知ってる家へ行って、ごはんを食べましょう", "うん", "静かなとこがいいでしょう", "うん。行こう" ], [ "いいとこ、見せてちょうだい", "なに言ってやがる。いやだよ" ], [ "ロクも、こうなったら手伝え", "はい" ], [ "ふんじばっといて殺すなんて……", "なに? えらそうな口をきくじゃねえか" ], [ "そいじゃ縄をとこうか。といたら、お前さんがやるか", "やるとは言わねえ", "それ見ろ。そんな度胸もねえくせに", "うるせえな。俺はここへこのオカマを殺しに来たんだ" ], [ "波ちゃんはここへお客と何しに来たんだ", "マージャン", "それだけか" ], [ "俺は波ちゃんが好きなんだ", "四郎さんは、ほんとに、人殺しをしちゃったの?" ], [ "四郎さんがあとからお風呂に来るかと思ったら……", "来ないんで、がっかりした?" ], [ "すっかり波子は悪くなったな", "なぜ?", "そんなことを言うのが悪くなった証拠だ" ], [ "乱暴ねえ", "ああ乱暴だとも" ], [ "俺は波子を大切にしてきたけど、もうやめた。店のお客なんかと、こんなところへ来て、一緒に風呂にはいったりしたのか", "まさか" ], [ "そんないたずらしちゃ、いや", "いたずら?" ], [ "要塞堅固だな", "知らない" ], [ "お願いだから、もっとやさしくして……", "いやがるからだ", "じゃ、いやがらない" ], [ "二人でどこかへ逃げましょう。あたしんところへ来た人に頼んで見てもいいわね。たしか、矢萩さんとかいう人だったわ", "矢萩……?" ], [ "俺には犬が憑いているからか", "あんたは不思議に誰からも愛される", "愛される値打ちのない人間なのに", "自分でそうきめてかかって……殺している", "人を……?", "愛を……" ], [ "インテリのくせに、俺のことを犬が憑いてるとか、なんとか……", "あれは、ハッタリさ" ], [ "いや、ほんとに犬が憑いているかもしれない。俺は犬をぶっ殺したんだ。それを、あんたは見抜いている。犬の次も、ちゃんと見抜いている", "それが俺のハッタリさ" ], [ "どうしようもないかな", "そんなことはない" ], [ "じゃ、どうする気だ", "どうかしたい", "でも、どうしたらいいか分らない?", "それは分ってるんだ", "どっかへズラかりたい?", "そうだ。ズラかろう", "いっそ遠くへテンガエル(逃げる)がいい" ], [ "これを持って北海道へ飛びなさい", "北海道?" ], [ "根室の俺の弟の家へ行きなさい。この手紙を見せれば、弟はかならずあんたの面倒を見る", "弟さんはヤクザか", "カタギの漁師だけど、あんたの面倒を見るぐらい、弟にしたらなんでもないはずだ", "俺をかくまってくれるか", "心配無用", "見ず知らずの俺がいきなり行って、大丈夫かね", "俺からもビンピ(電報)をしとこう" ], [ "ナオン(女)と一緒に行ってもいいかね", "賛成だね" ], [ "ほんとに、女と一緒に行きたいんだ", "そのほうがいい。ひとりよりそのほうがいい", "あんたはなんで、俺にこんなに親切にしてくれるんだ" ], [ "縁もゆかりもない俺に、なんだって、こう親切にしてくれるんだ", "加柴さん" ], [ "あのとき、ラジオではいったリュウコが、あんなにながくなったのも、俺がもとあばれてた時分の前歴がばれたからなんだ", "あんたは俺の前歴だけじゃなくて、現在の俺のことも知ってるみたいだが", "現在のあんたは、おそらく、情熱のやり場がなくて、犬を殺したり、猫を殺したり……", "ヒコベエは――殺さない。いや、殺したかな。いーや、殺しちゃいないんだが、殺したみたいな気もする。犬はたしかにぶっ殺した", "そのゴチャマイ(犬の撲殺)のあげくに、人殺しの仲間入り……? それはやめてほしいな", "あんたはニヒリストのはずなのに……", "いや、なりきれなくて、こんなことをして、自分をだましている。ごまかしている。中途半端な韜晦だ", "中途半端?" ], [ "今夜のあの男は、ちょっと、様子がちがうけど、加柴さん、相手にならないで、早く行きなさい", "ありがとう" ], [ "加柴さん。かんにんして。あたしが悪かった", "うるせえな。そう、つけ回すなよ", "そうなの。昨夜はあたしが悪かった", "悪かったと思うんなら、あっちへ行きな", "いえ、何もかも、あんたに白状しなくっちゃ……" ], [ "こんなことじゃあ、舞台が勤まらないのも当り前だけど、あたしだって、もとは宮戸座のちっとは鳴らした女形だったんですよ", "矢萩さんとやらが、そのごひいきだったのか。ひいきの旦那に、こう言いな。俺を仲間にひきずりこもうと思ったら、もうすこし気のきいた手があるはずだって。おめえも、うろちょろ、ダイマク(つける)のはよせ。よさないと、おめえの生命もあぶないぞ。分ったか、このネリマヤ(大根役者)" ], [ "エンギをかつぐわけじゃないが、この前もそうだったから、波子と一緒だと、きっとうまくズラかれる", "それであたしを連れてくの?" ], [ "行けば、俺たち、夫婦にならなくちゃならない", "もう夫婦だわ", "そうか", "いやなの?", "なに言ってやがる", "あのね、あたし、新平民なの" ], [ "新平民は人間じゃねえとでも言うのかい", "四郎さん。ありがと", "波子のエトは……なに年だい?", "イヌ年だけど……どうして?" ], [ "丸さんのところまで、ガサリ(探し)に来たのか", "おやじに会ったそうだな", "え?" ], [ "マリちゃんてえのは出世して、どこかの温泉場のマクラ芸者になってるそうだ。それからエミ子ってえのはウメジルシ(梅毒)で死んだそうだよ", "そんなの、知らねえよ", "富江は四郎さんのこと覚えてて、どうしたろうって言ってたぜ", "それよか、クララはどうしたろう", "かんじんのそいつが分らねえ。それだけは富江も知らねえ", "クララのおやじはなんで俺を探してるんだろう。俺を満州へ連れてこうというのかな", "砂馬さんもおめえを探してる。クララのおやじと砂馬さんは何か張り合ってるようだな。四郎さんを両方でねらってるのさ。大したもんだよ。四郎さんも" ], [ "もうひとり、俺をねらってるのが、いやしないかい", "矢萩のことか" ], [ "あれは、ちょっとこわいね", "こわい? そう言や、波子のとこへだって、やってきた。ヤク(いや)な感じだな", "波子……?", "どうして俺のことを知ってやがんのかな", "あの連中は、いったん目をつけたら、しらべあげるさ" ], [ "アナからボルにかわったと思ったら、今度は小説家……ああいうのを転向作家というのかな", "砂馬慷一だって純正アナーキストからリャク屋になり、今度は支那浪人……", "砂馬さんは何かでっかいことを考えてるようだが" ], [ "支那を食いものにしている奴らを、向うで見て来たのが、まずかったかな", "丸さんとは、事が破れたら馬賊になろうと約束したが" ], [ "あの暴動計画もああたあいなくポシャろうとは思わなかった", "あれはモノになるまいと睨んでたよ。話がうますぎる……" ], [ "満州行きはやめか。クロポトキンの『相互扶助論』に出てくる北満の動物、あれにお目にかかれると思ったのになあ。北満の苛烈な自然のなかでお互いに助け合いながら生きてる動物……", "俺たちみたいだな。クロポトキンとはなつかしい名が出てきた", "なつかしい?" ], [ "北満じゃないが、俺は北の果てに行く……", "どこへ行くんだ", "――人をネムらせちゃったんだ" ], [ "そうらしいな。砂馬さんから聞いた", "砂馬さんは矢萩から聞いたのか。あの矢萩ってのは、どういう奴なのかな", "おめえは知らねえのか" ], [ "その犯人がどうやら矢萩らしいんだ。いや、矢萩だとされている。その総領事は日本の治外法権撤廃を建言に来たんだ。それを憤ってやっつけたらしい。対支軟弱外交の連中への見せしめに、その総領事を血祭りにあげたんだな", "それで、よくまあ、ワレねえで……それどころか、あの矢萩ときたら、のうのうと大きな面して……", "かげでもっと、いろいろすごいワリゴト(悪事)をやってるようだ。四郎さんもあの仲間にはいったほうがハクイ(安全な)んじゃねえのか", "いやなこった。丸さんは砂馬さんと大分親しいようだが、それでアナーキズムが守れるのかい", "そんな口のきけるおめえか" ], [ "俺もそろそろ身を固めようかと思ってる", "女の科白みてえじゃないか", "俺もかかあを貰おうかと思ってよ……" ], [ "あの奥さんは綺麗な人ねえ", "うん", "でも、なんだか、こわそうな人ね", "うん", "ご主人より年上みたいだけど", "うん", "何を言っても、うんうん……いやねえ", "うん", "あら、こんなところに、お手玉が……" ], [ "どうしてお手玉を置いてったのかしら。置き忘れるなんてことはないわね", "うん", "死んだんじゃないかしら", "持ち主が?" ], [ "雑夫は九州もんなのか", "いいえ、あの女工さんたちよ。秋田から来たんですってさ。それが、九州と同じバッテを使うのよ。不思議ねえ" ], [ "罐詰工場でか?", "ええ" ], [ "百成さんにただぼんやりお世話になってるのは、いやだわ", "もったいないか", "そうじゃなくて、可哀そうな女工さんたちに、なんだか悪いわ。あんたの言う搾取――搾取の上に、のほほんとすわってるのは、いやだわ" ], [ "物騒な世の中になりましたね。いや、そう言っちゃ、野中さんに悪いか?", "悪い? あたしを物騒な連中の一味だとでも……清一郎さんの手紙には何かそんなことが書いてあったんですか?" ], [ "一味だったら、あたしにも早速、追手がかかるはずだ", "なるほど……" ], [ "五月の事件は小川秋明が黒幕らしいですな", "すると、南一光も……" ], [ "南一光のことは聞かなかったですね", "百成さんは詳しい情報をご存知なんですか", "いや、ちょっと新聞の連中に聞いただけですよ", "ふむ", "野中さんのことなど、あの連中には――よけいなことは喋ったりしませんから……" ], [ "綾子はときどき、お邪魔してるんじゃないですか", "いいや", "兄貴の話を何かしやしなかったですか", "いいや" ], [ "しっかりしてよ", "波子か", "なんの夢見てたの?", "波子……", "ここにいますよ。しっかりしてくれなくちゃ、いやだわ" ], [ "いまいましい夢を見た", "あんたがたとえつかまっても、あたしは子供を生んで、ちゃんと育てるわ" ], [ "なんだか気味の悪い花ですね。まるで毒でもありそうな……", "毒の話は聞かないけど……。そうねえ、これを馬は食べないわね" ], [ "奥さんは俺の名前をどうして……", "うちの人は知らなくても、あたしは知ってます" ], [ "誰から聞いたんです", "セイさんから……" ], [ "清さんは一体、東京でなにをしてるんでしょう。金原さんは知ってるらしいけど、あたしにはなんにも言わない。言いにくいのかしら。加柴さんも、いえ野中さんも言いにくかったら、無理におっしゃって頂かなくてもいいのよ", "別に言いにくいことはないですよ", "いえ、あたしが聞いて、いやな気がすることでしたら、あたしも聞かないほうが……" ], [ "乞食みたいな生活をしてるとか……", "なんだ、ご存知なのか", "あんたもご存知?" ], [ "あたしはお会いしたことないんです", "おや、ご夫婦なのに" ], [ "まるで仙人みたいだから、結婚なんて考えませんね", "困った人ねえ。あたしのことを何かあなたに……?", "清さんが?" ], [ "奥さんのことは旦那があたしに――なんだか妙なことを言ってましたよ。清さんの話をしに、あたしんところへ、ちょくちょく来るんじゃないかって", "うちの主人は右翼なんですよ" ], [ "清さんのお友だちの野中さんは左翼でしょう", "旦那は右翼?", "つきあいで、仕方がないんでしょうけど" ], [ "すまねえなあ", "なーに", "ごめんよ、波子", "なに言ってんのよ" ], [ "波子はどうして、こんな俺なんかと結婚する気になったんだい", "今さら、何言ってんのよう", "こんなさみしい、みじめな暮し……", "いいえ、ものは考えよう。二人だけの楽しい新婚旅行だと思えば、いいじゃないの" ], [ "短い旅行ならいいけどな", "あんただって、いつまでも、ここで、こんな暮しをしている気はないでしょう。そのうち、あんたは――度胸のあるあんたのことだから、きっと、どえらい仕事をする人だと、あたしは思うわ", "なんだ、俺と一緒になる前は、カタギになれと言っといて……", "前みたいな、あんなあぶないことは、まっぴらよ", "ああいうんじゃない、どえらい仕事……?", "赤ちゃんが生れるまで、ここにいましょうよ", "うん" ], [ "死ぬやつは死ぬさ", "死なねえ奴は死なねえか" ], [ "百成の細君が、いつだったか、水芭蕉は馬も食わないと言ってたが、なるほどねえ。生きるために、なんでも食う馬が、あの水芭蕉は食わないのか", "あの女房は、清さんが札幌で知り合った女なんだ。札幌から根室へ清さんが、旗をまいて戻ってきたとき、あの女もついてきた。そしてあの真二郎の女房になった" ], [ "ごめんなさい", "なに言ってんだい。これは――なに言ってんのよは、波子のおハコだな", "ごめんなさい" ], [ "泣く奴があるか", "うれしくて泣いてんのよ" ], [ "支那のシナ……? これはいい。野中さんも支那へ雄飛の志を抱いてるためだな", "いや、いや" ], [ "あんたこそ、支那のシナだなんて、変なこと言って……", "変なことじゃない。俺にだって夢はあるんだ", "そんなら支那へ行けばいいのに……" ], [ "百成さんはそんなに支那へ行きたいんですか", "そんなに?" ], [ "どうして支那に行きたいんですか", "どうして?" ], [ "あんたに先生がどうしても会いたいんなら、先生がじかに来ればいいんだ", "そうもいかねえだろう" ], [ "ちゃんとそれは、うまく、マイちゃった――と言いたいんだが", "ついてるのか", "はなから、てんで、ついてやしねえ" ], [ "あれは悲憤慷慨派だな", "なんの派……", "君はちがうな" ], [ "野中さんはインテリだね", "冗談じゃねえ", "俺はバカだけどね" ], [ "あの先生はどうなんだろうな。親分としちゃ、あんまりのびそうもないな。ひとりで何かやってる柄だな。小さいな", "ありがとよ" ], [ "なーに、阿寒湖へ行ったついでに、ここへ寄ってみたのさ", "ついでに?" ], [ "北海道へは何しに……", "遊びに来たのさ。ひとつは瀬良照子に会うためさ" ], [ "それは、また、どうして……", "猪沢市太郎は支那へ行った" ], [ "君に会いたいそうだ", "照子が? 俺に会わす顔はないはずだが", "そんなことは俺は知らない", "どこにいるんです", "そう言うのは、やっぱり君も照子に会いたいからか", "用事というのはそれなんで……?" ], [ "あの朝倉のどこが気に入った?", "ああいうのをニヒルと言うのかな", "あれはフウテンだ" ], [ "それには満州のあの張作霖事件のようなのが支那でもおきにゃいかん……", "おこさにゃいかん……?", "君もそう思っとるか" ], [ "砂馬さんも支那へ行ったんじゃないかな", "あれは満州の阿片でしこたま儲けた。軍を使って、阿片の密培地をおさえさせて、砂馬はそれで私腹を肥やしておきながら、しかも軍から信用されている。あいつは狡いやつだ" ], [ "軍もあいつを利用しとるんだろうが、あいつは私利私欲しか考えとらん。あいつはまだ左翼だな", "私利私欲しか考えないのが左翼……?", "国家のことを考えとらん" ], [ "あたしも今んところ自分のことしか考えてない", "――なんて言って、のうのうとしていられるのは、誰のおかげだと思ってるんだ", "あんたのおかげですか", "俺と一緒に支那へ渡れば、すべては帳消しになる。こんなところに逃げ隠れしとることはない。俺がすべてを帳消しにしてやる" ], [ "悪党? そう言う矢萩さんは悪党じゃない……?", "国を思う悪党さ", "対支強硬論も国を思うため……? 慷堂先生も国を思い、支那を思い……だが矢萩さんのような対支強硬論者じゃないな" ], [ "ことわった", "まあ、もったいない" ], [ "チャンスだったのに", "なんのチャンスだ", "ここから出られたのに……こんな生活から抜け出られたのに" ], [ "きっと百成さんの奥さんがこっそり取り計らってくれたんだわ", "奥さんが?", "百成さんの兄さんは支那へ行ったそうよ", "アビルが? なぜそれを今まで俺に黙ってたんだ", "だって、奥さんが黙ってなくちゃいけないって……" ], [ "今そこで、綾子……じゃねえ、ガンケ(親方)の奥さんに会った。野中さんにご用? なんて言ってやがった", "言ってやがった――はないだろう" ], [ "わしは、百成さんのところで働いてたもんです", "そいつは、まずい", "ちっともまずくはないんで……わしはこんなカタワになって、いえ、カタワにされて、お払い箱になったんで……" ], [ "俺のところへも来た", "矢萩が……?", "特高だよ。斎田慷堂と何の関係があるのかって聞きに来やがった" ], [ "右翼はいいもんだな。人殺しをしたって、大目に見てくれる……", "誰のことだ……", "変な奴って誰のことだ。清さんがあんたを裏切るわけはないだろう", "清さんは上海へ行ったらしいな", "俺にも来ないかと言ってきた" ], [ "あとで、カニのフンドシをすこし貰ってくかな", "ああ、いいとも" ], [ "クナシリへ一遍渡ってみるかな。人の背より高いフキが生えてるそうだな。馬が怪我をするって言うから、すごい", "クナシリのボリボリ(キノコ)はうまいな。今年の秋は、あんたにシメジやマイタケを持ってこよう" ], [ "共産党も大物がころりとおジギをしちまって――転向とかなんとか、だらしがねえったら、ありやしない", "まだ、アナーキストなんだな", "まだとはなんだ" ], [ "俺があぶない?", "なに言ってんのよ。東京のお父うさんが危篤なのよ" ], [ "あら、いや。あんたのお父うさんが死にかかってるのよ", "どうしてそれが分る。事実かどうかあやしいもんだ" ], [ "東京へ?", "すぐ行ぐう。さしあたり入用なものだけ持って……", "東京へ出たら、もうここへ戻っては来ないんでしょう?" ], [ "あとで送って貰えばいい", "大丈夫かしら", "早くしないか。夜汽車でたつんだ" ], [ "縁起がいいから持ってこう", "なんだって", "いいのよ", "おい、波子" ], [ "変じゃない。それが当り前だ", "あら、いや、恥ずかしい。いや、いや" ], [ "好きになったなあ、波子は", "誰のせい?" ], [ "行ったら、清さんによろしく伝えましょう", "あら、上海へ行ったこと、ご存知なの?" ], [ "あたしも上海へ行きたい……", "僕と一緒じゃ、奥さん、あぶないな。それは奥さんだって知ってるはずだ。行くんだったら、あの金原君とでも……" ], [ "いいえ、きっと、それは主人の……", "どうしてご主人はそんなことを……", "加柴さんに、いえ、野中さんに早くここを出て行って貰いたいからでしょう。主人としたら無理はないわ", "それにしても、僕にはちっとも、むごい親方ではなかった", "清さんへの義理がありますもの" ], [ "ほんとは、百成さんの兄さんの子なんですって", "清さんの子?" ], [ "北海道へまた帰るのか", "帰らない" ], [ "こいつの籍もまだはいっていないんだ。東京へ出てきたからには、思いきって、いれるつもりだが", "思いきって?" ], [ "わしは彼らのように天皇陛下を自分らのために利用するというような……", "そんな畏れ多い……", "……考えじゃない。じゃないが、君らともすこし考えがちがうかもしれん。そのちがう点で、君らがわしと、たもとを分つことになっても致し方ない。君たちは帝国軍人として陛下につかえている身だ", "そうです。自分らの軍隊はお上の軍隊で、日本国民の軍隊ではないのです" ], [ "陛下のために生命を捧げる――それはすなわち、陛下の赤子である国民のために生命を捧げる、そういうことにならんかね", "ちがいます。根本的にちがいます。天皇陛下の国民であって、国民の天皇陛下ではないのです" ], [ "慷堂先生がおっしゃるのは、要するに現状のままでは軍閥の権勢欲や財閥の私欲のために陛下の兵隊を殺させることになる、それでいいのかということなのだ。自分らが陛下の軍隊をあずかって、その兵隊の生命を、むざむざ野心家の私利私欲のために捧げさせるのでは、自分らとしても……", "だから、自分らもこれではならぬと切歯扼腕しているのです", "陛下の軍隊を、資本家どものために殺させては、大御心にそい奉るゆえんではないな" ], [ "息子が除隊になったんで、やめたんだが", "それはよかったですね", "だが、また召集が来たそうだ", "可哀そうに、支那へでも連れて行かれたかな" ], [ "でも、ことわりました", "ことわった?" ], [ "それに英米がかならず出てくる。出てくるように支那はしむける。そうなると、せっかく満州をおさえたのに、元も子もなくなってしまう恐れがある", "英米もともに討ったらいいでしょう" ], [ "そんなことを言うから、国民から軍閥だなどと言われる", "また、国民ですか" ], [ "戦さを進めて国内改造をしようというのが、君たちの倒さねばならんとする軍閥の考えだ。君たちは何よりもまず、天皇陛下に帰一し奉る国内改革こそが大事だという意見だったのではないか", "支那を討つことに先生は反対なのですか。先生は前に、日本の援助があったればこそ、支那革命が成就したのだとおっしゃった。排満興漢の旗じるしをかかげたあの中国革命同盟会の本部が東京にあったればこそ、安全に守られて、清朝顛覆の大業も成功を見ることができたのだと先生はおっしゃった。だのに彼らは、それにむくいるに、排日抗日とは何事ですか" ], [ "わしらの同志は身命を賭して彼らを援助した。彼らにとって日本は忘れがたい恩人のはずだ。その彼らが今日、日本に対して排日の抗日のと……", "実に許しがたい忘恩行為です", "だが、しかしあの排日抗日には、支那のほうにも言い分はあるのだ。それと言うのも、日本のやり方が、なんと言ったらいいか、一口に言ってまずい。実にまずい。ただいたずらに支那の怨みを買っている", "先生は支那に対してやはり同情的です。いくら裏切られても一時は愛した子供だからでしょう。それにしても先生たちは共和革命になぜ同調的だったのですか" ], [ "日露戦争前のことだが、扶清却露という言葉があった。清朝を扶けて、東洋に野望を抱くロシアをしりぞけようというのだ。わしらの先輩は、それだった。清朝を扶けて、東洋の平和を築こうというのだ。それが排満興漢の支那革命に同調するに至ったのは、清朝を相手にしていたのでは東洋の平和が望まれなかったからだ。日露戦争で日本が勝利を占め、却露は一応解決したが、東洋をおびやかす列国の脅威は去ってない。そのとき清朝政府では問題にならんので、興漢運動に同調したのだ。この排満興漢とは、もとは満人の専制に対する民族自治の要求だった。それが三民主義の第一条目となったのだが、この民族主義が今はかわって五族共和になった。漢、満、回、蒙、蔵の五族だ", "東洋の平和を今は支那のほうで乱しているのではないでしょうか。なぜなら、日本に対する態度など、排日どころか、まさに侮日です", "侮日に対しては武力を用いねばならぬ? 国内問題とちがって、対支問題の場合、侵略と見られるような武力を用いるのは、わしは賛成できん", "やり方がまずいとおっしゃるのは、そのことですか", "政府だけを咎めるわけにもいかん。ひとばかり責めるのではいかんな。かつてはわれわれの同志だった者が――昔は純粋な情熱から支那を愛していた者が、今は利権漁りに狂奔して、昨日の支那の友は今日、支那の敵になっている。支那革命の援助者が今は、支那側から言わせれば売国計画の中心人物になりはてている。いわゆる支那浪人の徒輩だ。これがまた、支那の言う蚕食、日本の侵略の手先になっている。今、加柴君の言った矢萩大蔵などがそれだ。ああいう支那浪人がいるために、排日抗日をどのくらい煽り立てることになったか分らない。排日が支那全土の運動になった、そのきっかけを作った済南事変、たとえばあれを見ても、日本側の報道だとこうなっている。済南の在留邦人が略奪に会っているというしらせで、日本軍が出動した。邦人保護で出て行くと、支那側からいきなり発砲してきたので、日本軍もやむなく応戦した。それで戦争開始となって、事が大きくなって、日本軍の済南城占領というところまで行った。日本側の発表はこうなっているが、支那のほうでは、日本側が日支の衝突を挑発したのだと見ている。日本の謀略だと見ている。残念ながらそれは事実のようだ" ], [ "まずいと言うのはこれだ。この済南事変のため支那全土に排日の波がまきおこった。五・三済南虐殺事件と言って、未だに憤激を忘れてない", "矢萩さんは張作霖事件のときに……" ], [ "加柴君。君は砂馬慷一に会ったか", "いいえ、まだ", "砂馬君はどえらい金儲けをしている。