chats
sequence | footnote
stringlengths 163
3.16k
| meta
dict |
---|---|---|
[
[
"このごろは、毎日、晩方になると、遠くで、いい音がきこえますね。あれはなんの音でしょうか?",
"それは、どちらの方からですか。",
"町の南の方からするときもあれば、また、夕焼けのした西の海の方からすることもあります。",
"こんど、私も聞いてみましょう……。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 6」講談社
1977(昭和52)年4月10日第1刷
底本の親本:「未明童話集4」丸善
1930(昭和5)年7月
※表題は底本では、「春《はる》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:栗田美恵子
2018年3月26日作成
2020年11月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052653",
"作品名": "春",
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"ソート用読み": "はる",
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"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2018-04-21T00:00:00",
"最終更新日": "2020-11-01T00:00:00",
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"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
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"姓読みソート用": "おかわ",
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"名ローマ字": "Mimei",
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"生年月日": "1882-04-07",
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"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 6",
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"校正に使用した版1": " ",
"底本の親本名1": "未明童話集4",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "1"
} |
[
[
"おじさん、どこがわるいの。",
"おじさん、ご用があったら、お使いにいってあげるよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「赤土へ来る子供たち」文昭社
1940(昭和15)年8月
初出:「台湾日日新報 夕刊」
1940(昭和15)年4月7日
※表題は底本では、「春風《はるかぜ》の吹《ふ》く町《まち》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年3月11日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "051658",
"作品名": "春風の吹く町",
"作品名読み": "はるかぜのふくまち",
"ソート用読み": "はるかせのふくまち",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年4月7日",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-04-04T00:00:00",
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"姓読み": "おがわ",
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"姓ローマ字": "Ogawa",
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"生年月日": "1882-04-07",
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"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "赤土へ来る子供たち",
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"底本の親本初版発行年2": "",
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} |
[
[
"きみ、学校は何年生になったの。",
"五年生。"
],
[
"こちらで、戦争にいくまで、働いていた工場は、どうなったかと、すぐ見にいったのだが、あたりは、まったく焼け野原になっていた。しかたがない、これから、いなかへ帰るよ。",
"おじさんのいなかは、どこなの。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「みどり色の時計」新子供社
1950(昭和25)年4月
初出:「小学五年生」
1949(昭和24)年4月
※表題は底本では、「春《はる》さきの朝《あさ》のこと」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年3月11日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051659",
"作品名": "春さきの朝のこと",
"作品名読み": "はるさきのあさのこと",
"ソート用読み": "はるさきのあさのこと",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「小学五年生」1949(昭和24)年4月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-04-04T00:00:00",
"最終更新日": "2017-03-11T00:00:00",
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"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "みどり色の時計",
"底本の親本出版社名1": "新子供社",
"底本の親本初版発行年1": "1950(昭和25)年4月",
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"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51659_ruby_61176.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-03-11T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
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"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"元来おれなどは、怠け者だから……なにを見てもおもしろいね。とんぼの飛ぶのを見ても、犬がけんかをするのを見ても、子供が輪をまわして遊ぶのを見ても……。だから、退屈はしたことがない。",
"そうでございますか。"
],
[
"ほんとうに、そうでございます。いつまたみんなが、一つところに落ち合うことでございましょう?",
"いや、もうけっして、落ちあうことはありますまい。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 5」講談社
1977(昭和52)年3月10日第1刷発行
初出:「赤い鳥」
1926(大正15)年3月
※表題は底本では、「春《はる》さきの古物店《こぶつてん》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:雪森
2013年5月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053473",
"作品名": "春さきの古物店",
"作品名読み": "はるさきのこぶつてん",
"ソート用読み": "はるさきのこふつてん",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「赤い鳥」1926(大正15)年3月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2013-06-13T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card53473.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 5",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年3月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年3月10日第1刷",
"校正に使用した版1": "1979(昭和54)年7月1日第4刷 ",
"底本の親本名1": "",
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"底本の親本初版発行年1": "",
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"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
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"底本の親本名2": "",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "雪森",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53473_ruby_50155.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2013-05-04T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
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"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-05-04T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"紙芝居だね。",
"おもしろいな。"
],
[
"この鐘は、私が、忠勇の兵士をここへ呼び集めるときに、鳴らす鐘だ。これを鳴らせば、たちどころに、城下に住む三万の兵士たちは、ここへ集まってくるのじゃ。",
"どうか、この鐘を鳴らしてみせてはくださいませんか。",
"ばかなことをいうものでない。ほかの願いならなんなりときいてやるが、この鐘は大事があったときのほかは、鳴らされないのだ。",
"これほど、お願いしても、おききくださらなければ……。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「ドラネコと烏」岡村商店
1936(昭和11)年12月
初出:「教育・国語教育」
1936(昭和11)年3月
※表題は底本では、「春《はる》の日《ひ》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2016年3月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052104",
"作品名": "春の日",
"作品名読み": "はるのひ",
"ソート用読み": "はるのひ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「教育・国語教育」1936(昭和11)年3月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2016-04-07T00:00:00",
"最終更新日": "2016-03-04T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52104.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年9月10日第1刷",
"底本の親本名1": "ドラネコと烏",
"底本の親本出版社名1": "岡村商店",
"底本の親本初版発行年1": "1936(昭和11)年12月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52104_ruby_58700.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2016-03-04T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52104_58738.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2016-03-04T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"どれ、見せてください。あんたの鉄砲を。",
"おれんでない、家主のだよ。ただ打つのがおもしろいので、食べやしないから、みんな鳥は借り賃にやってしまうのさ。なんで、あのけちんぼが、ただで、銃なんか貸すもんか。",
"じゃ、鳥は、みんな家主さんに、やるんですね。",
"おとといだか、打ったもずをやると、すずめより、大きいって、喜んだよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「太陽と星の下」あかね書房
1952(昭和27)年1月
初出:「小学六年生 3巻11号」
1951(昭和26)年1月新年特別号
※表題は底本では、「春《はる》はよみがえる」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年2月2日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051660",
"作品名": "春はよみがえる",
"作品名読み": "はるはよみがえる",
"ソート用読み": "はるはよみかえる",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「小学六年生 3巻11号」1951(昭和26)年1月新年特別号",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-03-29T00:00:00",
"最終更新日": "2017-02-02T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51660.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "太陽と星の下",
"底本の親本出版社名1": "あかね書房",
"底本の親本初版発行年1": "1952(昭和27)年1月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51660_ruby_60872.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-02-02T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51660_60914.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-02-02T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"なるほど、いい音だ。これなら、機械は、たしかだろう……。",
"まだ、その時計にかぎって、機械の狂ったことを知りません。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 6」講談社
1977(昭和52)年4月10日第1刷発行
底本の親本:「未明童話集4」丸善
1930(昭和5)年7月20日
初出:「赤い鳥」
1928(昭和3)年11月
※表題は底本では、「般若《はんにゃ》の面《めん》」となっています。
※中見出し「一」がないのは底本通りです。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:へくしん
2021年10月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053134",
"作品名": "般若の面",
"作品名読み": "はんにゃのめん",
"ソート用読み": "はんにやのめん",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「赤い鳥」1928(昭和3)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2021-11-09T00:00:00",
"最終更新日": "2021-10-27T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card53134.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 6",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年4月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年4月10日第1刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年4月10日第1刷",
"底本の親本名1": "未明童話集4",
"底本の親本出版社名1": "丸善",
"底本の親本初版発行年1": "1930(昭和5)年7月20日",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "へくしん",
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"テキストファイル最終更新日": "2021-10-27T00:00:00",
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"テキストファイル修正回数": "0",
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"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"ほんとうに、牛は知っているんだね。",
"それはわかるさ。そして、逃げられないということも知っているのだ。",
"明日のいまごろは、もうお肉になって、町へ出るのだな。",
"わたし、お肉たべないわ。",
"私も。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「僕はこれからだ」フタバ書院成光館
1942(昭和17)年11月
初出:「こくみん三年生」
1941(昭和16)年3月
※表題は底本では、「引《ひ》かれていく牛《うし》」となっています。
※初出時の表題は「引かれて行く牛」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2018年10月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051662",
"作品名": "引かれていく牛",
"作品名読み": "ひかれていくうし",
"ソート用読み": "ひかれていくうし",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「こくみん三年生」1941(昭和16)年3月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2018-11-20T00:00:00",
"最終更新日": "2018-10-24T00:00:00",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "僕はこれからだ",
"底本の親本出版社名1": "フタバ書院成光館",
"底本の親本初版発行年1": "1942(昭和17)年11月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
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"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"テキストファイル最終更新日": "2018-10-24T00:00:00",
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} |
[
[
"おじさん、いいにおいがするね。",
"この香炉をだいじに持っていた人が、たいたのだが、よほどのいい香とみえる。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「みどり色の時計」新子供社
1950(昭和25)年4月
初出:「幼年クラブ」
1949(昭和24)年1月
※表題は底本では、「ひすいの玉《たま》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2020年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "051663",
"作品名": "ひすいの玉",
"作品名読み": "ひすいのたま",
"ソート用読み": "ひすいのたま",
"副題": "",
"副題読み": "",
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"初出": "「幼年クラブ」1949(昭和24)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-03-20T00:00:00",
"最終更新日": "2020-02-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51663.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "みどり色の時計",
"底本の親本出版社名1": "新子供社",
"底本の親本初版発行年1": "1950(昭和25)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
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"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"白いのもあるし、紫色のもあるね。",
"これは、緑色だろう。",
"そう、こんな黒いのもあったよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第6刷発行
※表題は底本では、「左《ひだり》ぎっちょの正《まさ》ちゃん」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:仙酔ゑびす
2012年2月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "052105",
"作品名": "左ぎっちょの正ちゃん",
"作品名読み": "ひだりぎっちょのまさちゃん",
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"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"公開日": "2012-04-13T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
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"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 10",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年8月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第6刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年8月10日第1刷",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
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"テキストファイル最終更新日": "2012-02-19T00:00:00",
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} |
[
[
"気をつけ、番号!",
"一、二、三、四っ、五、六、七っ。",
"さあ、まる書け。"
],
[
"こんどは、なんにしよう?",
"唱歌だ。あいこく行進曲をうたおう。"
],
[
"原っぱへいこうか?",
"ああ、いこう。"
],
[
"いうことをきかなかったら、とりあげてしまえばいいのだ。",
"ほんとうに、この近所には、いたずら子が多うございます。"
],
[
"困ったなあ。",
"みんな内へ入ったら、僕とってくるから。"
],
[
"寒くてしようがないや。",
"そんなに肥っていても寒いかなあ。"
],
[
"おまえとなら、負けやしない。",
"じゃ、こい!",
"よしきた。"
],
[
"いいか、今度負けたら降参するんだぜ。",
"いいとも。"
],
[
"うん。",
"うーん。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「赤土へ来る子供たち」文昭社
1940(昭和15)年8月
※表題は底本では、「日《ひ》の当《あ》たる門《もん》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年8月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051665",
"作品名": "日の当たる門",
"作品名読み": "ひのあたるもん",
"ソート用読み": "ひのあたるもん",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-09-18T00:00:00",
"最終更新日": "2017-08-25T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51665.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "赤土へ来る子供たち",
"底本の親本出版社名1": "文昭社",
"底本の親本初版発行年1": "1940(昭和15)年8月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51665_ruby_62522.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-08-25T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"町も、にぎやかで、いいでしょうね。",
"私が、よんだとき、なぜこなかったのですか。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「せうがく三年生」
1938(昭和13)年6月号
初出:「せうがく三年生」
1938(昭和13)年6月号
※初出時の表題は「雲雀の小父さん」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年10月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051666",
"作品名": "ひばりのおじさん",
"作品名読み": "ひばりのおじさん",
"ソート用読み": "ひはりのおしさん",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「せうがく三年生」1938(昭和13)年6月号",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-11-10T00:00:00",
"最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51666.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "せうがく三年生",
"底本の親本出版社名1": " ",
"底本の親本初版発行年1": "1938(昭和13)年6月号",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51666_ruby_63021.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51666_63069.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"兄ちゃん、僕より、弱虫だなあ。",
"だって、僕、こんなげたをはいているんだもの。"
],
[
"良ちゃん、もう、立ってしまったんだね。",
"せっかくきたんだから、汽車を見ていこうよ。"
],
[
"良ちゃん、お宮へいってみない。銀杏の実が落ちているかもしれないぜ。",
"神さまに、お父さんのことを拝んでこよう。"
],
[
"お兄ちゃん、まだお月きまが出ているよ。",
"こんな昼間なんか出て、おかしいな。",
"お父さまも、この月をごらんかしらん。",
"支那の塹壕の中で、お友だちと見ていらっしゃるかもしれないよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「日本の子供」文昭社
1938(昭和13)年12月
初出:「せうがく三年生」
1938(昭和13)年11月
※表題は底本では、「昼《ひる》のお月《つき》さま」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051667",
"作品名": "昼のお月さま",
"作品名読み": "ひるのおつきさま",
"ソート用読み": "ひるのおつきさま",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「せうがく三年生」1938(昭和13)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-08-30T00:00:00",
"最終更新日": "2017-07-17T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51667.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "日本の子供",
"底本の親本出版社名1": "文昭社",
"底本の親本初版発行年1": "1938(昭和13)年12月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"テキストファイル最終更新日": "2017-06-25T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"五厘ごまかそうなんて、ふらちなやつだ。",
"五厘出せ、それでなけりゃ、そのびんをよこせ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 2」講談社
1976(昭和51)年12月10日第1刷
1982(昭和57)年9月10日第7刷
初出:「種蒔く人」
1921(大正10)年11月
※表題は底本では、「火《ひ》を点《てん》ず」となっています。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:江村秀之
2013年11月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051064",
"作品名": "火を点ず",
"作品名読み": "ひをてんず",
"ソート用読み": "ひをてんす",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「種蒔く人」1921(大正10)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2013-12-06T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51064.html",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
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"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1976(昭和51)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第7刷",
"校正に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日7刷",
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"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "ぷろぼの青空工作員チーム入力班",
"校正者": "江村秀之",
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"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"お母さん、たいへんな雨ね。私、明日オーバーシューズがなくて困るわ。",
"きょうの晩までというお約束だったでしょう。だけど、この雨風では、できていてもとどけられないでしょう。",
"学校で、オーバーシューズがないと、おくつを脱いで、スリッパをはかないとしかられるのよ。",
"お天気になりしだい、私が催促にいってきますから、明日、もう一日だけ我慢をしてくださいね。"
],
[
"朝は、学校が早いのですから、七時までに持ってきてもらわないとまにあわないのですよ。",
"承知いたしました。"
],
[
"この雨風の中をせっかく持ってきてもらってお気の毒ですね。",
"どういたしまして、こちらが悪いのです。寸法をまちがえましてすみません。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日
1983(昭和58)年1月19日第5刷
底本の親本:「小学文学童話」竹村書房
1937(昭和12)年5月
※表題は底本では、「風雨《ふうう》の晩《ばん》の小僧《こぞう》さん」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年5月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "055005",
"作品名": "風雨の晩の小僧さん",
"作品名読み": "ふううのばんのこぞうさん",
"ソート用読み": "ふううのはんのこそうさん",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-06-07T00:00:00",
"最終更新日": "2017-05-29T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card55005.html",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年9月10日第1刷",
"底本の親本名1": "小学文学童話",
"底本の親本出版社名1": "竹村書房",
"底本の親本初版発行年1": "1937(昭和12)年5月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/55005_ruby_61538.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-05-20T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"これが、風船虫なの?",
"ああ、風船虫だよ。"
],
[
"おじさんのお家は、町の中にあるんだろう。子供たちは、どこで遊ぶの?",
"やはり、往来で遊んでいますよ。",
"おもしろい虫を今度捕らえてきてあげようか?",
"虫ですか? きりぎりすですか。",
"おじさんの知らない虫だよ",
"はて、なんという虫ですか?",
"風船虫というのだ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「日本の子供」文昭社
1938(昭和13)年12月
初出:「児童文学」
1936(昭和11)年9月
※表題は底本では、「風船虫《ふうせんむし》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年10月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051668",
"作品名": "風船虫",
"作品名読み": "ふうせんむし",
"ソート用読み": "ふうせんむし",
"副題": "",
"副題読み": "",
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"初出": "「児童文学」1936(昭和11)年9月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-11-17T00:00:00",
"最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "日本の子供",
"底本の親本出版社名1": "文昭社",
"底本の親本初版発行年1": "1938(昭和13)年12月",
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"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51668_ruby_63029.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"いや、撃つのを止めて帰るのだ。",
"お前は何処へ行く?"