わしに軍資金を出してやろうと言ってきた", "軍資金?", "きっぱりことわった" ], [ "あの、なぜ日本は、支那へそんなに手を出したがるんでしょう", "手を出す?", "侵略したいんでしょう" ], [ "東洋の平和のためだ", "支那ではそれをどう見てるんでしょうね", "支那では……" ], [ "支那で金儲けをしたい資本家の言いなりになって、日本の政府も軍部も、資本家の走狗となっているからだと見ている", "けしからん!" ], [ "国内改革がどうしても日本は必要なのだ", "資本家の走狗として死ぬんでは、死にきれない" ], [ "兵隊を資本家の走狗として死なせることは、断じてできない", "――走狗" ], [ "奥さんですか", "はい" ], [ "詩人でいらっしゃいますか", "いやあ……" ], [ "昨夜、主人は徹夜いたしまして……", "ゆっくり寝てて貰っていいんです" ], [ "なにが……", "万事。小説もすっかり当てたな" ], [ "サヤ(家)も豪勢だし……", "豪勢なのは砂馬慷一だ", "どうして?", "すごい家を建てたが、君は知らないのか", "まだ行ってない", "大変な大邸宅だ。もっとも子分が大勢ごろごろしてるから、大きな家でなかったら駄目だな", "そんなに子分が……", "丸万留吉はさしずめ一の子分だな", "丸万の奴……", "細君がまたすごい", "バシタ(女房)ができたのか", "有明輝子という映画の女優さんだ", "テルコ?" ], [ "四郎さん、顔色が悪いね", "いやなこと言うな", "ひどく痩せたな", "大きなお世話だ", "事実を言ってるだけだよ" ], [ "この間、浅草へ行った", "浅草がどうかしたのか", "オカマのロクとかいう男に会った", "それがどうした", "もと役者だって……?", "だから、それがどうしたんだ", "世間は狭いもんだ。四郎さんを知ってると言ってた" ], [ "四郎さんとヤバイ橋を渡ったとか", "おい、タマさん。なんだ、そのバコト(言葉)は、俺を何かタタク(おどかす)気か。いいや、オヒャラかす気か" ], [ "名前は――加柴四郎でいいかね", "いや、そいつはまずいな" ], [ "お店へよくいらして下さるんですよ", "よく、でもないが、ま、時々……" ], [ "かおるさんが四郎さんの奥さんとは知らなかった", "そうか。何しろ俺がバテちゃったから……" ], [ "砂馬さんが見舞いに来るところなんだが、ずっと満州なもんで……", "砂馬親分は上海が本拠じゃないのか" ], [ "いろいろむずかしいことがあってね", "砂馬親分は豪勢だそうだな", "砂馬さんはしょっちゅう四郎さんのことを言ってる。どうして砂馬さんのところへ顔を出さないんだ" ], [ "むずかしいことがあるって、なんだい", "軍にはむずかしい派閥があって――四郎さんのほうがこれは詳しいだろうが、それで仕事もなかなかむずかしいんだ" ], [ "真木大将はその統制派だったかな", "いや、真木大将は皇道派さ" ], [ "軍の実権を握っているのは何派だ", "それは統制派だ。陸軍大臣が何しろ統制派だからな。教育総監の頃は、あの越境将軍も皇道派だったらしいが、陸軍大臣になったら――いや、そうじゃない、なる前から統制派に変って行って、それで陸軍大臣になれたと見るほうが正しいだろうな", "越境将軍とはなんだ", "教育総監部に来る前は朝鮮軍司令官だったんだが、そのときにちょうど満州事変がおっぱじまった。それっとばかりに朝鮮軍を、中央の命令を待たずに満州へくり出したのが今の陸軍大臣だ。越境将軍の名がそれでついたんだが、朝鮮軍司令官から教育総監部総監という要職に迎えられたのもその功績のせいだろう。妙な功績だな。越境進出は自分の発意というより部下につきあげられてやったことだろうが、それでトントン拍子に教育総監部総監から今度は陸軍大臣だ" ], [ "国内改革は商売上、困るのか。統制派だって国内改革を考えてるんだろう。軍の独裁政権をねらってるんだろう", "統制派のほうは、それが目的じゃなくて手段なんだ", "目的はなんだ", "戦争さ" ], [ "皇道派だって軍人である以上、戦争好きにはちがいないが、国内改革のほうを第一義と見ている。戦争をやるとすれば、国内改革のための戦争……統制派は逆に戦争をやるための国内改革……", "丸さんはそんな統制派のほうなのか" ], [ "戦争をおっぱじめるほうがいいんだ。できるだけ、どえらい戦争を……", "丸さんがそんなに戦争好きになろうとは……。商売になるからか" ], [ "店をかわってくれ。あいつが大きな面して、お客風を吹かせるところなんか、やめてくれ", "大きな顔なんかしてないわ", "それでも……頼むよ、波子" ], [ "あの人、あんたの同志だったんでしょう?", "だから、いやなんだ" ], [ "波子だって、いやだろう", "いえね、あたしが言うのは、あの人、あんたの同志だったんなら、あんたもあの人の仲間にはいったらいいのに……大仕事をしてるらしいじゃないの" ], [ "寝たままじゃ、仕事はできない", "寝たままでも仲間にはいるだけははいったら? 面白そうな仕事じゃないの" ], [ "あの人、お金を置いてったわ。お見舞いだって、あたしにそっと……", "なんだってお前に……", "あんたに渡したら、突っ返されるとでも思ったんでしょう" ], [ "そんな金、返してこい", "いいじゃないの" ], [ "お別れになったの?", "いや――どうしてです?" ], [ "とまらんと打つぞ! 誰か!", "加柴四郎……" ], [ "この点については慷堂先生も同じ意見だ", "慷堂先生は、ここに……?", "いや、自宅だ", "自宅に電話したら、お留守だったが" ], [ "大分、よさそうだね", "身体はなおったが……" ], [ "身体はよくなった。しかし、キザなことを言うようだが、今度は心が病気だ", "神経衰弱か" ], [ "だが――二・二六の犠牲者を犬死させるな、これがこのごろ、軍のスローガンだ", "冗談じゃない。青年将校を殺したのは、その軍部じゃないか", "相変らず、鼻息が荒いな" ], [ "軍もひどく鼻息が荒い。統制派も皇道派もなく、今じゃ一本になって、すごい鼻息だ", "統制派が天下を取ったんだろう", "そんな派閥の問題じゃない。軍部がそのうち天下を取る", "砂馬さんには好都合だな" ], [ "いい加減に四郎さんも大人になったらどうだ。いつまでも万年不平組じゃ困るぜ。若いうちは、それでもいいがね。――四郎さんの子供は、いくつになった", "五つだ" ], [ "丸さんは、今日はいないのか", "上海だ" ], [ "四郎さんの知り合いがいろいろ上海にいるぜ", "そうらしいな", "丸さんから聞いたか", "丸さんはなんにも言わない", "猪沢市太郎の娘が上海にいるぜ", "そうかい" ], [ "豪勢なカフェーをやってるぜ", "猪沢市太郎が荒稼ぎで大金をせしめたのか", "猪沢は死んだ", "どこで?", "上海で殺された" ], [ "猪沢の娘は上海には前から来てたらしいが、カフェーをはじめたのは最近だ", "話があるってのは、そんなことか", "女じゃなくて、四郎さんに会わせたい男が上海にいるんだ", "アビルかな" ], [ "漬け物……?", "大きな樽なんです。船便で上海から送って来たんですが、くさい臭いがするんで、支那の漬け物じゃないかしらって", "漬け物をなんだって、わざわざ送って来たんだろう" ], [ "まず助からないだろうな", "どういう意味だ", "ありゃ、どうも見込みがないな" ], [ "なにを言うんだ。慷堂先生は二・二六事件と直接になんの関係もないんだ", "なくても、そんなこと問題にならん。たとえあの事件には関係がなくても、青年将校の指導者だった以上……", "死刑は当然だと言うのか。馬鹿なことを言うな" ], [ "先生。大変な漬け物です。人間の漬け物だ", "なんだって?" ], [ "なんのコンピラ(漬け物)だ。はっきり言え", "人間の塩漬けなんで……", "樽の中身は人間だったのか", "そうなんで。人間を塩漬けにして送ってきやがった", "その人間は――誰だ", "それが、先生、あの、朝倉の兄貴らしいんで……", "朝倉……?" ], [ "なんだい", "大した度胸だ", "腰を抜かすとでも思ったのか" ], [ "ひでえことをしやがる", "これはどういうんだ。見せしめか", "ま、そういったとこだろう" ], [ "これでは、手も足も出ない", "気晴らしに、そいじゃ、上海へ行ったら……" ], [ "矢萩大蔵は賭館で、儲けてやがる。だのに、煙館のほうがもっとボロイと、それに眼をつけて、うちの縄張りを荒しにかかった", "うちの……? 砂馬の大将は上海で阿片窟をやってるのか", "阿片屋は阿片屋だがな" ], [ "阿片窟なんて、そんなみみっちい、そんなこまかい商売はやってない。言ってみりゃ、卸し屋だな", "そう言や、砂馬の大将が満州へ行って阿片の密培地へもぐりこんだのは、ずいぶん前のことだな。先覚者だったわけだな。こりゃ驚いた。そんなに遠大な志とは……そんなに、さきのさきまで見通している大将だとは思わなかった。原産地からの直接取引か。これは、うまい考えだ", "そう言や、そうだが、実際はそう簡単なもんじゃないさ", "にしても、直接取引じゃ、なるほど、ボロイ儲けだな", "間に、軍という厄介なのが頑張ってる", "阿片密輸に眼を光らせてる?", "そういう建て前にはなっているがね" ], [ "こいつは四郎さんにも、今まで黙ってたことなんだが、俺たちの間だ、言っちまおう。ただしこれは極秘事項だぜ。うっかり他言したら……", "イノチはないか", "ま、そう思って貰わなくちゃ" ], [ "阿片厳禁の建て前で、一番アマイ汁を吸ってるのは軍だろうな", "眼こぼしに、うんと金を出さなくちゃならんから……?", "いいや", "カキ(わいろ)に金がかかるんじゃないのか", "ワイロなんかじゃ、儲けにならない。もっとシコタマ儲けてるんだ" ], [ "表面は厳禁の建て前で、裏はその反対なんだ。逆に密培を軍の手で保護している。密培という形は形で、栽培を奨励している。採集した鴉片(阿片)も、軍の保護で、堂々と運び出させる", "ふーん" ], [ "この保護代が大変だ。保護代をごっそり取られる", "そりゃ、取るだろう" ], [ "そんなに取るのか", "相当、軍資金になってるだろうな。現地の軍費のたしに随分なってるはずだ", "ふーん" ], [ "しかし黒土で支那を搦め手から滅ぼそうってのは、タチが悪い", "黒土……?", "支那では阿片のことを黒土と言ってる。日本読みにしてクロツチと俺たちは言ってるんだ", "そのクロツチで砂馬の大将も稼いでるとなれば、タチが悪いのは軍だけじゃない", "ま、そうだが、なんせ、すごいヨロク(儲け)だからな" ], [ "それに、そんなことで支那は滅ぼされはしないしね", "ずっと負けてばかりいるようだが", "退却戦法だ。一時はたとえ負けても、あの広い支那が、まるまる日本に負けるわけはない", "黒土で儲けたって、かまわねえか" ], [ "儲かるんで矢萩もねらっているわけか", "矢萩のことで、四郎さんの耳に入れときたいことがある。ちょっと言いにくい話だが" ], [ "なんだい", "賭館の縄張り争いで矢萩は猪沢市太郎を殺した", "朝倉を殺したのも、そいじゃ、やっぱり矢萩だな。お次は砂馬の親分か", "おいおい、縁起でもねえこと言うな", "砂馬の親分がいつだったか、俺に会わせたい男が上海にいると言ってたが、そいつは矢萩のことだな。俺に矢萩をバラせという意味だったんだな。丸さんの言いにくい話ってのもそれか", "そうじゃない", "じゃなんだ", "矢萩は猪沢をバラしといて、今は娘の照子のパトロンだ" ], [ "四郎さんも上海へ行って矢萩に会ってみたらどうだ", "照子のことで、ゴロマキ(けんか)に行くのか", "いいや", "朝倉のかたきを取れって言うのか", "そうじゃない", "縄張り荒しをやめさせたいのか", "そうじゃない。矢萩は四郎さんみたいな生命知らずを欲しがっている。会いに行けば、きっと喜んで、身内になれと大金を積むぜ", "冗談じゃない" ], [ "砂馬の一の子分ともあろう者が、そんなこと言っていいのかい", "相手が四郎さんだからな", "金次第で、どっちに転んでもいい? そいつは、おもしれーや", "どうだ、四郎さん。上海へ行ってみちゃ……", "戦争はどうなんだ。戦争騒ぎに巻きこまれるのはごめんだな。大分派手になっているようだが、おさまりそうなのか", "おさまりそうもねえから、いいんだよ。もっとも上海はもう――五館の天下だがね", "行きたくなったな。でも、へますると、丸さんの言ってた殯儀館行きだな" ], [ "うっかり矢萩につくと、砂馬の親分から今度は俺が朝倉みたいな塩漬けにされるか", "まさか――と言いたいけどね" ], [ "上海にね、加柴さんのことをよくご存知のご婦人がいらして……", "おめえも上海か" ], [ "このアパートはそのご婦人から聞いたのか", "ひょうたん池のアビル――お忘れになったかしら", "そのナオスケ(女)とはアビルの知り合いか。それじゃ、百成綾子のことだな" ], [ "俺もひとつ上海へ行こうと思ってたところだ", "そいつは、まずいな" ], [ "俺の上海行きは、そのご婦人と何の関係もないことだ", "いいえ。あの……" ], [ "上海へ行ったら、その男に、おめえもあのとき片棒を担いだことを言ってやらあ", "滅相もない。いやですよ、そんな", "いやか。いやなら口どめ料を出しな" ], [ "今すぐ出すんだ", "お金ですか" ], [ "上海から持って来た金じゃ、どうせろくなことで儲けた金じゃねえだろう。早く出しやがれ", "人殺し!" ], [ "そんな乱暴しないで。出しますよ。分りましたよ。お金ですむことなら……", "なんだと", "お金ならちゃんとここに……" ], [ "いえね、あんたのことだから、あたしの話を聞くと、逆にきっと、上海へ行くって言い出すにちがいないと思って、お金を用意して来たんですよ", "なんだ、この野郎。上海はヤバイと言っといて……" ], [ "俺の、そのよけいなことをベシャリ(しゃべり)やがった親分の――ロクはブンコ(子分)だな", "よくお分りで……", "当り前よ。俺のことを知ってる親分となると、そいつは矢萩大蔵ときまってらあ", "お見事……さすがにギラ(眼)が高い", "おい、ロク。上海へ帰って、二万円ばかし矢萩からせしめて、すぐ俺んとこへ送ってこい" ], [ "矢萩さんはあんたが上海の砂馬さんのところでワラジをぬぎさえしなかったら、そんな金ぐらい、喜んで出しますよ", "そうかい" ], [ "先生の身内になると、そこははっきりさせないことには……", "二万ばかしのビャク(金)でこの俺が自分を売れるかってんだ。ヤイツキ(子分になる盃)をかわすかどうか、そいつは上海へ行ってからの相談だ" ], [ "こんなお金、どうしたの", "気持さえ変えれば、ざっとこんなもんだ", "いやだわ。ねえ、どうしたのよ、このお金", "心配することはない。上海でもっと稼いでくらあ。ケチな飲み屋なんか、もうやめな" ], [ "保護観察法が新しくできて、治安維持法に一度ひっかかったのは、改めて思想傾向をしらべ直しとなったもんで……転向者のなかには軍の宣撫班になったりしているのもいるけど、僕の友人はそこまでは……", "身を落しちゃいない……?" ], [ "あんたもその左翼崩れの仲間かい", "僕はシンパ程度だったんですがね" ], [ "君は――詩が好きなのか", "あなたの詩が好きなんです" ], [ "あんなもの、しようがない。下らない詩だ", "下らない?", "愚劣だな", "どうしてそんなことを言うんです" ], [ "このごろ、そう言えば、あなたの詩をさっぱり見かけない", "そう言えば?", "詩をやめたんですね", "病気がなおったせいかな", "心の病い……?" ], [ "陸軍部隊が上陸するまでは、たったそんな僅かな兵力だったんですがね。よくまあ頑張ったもんだ。多勢に無勢と言うけど、支那軍のほうは、はじめ四万ほどだったが、しまいには、二十万……", "長崎県上海も一時は完了(しまい)かと思った" ], [ "虹口にわたしたち在留邦人が籠城したときは、ほんとにもう、これで一巻の終りと思ったものだ", "それがどうでしょう。今では孤島上海……日本軍が逆にあの上海を包囲してしまった", "それどころか、南京までたちまち落してしまった", "黄浦江にあのとき、日本の軍艦がいたんで、よかった。あれで助かったようなもんですね", "あたしの女房や子供があのとき内地へ避難できたのも、軍艦がいたおかげだ" ], [ "支那には海軍がないからな", "まだ、内陸では戦争をやっていると言うのに、呑気にこうやって、あたしたちが船から戦蹟見物ができるのも、制海権を日本が握っているからですな", "事変の勃発当時、黄浦江に日本の軍艦がずいぶんいたようですね", "たしか二十七隻……", "どうしてそんなにたくさん……?" ], [ "それじゃ、まるで日本のほうから、いくさをしかけたみたいだ", "そんなことはない" ], [ "いや、支那事変は日本が支那を侵略するためにはじめた戦争だという説もありますよ", "支那のほうでは、たしかにそう言っている" ], [ "事変勃発のとき、旗艦の出雲を攻撃しようとして、支那の飛行機が爆弾を落したんだが、さっぱり当らないで、それどころか、共同租界のキャセイ・ホテル前に爆弾が落ちて、即死者百五十人。それを逆に抗日の材料に使ってる", "戦争がなかったら、そんな犠牲者も出なかったわけだ" ], [ "もったいなかったら、あすこへ行って、タマを集めたら。結構、商売になりやしないかね", "アホなこと言わんといて" ], [ "海はどうだった", "大分荒れた", "船酔いはどうだった", "苦しんでたのもいたが、俺は寝ちまったよ" ], [ "なにを、こう騒いでいるんだ", "騒いでいるわけじゃない。シナさんは声が大きいんだ。どこでも、こうだ" ], [ "無事にすんだ", "まだ分らねえな" ], [ "朝倉の口か?", "四郎さん" ], [ "四郎さんなら、結構これで……", "いや、俺は、パチンコは不得手だ" ], [ "いやなものを何もやることはねえだろう。ねえ、兄貴、俺が貰っとこうか", "ロク! 言葉がすぎやしねえか" ], [ "どんなに大切な客人か知らないが、子分の俺にも持たせないニギリ(ピストル)を、いきなり……", "ロクにパチンコを持たせちゃ、あぶないからな。いきなり、何をやらかすか、分らない", "ニギリをどっちへ向けて使うか分らねえ? それは、こっちで言いたいね", "おい。ロクさん" ], [ "ただし、矢萩の子分をひとり、片づけてからのことだ。早いとこ、ニシを向かせなくちゃ……", "誰だ、それは" ], [ "誰のことだ", "さーて、誰かな" ], [ "腕試しに、ひとつ、このパチンコを使って、そいつを早速ネムらせるか", "そいつってのは、誰だ" ], [ "おいおい、何もそうあわてることはねえだろう。それとも何かあわてなくちゃならねえわけでもあるのかい? 俺が言ってるのは、ロクはロクでも、オカマのロクのことなんだ", "俺は四・五・六のロクだ" ], [ "四・五・六のロクさんも、朝倉の二の舞いにならねえように気をつけるんだな", "なんだい、そりゃ", "まだカイワイ(若い)な。こういう時は、俺に――お前さんこそ気をつけるがいいぜと言うもんだ" ], [ "あれは、なんだい", "ウィスキーだ。当て字だよ" ], [ "ボルの重野を丸さんは知ってたかな。あいつが、なんだって上海へ……", "さあね" ], [ "五館の天下だなんて呑気そうなことを言ってたが、相当なもんじゃねえか", "四郎さんこそ、相当なもんだ。この騒ぎだというのに、泰然自若……", "いいや、茫然自失だ" ], [ "悲堂先生が死んだな", "いつ?", "一週間ほど前……" ], [ "矢萩の大将に言いつかって来たな", "あたしの顔を見ると、四郎さんはすぐ怒る" ], [ "怒りゃいいかと思ってる", "大将は怒ってるだろう", "怒ってやしません" ], [ "そいじゃ、喜んでるか", "喜んでもいません", "そりゃ、そうだろう" ], [ "どちらへ?", "聞かなくても、お前さんのことだから分ってるだろう" ], [ "そうそう、お前が言ってた、俺をバラそうとしている男とは、四・五・六のロクのことだろう", "あーら、よく分ったわね" ], [ "気をつけてちょうだいね", "ありがとよ", "では、あたしの頼みも聞いて貰えません? 奥さんから、あたし、頼まれてんです", "奥さん? ああ、あの百成綾子か", "ぜひ会いたいって――それを、あたしから頼んでみてくれって", "俺の来たこと知ってんのか", "そりゃ、もう、すぐ……" ], [ "ちょっと寄ってあげて下さいな。どこか、お急ぎなんですか。あんまりお手間はとりません。ねえ、いいじゃないの。あたしがご案内します", "よし、行ってみるか" ], [ "こっちをトーシロと見ると、法外な車賃をふっかけて来ますからね", "こっちが法外にまけさせたんだろう", "へへへ", "いくらと値段を聞くのは、シナ語でなんて言うんだ", "チデア。高かったら、アラプヨ。いらない、外の車に乗ると言ってやれば、いくらでもまけますよ" ], [ "あぶないね", "当心(気をつけろ)。当心" ], [ "虹口サイドではあんまりないんですがね。河向うだと、石炭でも砂糖でも、なんでもこのデンでやってますよ", "見張り役のような苦力がのってたが、なんにも言わない", "なれてますからね" ], [ "ときには、鞭や棒を振り回して、追っ払ってるのもいますがね。でも難民のほうでは、いくらぶったたかれても平気で、顔から血を流しながら、トラックにしがみついて、かっぱらってる", "ぶったたくのは日本人かい", "いいえ、支那人ですよ", "支那人同士か", "ですから、なかには通謀してるのもあるんじゃないかしら。どの道を通って、トラックがどの辺で徐行すると、前もって教えてやってるんじゃないかという気もしますね。今日のなんかもそうかもしれない", "知らん顔は、驚いたね", "こういうのを大目に見なかったら、餓死者がうんと出て大変でしょう。これでも、冬の上海は寒いから、毎晩、凍死者が出ますからね", "戦争のせいかい", "上海は昔から、こうだったそうですよ。難民は今にはじまったことじゃない。支那はしょっちゅう内乱つづきですからね", "家がなくて、往来で寝るんで、凍え死にをするわけか", "河向うの六馬路なんかへ朝行けば、道ばたで手足をちぢめて死んでるのが、いくらでも見られますよ。凍死者なんか上海じゃ、ちっとも珍しくない。一遍見に行きますか" ], [ "誰――?", "ロクです" ], [ "五館の天下と聞いてきたのに、まだ物騒ですな", "だから、いいんですよ。それでみんな儲けてる。ロクさんなんかも、ずいぶん儲けたろうな" ], [ "旦那ほどじゃござんせん", "ご謙遜……" ], [ "今は、どの口……?", "儲け口がそんなにあるのかい" ], [ "根室の金原君も上海に来てるそうだが、あれもそのぼろ儲けをしているのかな", "もちろん……" ], [ "その儲け口というのは、――物資を上海に持ちこむには日本軍の許可がいる。移動の許可がいる。その許可書を取ってやるから何万元出せと言って、許可書を高く売りつける、そういう新しい商売が発生したんですよ。そうしたぼろい儲け口が立派に成立している。軍に顔さえきけば、許可書を取るのはなんでもない", "面白い商売だな" ], [ "事変のとき、シナさんは家をたたんで避難した。空屋がいっぱいできた。そいつを、シナさんが留守の間におさえちまって、ひとに売り飛ばす。この手でしこたま儲けたのがいる。しかし、一時の儲けにはこれがいいが、ほんとは売り飛ばすよりかおさえたままで人に貸すほうがずっと儲かる。上海は家が払底していて、どんな小さな家でも部屋でも金になる。戦火で家を焼かれて田舎から逃げてきた難民は、この寒空に道ばたで寝ている始末だ。いかに家がないか……", "ひでえテッカリカセギ(火事場泥棒)だ。火事泥だな、そいつは" ], [ "シナさんの持ち主が、そいで家に戻って来たら……?", "買い戻せと大金をふっかける。こっちはただでぶんどった家だけど、そこは修理代だとか、保管料だとかいろいろ理窟をつけて、金を出せば返すと、表面はおとなしく持ちかける。それが、すごい金額だから、とうていシナさんには買い戻せない" ], [ "あたしはちょっとほかに用があるんですが、中座すると、あとでなにを言われるか……", "心配かい。それはお互いさまじゃないか" ], [ "あたしは、かならずしもそれを非難してるんじゃない。人間てのは、そういうもんだな", "あんたもそういう人間のひとりか" ], [ "小川秋明は生き残ったな。うまいこと助かった", "あれは連坐しなかった", "砂馬さんもつかまらなかった……" ], [ "いや、あれは許せない。あれはひどい。あれにくらべたら、空家の強奪とか物資の移動で儲けるのなんか、タカが知れてる。あれは支那民族全体を滅ぼそうとしている", "鴉片で……?" ], [ "あれは、いかん。あれは加柴さんの旧同志かもしれないが、あんな男こそ滅ぼさなくちゃ……抹殺しなくちゃ……", "おっかない話になったわね" ], [ "砂馬は悪くないとロクさんは言いたいのかい", "とんでもない。あたしは砂馬さんと何の因縁もない。では、あたしは、この辺で……" ], [ "エネルギーとエネルギーの激突ですなあ", "今度の戦争は……?", "日本人だってほんとはエネルギーがあるんだが", "そいつをこの支那で爆発させてる?", "そんな日本人が俺は――失礼、あたしは大嫌いだ。土台、あたしは日本人が嫌いなんだ" ], [ "日本がいやになって、日本から抜け出すつもりで上海へ来たんですがね。日本だけじゃなく、自分から抜け出そうと思ったのかな。日本人の自分から逃げ出そうと……そうそう、これは加柴さんにも言ったな", "北海道へ行く直前……あのときはお世話になった……" ], [ "ひとのせい、時代のせいにするわけじゃないが、そんなのは嫌いだけど――悪時代に生きるには、こっちも悪のエネルギーを発揮しないことにはやっぱり、面白くない。いつの世も、悪時代でないときはないと言えば、そうだが", "今の悪時代は特別……?", "特にひどいと言うんじゃなくて、俺たちにとっての悪時代は現在の悪時代しかない。この悪時代のエネルギーと個人の悪との激突――こいつは妙に魅力がある", "砂馬もその魅力にとりつかれてる口かな", "いいや、それはちがう。あれは俗物だ", "ひょうたん池のアビルは上海に来て、いよいよニヒリストになったな", "あの丸さん――あんたの同志の、旧同志かな? あの丸万留吉がコムミュニストだというような意味でなら、俺もニヒリストだ", "丸万がコムミュニスト?", "単純な反逆の形を見せないから、コムミュニストじゃないみたいだが、悪時代に即応する形で、時代の悪をますます破滅的に拡大させる……", "丸万はそれだ", "俺のは……丸さんのように、時代の悪をいよいよ悪たらしめよ、そうして悪時代の破滅を早めよというんじゃなくて、こっちの悪を、自分の悪をいよいよ悪たらしめよ……", "そうして?", "あとは言わぬが花。言うとキザになる", "そうして、悪質な俗物どもの破滅を早めよ……?", "いや、俺自身の破滅さ。だから激突と言ったんだ。でなかったら、悪時代への単なる便乗だ", "あんたが、丸万留吉を知ってるとは……", "上海にいれば、自然とね" ], [ "そのカタキを取ろうと俺をねらっている奴が上海にいると、あのオカマのロクが言う。そいつは四・五・六のロクのことじゃないかと思うんだが", "それはオカマのロクの作り話だな" ], [ "じゃ、なんで俺に向って、オカマのロクはそんなナショ(うそ)を吐くんだ?", "加柴さん。あんたは俺を矢萩の一味と思ってるな" ], [ "この上海では、いつ、誰にねらわれるか分らない。用心しないとあぶない土地だ。今夜あたりが、最もあぶないかな", "どうして今夜?", "上海に来たてが一番……", "あぶない……?", "あんたのことだから、あぶながらないだろうが", "皮肉か", "あんたみたいに度胸のいい人ほど……", "ほんとにあぶないか", "あんたはみんなから度胸がいい、胆がすわった人と見られているにちがいないが……", "それは、あんたのほうだろう", "まぜっかえさないで" ], [ "と言って、へたにあぶながっては、かえって、あぶない。この上海では難を避けようとすると、逆にあぶない。敵に背を見せると、その背を打たれる。むしろ、そういうときは、こっちから進んで立ち向って行くと、向うがすっと引く。加柴さんにはきっと面白いことが、これからいろいろあるだろうな", "俺はひょうたん池のアビルにすすめられて、一時はカタギになろうと思ったもんだ", "根室ではあんたもすっかりカタギになったそうだな。綾子から聞いたけど……", "ひょうたん池のアビルが俺に、生活者になれと言ったからだ", "言ったかもしれないが、加柴四郎は人の言うことなんかおとなしく聞くような人間じゃない。あんたは、カタギの面もあるんだな", "アビルには、とんとカタギの面がないらしいな", "冗談じゃない。俺は本質的にはカタギの人間なんだ。だからこそ、カタギじゃないような生き方しかできないんだ。根室の子供を引き取ろうと思ったり……それがカタギの証拠だ" ], [ "なんだ、これは", "ピストルだ", "ピストルは分ってる", "これを持ってらっしゃい" ], [ "あたし、ピー屋をやりたいの", "ピー屋?", "兵隊さん相手の……。清さんには、これ、黙ってて下さいね" ], [ "野中さんが――加柴さんが軍に顔がきくこと、知ってますわ。ぜひお願いしたいと思ったの。金原さんも顔だけど、あの程度じゃ駄目なのよ", "あなたがビリヤをやりたい……?", "あたしもひと儲けしたいのよ" ], [ "いつだったか、あなたは僕と一緒に上海に行きたいと言ってたが、あなたのほうが先だったな。あのとき、あなたは自分と一緒じゃないと、あとで後悔することがあると言ってたけど……", "あら、よく覚えてらっしゃる" ], [ "あれはどういう意味なんです", "すぐ分るわ" ], [ "こちらは、うちの人じゃなくて――加柴四郎氏", "加柴さん……?" ], [ "裏の、あたしの部屋へ行きましょう", "いいのかい" ], [ "俺は何も――昔にくらべてという意味じゃない", "いいのよ。あのときからずっと会ってないんですもの" ], [ "君は麻布の俺のおやじの家に来てくれたんだって?", "ええ。あたし、あのとき……" ], [ "あのとき、四郎さんのところへ逃げようと思ったのよ", "君の男は――文士?", "あのとき、四郎さんの兄さんに会ったわ", "それは俺も兄貴から聞いた", "あのとき、四郎さんのお母さんを見かけたけど、ずいぶん若い……", "あれは、おやじの後妻だ。俺のおふくろはずっと前に死んだんだ", "あたしの母も……。それで、あたし、あすこに出るようなことになったの" ], [ "君のお父うさんに東京で会ったことがある。俺がさも君を――照ちゃんと言わせて貰おう、照ちゃんを誘拐したみたいに、お父うさんから誤解された", "すみません。あの父はあたしの母を捨てて、あたしたち母子を放ったらかしにしておいて……", "ひとにそんな口のきけるお父うさんじゃない? でもやっぱり、照ちゃんのことが心配になったんだろう", "そうかしら" ], [ "ずっと根室に俺は行ってたんだが、北海道に照ちゃんが来てると一度聞いたことがある。いや、わざわざ俺にそれを言いに来た人がいる", "誰かしら", "矢萩さんだ" ], [ "清さん……?", "百成清一郎さん", "まさか" ], [ "照ちゃんは俺の顔を忘れてたな", "いいえ" ], [ "何か差し障りがあるといけないと思って、わざと知らん顔してたのよ", "照ちゃんは清さんを知ってたのか。百成清一郎と矢萩大蔵とは、やっぱり……", "やっぱりって、なーに", "照ちゃんのお父うさんは矢萩大蔵に殺されたそうだな", "うそよ。そんなこと、うそ", "今日は不思議と、俺の聞いた話がみんなスケトン(うそ)だ" ], [ "照ちゃんが北海道にいることを矢萩大蔵はどうして知ったんだろう?", "四郎さんの言うあたしのレコ――それが矢萩さんの子分だったんです" ], [ "文士だとばかり思ったら、そうじゃなくて、悪い人だったけど――死なれて見ると、やっぱり可哀そうな人だったと思うわ", "死んだ……?" ], [ "ひと山当てよう当てようとあがいて……見てて気の毒で、あたしも身を売って貢いだりしたけど――結局、殺されちゃった", "それはまさか、朝倉と言うんじゃあるまいね", "四郎さんも深入りしてるのね" ], [ "四郎さん", "なんだい", "四郎さんはあたしに聞きたいことがあるのに、一番聞きたいことを言わないでいるのね。四郎さんもいい人ね", "も……?" ], [ "矢萩大蔵と照ちゃんのことは今さらもう聞いたってしようがない。俺にだって女房がいる", "朝倉を殺したのも矢萩さんだということになってるんじゃないかしら" ], [ "や、ありがとう", "ほんとは防弾チョッキのほうがいいわ。内側にピストルかけがついてるの、買うといいのよ" ], [ "野中? そんな人、ここにいないわ", "俺のことだ", "いやねえ" ], [ "ついては、ニギリ(ピストル)をちょいと拝借したいんで……", "昨日のピストルか。いやだと言ったらどうする" ], [ "実は加柴さん。人をひとりネムラせて貰いてえんだ", "俺をバラそうてんじゃなかったのか", "早合点しちゃいけねえ", "そうかい。それじゃ、ロクさん、おめえが俺にネムラせて貰いてえのか", "いやじゃありませんか。残念ながら、とんだお門ちがいだ", "誰だ、相手は", "砂馬の大将だ" ], [ "これはあんたでなくちゃできない仕事だ。兄貴も承知の仕事だ", "兄貴……?", "丸万の兄貴……", "だったら、丸さんがじかに俺に言ったら、よさそうなもんだ", "そうですね" ], [ "淋病……?", "照ちゃんの淋病はなおったかな" ], [ "旦那とは矢萩のことか。ロクさんにとっても旦那筋……?", "それはこっちで言いたい科白だ", "そうかねえ", "どうなんで……?", "矢萩が俺の旦那……?", "ま、内輪ゲンカはやめましょう" ], [ "あれか", "あれだ", "あれは矢萩じゃねえか", "そうだ", "あれをやるのか" ], [ "朝倉の二の舞いはごめんだから、さきに矢萩を片づけようというのか", "そう、矢萩矢萩と言うなよ", "俺にそんな面白いゴトマブ(仕事)をやらせることはねえだろう。自分でやったらいいじゃねえか", "あたしはモサナシだから", "ご謙遜……" ], [ "あれは俺のせいじゃない。矢萩のせいだ", "だったら、よけい好都合だ", "おめえにとって?", "あんたにとって……。矢萩のためにニシマル(前科者)にされたカタキをここで取るんだな", "俺の戸籍はまだよごれちゃいねえ", "へーそうかねえ。お尋ね者じゃねえのか。領事館警察では、あんたを探してたようだがね", "なんだって……", "ここでひと仕事してくれたら、あたしたちが身体を張ってあんたを守る。サツの手にむざむざあんたを渡すようなことはしねえ", "そうはいかねえ", "と言うと?", "ひとのためにコロシをやるのはもうごめんだ。たとえ他ならぬ四・五・六のロクさんのためでも……", "いやか。あの男をネムラせるのは、いやか", "いやだねえ", "やっぱり、あの男はあんたの旦那筋に当るのか", "俺は誰の身内でもねえ", "砂馬の大将にそう言っとこう", "勝手にしやがれ" ], [ "もう一度聞くが、あの男をやるのはいやなのか", "ことわるね", "じゃ、すまねえが……", "おめえは初めから俺をネムラせる気だったんだな", "あんたの出よう次第でね", "ダルマ(殺し)は俺は大好きだが、おめえに命令されてやるのはいやだ", "あ、そうかい" ], [ "そいじゃ、預かったパチンコも返せねえ", "丸万に返すがいいや", "砂馬の親分に返す。加柴の四郎さんも矢萩にかかっちゃナメクジに塩みたいだったと言っとくか。いや、ドタン場でやっぱり裏切りの正体をあらわしたと、一部始終を砂馬の大将に物語るとしよう" ], [ "これでもうスコテン(安心)か。よかったな、金原君がいて", "偶然居合わせてよかった" ], [ "やっぱり無茶しよる", "やっぱり……?", "いや、根室ではあんたもネコをかぶってたが" ], [ "波子……", "どうした" ], [ "一度ありゃ二度ある", "二度あったことは三度……?", "今度はどいつだ。そうか、矢萩か" ], [ "なかにおはいりにならない", "飲むか" ], [ "金原君にも改めて礼を言わなくちゃ……", "ここのママになんで礼を言ったんだ" ], [ "偶然居合わせたとはいえ、金原君が俺を助けてくれたのは、やっぱりアナーキストのよしみ……?", "旧アナーキスト" ], [ "こちら、うちのママさんのお知り合いなのね", "そんなこと俺は知らない" ], [ "照ちゃんと、こちら言ってたわ。ママの昔の恋人じゃないかしら", "そんなこと、店で言っていいのかい。命があぶないね" ], [ "そこが、ママの偉いところ……", "テロリストはあいにく偉い奴は嫌いだね", "あたしとおんなじ気持……", "あら、頼もしい" ], [ "さっきのお話をうかがいたいわ", "矢萩さんも命拾いをした" ], [ "あと、面倒じゃなかったの?", "うまい工合にこの金原君が偶然居合わせてくれて、助かった" ], [ "矢萩大蔵を助けろと言われたわけじゃない", "ちょっと、ボーイさん。ウィスキー" ], [ "瓶ごと持って来て!", "この様子じゃ、せっかく加柴四郎が矢萩大蔵の命を助けたのに、ご本人にはなんと伝わるか分らない" ], [ "女を相手にするほど四郎さんも……", "落ちぶれちゃいねえ?" ], [ "百成君もあんたと同業か", "彼はこんなみみっちいことはしていない" ], [ "もっと悪党か", "さ、なんて言ったらいいか。彼はもう上海では顔だからね。なにもしなくても、すわってるだけで、情報がはいる。その情報でも入れてれば、それだけで食える", "なんの情報だ", "いわゆる在留邦人の動静さ", "どこへ情報を売るんだ" ], [ "玉塚英信という作家が従軍作家として上海へ来てる。もう前線へ出たかな。あれはたしか、あんたの知り合いだな", "それも、百成君の情報か" ], [ "どういう奴とこの上海で連絡を取ったか、素直に言ったらどうだ", "そう手を焼かせるな", "強情な奴だ" ], [ "なんだと……?", "まずいとこへ来ちまったね", "まずいか" ], [ "矢萩さん。乱暴はよせ", "よせ? 俺に命令するのか" ], [ "このあま!", "矢萩さん。いい加減にしないか" ], [ "照子さんをパチンコでサルカス(殺す)気かと思ってね", "なにを言ってやがる", "そうでなきゃ、いいんだ" ], [ "照ちゃんを――いや、照子さんを、あんなひどい目に会わせるなんて……", "照ちゃんでいいだろう" ], [ "照子さんはあんたのことを、かげでは、とてもほめてるのに", "生意気な……", "庇ってると言ったほうがいい", "それは自分の面子からだろう", "惨めと思われたくない……?", "女にだって面子はあらあ", "その面子を、あんたは俺の前で……", "お前さんの前だからだ" ], [ "照子さんは俺の前では、ひどくあんたの顔を立てている。猪沢市太郎を殺したのはオモテ(世間)じゃ、あんただとなってるが、照子さんはそれをマンパチ(うそ)だと……", "当り前だ、そんなこと", "朝倉を殺したのも、あんたじゃないと言っている", "加柴四郎はヤケに照子を庇うじゃないか", "照子さんから聞いた事実を俺は言ってるだけさ", "四・五・六のロクを片づけてくれたそうだな" ], [ "オカマのロクから金を受け取ったかい", "貰ったよ。礼を言わなくちゃ、いけねえかな", "砂馬からも、せしめたらしいな", "と言って、砂馬の子分になったわけじゃない" ], [ "実は俺の知り合いが領事館警察につかまって、ひどいヤキを入れられてるんだ", "そいつを出してほしい?", "頼む!", "丸万か" ], [ "丸万なら、いやか", "砂馬に行かせればいいだろう", "俺があんたに貰いさげを頼みたいのは、重野という男だ", "どういう素姓の奴だ", "奴はボルで、俺のカタキだが、あれじゃ、いかにも可哀そうだ", "ボルとは赤のことか。そんな奴は放っとけ", "俺の頼みを聞いちゃくれないのか", "国賊なんか、殺しちまったほうがいい" ], [ "お前さんも、ひとのことなんかより、自分の身を心配したほうが利口だぜ", "俺はあいにく、利口じゃねえんで……", "砂馬の一派がお前さんをねらってる", "へーえ。そうですかねえ", "俺がお前さんを抱きこもうと思って、うそをついてるとでも思ってるのか", "うそとは思いませんがね", "お前さんを抱きこもうと思ったら、上海へ来たお前さんを、今まで黙って放っとくわけはない。なまなかのことでは抱きこめないお前さんだがね", "そんな大物でもねえさ", "砂馬だってお前さんの本心をつかむために、黙ってお前さんを泳がせていた" ], [ "おとといの晩は、砂馬のかわりにあいにく俺がいたが、お前さんが殺しに行ったのは砂馬なんだ。それはちゃんと砂馬の耳にはいってる", "砂馬の大将も、さぞかしキツネにつままれたような気持だったろうな", "そうでもないさ。丸万を警察に売ったのは砂馬だ。その丸万とお前さんとは大の朋友だ。おまけにお前さんにとって、もっと都合の悪いことは、あの晩、砂馬のかわりにいた俺が、ほれこの通り……", "健在か" ], [ "こいつ、おとなしく出てりゃ、つけあがりやがって……", "悪かったな。ヘイコラしないのが、気にいらない? 照ちゃんみたいな絶対服従じゃないといけねえのか" ], [ "矢萩さんよ。頼むから俺を怒らせないでくれ", "なにを、生意気な口をききやがる" ], [ "なめるな。この野郎!", "野郎だと?", "おめえは砂馬につく気だな" ], [ "なんだい", "…………" ], [ "あの爆竹は、照ちゃんがわざと……?", "そうよ" ], [ "どうしてだ", "指紋は、あたしが綺麗に拭き取っておきます" ], [ "これは砂馬一家しか持ってないピストルなのよ", "矢萩一家は持ってない?", "ええ", "だから、照ちゃんが持ってるわけはない?" ], [ "俺は照ちゃんが、俺のピストルを持って、ここに残って、俺を庇ってくれようとしたのかと思った", "四郎さん。あたしのことを四郎さんは……" ], [ "そんな見上げた心の持ち主と思ってくれてたんですか", "相変らず俺は甘ちゃんか", "いえ、あたしは四郎さんの思うような、そんな女じゃないの", "俺だって、照ちゃんを今、射ち殺そうと思ったんだ", "分ってます" ], [ "あたしも四郎さんに射たれて死んだほうがいいんです。そのほうが、しあわせかもしれない。でも……", "照ちゃんを射つのは、もうやめた", "万一、四郎さんの身に何かあったら、あたし、生意気言うようだけど、内地のご家族はちゃんと守ります", "そのために、照ちゃんは死ねない?", "いいえ、まだ、あたしも死にたくない" ], [ "あたし、四郎さんに約束します。万一のことがあったら――そんなこと、ないと思うけど、かならず内地のほうは、あたしが……せめて、そのくらいのことはさせて下さい", "うれしいことを言ってくれらあ" ], [ "そいじゃ、俺のかわりに丸万の家族を頼む。照ちゃんは砂馬一家の丸万は知ってるだろう", "知ってます。あたしがあすこに出ていたころ、四郎さんと一緒に来てくれた……", "そんな古いことを覚えてる……?", "あたしだって、四郎さん……", "その丸万の奴、ふんづかまりやがった" ], [ "丸万は俺みたいにコロシをしたわけじゃないから、ツトメはそうながくはないだろうが……", "承知しました。できるだけのことは、あたし、やらせて貰います" ], [ "ロクさんが下に来てるの", "オカマのロクか", "あの人に見つかると、うるさいから……早く" ], [ "あんたの友人とは、重野というんじゃないかな", "いいや", "だいぶ、つかまったようだな", "野中さんの――加柴さんの友だちもつかまった?", "それで、あんたに力になって貰おうと思って来たんだ。加柴でなく野中と呼んで貰おう", "僕には、何もできないな" ], [ "明日、早朝に前線に出るんだが、野中さんも一緒に行かないか", "一緒に?" ], [ "重野がつかまったのも、あんたのせいじゃあるまいね", "重野なんて、名前も聞いたことはない。どういう奴だ", "ボル派の闘士だった奴だ。だった、じゃなくて、今でもそうかな。可哀そうに、サツですごいヤキをいれられている", "ボル派なのに同情するのか", "あんたは同情しないのか?" ], [ "俺に、あれが必要になってきた。まだあんたにも必要かもしれんが", "パチンコか" ], [ "まさか、あんたが一挺しか持ってないわけはあるまい", "返さない気か", "あんたには、いろいろ世話になった俺だ。そんなことはできねえが" ], [ "俺がここにいるの、どうして分った?", "ドヤのマエバ(玄関)に、ガミ(見張り)をつけておいたのだ" ], [ "ガミなんかつけねえで、あんたが直接、宿屋の俺の部屋へくればいいのに", "ほかに俺は用があったんだ", "あ、あの帆住博士はセツルで会った人だ" ], [ "帆住博士がどうしたって?", "いや……" ], [ "俺はあんたの代りに、矢萩の子分にねらわれてるんだ", "代りに?", "矢萩をバラしたのは加柴四郎だなどとは、口が裂けても俺は言いはしない。金原だって言いはしないがね", "すまねえな" ], [ "四郎さんじゃないの", "なつかしいねえ" ], [ "顔が広いのには全く驚くな", "どこでも面子很好? 顔がきいて?" ], [ "上海のあのマダムも、野中さんの知り合いだった", "野中さん?", "俺のペン・ネーム――源氏名さ" ], [ "やっぱりそいじゃ文士だったの? いつだったか、こわいもの持ってて、あたし、びっくらした", "びっくらか" ], [ "慰安婦にはシナの女もいるのかい", "シナの女は駄目", "駄目と言うと?" ], [ "このカブを買うの、大変だったのよ", "儲かるだろうね", "そうでもないのよ。なんせ、ピンはねがひどいから……", "そう言うママさんだって、女の子から、頭をはねてるくせに", "あら、いや、ママさんだなんて", "女の子はそう言ってるじゃないか", "気取って言ってるのさ" ], [ "四郎さんじゃしょうがない。いい子がいるわよ", "いや、俺は……", "あたしに遠慮することないわ", "遠慮じゃないが――仁義かな" ], [ "タタミ屋さんはどうしたんだい", "内地よ", "一緒じゃないのか", "別れたわけじゃないわよ", "そいじゃ、左うちわだな", "左うちわにしてあげたいと思ってるのさ" ], [ "戦争小説のネタの仕込みかい", "砂馬慷一みたいにアブク銭は稼げないからね。戦意昂揚の小説でも書いて稼ぐよりしようがない" ], [ "加柴君はなにを仕込みに……?", "俺かい" ], [ "あんたは露悪が好きだが、ほんとはいい人だな", "大きく出やがって、なめるな", "上海で砂馬慷一に会ったが", "俺のような小悪党とちがう大悪党に、タマさんもすっかり圧倒されたか", "小悪党は僕さ", "俺はお人よしか", "加柴四郎は悪党でもなければ、お人よしでもない", "じゃなんだ", "根っからのアナーキストだ" ], [ "辛苦、辛苦", "辛苦的" ], [ "いてえ", "よし、俺がやる" ], [ "丸さんがフルだって(死んだ)?", "それから百成清一郎は誰かに拳銃で射たれて殺されたと書いてある", "アビルが殺された?" ], [ "砂馬慷一は?", "砂馬慷一のことは何も知らせてこない" ], [ "この野郎、世話を焼かせやがる", "このまま土をかぶせちまうか" ], [ "じゃ、やってみろ", "ありがてえ" ] ]
底本:「日本の文学 57 高見順」中央公論社    1965(昭和40)年5月5日初版発行    1966(昭和41)年12月1日6版発行 初出:「文学界」    1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「しようがない」と「しょうがない」、「ありやしない」と「ありゃしない」の混在は、底本通りです。 ※底本巻末の小田切進氏による注解は省略しました。 入力:悠悠自炊 校正:Butami 2019年12月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "058337", "作品名": "いやな感じ", "作品名読み": "いやなかんじ", "ソート用読み": "いやなかんし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2020-01-30T00:00:00", "最終更新日": "2019-12-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001823/card58337.html", "人物ID": "001823", "姓": "高見", "名": "順", "姓読み": "たかみ", "名読み": "じゅん", "姓読みソート用": "たかみ", "名読みソート用": "しゆん", "姓ローマ字": "Takami", "名ローマ字": "Jun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1907-01-30", "没年月日": "1965-08-17", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の文学 57 高見順", "底本出版社名1": "中央公論社", "底本初版発行年1": "1965(昭和40)年5月5日", "入力に使用した版1": "1966(昭和41)年12月1日第6版", "校正に使用した版1": "1965(昭和40)年5月4日初版", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "悠悠自炊", "校正者": "Butami", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001823/files/58337_ruby_69948.zip", "テキストファイル最終更新日": "2019-12-27T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001823/files/58337_70001.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2019-12-27T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "佐竹の原も評判だけで、行ってみると、からつまらないね。何も見るものがないじゃありませんか。", "そうですよ。あれじゃ仕様がない。なにか少しこれという見世物が一つ位あってもよさそうですね。なにかこしらえたらどうでしょう。うまくやれば儲かりますぜ", "儲る儲らんはとに角、人を呼ぶのに、あんなことでは余り智慧がない。なにか一つアッといわせるようなものをこしらえてみたいもんだね", "高村さん、何か面白い思いつきはありませんか" ], [ "大きな大仏をこしらえるというのは、大仏を作って見物を胎内へ入れる趣向なんです。どのみち何をやるにしても小屋をこしらえなくてはならないが、その小屋を大仏の形でこしらえて、大仏を招きに使うというのが思いつきなんです。大仏の姿が屋根にもかこいにもなるが、内側では胎内潜りの仕掛けにして膝の方から登って行くと、左右の脇の下が瓦灯口になっていてここから一度外に出て、印を結んでいる仏様の手の上に人間が出る。そこへ乗って四方を見張らす。外の見物からは人間が幾人も大仏さまの右の脇の下から出て、手の上を通って、左の脇の下へ入って行くのが見える。それから内部の階段を曲がりながら登って行くと、頭の中になって広さが二坪位、ここにはその目の孔、耳の孔、口の孔、並びに後頭に窓があって、そこから人間が顔を出して四方を見張らすと江戸中が一目に見える。四丈八尺位の高さだから大概の処は見える。人間の五、六人は頭の中へ入れるようにして、先様お代りに、遠眼鏡などを置いて諸方を見せて、客を追い出す。降りてくると胴体の広い場所に珍奇な道具などを並べ、それに因縁をつけ、なにかおもしろい趣向にして見せる。この前笑覧会というものがあって、阿波の鳴戸のお弓の涙だなんて壜に入れたものを見せるなどは気が利かない。もっと、面白いことをして見せるのです……", "……そうして切の舞台に閻魔さまでも躍らして、地獄もこのころはひまだという有様でも見せるかな……なるほど、これは面白そうだ" ], [ "大仏に見えるかね", "大仏様に見えますとも" ] ]