],
[
"貴君になら売るのは厭だ。",
"何故?"
],
[
"何か悪いことをしたことがあったろうか?",
"何か人の物を盗すんだことがあったろうか?",
"全く覚えがない!"
],
[
"厭な啼き声だこと。",
"あの黒い鳥。",
"幾羽居るだろう……。"
]
] | 底本:「文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船」ちくま文庫、筑摩書房
2008(平成20)年8月10日第1刷発行
2010(平成22)年5月25日第2刷発行
初出:「趣味」
1910(明治43)年2月号
入力:門田裕志
校正:坂本真一
2020年11月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053161",
"作品名": "不思議な鳥",
"作品名読み": "ふしぎなとり",
"ソート用読み": "ふしきなとり",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「趣味」1910(明治43)年2月号",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-12-20T00:00:00",
"最終更新日": "2020-11-27T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card53161.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船",
"底本出版社名1": "ちくま文庫、筑摩書房",
"底本初版発行年1": "2008(平成20)年8月10日",
"入力に使用した版1": "2010(平成22)年5月25日第2刷",
"校正に使用した版1": "2010(平成22)年5月25日第2刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "門田裕志",
"校正者": "坂本真一",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53161_ruby_72270.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2020-11-27T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53161_72318.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2020-11-27T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"あまり、人間のたくさんいるところへいくと、あぶなくないか?",
"人間の姿を見たら、すぐに逃げればいいのだ。"
],
[
"そんなら、ふたりは、だまっていることだ。",
"そうだ。だまっていよう。"
],
[
"人間に、捕らえられたのだな。",
"かわいそうにな。"
],
[
"しかし、人間は、あなたを大事にしているようじゃありませんか。",
"それは、餌や、水には、気をつけてくれます。ときどきは、青い菜などをいれてくれます。しかし、自分で、ほしいものを気ままに、探すという喜びもなければ、また、自由というものもありません。あのように、空を飛んだ、私の翼は、もう飛ぶ用がなくなってしまいました。",
"気ままに飛んでいる私たちには、自由のありがたみが、ほんとうにわかりませんが、こちらは、いろいろの花があり、それに、暖かで、いいところではありませんか。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 6」講談社
1977(昭和52)年4月10日第1刷
底本の親本:「未明童話集4」丸善
1930(昭和5)年7月
初出:「ふるさと 47巻2号」小学校
1929(昭和4)年5月
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:栗田美恵子
2019年10月28日作成
2020年11月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052662",
"作品名": "ふるさと",
"作品名読み": "ふるさと",
"ソート用読み": "ふるさと",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「ふるさと 47巻2号」小学校、1929(昭和4)年5月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2019-11-29T00:00:00",
"最終更新日": "2020-11-01T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52662.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 6",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年4月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年4月10日第1刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年4月10日第1刷",
"底本の親本名1": "未明童話集4",
"底本の親本出版社名1": "丸善",
"底本の親本初版発行年1": "1930(昭和5)年7月20日",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "栗田美恵子",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52662_ruby_69544.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2020-11-01T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "1",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52662_69595.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2020-11-01T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "1"
} |
[
[
"私はいつまでも、この林の中で、うたって暮らします。そして、おまえのことを毎日思うでありましょう。",
"どうか、私を永久に愛してください。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 2」講談社
1976(昭和51)年12月10日第1刷
1982(昭和57)年9月10日第7刷
初出:「赤い鳥」
1921(大正10)年12月
※表題は底本では、「ふるさとの林《はやし》の歌《うた》」となっています。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:江村秀之
2013年11月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051062",
"作品名": "ふるさとの林の歌",
"作品名読み": "ふるさとのはやしのうた",
"ソート用読み": "ふるさとのはやしのうた",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「赤い鳥」1921(大正10)年12月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2013-12-09T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51062.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 2",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1976(昭和51)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第7刷",
"校正に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日7刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "ぷろぼの青空工作員チーム入力班",
"校正者": "江村秀之",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51062_ruby_51726.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2013-11-05T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51062_51766.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-11-05T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"どうなされたか? お父さんがわるいのでない。お父さんは、正直だった。お父さんは正しかったのだよ。",
"僕たちも、時節がきたら、お父さんのように、だれにきがねすることもなく、朗らかに歌うつもりです。すべてのものが勇気をもつように、また、正しく働くように……。"
],
[
"お母さん、どうして、罪もないのにお父さんは、捕らえられたのですか。",
"お父さんが、みんなのために、いい唄を歌ったのを、その人間は、自分だけで、その唄をきこうとしたのだよ。",
"じゃ、お父さんを捕らえて、殺しはしないんですね。",
"人間が、生かしておこうとしても、自由がなければ、なんでお父さんが生きていられるものか。ああ、あちらの町がうらめしい!"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 8」講談社
1977(昭和52)年6月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第6刷発行
底本の親本:「青空の下の原っぱ」六文館
1932(昭和7)年3月
初出:「黒色戦線 第2次」
1931(昭和6)年9月
※表題は底本では、「平原《へいげん》の木《き》と鳥《とり》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:津村田悟
2021年3月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052592",
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"初出": "「黒色戦線 第2次」1931(昭和6)年9月",
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} |
[
[
"そのご恩をわすれては……。",
"ペスはありがたく思っているんだよ。家じゅうで、いちばんお父さんになついているだろう。"
],
[
"いま、お母さんにあげたところだ。",
"ちらちら雪がふってきたよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「未明新童話集」太平社
1954(昭和29)年7月
初出:「幼年クラブ」
1948(昭和23)年1月
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2019年5月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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"作品ID": "051725",
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"初出": "「幼年クラブ」1948(昭和23)年1月",
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"没年月日": "1961-05-11",
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} |
[
[
"印刷屋の犬じゃないか。",
"だって、あすこでは、もうかまわないのだもの、どこのうちの犬でもないだろう。"
],
[
"ぼく、ペス、ペスと呼んだよ。",
"そうしたら。",
"こっちを、じっと見たよ。",
"飛んで、こなかったかい?"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第6刷発行
初出:「児童読物研究」
1933(昭和8)年2月
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:仙酔ゑびす
2012年2月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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"作品ID": "052122",
"作品名": "ペスをさがしに",
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"ソート用読み": "へすをさかしに",
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"初出": "「児童読物研究」1933(昭和8)年2月",
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"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 10",
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"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年8月10日",
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} |
[
[
"清ちゃん、どこに、そんな竹があったの。",
"君、この竹は、枯らしてあるんだぜ。釣りざおにするって、福ちゃんのおじさんが、取っておいたのだけれど、先が折れたからといって、僕にくれたのだ。こんないい竹は、どこを探したって、あるものか。",
"僕も、そんな竹が、ほしいなあ。",
"君も笛を造るのかい。そんなら、残っている竹をあげよう。そして、穴をあけたら、後で、針金で中を一度通すといいよ。"
],
[
"へちまの種子なの。",
"伯母さんが、おまえの手は荒れ性だから、今年から自分の家でも、へちまの水を取るといいといったんだよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「亀の子と人形」フタバ書院
1941(昭和16)年4月
初出:「北國新聞」
1941(昭和16)年2月5日
※表題は底本では、「へちまの水《みず》」となっています。