底本:「日本の名随筆46 仏」作品社    1986(昭和61)年8月25日第1刷発行    1991(平成3)年4月25日第9刷発行 底本の親本:「高村光雲懐古談」新人物往来社    1970(昭和45)年12月発行 入力:加藤恭子 校正:菅野朋子 2000年10月30日公開 2005年6月27日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001545", "作品名": "佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし", "作品名読み": "さたけのはらへだいぶつをこしらえたはなし", "ソート用読み": "さたけのはらへたいふつをこしらえたはなし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2000-10-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card1545.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆46 仏", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1986(昭和61)年8月25日", "入力に使用した版1": "1991(平成3)年4月25日第9刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "高村光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "新人物往来社", "底本の親本初版発行年1": "1970(昭和45)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "加藤恭子", "校正者": "菅野朋子", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/1545_ruby_18899.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-06-27T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/1545_18900.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-06-27T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "大工は好い、……大工に行きましょう……", "そうか、それでは好い棟梁を探してやろう" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行    1997(平成9)年5月15日第6刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:山田芳美 校正:土屋隆 2006年1月15日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001547", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "02 私の子供の時のはなし", "副題読み": "02 わたしのこどものときのはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-02-24T00:00:00", "最終更新日": "2016-01-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card1547.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1997(平成9)年5月15日第6刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "山田芳美", "校正者": "土屋隆", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/1547_ruby_21460.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-01-15T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/1547_21470.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-01-15T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "そうですか。彼児がやったのですか。これは私が貰って置きたい。私は実は子の歳なので、鼠には縁がある。これは譲ってもらいましょう", "それはお安いことです。幸吉は今使いに参っておりませんが、いたずらにやった鼠がお目に留まって貴僧に望まれて行けば何より……" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:しだひろし 2006年2月14日作成 2018年5月18日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045965", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "17 猫と鼠のはなし", "副題読み": "17 ねことねずみのはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-03-23T00:00:00", "最終更新日": "2018-05-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card45965.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "しだひろし", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/45965_ruby_21556.zip", "テキストファイル最終更新日": "2018-05-18T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/45965_21742.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2018-05-18T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "2" }
[ [ "師匠、どうも、飛んでもない世の中になって来ましたぜ。明日上野に戦争があるそうですよ。いくさが始まるんだそうで", "何んだって、いくさが始まる。何処でね", "上野ですよ。上野へ彰義隊が立て籠っていましょう。それが官軍と手合わせを始めるんだそうで。どうも、そうと聞いては安閑とはしていられないんで、夜夜中だが、こちらへも知らせて上げようと思って、やって来たんです。どうも大変なことになったもんだが、一体、どうすれば好いのか、まあ、そのつもりで皆で注意するだけは注意しなくちゃなりませんね" ], [ "幸吉、半さんが山下にいるんだが、困るなあ", "そうですねえ。半さんは、いくさの始まるってことを知ってるでしょうか", "さればさ。あの人のことだから、どうか分らないよ。こっちが先に聞いた上は、一つ、こりゃ半さんに報告せて上げなくちゃなるまい。夜が明けたら、幸吉、お前は松を伴れて行って知らしてやってくれ、ついでに夜具蒲団のようなものでも持って来てやってくれ" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2006年9月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046198", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "19 上野戦争当時のことなど", "副題読み": "19 うえのせんそうとうじのことなど", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46198.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46198_ruby_24208.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46198_24236.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "何をやったって、大したことをやったじゃありませんか。君の観音は竜紋賞を得たのですよ", "そうですか。その竜紋賞というのはどういう賞なのですね" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2006年9月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046393", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "25 初めて博覧会の開かれた当時のことなど", "副題読み": "25 はじめてはくらんかいのひらかれたとうじのことなど", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-04T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46393.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46393_ruby_24214.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46393_24242.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "師匠はお宅ですかね", "師匠は朝から山の手へ要事があって出掛けましたが……" ], [ "そんな悠長なことはいっていられない。私たちはこれから焼こうというのだ。飛んだものが飛び込んで仕事の邪魔をして困るじゃないか。おい。そろそろ仕事に掛かろうじゃないか", "まあ、そういわずに、この撰り出した分だけは手をつけずに置いて下さい。お願いですから" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2006年9月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046400", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "33 蠑螺堂百観音の成り行き", "副題読み": "33 さざえどうひゃくかんのんのなりゆき", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-10T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46400.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46400_ruby_24222.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46400_24250.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "そりゃ、売り物にはないだろうが、工部学校から、どうかすれば出ないものでもあるまい、しかし非常に高価なものだそうだ", "高価といってどの位するものだろうか", "一寸四方一円位だそうな", "なるほど、それは高い。とても我々の手にはまあ這入らない" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2006年9月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046538", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし", "副題読み": "36 あぶらつちやせっこうにこころをひかれたはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-10T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46538.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46538_ruby_24225.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46538_24253.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "葦を取って御出でなすったね。それをどうするのですか", "これか、これが趣向なんだ" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2006年9月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046543", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "41 蘆の葉のおもちゃのはなし", "副題読み": "41 あしのはのおもちゃのはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46543.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46543_ruby_24230.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46543_24258.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-09-08T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "私に逢いたがってる人があるんですって、それは誰ですね", "その人ですか。それは石川光明という牙彫家ですよ" ], [ "ええ、石川光明さん、その人が私に逢いたがってるってんですか。そうですか。石川さんならまだ逢ったことはないが、あの人の仕事は私も知ってる。今の世にどうも恐ろしい人があるもんだと実は私は驚いているんだ", "あなたも石川さんの仕事を感心していますか", "感心どころのことではない。敬服していますよ。私とは違って牙彫りの方だけれども、当今、日本広しといえども、牙彫り師としてはあの人の右に出るものは恐らくありますまい。私は博覧会の薄肉の額を見た時から、すっかり敬服しているんだ。その石川さんが私に逢いたいなんて……そんならこっちからお目に掛かりに行きたいもんです。案内してくれますか", "そりゃ、案内するのは訳はありませんが、しかし、高村さん、そりゃいけませんよ。先方があなたに逢いたがって、是非一度引き逢わせてくれといってるんです。先方からいい出したことだから、先方がこっちへ出向いて来るのが順序ですよ。何もあなたの方から出掛けて行かなくても、先方がやって来ますよ。で、あなたは逢いますね", "逢いますとも、……私もお目に掛かりたいもんだ。あの石川さんなら", "では、私が今石川さんを貴宅につれて来ましょう。これは話がおもしろくなった", "しかし、どうもそれでは恐れ入るが、じゃ、あなたのいう通りにしてお茶でも沸かして待っていましょう" ], [ "あなたですか", "ええ、どうも……" ], [ "それはまたどういう訳ですね", "あなたは、北元町の東雲師匠のお店にお出での時分、西行を彫っていたことがありましょう", "ええ、あります。それを知っているのですか", "私は、毎朝、毎晩、楽しみにして、あなたの仕事を店先から覗いて行ったものですよ。確か西行は一週間位掛かりましたね", "そうですそうです。ちょうど七日目に彫り上げました。どうしてまたそんなことを詳しく知ってお出でなのですか", "それはこういう訳です。私の宅はその頃下谷の松山町にありましたので、其所から日本橋の馬喰町の越中屋という木地商(象牙の)の家へ仕事に毎日行くんでしてね。その往復毎日北元町を通るんで、つい、職業柄、お仕事の容子を覗いて見たような訳なんで……" ], [ "そう、あなたがいって下さるなら私も何んだかやって見たい気がして来ました。どんなものを製作えましょうか", "何んだって、あなたの好きなもので好いでしょう", "では、何んともつかず、一つこしらえて見ましょう" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2006年12月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046638", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "46 石川光明氏と心安くなったはなし", "副題読み": "46 いしかわこうめいしとこころやすくなったはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-01-08T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46638.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46638_ruby_24674.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-12-24T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46638_25177.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-12-24T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "でもねえ、何んだか、私は不安心ですよ。綾が取って食べられそうな人なんで……", "いや、御隠居様。今の世の中は、そういう男が役に立つのでございますよ。御安心なさいまし" ], [ "どうもこれは驚きました。これをお嬢様がお書きになったのでございますか", "さようで……", "何か御心願でもあってこんなに御丹精をなされたのでございますか", "さあ、どうで御座いますか。あの娘の心持は私には分りませんが、何んでも毎日の勤行のようにして、幾年か掛かって書きためたのですが、一心の籠ったもの故、こうして置くのは勿体なく……", "なるほど、宣しゅうございます。では、これは隅田川で川施餓鬼のある時に川へ流すことに致しましょう。焼いて棄てるは勿体ない。このまま仏間になど置きましてもよろしいが、それより川へ流せば一番綺麗でよろしゅうございましょう", "では、どうか、よろしく……" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年1月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046760", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "51 大隈綾子刀自の思い出", "副題読み": "51 おおくまあやことじのおもいで", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-02-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46760.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46760_ruby_25170.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46760_25749.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "まあ、そうで御座いますか。皇居御造営になるとか申すことは私どもも噂で承知しておりますのですが、すると、貴君は狆を彫って貴婦人のお間へそれをお納めになるのですか", "そうなんです。それで鳥屋へも二、三軒行って見ましたが、どうも気に入った狆がおりません。とても、貴店のに比べると狆のようにも見えませんので……これが、その彫刻をして売り物にでもしますのなら、気に入らない見本でも間に合わせも出来ますが、何しろ、宮城の貴婦人の御間へ備え附けられますので、よほど本物が上等でありませんといけませんのでして", "まあ、お話を聞けば勿体ないようなことで御座いますね。すると、この狆を見本にしてお彫りになれば、この狆の姿が九重のお奥へ参るわけで御座いますね", "そうです。御場所柄のことで、高貴の方の御集まりになる所へ飾られますわけで", "そうでございますか。では、まあ、お見立てに預かった仲は、随分名誉なことでございますわね", "そうです。狆に取ってはこの上もないことと申しても好いかと思います" ], [ "お蔭様で。この通り仕事も出来るようになりました。全くこれは貴方のお丹精の賜です", "それは何より結構……狆を拵えてお出でですね。狆とはまた珍しいものですね", "実は皇居御造営の御仕事を命ぜられましたので、狆の製作を仰せつかったような訳ですが、これは狆と見えましょうかね。物が物なので、このモデルにする狆を探すのに大骨折りをして、初めた所ですが、どんなものでしょう。狆と見えますかね" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年1月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046762", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "53 葉茶屋の狆のはなし", "副題読み": "53 はぢゃやのちんのはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-02-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46762.