※初出時の表題は「絲瓜の水」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2018年6月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051673",
"作品名": "へちまの水",
"作品名読み": "へちまのみず",
"ソート用読み": "へちまのみす",
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"初出": "「北國新聞」昭和16年2月5日",
"分類番号": "NDC K913",
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"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
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"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
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"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
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"底本の親本名1": "亀の子と人形",
"底本の親本出版社名1": "フタバ書院",
"底本の親本初版発行年1": "1941(昭和16)年4月",
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} |
[
[
"なるほど、雲が走っています。あなたのおっしゃるように大風が吹いているようすです。どうしたら、私の小さな体が、風に吹き飛ばされずに、高く、高く飛んでゆくことができますでしょうか。教えてはくださいませんか。",
"それほどまでに、あなたがおっしゃるなら、教えてあげます。あなたは、これから三年の間、荒い海の上で風に吹かれながら飛ぶ稽古をなさるのです。そして、それができるようになったら、日輪のいるところを目がけて翔けて上がるのです。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 3」講談社
1977(昭和52)年1月10日第1刷
1981(昭和56)年1月6日第7刷
初出:「早稲田文学」
1921(大正10)年8月
※表題は底本では、「紅《べに》すずめ」となっています。
※初出時の表題は「紅雀」です。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:本読み小僧
2013年5月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051065",
"作品名": "紅すずめ",
"作品名読み": "べにすずめ",
"ソート用読み": "へにすすめ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「早稲田文学」1921(大正10)年8月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2013-06-23T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51065.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 3",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年1月10日",
"入力に使用した版1": "1981(昭和56)年1月6日第7刷",
"校正に使用した版1": "1978(昭和53)年G第4刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "ぷろぼの青空工作員チーム入力班",
"校正者": "本読み小僧",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51065_ruby_50605.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2013-05-04T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51065_50665.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-05-04T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"また、なくしたのですか。二、三日前に買ったばかりじゃありませんか。",
"僕、ボールがないとさびしいんだもの。"
],
[
"ねえ、お母さん、もうなくなさないから。こんどから、きっとなくなさないから。",
"なくなさないと、なんどいいましたか。ものを粗末にするからですよ。",
"粗末になんかしないよ。だって、どっかへいってしまうんだもの。"
],
[
"まあ、すてきね。",
"僕の球は、それはカーブがあるんだから。"
],
[
"私、いやよ。正ちゃんがいいわ。",
"花子さん、早くいっておいでよ。"
],
[
"私、お家へかえるわ。",
"また、あした遊ぼうね。"
],
[
"さようなら!",
"また、おいでよ。"
],
[
"誠さん? 太郎さん?",
"知らない、あっちの子だよ。",
"きのう? 太郎さんくらいの子でしょ?",
"そうだよ。"
],
[
"じゃ、このボール、兄さんにかえしておくれ。",
"こんどきたら、かえしてあげるわ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷
1983(昭和58)年1月19日第6刷
※表題は底本では、「ボールの行方《ゆくえ》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2015年5月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052123",
"作品名": "ボールの行方",
"作品名読み": "ボールのゆくえ",
"ソート用読み": "ほおるのゆくえ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2015-08-06T00:00:00",
"最終更新日": "2015-05-24T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52123.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 10",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年8月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第6刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年8月10日第1刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52123_ruby_56930.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2015-05-24T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52123_56976.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2015-05-24T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"僕も、支那か満洲へいきたいんだが、お母さんが年を老っているから、まだどうするか考えていないのさ。",
"三年も、四年も後のことだから。",
"あは、は、は。",
"学校が異うと、いままでのようにあわれないね。それに、僕の家では、すこし遠くへ越すんだよ。越しても、僕、ときどき遊びにくるから。",
"所を知らしてね。"
],
[
"いろいろの機械があるね。",
"僕、ラジオを組み立てようと思って、ならべたんだよ。",
"ふうん。",
"これは、僕が造ったモーターだ。"
],
[
"これを君が造ったの。",
"君、モーターが好きかい。",
"見ているだけでも、不思議な力が感じられて、好きなんだよ。",
"じゃ、君にあげよう。",
"えっ、ほんとうにもらってもいいの。"
],
[
"お母さん、こんなところで、さびしくありませんか。",
"いいえ、おまえのいるところなら、もっとさびしくたってかまわないよ。"
],
[
"お母さん、お気分はいかがですか。",
"もう、よくなりました。"
],
[
"お母さん、僕が、大きくなるまで達者でいてください。来月から、昼間働いて、夜学にいきますから。",
"そんなことをして、おまえの体がつづきますか。",
"だいじょうぶですとも、これ、こんなに太っているでしょう。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「亀の子と人形」フタバ書院
1941(昭和16)年4月
※表題は底本では、「僕《ぼく》が大《おお》きくなるまで」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2020年1月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051674",
"作品名": "僕が大きくなるまで",
"作品名読み": "ぼくがおおきくなるまで",
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"公開日": "2020-02-29T00:00:00",
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"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "亀の子と人形",
"底本の親本出版社名1": "フタバ書院",
"底本の親本初版発行年1": "1941(昭和16)年4月",
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"底本の親本初版発行年2": "",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"上等の二輪車を買ってあげても。",
"二輪車なんか、ほしくありません。",
"いつか、ほしいといったでしょう。",
"それは、ほしいが、クロをやってしまうことはいやです。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「ドラネコと烏」岡村商店
1936(昭和11)年12月
初出:「台湾日日新報」
1936(昭和11)年5月22日
※表題は底本では、「僕《ぼく》がかわいがるから」となっています。
※初出時の表題は「僕が可愛がるから」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2016年6月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052110",
"作品名": "僕がかわいがるから",
"作品名読み": "ぼくがかわいがるから",
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"初出": "「台湾日日新報」1936(昭和11)年5月22日",
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"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年9月10日第1刷",
"底本の親本名1": "ドラネコと烏",
"底本の親本出版社名1": "岡村商店",
"底本の親本初版発行年1": "1936(昭和11)年12月",
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} |
[
[
"だれか、捨てたんだね。",
"橋の上に置いてあったのを、三びきジョンが食い殺したのだ。"
],
[
"おなかが空いているから鳴くのだろう。",
"僕、ご飯を持ってきてやるから。"
],
[
"僕のうちには、一ぴきねこがいるじゃないか。",
"あの、大きいきつね色のどらねこは、君んちのかい。",
"ああ、そうさ。"
],
[
"どこかで飼ってくれないか、方々きいてみようか。",
"そうだ。きいてみようよ、飼ってくれる家があるかもしれないからね。"
],
[
"あいつ、ときどき生意気なんだよ。",
"だけど、ねこを飼ってくれたらいいね。"
],
[
"どうしたの?",
"お父さんが帰って、いけないとしかったの。",
"だめだというのかい。",
"お父さんが、返してこいというの。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第6刷発行
初出:「子供テキスト」
1934(昭和9)年10月
※表題は底本では、「僕《ぼく》たちは愛《あい》するけれど」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:仙酔ゑびす
2012年5月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "052111",
"作品名": "僕たちは愛するけれど",
"作品名読み": "ぼくたちはあいするけれど",
"ソート用読み": "ほくたちはあいするけれと",
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"副題読み": "",
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"初出": "「子供テキスト」1934(昭和9)年10月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
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"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
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"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年8月10日",
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"底本の親本初版発行年2": "",
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"校正者": "仙酔ゑびす",
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} |
[
[
"きっと、そうなんだよ。さっき、一ぴき見つけたけれど、どこかへ逃げてしまった。",
"そのかえるは、真っ赤だった?"
],
[
"清ちゃん、あの木の子だね。",
"甘がきだよ。賢ちゃんにあげるから、持っていって植えておきよ。"
],
[
"あっ、切れてしまった。",
"惜しいことをしたね。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「日本の子供」文昭社
1938(昭和13)年12月
※表題は底本では、「僕《ぼく》のかきの木《き》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年9月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051675",
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"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
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"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "日本の子供",
"底本の親本出版社名1": "文昭社",
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"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"名は、なんというの?",
"赤といっているよ。",
"人に食いつかない?",
"かまわなければ、食いつきなどしないさ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「僕の通るみち」南北書園
1947(昭和22)年2月
初出:「コクミン一年生」
1946(昭和21)年5、6月合併号
※表題は底本では、「僕《ぼく》の通《とお》るみち」となっています。
※初出時の表題は「ボクノトホルミチ」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2020年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051676",
"作品名": "僕の通るみち",
"作品名読み": "ぼくのとおるみち",
"ソート用読み": "ほくのとおるみち",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「コクミン一年生」1946(昭和21)年5、6月合併号",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-03-09T00:00:00",
"最終更新日": "2020-02-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51676.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "僕の通るみち",
"底本の親本出版社名1": "南北書園",
"底本の親本初版発行年1": "1947(昭和22)年2月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51676_ruby_70391.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2020-02-21T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51676_70449.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2020-02-21T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"まったく、これと同じです。すこしも違いがありません。徐州攻撃のときなどは、もっとひどかったです。",
"ほ、ほう、こんなですかな。",
"なにしろ、砲弾が炸裂すると、たちまち目の前が、火の海となりますからね。"
],
[
"達ちゃん、ありがとう。じゃ、十分間ばかりね。",
"もっと、長くたってかまわない。"
],
[
"早く、家へ知らさなければ。",
"それより、先に医者へつれていくのだ。",
"おじいさん!",
"おじいさん、だいじょうぶか。"
],
[
"どうしたんですか。",
"あのたくさんなからすが、はとをねらっているのですよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「僕はこれからだ」フタバ書院成光館
1942(昭和17)年11月
初出:「新児童文化 第3冊」
1941(昭和16)年7月
※表題は底本では、「僕《ぼく》はこれからだ」となっています。
※「彼《かれ》は、 屋根《やね》を」は、第1刷では「彼《かれ》は、夢中《むちゅう》で屋根《やね》を」ですが、第2、3、4刷では「彼《かれ》は、 屋根《やね》を」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2018年4月26日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051677",
"作品名": "僕はこれからだ",
"作品名読み": "ぼくはこれからだ",
"ソート用読み": "ほくはこれからた",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「新児童文化 第3冊」1941(昭和16)年7月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2018-05-11T00:00:00",
"最終更新日": "2018-04-26T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51677.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "僕はこれからだ",
"底本の親本出版社名1": "フタバ書院成光館",
"底本の親本初版発行年1": "1942(昭和17)年11月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51677_ruby_64556.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2018-04-26T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51677_64608.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2018-04-26T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"あなたがたは、どこから、ここへ飛んできたのですか?",
"あちらの暗い、深林の中から飛んできました。もう、あの陰気なところは、いやでたまりません。"
],
[
"自分たちは、ここで一生を送ったらいいだろうか。",
"りんごの花は、じきに散ってしまうだろう。そうしたら、どうするのだ?",
"この花が散ってしまったら、また、生まれた深林へ帰るよりしかたがない。",
"帰りたいものは、帰るがいいが、俺たちは、いやだ。どこかへ飛んでいこう……。",
"旅をするなら、いっしょにしようじゃないか。いっしょに生まれた兄弟だもの、いっしょに死ぬのがほんとうだ。",
"そうだ。",
"それにちがいない。"
],
[
"この海を越えて、島に達することは容易のことでない。疲れを休めて、穏やかな、いい天気のつづく日を待とうではないか。",
"それがいい。雪の光る、高い山のふもとには、高山植物の咲く野原があり、みごとな深林があるという話だから、そこまでいこう。そして、いい日を待つことにしよう。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 5」講談社
1977(昭和52)年3月10日第1刷
底本の親本:「未明童話集1」丸善
1927(昭和2)年1月5日発行
初出:「童話」
1926(大正15)年5月号
※表題は底本では、「北海《ほっかい》の波《なみ》にさらわれた蛾《が》」となっています。
※初出時の表題は「北海の波に浚はれた蛾」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:へくしん
2020年9月28日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053476",
"作品名": "北海の波にさらわれた蛾",
"作品名読み": "ほっかいのなみにさらわれたが",
"ソート用読み": "ほつかいのなみにさらわれたか",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「童話」1926(大正15)年5月号",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-10-08T00:00:00",
"最終更新日": "2020-09-28T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card53476.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 5",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年3月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年3月10日第1刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年3月10日第1刷",
"底本の親本名1": "未明童話集1",
"底本の親本出版社名1": "丸善",
"底本の親本初版発行年1": "1927(昭和2)年1月5日",
"底本名2": "",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
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"テキストファイル最終更新日": "2020-09-28T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2020-09-28T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"政ちゃんなんか、一日に三つも、四つも食べるんだもの。",
"僕なんか、そんなに食べやしない。勇ちゃんこそ三つも四つもたべたんだい。"
],
[
"いいえ、みんなに送ってくださったのです。",
"それみろ、政ちゃんは、自分ひとりのものだと思っているからいけないんだ。",
"あんな小さいの、やだい。"
],
[
"こんな、きれいなりんごが、どうしていけないの。あんな青いりんごより、よっぽどいいじゃないの。",
"小さいじゃないか。"
],
[
"僕、これを学校へ持っていって写生してもいいの。",
"みごとに描けたら、おばあさんに送っておあげなさい。どんなにお喜びなさるかしれませんよ。"
],
[
"おなかが痛いの、どうしたんでしょうね。",
"ああ、おなかが痛い。",
"きっと、おなかを冷やしたのでしょう。"
],
[
"お母さん――。",
"生意気いうからだ。"
],
[
"たくさん送ってきたんかい。",
"ああ、たくさん送ってきたんだ。",
"いいなあ。",
"だけど、みんな食べてしまって、もうこれきりないんだ。",
"なあんだ、それじゃつまんないな。"
],
[
"小野、この間に、逃げっちまえよ。",
"逃げたら、後で、よけいにしかられるぞ。"
],
[
"きのうのりんごじゃないか。政ちゃんは、どうして食べないのだい。",
"どうしても、僕たべたくないのだ。",
"おかしいな。"
],
[
"まあ、よくけんかの起こるりんごですね。このことを田舎のおばあさんにいってあげようかしらん。おばあさんは、きっと兄弟げんかをするようなら、もうこれから送らないとおっしゃるでしょう。",
"もう、けんかをしないから、そんなことをいってやっちゃ、いやだよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第6刷発行
※表題は底本では、「政《まさ》ちゃんと赤《あか》いりんご」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:仙酔ゑびす
2011年12月1日作成
2012年9月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "052113",
"作品名": "政ちゃんと赤いりんご",
"作品名読み": "まさちゃんとあかいりんご",
"ソート用読み": "まさちやんとあかいりんこ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2012-01-29T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52113.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 10",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年8月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第6刷",