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46762_ruby_25172.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46762_25751.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "狆は、もういないのかね", "ええ、狆は荒物屋にはいません。ですが、四谷の親類の方にいるんだそうです", "四谷にいると、本当に", "いるんだそうです。それで荒物屋さんの御主人が、私が附手紙を四谷へ書いてあげるといって、それを貰って来ました。これを持って四谷へ行けば、狆は多分貰えるだろうということです。私は直ぐ四谷へ行こうと思いましたが、ちょっとお知らせしてからと思って帰って来ました" ], [ "どうもこれは妙だね", "どうも妙なものですね" ], [ "名は何んというのかね", "種っていうんだって教えてくれました" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年1月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046763", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "54 好き狆のモデルを得たはなし", "副題読み": "54 よきちんのモデルをえたはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-02-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46763.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46763_ruby_25173.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46763_25752.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "それで、残念なことをしたと思いますのは、このモデルの狆よりも、もっと上手で、恐らく日本一の名狆と思われる良い狆を私の知り合いのお方が持っておられます。その狆をあなたに参考としてお見せしたら、必ずこの作以上のものがお出来だったろうと、只今、感じながら拝見している処でありますが、惜しいことをしました", "……御尤のお言葉で……その狆は誰方がお持ちなんですか", "それは侍従局の米田さんの狆です。何でもよほど高価でお求めになったとかで、東京にもこれ以上のものはまずなかろうという評判で、年齢もまだ若し、それは実に素晴らしいものですよ" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年1月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046764", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "55 四頭の狆を製作したはなし", "副題読み": "55 よんとうのちんをせいさくしたはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-02-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46764.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46764_ruby_25174.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46764_25753.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-01-16T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "これは面白い", "こいつは素晴らしい" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年2月15日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046839", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "59 矮鶏の作が計らず展覧会に出品されたいきさつ", "副題読み": "59 ちゃぼのさくがはからずてんらんかいにしゅっぴんされたいきさつ", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-03-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46839.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46839_ruby_25996.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-02-15T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46839_26164.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-15T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "もう一つ同じものは出来ません。丸一年も精根をからしてやったものです。もう一度同じようなものを気息をくさくしてやる気はありません", "どうも始末が悪いな。困ったな。……実は君のチャボが聖上のお目にとまったのだ" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年2月15日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046840", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "60 聖上行幸当日のはなし", "副題読み": "60 せいじょうぎょうこうとうじつのはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-03-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46840.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46840_ruby_25997.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-02-15T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46840_26165.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-15T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "佐竹の原も評判だけで、行って見ると、からつまらないね。何も見るものがないじゃありませんか", "そうですよ。あれじゃしようがない。何か少しこれという見世物が一つ位あってもよさそうですね。何か拵えたらどうでしょう。旨くやれば儲かりますぜ", "儲ける儲からんはとにかく、人を呼ぶのに、あんなことでは余り智慧がない。何か一つアッといわせるようなものを拵えて見たいもんだね", "高村さん、何か面白い思い附きはありませんか" ], [ "大きな大仏を拵えるというのは、大仏を作って見物を胎内へ入れる趣向なんです。どのみち何をやるにしても小屋を拵えなくてはならないが、その小屋を大仏の形で拵えて、大仏を招ぎに使うというのが思い附きなんです。大仏の姿が屋根にも囲にもなるが、内側では胎内潜りの仕掛けにして膝の方から登って行くと、左右の脇の下が瓦燈口になっていて此所から一度外に出て、印を結んでいる仏様の手の上に人間が出る。其所へ乗って四方を見晴らす。外の見物からは人間が幾人も大仏さまの右の脇の下から出て、手の上を通って、左の脇の下へ這入って行くのが見える。それから内部の階段を曲りながら登って行くと、頭の中になって広さが二坪位、此所にはその目の孔、耳の孔、口の孔、並びに後頭に窓があって、其所から人間が顔を出して四方を見晴らすと江戸中が一目に見える。四丈八尺位の高さだから大概の処は見える。人間の五、六人は頭の中へ這入れるようにして、先様お代りに、遠眼鏡などを置いて諸方を見せて、客を追い出す。降りて来ると胴体の広い場所に珍奇な道具などを並べ、それに因縁を附け、何かおもしろい趣向にして見せる。この前笑覧会というものがあって阿波の鳴戸のお弓の涙だなんて壜に水を入れたものを見せるなどは気が利かない。もっと、面白いことをして見せるのです……", "……そうして切の舞台に閻魔さまでも躍らして地獄もこの頃はひまだという有様でも見せるかな……なるほど、これは面白そうだ", "大仏が小屋の代りになる処が第一面白い。それで中身が使えるとは一挙両得だ。これは発明だ" ], [ "大仏に見えるかね", "大仏様に見えますとも" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年2月15日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046843", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし", "副題読み": "63 さたけのはらへだいぶつをこしらえたはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-03-25T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card46843.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46843_ruby_26000.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-02-15T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/46843_26168.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-15T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "それは、あなたの勘違いというものだが、それを今ここで議論して見たところで初まらない。とにかく、私は岡倉さんの使者でお願いに来たのですが、君が、承知されないとなると、私も使者に立った役目が仕終せられないので岡倉さんに対しても面目ないが……それでは、とにかく、右の返辞は君から直接岡倉さんへしてくれることにして下さい。今日一つ岡倉さんの家へ行って、逢った上のことにして下さい", "では、そうしましょう。岡倉さんの家は何処ですか", "池の端茅町で、山高さんの手前の所です。馬見場(以前不忍池の周囲が競馬場であった頃、今の勧業協会の処にあった建物)から向うへ廻ると二、三軒で冠木門の家がそれです。承知不承知はとにかく岡倉さんに逢ってよく同氏の話を聞いて下さい。私は今日は都合があって、御同席は出来ませんが万事よろしく……" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年4月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047003", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "65 学校へ奉職した前後のはなし", "副題読み": "65 がっこうへほうしょくしたぜんごのはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-05-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card47003.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47003_ruby_26429.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-04-09T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47003_26574.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-04-09T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "一体、この帝室技芸員というのは何んでしょう。月に一度とか二度とか宮内省の方へ勤めるのでしょうか。何も勤めをせずにお手当を頂くということはないでしょう", "無論、そうでしょうとも、何か御役目があるのでしょう" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年4月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047005", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "67 帝室技芸員の事", "副題読み": "67 ていしつぎげいいんのこと", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-05-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card47005.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47005_ruby_26431.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-04-09T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47005_26576.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-04-09T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "実は、楠公製作の件で是非御願いのことがあって出ました。これは充分聴いて頂きたい……私は今度、主任の役をお受けしたのでありますが、馬上の楠公というので、差し当って馬の製作に取り掛からねばなりません。ついては、馬のことは、私は専門的に深く研究しておりません。普通の仕事であれば、また製作のしようもありますが、御承知の通り今度の馬は容易でありません。私一個の腕としてこの大物を立派にやり上げるということはお恥ずかしいが不安心であります……といって私の片腕となって立派にこの馬をやりこなせる人物は差し当り学校には見当りません……", "なるほど、御もっともな話で……それは困りましたね。これは容易なことではありますまい", "……学校には、馬の専門知識をもった人を見当りませんが、ここに私の親友に後藤貞行という人があります。この人は馬専門の彫刻家であります。……" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年4月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047007", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "69 馬専門の彫刻家のこと", "副題読み": "69 うませんもんのちょうこくかのこと", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-05-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card47007.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47007_ruby_26433.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-04-09T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47007_26578.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-04-09T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "では、私が一遍発光路へ行って見て来ましょう", "まあ、も少し待って見ていましょう。五月一杯だけは……" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年4月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047035", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "73 栃の木で老猿を彫ったはなし", "副題読み": "73 とちのきでろうえんをほったはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-06-18T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card47035.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47035_ruby_26759.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-05-03T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47035_26815.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-05-03T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "平尾さんのお志は感謝しますが、実は、私も貧乏の中で娘を亡くし、いろいろ物入りもして、今日の処少しの貯えもありません。仮りに家をこしらえてくれる人があったとして、引っ越しをする金もありません。……といったような有様ですから、ちょっとお話しに乗る気もしませんが、今のお話によると、すべての事を平尾さんが一切引き受けて下さるというおつもりのようだが、そんなことまでも引き受けてやって下さるのでしょうか", "そんな細々したことまで、私は平尾さんから聞きませんでしたが、一切、高村さんには面倒をかけず、万事を自分の方でする。高村さんはただ、身体だけを新しい家へ持ち運べば好いのだというのですから、無論何もかも一切背負う気でお出ででしょう。それは承知の上のことでしょう", "そうですか。そういうことならお世話になっても好い気がします", "では御承知下さいますね。平尾さんもさぞ張り合いがあるでしょう" ] ]
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店    1995(平成7)年1月17日第1刷発行 底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房    1929(昭和4)年1月刊 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:網迫、土屋隆 校正:noriko saito 2007年4月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "047036", "作品名": "幕末維新懐古談", "作品名読み": "ばくまついしんかいこだん", "ソート用読み": "はくまついしんかいこたん", "副題": "74 初めて家持ちとなったはなし", "副題読み": "74 はじめていえもちとなったはなし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 712 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-06-18T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/card47036.html", "人物ID": "000270", "姓": "高村", "名": "光雲", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こううん", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こううん", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Koun", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1852-03-08", "没年月日": "1934-10-10", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "幕末維新懐古談", "底本出版社名1": "岩波文庫、岩波書店", "底本初版発行年1": "1995(平成7)年1月17日", "入力に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "校正に使用した版1": "1995(平成7)年1月17日第1刷", "底本の親本名1": "光雲懐古談", "底本の親本出版社名1": "万里閣書房", "底本の親本初版発行年1": "1929(昭和4)年1月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "網迫、土屋隆", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47036_ruby_26760.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-05-03T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000270/files/47036_26816.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-05-03T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "後をつけていらしつたの?", "後をつけて来たのではないの。後について来たの。", "今夜は何処へ入らしつた?", "OPÉRA", "SALAMMBO ね、今夜は。" ] ]