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"底本の親本初版発行年2": "",
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"テキストファイル最終更新日": "2012-09-28T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "2"
} |
[
[
"叔父さん、昔の絵は、いくらよくたって、冷たい墓石のようなものです。いまの若い人の画には、自分たちと同じ血が通っています。まあ、自分の姿を見にゆくのですね。",
"すると、おもしろくないのは、もう自分の姿がどこにも見いだせないというわけかな。そう考えれば、さびしい気がするのう。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 8」講談社
1977(昭和52)年6月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第6刷発行
底本の親本:「青空の下の原っぱ」六文館
1932(昭和7)年3月
初出:「帝国教育 589号」
1931(昭和6)年9月
※表題は底本では、「町《まち》の真理《しんり》」となっています。
※本文末の語注のページ数は省略しました。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:津村田悟
2021年4月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "052598",
"作品名": "町の真理",
"作品名読み": "まちのしんり",
"ソート用読み": "まちのしんり",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「帝国教育 589号」1931(昭和6)年9月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2021-05-25T00:00:00",
"最終更新日": "2021-04-27T00:00:00",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 8",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年6月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第6刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年6月10日第1刷",
"底本の親本名1": "青空の下の原っぱ",
"底本の親本出版社名1": "六文館",
"底本の親本初版発行年1": "1932(昭和7)年3月",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "津村田悟",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"あっ、紙芝居がきた……。",
"黒い眼鏡のおじさんだよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「日本の子供」文昭社
1938(昭和13)年12月
初出:「教育行童話研究」
1937(昭和12)年1月
※表題は底本では、「町《まち》はずれの空《あ》き地《ち》」となっています。
※初出時の表題は「町はづれの空地」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年5月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051681",
"作品名": "町はずれの空き地",
"作品名読み": "まちはずれのあきち",
"ソート用読み": "まちはすれのあきち",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「教育行童話研究」1937(昭和12)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-06-28T00:00:00",
"最終更新日": "2017-05-29T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51681.html",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "日本の子供",
"底本の親本出版社名1": "文昭社",
"底本の親本初版発行年1": "1938(昭和13)年12月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51681_ruby_61566.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-05-20T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
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"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51681_61605.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-05-20T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"なにをしているのだい?",
"なんにもしていない。"
],
[
"君、水族館で、お魚がガラスの箱の中を、泳ぐのを見たろう? 水草を分けて、ひらりひらりと尾を揺るがしたり、また、すうい、すういと小さなあわを口から出して。僕、あんなのを造るんだよ。",
"勇ちゃん、どうして、造るの?",
"入れ物かい? 教えてあげようか、僕の家へおいでよ。"
],
[
"雷が鳴り出したろう、雨が降るといけないからいかなかった。それで、晩に縁日へいって、金めだかを買ってきたのさ。",
"あのびんに入れた?",
"入れたよ、こんど川へいって、藻を取ってくるのだ。"
],
[
"一本も足がとれていなかった。まだ生きているように、黒光りがしていた。",
"そして、足が、動いていた?"
],
[
"こいつのすんでいる池は、そうたくさんはありません。これは遠方から送られてきたんですよ。夜になると鳴きます。",
"どういって?"
],
[
"どこへ、そんなものを売りにきたんですか、家へ持ってこられると困りますね。",
"ちっともこわくなんかないんだよ。ただ、鳴くおたまなんだもの。"
],
[
"どこに?",
"青物市場の前に、もうじきはじまるわ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日
1983(昭和58)年1月19日第5刷
底本の親本:「未明童話 お話の木」竹村書房
1938(昭和13)年4月
初出:「お話の木」
1937(昭和12)年8月
※表題は底本では、「真昼《まひる》のお化《ば》け」となっています。
※初出時の表題は「真昼のお化」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年6月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "055006",
"作品名": "真昼のお化け",
"作品名読み": "まひるのおばけ",
"ソート用読み": "まひるのおはけ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「お話の木」1937(昭和12)年8月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-07-27T00:00:00",
"最終更新日": "2017-07-17T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card55006.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年9月10日第1刷",
"底本の親本名1": "未明童話 お話の木",
"底本の親本出版社名1": "竹村書房",
"底本の親本初版発行年1": "1938(昭和13)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/55006_ruby_62042.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-06-20T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/55006_62043.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-06-20T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"二郎や、僕もそれと同じい夢を見た。母さんは初め遇うた時に知なかったが、なんでもよく似ている人だと思って、取縋って見ると母さんであったのだろう……。",
"うん、そうだったよ。じゃ兄さんも見たのか。",
"ああ、僕も見たよ。"
],
[
"二郎や、この道をお前も夢に見たかい。",
"ああ、やっぱりこの道を行ったんです。",
"この、杉林も通ってまだまだ奥へ行ったよ。",
"僕も……あれ、兄さんこの道は此処で二筋に分れてしまった。"
],
[
"二郎やこの広い道を行くんだよ。",
"いいえ兄さんこの細い道を行んですよ。",
"だって、僕は夢にこの道へ行ったのを見た。",
"僕はこの道を行ったよ。",
"この道の方が真実だ。",
"いいえこちらが真実だ。",
"僕は此方へ行く。",
"僕は此方へ行きたいな。",
"二郎ちゃんこの方が歩きよくていいや。",
"兄さん、此方へお出でよ。",
"いやだ!",
"じゃ、私は一人で行くわ。"
]
] | 底本:「文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船」ちくま文庫、筑摩書房
2008(平成20)年8月10日第1刷発行
2010(平成22)年5月25日第2刷発行
底本の親本:「緑髪」隆文館
1907(明治40)年1月2日発行
初出:「読売新聞」
1906(明治39)年8月12日号
※「行くん」と「行《いく》ん」の混在は、底本通りです。
入力:門田裕志
校正:坂本真一
2016年11月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053162",
"作品名": "迷い路",
"作品名読み": "まよいみち",
"ソート用読み": "まよいみち",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「読売新聞」1906(明治39)年8月12日号",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2016-12-14T00:00:00",
"最終更新日": "2016-11-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card53162.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船",
"底本出版社名1": "ちくま文庫、筑摩書房",
"底本初版発行年1": "2008(平成20)年8月10日",
"入力に使用した版1": "2010(平成22)年5月25日第2刷",
"校正に使用した版1": "2010(平成22)年5月25日第2刷",
"底本の親本名1": "緑髪",
"底本の親本出版社名1": "隆文館",
"底本の親本初版発行年1": "1907(明治40)年1月2日",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
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"入力に使用した版2": "",
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"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "門田裕志",
"校正者": "坂本真一",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53162_ruby_60169.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2016-11-21T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53162_60213.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2016-11-21T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"やっぱり おしろいくさいよ。",
"マル、どうして おまえは、おしろいくさいの?"