底本:「日本の名随筆 別巻3 珈琲」作品社    1991(平成3)年5月25日第1刷発行    1997(平成9)年5月20日第6刷発行 底本の親本:「高村光太郎全集 第九巻」筑摩書房    1957(昭和32)年11月発行 入力:門田裕志 校正:仙酔ゑびす 2006年11月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046503", "作品名": "珈琲店より", "作品名読み": "カフェより", "ソート用読み": "かふえより", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-01-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/card46503.html", "人物ID": "001168", "姓": "高村", "名": "光太郎", "姓読み": "たかむら", "名読み": "こうたろう", "姓読みソート用": "たかむら", "名読みソート用": "こうたろう", "姓ローマ字": "Takamura", "名ローマ字": "Kotaro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1883-03-13", "没年月日": "1956-04-02", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "日本の名随筆 別巻3 珈琲", "底本出版社名1": "作品社", "底本初版発行年1": "1991(平成3)年5月25日", "入力に使用した版1": "1997(平成9)年5月20日第6刷", "校正に使用した版1": "1997(平成9)年5月20日第6刷", "底本の親本名1": "高村光太郎全集 第九巻", "底本の親本出版社名1": "筑摩書房", "底本の親本初版発行年1": "1957(昭和32)年11月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/46503_ruby_25566.zip", "テキストファイル最終更新日": "2007-01-01T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/46503_25618.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-01-01T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "おさむらいの子が、まっ昼間、どうどうと、びんぼうどっくりをさげて、買いものにくるとは、おどろいたな。", "まったくだ。ちかごろは、おさむらいも、ふところぐあいがよくないとみえて、一しょう(一・八リットル)どっくりをさげて買いにみえるが、はずかしそうにほおかむりをして、しかも、日のくれがたとか、夜になってから、買いにくるというのが、ふつうだからな。", "まあ、おさむらいには、士族としての体面(せけんにたいするていさい)があるからな。それを、あのようにどうどうと……いったい、どこの子どもだろう。" ], [ "ええ、だれにもあいませんでした。でも、だれかにあったって、わたしはへいきです。自分の金で、ものを買うんですから、すこしもはずかしいことはありません。", "そうとも、そうとも。よくいってくれました。母さんは、そのことばをきいて、とてもうれしいんだよ。うちがびんぼうでも、おまえがいじけないでそだってくれるということがね。……そうそう、かえってきてすぐでわるいけれど、たんすがあかなくなったから、ちょっとなおしてもらえないかしら。", "いいですとも。あかなくなったのは、どのたんすですか。" ], [ "これは、かぎがこわれたんですね。くぎでなければ、あかないかもしれません。", "そうかい。では、くぎをつかって、あくようにしておくれ。" ], [ "しらなかったで、すむか。目があればみえるはずだ。とのさまのお名まえを足でふむとは、なんたることか。臣子の道(けらいや、子のまもるべきこと)をわきまえない、ふこころえものだぞ、おまえは。", "わたしは、とのさまを足でふんだわけではありません。たまたま、わたしのふんだほご紙に、とのさまのお名まえがかいてあっただけのことです。", "だまれっ、とのさまのお名まえのかいてあるものを、足でふみつけたことは、とのさまをふみつけたとおなじことだ。お父上が生きておられたら、これをなんといわれるか、かんがえてみるがよい。" ], [ "兄さんは、わたしに勉強しろというんですか。いやなことだ。勉強なんて、わたしはだいきらいです。", "では、きくが、おまえは、これからさき、なんになるつもりだ。", "そうですね。まあ、日本一の大金持ちになって、おもうぞんぶんお金をつかってみたいものですね。", "なにっ、大金持ちになりたいだと? 諭吉、おまえは、それでもさむらいの子か。さむらいの子というものは、お金もうけなどかんがえてはならんぞ。おまえは、まだ小さかったからおぼえてもいまいが、お父上はな、さむらいの子が金かんじょうなどならうものじゃないといって、わたしがかよっていた手ならいの先生が、かけざんの九九をおしえたら、そんな先生のところへ子どもをあずけられないといって、おこられたことがあるくらいだ。お父上は、りっぱな学者だった。その血をひいたおまえが、勉強はだいきらいだなんていって、はずかしいとおもわぬか。", "わたしは、勉強がきらいなんですから、しかたがないじゃありませんか。それに、さむらいの子がお金のことをいって、どうしてわるいんですか。うちだって、もっとお金があったら、どんなにいいか。兄さんだって、心の中では、そうおもっているくせに。", "へりくつをいうな。おまえのさきざきのことをかんがえて、勉強するようにすすめてやっているのに、おまえは、それがわからんのか。なんというばかものだ。そこへすわれ、お父上にかわって、おまえのしょうね(こころね)をたたきなおしてやるから。" ], [ "諭吉や、母さんは、このあいだから、おまえにいってきかせようとおもっていたことがあります。おまえは、兄さんに、なんになるつもりだときかれて、大金持ちになりたいとこたえましたね。けれど、兄さんのいわれるように、勉強はやはりしてもらいたいとおもいます。なくなられたお父さまは、おまえをおぼうさんにしたいといわれていたんですよ。", "えっ、わたしをおぼうさんにするって、ほんとうですか、お母さん。", "ほんとうですとも。それには、すこし、わけをはなさなければ、おまえには、わからないかもしれないが……。" ], [ "でも、わたしは、おぼうさんはきらいです。お父上は、どうして、わたしを、おぼうさんにしようとなさったのですか。", "さあ、それは、母さんにも、よくわかりませんがね。まあ、りっぱなおぼうさんになるには、勉強をうんとしなければなりません。お父さまは、学問のすきなかたでしたから、おまえに勉強をしてもらいたかったのじゃないかとおもいます。どうだろ、おぼうさんになっては……。", "おぼうさんになるのだけは、かんべんしてください。そのかわりに……。", "そのかわりに?", "勉強をします。" ], [ "まあ、そんな話はやめようじゃありませんか。この中津にいるかぎりは、なんべん、そんなことを、ぐずぐずいっても、役にたちませんよ。ふへいがあったら、でていくことですね。でていかないのなら、ふへいをいったってはじまりませんよ。", "いったな、諭吉。ばかに大きな口をきくではないか。それなら、きみは、中津をでていくというのか。", "さあ、それは、なんともいえませんがね。" ], [ "オランダ語でかいた本のことだよ。日本語にも、かなりほんやくされているけれども、だいじなところだけをみじかくかいたり、ときには、まちがってほんやくしたところがあるそうだ。だから、砲術をほんとうにしるには、自分で、その原書をよまなければならないんだ。", "ずいぶんむずかしいんでしょうね。", "それは、むずかしいにきまっているさ。けれども、原書をよむことができれば、ほんとうのことがわかるからおもしろいぞ。どうだ、やってみないか、諭吉。", "やりましょう。どうせ、人のよむものなら、横文字であろうが、なんであろうが、やれないということはないでしょうから。" ], [ "ところで、くろがね屋。おれは長崎をでるときに、中津へかえるつもりであったが、きゅうにかえるのがいやになった。これから下関へでて大阪へむかい、それから江戸へいくことにした。ついては、めんどうでも、このにもつと手紙をとどけてはもらえまいか。", "それは、とんでもないことです。あなたのような年のわかい、旅になれないおぼっちゃんが、一人で江戸へおいでになるなんて。" ], [ "はい、きまった先生はございません。長崎で、いろいろな先生からならいました。", "では、これをよんでごらん。" ], [ "ほかの人にも、そうだんしてみましたか。", "ええ、もう、友だち五、六人にはなしてみたんだが、どうしてもわからないというんだ。" ], [ "ワシントンの子孫のかたは、いまどうしていますか。", "さあ、どうしていますかねえ。ワシントンにはたしか、むすめがいたはずですから、だれかのおくさんになってるんでしょうね。" ], [ "みょうなおきゃくさまがいらっしゃいました。", "どんな人かね。", "大きなかたで、目はかた目で、ながい刀をさしています。", "そりゃ、ぶっそうな人のようだが、名はおたずねしたか。", "はい、おききしましたが、お目にかかればわかるからとおっしゃって……。" ], [ "なんだと。外国の軍艦をほうげきしたのがわるいというのか。", "そうとも。まるできちがいざたじゃないか。", "き、きちがいとはなんだ。けしからんことをいうな。長州では、外国人をおっぱらうことに、藩のほうしんがきまっているんだ。あんな外国のやつらに、わがままをされてたまるものか。外国人はぜんぶおいはらうにかぎるよ。" ], [ "わしも、榎本という男のえらいところはしっている。だが、ろうやに入れられて、生きながらえている気持ちが気にくわない。どうして、いさぎよく死なぬのだろうか。", "とんでもない。武揚が死んでしまえば、それっきりです。しかし、あれほどの人間を生かしておけば、日本の国のために、どれほど役にたつかしれません。", "なるほど、きみのいうことも、一つのりくつだな。" ], [ "いやに、役人をやっつけるじゃないか。まるで、ぼくに役人をやめさせようとしているみたいだ。", "そんなことはない。きみは、それでいいんだ。きみの考えどおり役人になったんだからね。自分の考えどおりにものごとをおこなうのが、ほんとうに男らしい人間なんだ。わたしは、役人がきらいだから、役人にはならない。きみが役人になったのを、わたしがさんせいするように、きみは、わたしが役人にならないのをみとめてくれなくっちゃ、いけない。", "なるほど、きみのりくつにあっては、まけだ。" ], [ "ああ、また、しょうじをやぶったな。なかなか元気があって、見こみがあるぞ。", "まあ、元気があってよいなんておっしゃって。女の子ですから、もうすこし、おとなしくしてくれるといいんですが……。", "いやいや、女の子だって、元気があるほうがいいよ。" ], [ "女の子で、どうしてわるいのかね。じょうぶでさえあれば、いいじゃないか。せけんでは、男の子が生まれると、『たいそうめでたい。』といい、『女の子であってもじょうぶなら、まあまあめでたい。』などといっているが、わたしは、そんなつもりでいっているのではない。男の子と女の子のちがいがあろうわけがない。そこにかるいおもいはないはずだ。わたしは、九人の子がみんな女の子だって、すこしもざんねんとはおもわないね。ただ、男の子が四人、女の子が五人というふうに、半分ずつで、いいあんばいだと、おもうだけだ。女の子が生まれて、がっかりすることなんてないな。", "先生のお話をおききしていましたら、なるほど、女の子でもわるくないという気がしてきました。じつは、家内が、女の子が生まれたというんで、わたしいじょうにがっかりしているところです。ありがとうございました。さっそく、家にかえって、家内に先生のお話をきかせてやって、元気をつけてやります。" ] ]
底本:「福沢諭吉」講談社火の鳥伝記文庫、講談社    1981(昭和56)年11月19日第1刷発行    2009(平成21)年2月9日第51刷発行 入力:門田裕志 校正:仙酔ゑびす 2011年11月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "052212", "作品名": "福沢諭吉", "作品名読み": "ふくざわゆきち", "ソート用読み": "ふくさわゆきち", "副題": "ペンは剣よりも強し", "副題読み": "ペンはけんよりもつよし", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K289", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2012-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001541/card52212.html", "人物ID": "001541", "姓": "高山", "名": "毅", "姓読み": "たかやま", "名読み": "つよし", "姓読みソート用": "たかやま", "名読みソート用": "つよし", "姓ローマ字": "Takayama", "名ローマ字": "Tsuyoshi", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1911-08-01", "没年月日": "1961-10-28", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "福沢諭吉", "底本出版社名1": "講談社火の鳥伝記文庫、講談社", "底本初版発行年1": "1981(昭和56)年11月19日", "入力に使用した版1": "2009(平成21)年2月9日第51刷", "校正に使用した版1": "2009(平成21)年2月9日第51刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "門田裕志", "校正者": "仙酔ゑびす", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001541/files/52212_ruby_46186.zip", "テキストファイル最終更新日": "2012-01-01T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001541/files/52212_46230.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2012-01-01T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "私、男みたいだつて、いつも母ちやんに云はれてるのよ、もつと、いい加減に大人らしくしたらいいぢやないかつて――", "さうよ、もう大人よ、あんた――" ], [ "なら、白状しておしまひ、兄さんはよほどあんたが好きらしいのね", "――どうして、そんなこと云ふの" ], [ "私、もう結構", "遠慮しなくてもいいわ、――ドオナツをおあがり", "――そいぢや、牛乳をいただくわ、だけど、悪いわねえ" ], [ "何さ、いけすかない、思ひ出し笑ひなんかして", "いいえ、――おつぱい屋のこと" ], [ "けふ、お休みを貰へないかい", "駄目、十五日ぢやないの、――それにゆうべからお神さんが品川へ帰つてるんだもの", "困つたねえ、どうしたもんだらう" ], [ "――そこを何とか若旦那にお頼み出来ないだらうか", "うるさいのねえ", "――私はかまはないんだけど、新吉さんに恥をかかせるわけにはいかないからね" ], [ "さう、新吉さんのためなら、私はどうなつてもいいのね", "そんな、――お前", "知らないわよ、――私のお給金の前借りばかりしやがつて" ], [ "――何だつてね、福ずしがお前をほしがつてるんだつてね", "さア、よく知らないんですけど――" ], [ "あいつがお前に何とか云つたら、承知するつもりなんだね", "――いやだわそんなこと" ], [ "母あちやんだつて、秀ちやん好きよ、きつと、――私にはよく判るの", "判るもんか" ], [ "さう、――ぢや、鬼のゐぬ間の洗濯ね", "うん" ], [ "――いやに、しけ込んだね", "憂欝なのさ", "ふん、憂欝か、――君でもね", "あんたなんか私のことを知らないよ" ], [ "もつと、お飲みよ", "無理しないがいいわ、ぢやないのか、――飲むよ" ], [ "だから、何だ", "だから、さ、だからと云つたら――" ], [ "ごめんね、――返事してよ", "うん" ], [ "かんばんまで遊んでるでしよ", "うん――いいよ", "それからね、仁王門の側で待つててくれない", "――待つててもいいけど、なぜ", "お酉さま", "ああ、――今年は三の酉もあるんだね、不景気、火事多しか", "いやなの", "誰もいやと云ひやしない" ], [ "――滑稽ね、腕押ししてたの", "ああ" ], [ "何してるんだ", "知つた人がゐるやうな気がしたもんだから" ], [ "秀ちやん、下駄がどつかへいつちやつたよ", "――見つかりやしないよ、――" ] ]
底本:「現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」筑摩書房    1967(昭和42)年 入力:山根鋭二 校正:伊藤時也 1999年10月19日公開 2005年12月30日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "000978", "作品名": "一の酉", "作品名読み": "いちのとり", "ソート用読み": "いちのとり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1999-10-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/card978.html", "人物ID": "000189", "姓": "武田", "名": "麟太郎", "姓読み": "たけだ", "名読み": "りんたろう", "姓読みソート用": "たけた", "名読みソート用": "りんたろう", "姓ローマ字": "Takeda", "名ローマ字": "Rintaro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1904-05-09", "没年月日": "1946-03-31", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1967(昭和42)年", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "山根鋭二", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/978_ruby_20980.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-12-30T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/978_20981.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-12-30T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "五十円もウネツテたまつたら、病院に入つてこまそと思ふんやけど", "どこが病気や" ] ]
底本:「現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」筑摩書房    1967(昭和42)年 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:山根鋭二 校正:伊藤時也 1999年12月15日公開 2005年12月30日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "000980", "作品名": "釜ヶ崎", "作品名読み": "かまがさき", "ソート用読み": "かまかさき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1999-12-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/card980.html", "人物ID": "000189", "姓": "武田", "名": "麟太郎", "姓読み": "たけだ", "名読み": "りんたろう", "姓読みソート用": "たけた", "名読みソート用": "りんたろう", "姓ローマ字": "Takeda", "名ローマ字": "Rintaro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1904-05-09", "没年月日": "1946-03-31", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1967(昭和42)年", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "山根鋭二", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/980_ruby_20978.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-12-30T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/980_20979.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-12-30T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "――そりやさうだが、お前、肺病らしいと云ふぢやないか", "――誰がそんなことを云つた", "――彦造が心配してをつた、学生時代にはぶくぶく肥えてたのに毎年毎年痩せさらばへて行くばかりぢやと、きつう心配してゐた、肺病にちがひないし、手当をするのは今のうちぢやと騒いでをつたが、……", "――さうかも知れん、どうせ遠からず死ぬ" ], [ "――岸田とどこへ行つてゐた", "――あの人が表で待つてゐて、踊りに行かうとすすめられたんだけど、断つてさつさと帰つて来た", "――嘘をつけ、この売女", "――嘘ぢやない、母さんに聞いでごらんなさい" ], [ "――誰がそんな説を云ひ出したんだ", "――誰も彼もない、情勢は切迫してゐるんだ、兜町すぢからの話ぢや、一週間以内に戦争がはじまるさうだ、さうなると、もう完全な悪時代だからね、金があれば田舎へすつ込んで鶏でも飼つてこの反動期を切り抜けるんだがなア、いやア、帰る田舎があるだけでもいい、俺には逃げる場所がないのだ", "――悪時代だけ逃げを張つて、状勢がよくなると、またのこのこ出て来て、景気のいいことを云ふのか、波が高まれば、戻つて来て大に昂揚したところを見せると云ふのか、沈んでゐる時は、どこかに隠れてゐて" ] ]
底本:「現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」筑摩書房    1967(昭和42)年 入力:山根鋭二 校正:伊藤時也 1999年10月19日公開 2005年12月30日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "000963", "作品名": "現代詩", "作品名読み": "げんだいし", "ソート用読み": "けんたいし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1999-10-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/card963.html", "人物ID": "000189", "姓": "武田", "名": "麟太郎", "姓読み": "たけだ", "名読み": "りんたろう", "姓読みソート用": "たけた", "名読みソート用": "りんたろう", "姓ローマ字": "Takeda", "名ローマ字": "Rintaro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1904-05-09", "没年月日": "1946-03-31", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1967(昭和42)年", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "山根鋭二", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/963_ruby_20982.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-12-30T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/963_20983.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-12-30T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "――折角、あない云うてくれはるんやさかい、一しよに御馳走にならうやおまへんか", "――ははは、さうし給へ、腹をならしてるなぞ、見つともない、……出かける前に、ちよつと待つてくれ給へ" ], [ "――万歳? あ、あれはええものだす、……そやけど、何だつせ、わてが今からちやんと云うとくけど、あんたはん、えらい出世しますで、……失礼ながら、お父はんどこやあらへん", "――さうかい、そりやあまり当てにならないね、……お稲荷さん、こちらも見てあげてくれ、見料として、もう一本つけさせよう" ], [ "――そやから、どないな夢や聞いてるんやがな、……あんた、いつも一晩中歯ぎしりをするし、何や知らんが、怖さうにうなされてるし、……えらい近所迷惑やがな、……もうちよつと気いつけるわけにいかんか", "――君んとこの狐が不愉快なんだよ" ], [ "――こいつが、どだい、日頃から生意気なもんで、……", "――うむ、まア、いい、もう一ぱい飲んで出かけよう、……" ] ]
底本:「現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」筑摩書房    1967(昭和42)年 入力:山根鋭二 校正:伊藤時也 1999年10月19日公開 2005年12月31日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "000962", "作品名": "大凶の籤", "作品名読み": "だいきょうのくじ", "ソート用読み": "たいきようのくし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1999-10-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/card962.html", "人物ID": "000189", "姓": "武田", "名": "麟太郎", "姓読み": "たけだ", "名読み": "りんたろう", "姓読みソート用": "たけた", "名読みソート用": "りんたろう", "姓ローマ字": "Takeda", "名ローマ字": "Rintaro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1904-05-09", "没年月日": "1946-03-31", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1967(昭和42)年", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "山根鋭二", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/962_ruby_20991.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-12-31T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/962_20992.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-12-31T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "いつやるんだ", "あす昼、解団式の直後にでも決行する" ] ]
底本:「現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集」筑摩書房    1967(昭和42)年3月 入力:山根鋭二 校正:伊藤時也 1999年12月15日公開 2012年9月12日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001002", "作品名": "日本三文オペラ", "作品名読み": "にほんさんもんオペラ", "ソート用読み": "にほんさんもんおへら", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1999-12-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/card1002.html", "人物ID": "000189", "姓": "武田", "名": "麟太郎", "姓読み": "たけだ", "名読み": "りんたろう", "姓読みソート用": "たけた", "名読みソート用": "りんたろう", "姓ローマ字": "Takeda", "名ローマ字": "Rintaro", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1904-05-09", "没年月日": "1946-03-31", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集", "底本出版社名1": "筑摩書房", "底本初版発行年1": "1967(昭和42)年3月", "入力に使用した版1": "", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "山根鋭二", "校正者": "伊藤時也", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/1002_ruby_20989.zip", "テキストファイル最終更新日": "2012-09-12T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "3", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000189/files/1002_20990.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2012-09-12T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "1" }
[ [ "あのくらい蝙蝠傘が大きかったら日にやけないで好いわね", "ええ、だから幹子さんは、お色が白いわよ" ], [ "そうよ、そうよ", "きっとそうだわ" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046431", "作品名": "大きな蝙蝠傘", "作品名読み": "おおきなこうもりがさ", "ソート用読み": "おおきなこうもりかさ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46431.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46431_ruby_23487.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46431_23626.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "姉さん、今日は何だかぼく、あの笛の音が淋しくて仕方が無いよ、そう思わない?", "そうね、あたしも先刻からそう思っていたけれど、摩耶ちゃんが淋しがると思って言わなかった。", "また難破船でもあるのじゃないかしら。" ], [ "須美、浜へ出て見てお出で、何だか変な物が望遠鏡に映ったから", "はい" ], [ "じゃ摩耶さん、あたしも村の方へ行ってきてよ。霧笛は大丈夫?……しっかり頼んでよ", "日本男児だ!", "本当にお父さんはじめ、難船した人達のためなのよ。しっかりやって頂戴" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046436", "作品名": "おさなき灯台守", "作品名読み": "おさなきとうだいもり", "ソート用読み": "おさなきとうたいもり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46436.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46436_ruby_23510.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46436_23628.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "冬は北の方の山から来るわね。雁がさきぶれをして黒い車にのって来るといの", "そうお。おばあさん、冬はなぜさむいの?", "冬は北風にのって、銀の針をなげて通るからの", "そうお。おばあさんは冬がお好き?", "さればの、好きでもないし嫌いでもないわの。ただ寒いのにへいこうでの", "そうお" ], [ "どうせ、遊んでいるんだからいってやってもいいが、なにかい、連中は大勢かい", "そうさね、炭が三十俵に、薪が百束だ", "そいつあいけねえ。そんな重いものを引っ張っていったら、脚も手も折れてしまわあ、せっかくだがお断りするよ", "そんなことを言わないでいっておくれよ。花子さんが待ってるから", "うるせえな、昼寝をしている方がよっぽど楽だからな" ], [ "実際困っているんだが、君いってくれますか。だけど見かけたところ、君はずいぶんちいさいね。これだけのものをひっぱってゆけるかね", "ぼくもわからないが、なあに一生懸命やって見るよ", "じゃあ、ひとつやって貰おうか。おれたちもせいぜい軽くのっかるからね" ], [ "なんださか、こんなさか", "汽缶車さん、気の毒だね、おもたくて", "なあに、もすこしですよ。なんださか、こんなさか" ], [ "やれ、やれ、骨がおれましたね", "これからはらくですよ、下坂ですからね" ], [ "さあ、花子さん来ましたよ", "はやく来られたわね" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046433", "作品名": "玩具の汽缶車", "作品名読み": "おもちゃのきかんしゃ", "ソート用読み": "おもちやのきかんしや", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46433.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46433_ruby_23507.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46433_23629.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "ねえ、かあさん", "なあに、みっちゃん", "あのね、かあさん。もうじきに、クリスマスでしょ", "ええ、もうじきね", "どれだけ?", "みっちゃんの年ほど、おねんねしたら", "みっちゃんの年ほど?", "そうですよ" ], [ "ひとつ、ふたあつ、みっつ、そいから、ね、かあさん。いつつ、ね、むっつ。ほら、むっつねたらなの? ね、かあさん", "そうですよ。むっつねたら、クリスマスなのよ", "ねえ、かあさん", "まあ、みっちゃん、お茶がこぼれますよ", "ねえ、かあさん", "あいよ", "クリスマスにはねえ。ええと、あたいなにがほしいだろう", "まあ、みっちゃんは、クリスマスの贈物のことを考えていたの", "ねえ、かあさん、何でしょう", "みっちゃんのことだもの。みっちゃんが、ほしいとおもうものなら、何でも下さるでしょうよ。サンタクロスのお爺さんは", "そう? かあさん", "ほら、お口からお茶がこぼれますよ。さ、ハンカチでおふきなさい。えエえエ、なんでも下さるよ。みっちゃん、何がほしいの", "あたいね。金の服をきたフランスの女王様とね、そいから赤い頬ぺをした白いジョーカーと、そいから、お伽ばなしの御本と、そいから、なんだっけそいから、ピアノ、そいから、キュピー、そいから……", "まあ、ずいぶんたくさんなのね", "ええ、かあさん、もっとたくさんでもいい?", "えエ、えエ、よござんすとも。だけどかあさんはそんなにたくさんとてもおぼえきれませんよ", "でも、かあさん、サンタクロスのお爺さんが持ってきて下さるのでしょう", "そりゃあ、そうだけれどもさ、サンタクロスのお爺さんも、そんなにたくさんじゃ、お忘れなさるわ", "じゃ、かあさん、書いて頂戴な。そして、サンタクロスのお爺さんに手紙だして、ね", "はい、はい、さあ書きますよ、みっちゃん、いってちょうだい", "ピアノよ、キュピーよ、クレヨンね、スケッチ帖ね、きりぬきに、手袋に、リボンに……ねえかあさん、お家なんかくださらないの", "そうね、お家なんかおもいからねえ。サンタクロスのお爺さんは、お年寄りだから、とても持てないでしょうよ", "では、ピアノも駄目かしら", "そうね。そんなおもいものは駄目でしょ", "じゃピアノもお家もよすわ、ああ、ハーモニカ! ハーモニカならかるいわね。そいからサーベルにピストルに……", "ピストルなんかいるの、みっちゃん", "だって、おとなりの二郎さんが、悪漢になるとき、いるんだっていったんですもの", "まあ悪漢ですって。あのね、みっちゃん、悪漢なんかになるのはよくないのよ。それにね、もし二郎さんが悪漢になるのに、どうしてもピストルがいるのだったら、きっとサンタクロスのお爺さんが二郎さんにももってきて下さるわ", "二郎さんとこへも、サンタクロスのお爺さんくるの", "二郎さんのお家へも来ますよ", "でも二郎さんとこに、煙突がないのよ", "煙突がないとこは、天窓からはいれるでしょう", "そうお、じゃ、ピストルはよすわ", "さ、もう、お茶もいいでしょ。お庭へいってお遊びなさい" ], [ "二郎さん、サンタクロスのお爺さんにお手紙かいて?", "ぼく知らないや", "あら、お手紙出さないの。あたしかあさんがね、お手紙だしたわよ。ハーモニカだの、お人形だの、リボンだの、ナイフだの、人形だの、持ってきて下さいって出したわ", "お爺さんが、持ってきてくれるの?", "あら、二郎さん知らないの", "どこのお爺さん?", "サンタクロスのお爺さんだわ", "サンタクロスのお爺さんて、どこのお爺さん?", "天からくるんだわ。クリスマスの晩にくるのよ", "ぼくんとこは来ないや", "あら、どうして? じゃきっと煙突がないからだわ。でも、かあさんいったわ、煙突のないとこは天窓からくるって", "ほう、じゃくるかなあ、何もってくる?", "なんでもよ", "ピストルでも?", "ピストルでもサーベルでも", "じゃ、ぼく手紙をかこうや" ], [ "サンタクロスに手紙をかいてよ、かあさん", "なんですって、この子は", "ピストルと、靴と、洋服と、ほしいや", "まあ、何を言っているの", "みっちゃんとこのかあさんも手紙をかいて、サンタクロスにやったって、人形だの、リボンだの、ハーモニカだの、ねえかあさん、ぼく、ピストルとサーベルと、ね……", "それはね二郎さん、お隣のお家には煙突があるからサンタクロスのお爺さんが来るのです", "でもいったよ、みっちゃんのかあさんがね、煙突がないとこは天窓がいいんだって", "まあ。それじゃお手紙をかいてみましょうね。坊や", "嬉しいな。ぼくピストルにラッパもほしいや", "そんなにたくさん、よくばる子には、下さらないかも知れませんよ", "だってぼく、ラッパもほしいんだもの", "でもね、サンタクロスのお爺様は、世界中の子供に贈物をなさるんだから、一人の子供が欲ばったら貰えない子供ができると悪いでしょう", "じゃあぼく一つでいいや、ラッパ。ねえかあさん", "そうそう二郎さんは好い子ね", "赤い房のついたラッパよ、かあさん", "えエえエ、赤い房のついたのをね", "うれしいな" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046421", "作品名": "クリスマスの贈物", "作品名読み": "クリスマスのおくりもの", "ソート用読み": "くりすますのおくりもの", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46421.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46421_ruby_23442.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46421_23631.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "なんて古くさい絵でしょう", "馬鹿にしてるわ", "この眼はどうでしょう" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046435", "作品名": "最初の悲哀", "作品名読み": "さいしょのひあい", "ソート用読み": "さいしよのひあい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46435.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46435_ruby_23509.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46435_23632.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "お鶴は死ないんですねえ、母様", "さいなあ、阿波の鳴門をこえて観音様のお膝許へいきやつたといのう", "でも、お鶴はお祖母様の手紙を母様にみせたの", "さいなあ、お鶴の母御は、その手紙をお鶴の懐からとりだして読みながらよみながらお泣やつたといのう", "母様、お鶴は死んだの", "なんの、死ぬものぞいの。お鶴は観音様のお膝許へいつたのやがな", "母様、お鶴はなんて言つて歌つたの" ], [ "か……母様", "なあに", "お……お鶴は死ないんですねえ" ], [ "草之助さんでござんしたか。ま、おほきくおなりやしたことわい、なんぼにおなりやんしたえ", "十二です" ], [ "なぜだまつてるのさ。なにかおこつたの", "うヽん", "さ、一がさした", "二がさした", "三がさした", "四がさした", "五がさした", "六がさした", "七がさした", "蜂がさした、ぶん〳〵ぶん………", "いや、美迦さんはあんまりひどくつねるんだものな", "いたかつて、ごめんなさい" ] ]
底本:「桜さく島 見知らぬ世界」洛陽堂    1912(明治45)年4月24日発行 ※近代デジタルライブラリー(http://kindai.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。 ※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記を新字にあらためました。 ※文中の「…」は底本では1文字あたり4点ないしは5点の点線ですが、文字の幅に合わせた「…」で代用しました。 ※歴史的仮名遣いから外れたものも、底本通り入力しました。 ※促音「っ」の小書きの混在は底本のままとしました。 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:土屋隆 校正:田中敬三 2005年8月22日作成 2010年11月1日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "004840", "作品名": "桜さく島", "作品名読み": "さくらさくしま", "ソート用読み": "さくらさくしま", "副題": "見知らぬ世界", "副題読み": "みしらぬせかい", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-09-14T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card4840.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "桜さく島 見知らぬ世界", "底本出版社名1": "洛陽堂", "底本初版発行年1": "1912(明治45)年4月24日", "入力に使用した版1": "1912(明治45)年4月24日", "校正に使用した版1": "1912(明治45)年4月24日", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "土屋隆", "校正者": "田中敬三", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/4840_ruby_19249.zip", "テキストファイル最終更新日": "2010-11-01T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "2", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/4840_19270.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2010-11-01T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "2" }
[ [ "ろ", "それから", "は" ], [ "母様、駒鳥は可哀そうねエ", "坊や、泣くんじゃないよ", "でも母様、雀が……雀が……こ……殺しちゃったんだもの", "ああ、そうなの。雀が殺してしまったのよ。本にはそう書いてありますけれど、坊やは聞いたことがありますか", "何あに" ], [ "母様はなぜそんなにチクチクばかりしてるの?", "坊やには青い水兵服と、嬢には紫のお被布を拵えてあげようと思ってさ", "母様はチクチクが好きなの?", "そうとも思わないけれどね", "だって……母様は飽きないの?", "ああ、そりゃ時時はねえ", "じゃお休みなさいよ。ねえ母様", "お休みって? 坊や。ああ休みましょう。いま少し縫って、そしたら遊びましょう", "だって、母様は、いま少し、いま少しって、一日かかっちまうんだもの、ねえ、母様てば、母様" ], [ "いったい如何してなのです? それを聞きましょう", "何故って、父様がいない時には母様の面倒を坊やが見てあげるんだい。母様が逢いたくないような奴に母様がいじめられないようにしろって父様が言ったんだもの" ], [ "ああそういうんですか? それでお前さんは、何故お前さんのお母様が私に逢いたくないのか、その訳を知っていなさるかえ?", "だって――母様、そう言ったもの!" ], [ "もう済んだ、もう済んじゃった。", "何がもう済んだっての、坊や" ], [ "母様見て御覧なさい、坊やが飛上りますよ", "まあ", "今度は逆立ち", "まあ、お上手だこと", "母様、坊やは大きくなってから何になるか知ってますよ", "何になるの", "曲馬師になるの", "まあ", "大きい白い馬に乗って、ねえ母様", "まあいいことね", "そしてお月様なんか飛越しっちまうんだ", "お月様を、まあ" ], [ "けども坊やは曲馬師にはならないかも知れないの、きっと、ねえ母様", "曲馬師にならないって", "ぼくは、ジョージ、ワシントンのように大統領になるの、父様がなれるっていいましたもの、なれるでしょうか、え、母様", "そうね、なれましょうよ、何時か", "だけども次郎坊なんかなれやしませんね、母様", "何故次郎さんはなれないの", "だって次郎坊は約束してもすぐ嘘いうんだもの。ぼくは言わないの、ジョージ、ワシントンも言わなかったから", "そうそうその方がいいんですよ、曲馬師と大統領とはまるで較べものになりません", "ぼくは母様、ぼくきっと大統領になりますよ", "まあいいこと、屹度なるんですよ" ], [ "母様", "はあい", "今から歌を歌いますよ" ], [ "さあ今度は母様の番だよ。母様何かお噺", "お噺", "ええあの菫のお噺" ], [ "空のように青い、そう昔はね、この世界に菫が一つも無かったの", "それからお星様もねえ、母様", "ええ菫もお星様もこの世界になかったの。そこでねえ坊や、青い空をすこしばかり分けて貰ってそれを世界中に輝したものがあるの。それが菫の一番はじまりなんだよ", "それからお星様は?", "坊やは知ってるじゃありませんか。お星様はね、青い空の小さな穴ですよ。そこから天の光が輝く小さな穴ですよ" ], [ "そんならねえ母様、神様は、あの駒鳥の死んだ時をも知っているの?", "知ってなさるとも", "それじゃあ、ぼくが指を傷めた時をも、知っているの?", "ああ、何でも知っていなさいますよ", "そんなら、ぼくが指を傷めた時には、可愛そうと思ったでしょうか、え母様", "それは可愛そうだと思いなされたともね", "じゃ、何故神様はぼくの指を傷める様になされたの?" ], [ "母様! ぼく神様はいや、神様はいや!", "何故坊やはそんな事いうの? 神様は坊やを可愛がってらっしゃるのに", "だって、だって、母様、母様がなさる様じゃないもの、神様は母様のようじゃないんだもの" ], [ "可愛いい坊や", "え", "私の大切な大切な可愛いい坊や" ], [ "何日かねえ、このお庭で、この離れで母様は坊やの夢を見たのよ", "坊やの夢を? えッ母様", "ああ坊やの。恰度この庭でね、そこの月見草が花盛りで鳥が鳴いて居たの。母様は、坊やが小さな赤ん坊だったところを夢に見たの。ああ、その時に風は月見草の花に歌をうたってきかせて居ましたよ。母様はねえ。坊やにねんねこ歌を歌ってきかせたのよ。そうするとねえ、坊やが私の方へ手を伸べて笑ったの、それから……ねえ、坊や……", "でも母様、それは夢だったの", "それはほんとの夢だったの、そしてそれがほんとうになったの。それは六月のある晩にほんとうになったの。――六月のおついたちに……", "ぼくの誕生日に", "坊やの誕生日に" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046451", "作品名": "少年・春", "作品名読み": "しょうねん・はる", "ソート用読み": "しようねんはる", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46451.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46451_ruby_23596.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46451_23633.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "青麥の青きをわけて、逢ひにくる。だつたかしら、そんな歌もおぼえてゐますわ", "女つていふものは、變なことをよくおぼえてゐるものですねえ", "月日だつてちやんとおぼえてゐましてよ", "さうかなあ。そのくせナポレオンがセントヘレナへ流された日なんか忘れてゐるでせう", "なんでも櫻の花がまるで雪のやうに青麥の間へたまつてゐました。ネルのキモノの袖口からくすぐつたい南風が吹いてくる日でしたわ", "そんなにいろんな過去をおぼえてゐたら生きてゐることがずゐぶん負擔になりやしませんか", "いやなことより好いことの方をよけいにおぼえてゐますもの", "そんなものですかねえ" ], [ "…………", "お光です", "ああさうだつたね" ], [ "あれからどうしたの", "ま、ゆつくりお話しますわ。今朝、先生の展覽會のあることを主人からきいて、いま飛んできた所ですの。今晩主人とお宿へでも伺はせて頂きたいと思ひますの、およろしいでせうか" ], [ "ま、さう。聞かせて頂戴な", "嘘言だよ" ], [ "まあ好いわねえ", "あすこは何處?", "あすこはねえ", "えゝ", "知らない", "まあ!" ], [ "ではどうして、そのデツサンをやりませう", "どこか自由な研究所へでもゆくと良い" ], [ "何處にでも", "ぢや神樣のやうなものだね" ], [ "炭燒小屋でせう", "兎に角、あの方向へいつて見ませう" ], [ "どうせう", "まづぼくが瀬ぶみに飛んで見よう", "ちよつと待ちたまへ" ], [ "いゝえ、あたしはあなたと別れるのは死んでもいやです。それに世のために捧げた身體です。どうなつても構ひません", "二つの神に仕へることは出來ない。世の中のためならどこにゐても出來る。さ、もう時がない" ], [ "ユウーウ?", "ダ" ] ]