],
[
"あそびに いらっしゃい。",
"あんたもね。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 16」講談社
1978(昭和53)年2月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
初出:「セウガク一年生」
1939(昭和14)年5月
※初出時の表題は「マルハシアワセ」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:Juki
2012年7月16日作成
2012年9月28日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051726",
"作品名": "マルは しあわせ",
"作品名読み": "マルは しあわせ",
"ソート用読み": "まるはしあわせ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「セウガク一年生」1939(昭和14)年5月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2012-09-28T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51726.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 16",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1978(昭和53)年2月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1979(昭和54)年1月31日第2刷",
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"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "1"
} |
[
[
"それが、まだ若い娘さんだろう、無理はないよ。活動写真館の前に立って、ぼんやりと写真を見ていたそのすきをねらって、すりがすったらしい。まのわるいときというものは、すべて、そういうものさ。気のついたときは、もうおそい。しかたがないから、おつるさんは、問屋へ引きかえしたんだよ。",
"かわいそうにな、問屋は貸さなかったんでしょう。",
"そうだな。おつるさんは、はたらいて返すから、どうかお金を貸してくださいと、主人に頼んだのだよ。思いやりも、情けもない主人は、すげなく断ったのです。"
],
[
"あんまり、あんたは虫がよすぎる、この金の出入りのせわしい暮れに、自分の不注意から金をなくしたといって、また貸せというのは。こちらもいそがしいので、いちいちたのみをきいていられない。なんとおっしゃっても、今日はだめです、ってね。",
"困るからたのむんじゃないか! それから、どうしたの?"
],
[
"だが、あの男にかぎって、そんなようには見えないが、金をためているのかな。",
"ほかから借りてまで金をためることはしまいが、なにしろ若いものだもの、遊びにいくかもしれない。"
],
[
"いや、あの堅い男にかぎって、ばくちはしまい。それにしてもおかしいことだ。もうちっと、だまってようすを見ていよう。",
"おまえさんのところから、いくら借りたんだね。",
"なに、たいした金でない。それだけおかしいのさ。返そうと思えば、いつだって返せるのを……。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「太陽と星の下」あかね書房
1952(昭和27)年1月
初出:「新児童文化 第4冊」
1949(昭和24)年11月
※表題は底本では、「万《まん》の死《し》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年6月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051685",
"作品名": "万の死",
"作品名読み": "まんのし",
"ソート用読み": "まんのし",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「新児童文化 第4冊」1949(昭和24)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-07-27T00:00:00",
"最終更新日": "2017-07-17T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51685.html",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "太陽と星の下",
"底本の親本出版社名1": "あかね書房",
"底本の親本初版発行年1": "1952(昭和27)年1月",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51685_ruby_62044.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-06-20T00:00:00",
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} |
[
[
"この水は、どこまでいくの。",
"そうですね、村や、町を通って、海へいくのですよ。"
],
[
"お母さん、どこで、菜を洗っているんでしょうね。",
"さあ、どこの家でしょうね。どこでも、このお天気のうちに、菜をつけるんですよ。きっと、このあとは、雪がふりますからね。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「みどり色の時計」新子供社
1950(昭和25)年4月
初出:「童話読本」
1948(昭和23)年9月
※表題は底本では、「水《みず》七|景《けい》」となっています。
※初出時の表題は「水とこども」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年12月26日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051689",
"作品名": "水七景",
"作品名読み": "みずしちけい",
"ソート用読み": "みすしちけい",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「童話読本」1948(昭和23)年9月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2018-01-14T00:00:00",
"最終更新日": "2017-12-26T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51689.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "みどり色の時計",
"底本の親本出版社名1": "新子供社",
"底本の親本初版発行年1": "1950(昭和25)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51689_ruby_63499.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-12-26T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
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"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51689_63543.html",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"とうとう、あの方は、いってしまいましたね。",
"わたしたちは、いつまでもいっしょにいたいと思いましたが、だめでした。このつぎには、だれが先にお別れしなければならないでしょうか……。"
],
[
"よく見えます。あの小さなたなには、たった一つしかありませんね。",
"三つあったのですが、ついこのごろ、二つ売れてしまったのですよ。三つのお人形は、同じ人の手で作られたので、それは仲がよかったのです。それで、一つになってしまって、あのお人形はさびしがっています。"
],
[
"いくら、私が、身軽に方々を飛びまわるからといって、どうして、家の内のことまでがわかりましょう……。それは、無理というものですよ。",
"一つのすわっているお人形は、外国人が買っていったというのですが。",
"外国人ですって……。そういえば、私は、人形をたくさん集めている外国人を知っています。その人は、ここから七、八里離れた、海岸に住んでいました。家族といっては、ほかに年とった、雇いのおばあさんがいるばかり、広い庭には、いっぱい草花を植えて、これを愛していました。また、晩方になると、その人は、海のほとりに立って、あちらをながめて、ふるさとのことを思い出していました。ある日、私が、人のいない時分に、窓からのぞくと、いろいろのお人形が、たなの上に飾られてありましたが、それらのお人形たちは、近々に、主人が外国へ帰るそうだが、たぶん、そのときつれてゆかれるだろうということを話していました。知らない国へゆくのをおもしろがっているものもありましたが、また、いったら、もう二度とこちらへは帰られないといって、悲しんでいるものもありました。……もし、あの中に、そのお友だちがいられたなら、おそらく、もう消息は聞かれますまい。なぜなら、二度めに、私が、その家の窓をのぞいたときには、すっかりお人形は、荷造りされていたようすでしたから……。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 6」講談社
1977(昭和52)年4月10日第1刷
底本の親本:「未明童話集4」丸善
1930(昭和5)年7月20日
初出:「キング」
1928(昭和3)年11月
※表題は底本では、「三つのお人形《にんぎょう》」となっています。
※「消息」に対するルビの「しょうそく」と「たより」の混在は、底本通りです。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:へくしん
2021年10月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053136",
"作品名": "三つのお人形",
"作品名読み": "みっつのおにんぎょう",
"ソート用読み": "みつつのおにんきよう",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「キング」1928(昭和3)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2021-11-25T00:00:00",
"最終更新日": "2021-10-27T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card53136.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 6",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年4月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年4月10日第1刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年4月10日第1刷",
"底本の親本名1": "未明童話集4",
"底本の親本出版社名1": "丸善",
"底本の親本初版発行年1": "1930(昭和5)年7月20日",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "へくしん",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53136_ruby_74393.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2021-10-27T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/53136_74431.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2021-10-27T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"きっと、その箱の中には、宝がはいっているにちがいない。",
"私も、そう思う。",
"あるいは、私たちの思っているような宝物ではないかもしれない。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 4」講談社
1977(昭和52)年2月10日第1刷
1977(昭和52)年C第2刷
底本の親本:「兄弟の山鳩」アテネ書院
1926(大正15)年4月19日発行
初出:「赤い鳥」
1925(大正14)年12月
※初出時の表題は「三つの鍵」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:へくしん
2020年11月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052987",
"作品名": "三つのかぎ",
"作品名読み": "みっつのかぎ",
"ソート用読み": "みつつのかき",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「赤い鳥」1925(大正14)年12月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-12-20T00:00:00",
"最終更新日": "2020-11-27T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52987.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 4",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年2月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年C第2刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年C第2刷",