底本:「砂がき」ノーベル書房株式会社    1976(昭和51)年10月5日初版発行 ※項の変わり目は、冒頭のごく短いものをのぞいて改頁されている。別丁の口絵を挟んだ後のみは、改丁扱いとなっているが、特にその箇所が大きな区切れ目を表しているわけではない。そこで誤解を避けるために、「改丁」されている箇所もあえて「改頁」と注記した。 ※底本中には、「奥」と「奧」、「観」と「觀」、「懐」と「懷」、「騒」と「騷」、「髪」と「髮」など、新旧の関係にある文字が共に現れるが、統一はせず、ママとした。 ※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、底本のままとしました。(青空文庫) 入力:皆森もなみ 校正:Juki ファイル作成: 2003年1月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001558", "作品名": "砂がき", "作品名読み": "すながき", "ソート用読み": "すなかき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-01-25T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card1558.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "砂がき", "底本出版社名1": "ノーベル書房株式会社", "底本初版発行年1": "1976(昭和51)年10月5日", "入力に使用した版1": "1976(昭和51)年10月5日初版", "校正に使用した版1": "1976(昭和51)年10月5日初版", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "皆森もなみ", "校正者": "Juki", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/1558_ruby_8005.zip", "テキストファイル最終更新日": "2003-01-18T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/1558_8296.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2003-01-18T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "葉子さんのお宅は山の方でしたねえ。お宅の近所の野原には沢山に草花が咲いていてどんなにか好いでしょうね", "先生はあんな田舎の方がお好きですか", "ええ、毎日でもゆきたいと思いますわ", "先生、私の宅へいつかいらっしゃいましな。そりゃあ綺麗な花があるの。だって、葉子さんのお宅の庭よかずっと広いんですもの" ], [ "そんなら好いけど。何だか考えこんでいらっしゃるんですもの、言って好いことなら私に話して頂戴な", "いいえ、そんな事じゃないの、私すこし頭痛がするの", "さう、そりゃいけないわね" ], [ "え", "あなた森先生お好き?", "ええ、好きよ、大好きだわ", "あたしも好きなの、でも先生は私のことを怒っていらっしゃる様なの", "そんなことはないでしょう" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年 入力:田中敬三 校正:noriko saito 2005年9月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045632", "作品名": "先生の顔", "作品名読み": "せんせいのかお", "ソート用読み": "せんせいのかお", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-10-03T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card45632.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "田中敬三", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/45632_ruby_19212.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-09-21T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/45632_19494.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-09-21T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "君、この水はどこへ往くんだろうね", "海さ", "そりゃ知ってるよ。だけど何川の支流とか、上流とか言うじゃないか", "これは、神田川にして、隅田川に合して海に入るさ。", "そう言えば、今頃は地理の時間だぜ、カイゼルが得意になって海洋奇談をやってる時分だね" ], [ "家へ帰る?", "家へなんか帰ったら余計にわるいよ。散歩しようじゃあないか、どこか" ], [ "ニコライへいって見ないか?", "ああ" ], [ "ミスタ、ヤマダ", "ヒヤ", "ミスタ、コバヤシ", "ヒヤ", "ミスタ、ヤマカワ", "ヒイイズ、アブセン" ], [ "うん", "しっかりしろよ、もう学校はあきらめたんじゃないか", "そんなこと考えてやしないよ。ただ……", "ただ心配なんだろう。だって仕方がないよ。遅れたものは遅れたんだから", "そうさ、銀座へゆこうよ" ], [ "隅田川だね", "ああ" ], [ "お腹がすいたね", "君は弁当持ってる?", "持ってない、君持ってるの", "パンがあるよ" ], [ "君お金ある?", "ああ、二十五銭", "ぼく五銭だ", "お茶が一杯ずつのめるね" ], [ "なんだか這入るのがきまりが悪いね", "ああ、よそうよ" ], [ "幾時頃なんだろう", "時計屋の時計はあてにならないね" ], [ "学校へいって見ようか", "ああ" ], [ "来た!", "先生だ!" ], [ "あ、あれだ", "山本先生だ" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046426", "作品名": "誰が・何時・何処で・何をした", "作品名読み": "だれが・いつ・どこで・なにをした", "ソート用読み": "たれかいつとこてなにをした", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46426.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46426_ruby_23485.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46426_23636.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "ほう、日輪草というだね", "この花は、日盛りに咲いて、太陽が歩く方へついて廻るから日輪草って言うのさ" ], [ "お前さんは今まで何処をうろついていたんだよ。いま何時だと思っているんだい", "見ねえな、ほら八時よ", "なんだって、まああきれて物が言えないよ、この人は、いったいこんなに晩くまでどこにいたんだよ", "三宅坂よ", "三宅坂だって! 嘘を言ったら承知しないよ。さ、どこにいたんだよ、誰といたんだよ", "ひめゆりよ", "ひめゆり! ?" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046427", "作品名": "日輪草", "作品名読み": "ひまわりそう", "ソート用読み": "ひまわりそう", "副題": "日輪草は何故枯れたか", "副題読み": "ひまわりそうはなぜかれたか", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46427.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46427_ruby_23486.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46427_23641.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "でも一人ではいけませんよ。お姉様とならいいけど", "うん、じゃあお姉様と、ね、そんならいいでしょう" ], [ "お母様は、行ってもいいっておっしゃったの?", "ええ、お姉様とならいいって", "じゃ、行ってあげるわ", "うれしいな、これからすぐですよ" ], [ "カン、カン、カン", "カン、カン、カン" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046441", "作品名": "街の子", "作品名読み": "まちのこ", "ソート用読み": "まちのこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46441.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46441_ruby_23532.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46441_23642.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "今田氏はお前のような友達は持ったことはないと仰言るよ", "今田時雄は、その、算術の試験の時……", "もう好い。兎に角この帽子はお前に返してやるが、今後は、他人の邸宅へ無断で侵入しては相ならぬぞ、よしか" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年 入力:田中敬三 校正:noriko saito 2005年9月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "045633", "作品名": "都の眼", "作品名読み": "みやこのめ", "ソート用読み": "みやこのめ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-10-03T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card45633.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "田中敬三", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/45633_ruby_19213.zip", "テキストファイル最終更新日": "2005-09-21T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/45633_19495.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2005-09-21T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "みっちゃんが夕御飯たべてる時に、親鳥が コ コ コ って言って雛鳥を寝かしていましたよ", "だってあたし眠くないんですもの", "山の小鳩も、もう親鳩の羽根の下へ頭をかくして コロ コロ コロ お休みって眠りましたよ", "だってあたし眠くないの", "赤い小牛は小屋の中で、羊の子は青い草の中で寝しましたよ" ] ]
底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館    2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行 底本の親本:「童話 春」研究社    1926(大正15)年12月 入力:noir 校正:noriko saito 2006年7月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "046442", "作品名": "夜", "作品名読み": "よる", "ソート用読み": "よる", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/card46442.html", "人物ID": "000212", "姓": "竹久", "名": "夢二", "姓読み": "たけひさ", "名読み": "ゆめじ", "姓読みソート用": "たけひさ", "名読みソート用": "ゆめし", "姓ローマ字": "Takehisa", "名ローマ字": "Yumeji", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1884-09-16", "没年月日": "1934-09-01", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "童話集 春", "底本出版社名1": "小学館文庫、小学館", "底本初版発行年1": "2004(平成16)年8月1日", "入力に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "校正に使用した版1": "2004(平成16)年8月1日初版第1刷", "底本の親本名1": "童話 春", "底本の親本出版社名1": "研究社", "底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年12月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "noir", "校正者": "noriko saito", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46442_ruby_23533.zip", "テキストファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000212/files/46442_23643.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2006-07-02T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "あ、これは、お仕事中ですね。", "いや、なに。" ], [ "キクちゃん。こないだ、あなたの未来の旦那さんに逢ったよ。", "そう? どうでした? すこうし、キザね。そうでしょう?", "まあ、でも、あんなところさ。そりゃもう、僕にくらべたら、どんな男でも、あほらしく見えるんだからね。我慢しな。", "そりゃ、そうね。" ], [ "かまいませんわ。そのほうが簡単でいいわ。", "キクちゃんも、時々やるんじゃねえか。" ], [ "あの頃の貴婦人はね、宮殿のお庭や、また廊下の階段の下の暗いところなどで、平気で小便をしたものなんだ。窓から小便をするという事も、だから、本来は貴族的な事なんだ。", "お酒お飲みになるんだったら、ありますわ。貴族は、寝ながら飲むんでしょう?" ], [ "どこへ置きましょう。", "燭台は高きに置け、とバイブルに在るから、高いところがいい。その本箱の上へどうだろう。", "お酒は? コップで?", "深夜の酒は、コップに注げ、とバイブルに在る。" ], [ "まだ、もう一ぱいぶんくらい、ございますわ。", "いや、これだけでいい。" ], [ "この蝋燭は短いね。もうすぐ、なくなるよ。もっと長い蝋燭が無いのかね。", "それだけですの。" ], [ "足袋をおぬぎになったら?", "なぜ?", "そのほうが、あたたかいわよ。" ] ]
底本:「グッド・バイ」新潮文庫、新潮社    1972(昭和47)年7月30日発行    1989(平成1)年3月20日37刷改版    1999(平成11)年6月10日56刷 入力:蒋龍 校正:鈴木厚司 2004年2月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "001562", "作品名": "朝", "作品名読み": "あさ", "ソート用読み": "あさ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「新思潮」1947(昭和22)年7月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-03-04T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card1562.html", "人物ID": "000035", "姓": "太宰", "名": "治", "姓読み": "だざい", "名読み": "おさむ", "姓読みソート用": "たさい", "名読みソート用": "おさむ", "姓ローマ字": "Dazai", "名ローマ字": "Osamu", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1909-06-19", "没年月日": "1948-06-13", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "グッド・バイ", "底本出版社名1": "新潮文庫、新潮社", "底本初版発行年1": "1972(昭和47)年7月30日", "入力に使用した版1": "1999(平成11)年6月10日56刷", "校正に使用した版1": "1990(平成2)年6月20日40刷", "底本の親本名1": "", "底本の親本出版社名1": "", "底本の親本初版発行年1": "", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "蒋龍", "校正者": "鈴木厚司", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1562_ruby_14574.zip", "テキストファイル最終更新日": "2004-02-19T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "0", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1562_14860.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2004-02-19T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }
[ [ "かんにんして、ね", "だめよ、お酒飲みの真似なんかして" ], [ "たんと、たんと、からかいなさい", "おや、僕は、僕は、ほんとうに飲んでいるのだよ" ] ]
底本:「太宰治全集2」ちくま文庫、筑摩書房    1988(昭和63)年9月27日第1刷発行 底本の親本:「筑摩全集類聚版太宰治全集」筑摩書房    1975(昭和50)年6月~1976(昭和51)年6月 入力:柴田卓治 校正:小林繁雄 1999年8月20日公開 2004年3月4日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{ "作品ID": "000240", "作品名": "あさましきもの", "作品名読み": "あさましきもの", "ソート用読み": "あさましきもの", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1999-08-20T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card240.html", "人物ID": "000035", "姓": "太宰", "名": "治", "姓読み": "だざい", "名読み": "おさむ", "姓読みソート用": "たさい", "名読みソート用": "おさむ", "姓ローマ字": "Dazai", "名ローマ字": "Osamu", "役割フラグ": "著者", "生年月日": "1909-06-19", "没年月日": "1948-06-13", "人物著作権フラグ": "なし", "底本名1": "太宰治全集2", "底本出版社名1": "ちくま文庫、筑摩書房", "底本初版発行年1": "1988(昭和63)年9月27日", "入力に使用した版1": "1988(昭和63)年9月27日第1刷", "校正に使用した版1": "", "底本の親本名1": "筑摩全集類聚版太宰治全集", "底本の親本出版社名1": "筑摩書房", "底本の親本初版発行年1": "1975(昭和50)年6月~1976(昭和51)年6月", "底本名2": "", "底本出版社名2": "", "底本初版発行年2": "", "入力に使用した版2": "", "校正に使用した版2": "", "底本の親本名2": "", "底本の親本出版社名2": "", "底本の親本初版発行年2": "", "入力者": "柴田卓治", "校正者": "小林繁雄", "テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/240_ruby_2332.zip", "テキストファイル最終更新日": "2004-03-04T00:00:00", "テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS", "テキストファイル文字集合": "JIS X 0208", "テキストファイル修正回数": "1", "XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/240_15059.html", "XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2004-03-04T00:00:00", "XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS", "XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208", "XHTML/HTMLファイル修正回数": "0" }