"底本の親本名1": "兄弟の山鳩",
"底本の親本出版社名1": "アテネ書院",
"底本の親本初版発行年1": "1926(大正15)年4月19日",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "へくしん",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52987_ruby_72271.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2020-11-27T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52987_72319.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2020-11-27T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"遠くが、見えるんだよ。",
"船乗りが、持つようなのさ。",
"そんなの、あっても、高いだろう。",
"なに、出ものなら、たいしたことはない。"
],
[
"おけいこをしたいんだよ。",
"そんなら、S町の夜店へいってごらん。あのへんには、外人の家族が、たくさんきているから、出ないともかぎらない。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「みどり色の時計」新子供社
1950(昭和25)年4月
初出:「幼年ブック」
1948(昭和23)年6月
※表題は底本では、「緑色《みどりいろ》の時計《とけい》」となっています。
※初出時の表題は「みどり色の時計」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2020年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051691",
"作品名": "緑色の時計",
"作品名読み": "みどりいろのとけい",
"ソート用読み": "みとりいろのとけい",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「幼年ブック」1948(昭和23)年6月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-03-20T00:00:00",
"最終更新日": "2020-02-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51691.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "みどり色の時計",
"底本の親本出版社名1": "新子供社",
"底本の親本初版発行年1": "1950(昭和25)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"テキストファイル最終更新日": "2020-02-21T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"だれがするものか、あのかじやさんだよ。",
"はたらき者だけれど、わるい人ね。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「小学文学童話」竹村書房
1937(昭和12)年5月
初出:「セウガク二年生 12巻13号」
1937(昭和12)年1月
※表題は底本では、「村《むら》のかじやさん」となっています。
※初出時の表題は「村のかぢやさん」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2016年6月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052114",
"作品名": "村のかじやさん",
"作品名読み": "むらのかじやさん",
"ソート用読み": "むらのかしやさん",
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"副題読み": "",
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"初出": "「セウガク二年生 12巻13号」1937(昭和12)年1月",
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"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2016-09-28T00:00:00",
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"姓読み": "おがわ",
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"名読みソート用": "みめい",
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"生年月日": "1882-04-07",
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"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
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"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
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"底本の親本名1": "小学文学童話",
"底本の親本出版社名1": "竹村書房",
"底本の親本初版発行年1": "1937(昭和12)年5月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
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"底本の親本初版発行年2": "",
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} |
[
[
"そうだ。ちょうどもう二年前になるな。私はその徐州へ進軍する、列の中へ入っていたのだ。みんなここへおすわり。そのときのことを話してあげよう。",
"おじさん。戦争の話、どんな話?",
"いろいろ話があるが、思い出したから、まずその軍馬からだ。",
"軍馬?"
],
[
"徐州へ進軍のときは、大雨の後だったので、たぶん僕たちの前に出発した馬だろう。足をすべらしたんだな、がけ下のどろ田の中へ落ちて、体を半分埋ずめながら、そこを列が通ると上を向いて鳴いていた。助けてやろうにも、ちょっと助けようがないのだ。それに先を急いでいるのでな。いっしょにここまできた友だちで、かわいそうに思ったが、頭を下げて、そこを通り過ぎてしまったよ。",
"かわいそうに、その馬どうなったろうか。",
"くにを出てから幾月ぞ、ともに死ぬ気でこの馬と、攻めて進んだ山や河……。ほんとうに、そうだった。みんなが馬を見返り、見返り、泣きながらいったよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「赤土へ来る子供たち」文昭社
1940(昭和15)年8月
初出:「日本の子供」
1940(昭和15)年4月
※表題は底本では、「村《むら》へ帰《かえ》った傷兵《しょうへい》」となっています。
※初出時の表題は「村へ帰つた傷兵」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年6月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051694",
"作品名": "村へ帰った傷兵",
"作品名読み": "むらへかえったしょうへい",
"ソート用読み": "むらへかえつたしようへい",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「日本の子供」1940(昭和15)年4月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-07-03T00:00:00",
"最終更新日": "2017-06-25T00:00:00",
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"人物ID": "001475",
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"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
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"生年月日": "1882-04-07",
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"底本の親本出版社名1": "文昭社",
"底本の親本初版発行年1": "1940(昭和15)年8月",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"持っていないけど、あるよ。",
"ありゃしないわ。",
"あるから。"
],
[
"悪口をいうから、正ちゃんにはあげないわ。",
"いるもんか、かず子ちゃんは、もっと、もっと、きれいなものがあるのを知らないだろう。"
],
[
"ああわかった、正ちゃん、お花でしょう?",
"花なもんか。",
"正ちゃんの知っているもの?",
"うん、そうだよ。",
"ありゃしないわ。"
],
[
"ほんとうに、きれいだわね。ついている白い粉、毒でしょう。",
"あとで、手を洗うからいいよ。数珠玉だって、この青い貝よりきれいだぜ。",
"やっぱり、私、貝がらのほうがいいわ。だって、海にあるんですもの。"
],
[
"いまいる?",
"雨が降ると、出てくるわ。",
"なあんだ、そんなんじゃ、しかたがないよ。"
],
[
"学校へ持っていって、理科の時間に解剖するのだよ。",
"えっ、殺してしまうの?"
],
[
"ああ、まだ子供なんだね。壁の下に穴があいているだろう、あすこから、出たり、入ったりするのだよ。",
"早く、穴をふさいでしまったらおもしろいね。",
"一人では、できないな。"
],
[
"ああ、そのほうがいいよ。",
"巣もいっしょに、かごの中へ入れておくといいね。"
],
[
"どうしたんだろうね。",
"いま、出てくるよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日
1983(昭和58)年1月19日第5刷
底本の親本:「未明童話 お話の木」竹村書房
1938(昭和13)年4月
初出:「お話の木」
1937(昭和12)年9月
※表題は底本では、「眼鏡《めがね》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2016年12月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "055007",
"作品名": "眼鏡",
"作品名読み": "めがね",
"ソート用読み": "めかね",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「お話の木」1937(昭和12)年9月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-01-06T00:00:00",
"最終更新日": "2016-12-22T00:00:00",
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"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年9月10日第1刷",
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"底本の親本出版社名1": "竹村書房",
"底本の親本初版発行年1": "1938(昭和13)年4月",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
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} |
[
[
"君も、飼っているのかね。",
"飼っています。"
],
[
"先生からいただいたおかいこをお見せよ。",
"こんなんだ。"
],
[
"大きいんだね。もうじき上がるんじゃない。僕のは、こんなに大きくないよ。",
"先生だから、うまいんだろう。",
"早く、お菓子の空き箱を持っておいでよ。"
],
[
"ここらに、桑の木はないのかい。",
"君のうちにあるの。",
"僕のうちのは、縁日で買ってきた苗木だよ。",
"ここらに桑畑がないんだ。",
"あとで、さがしておいでよ。こう細かくきざんでやるのだ。"
],
[
"お母さんの、見えないところといったんでしょう。",
"あんたのおへやに置きなさい。",
"みよ子がいやだというのだもの。",
"あの子も、私ににたのですね。そんならお座敷に置きなさい。",
"え、お座敷に置いていいの。",
"ちらかさないように、下になにか敷いてね。"
],
[
"どこかに、桑の木がないか知らない。",
"おかいこにやるの。",
"うん、先生から、おかいこをもらってきたけれど、桑の葉がなくて困っているのだ。"
],
[
"どこの原っぱに。",
"土管の置いてある、原っぱに。",
"ほんとう。僕、桑の木なんか見なかったがなあ。"
],
[
"あれ、桑の木かしらん。",
"そうよ。"
],
[
"ほんとうに、桑の木だ。",
"赤い実がなっているわ。",
"ここにも。"
],
[
"まだ、木が小さいからね。",
"僕は、原っぱに生えている桑の木の葉を取ってきたけれど、かたくて、おいしくなさそうだ。",
"それは、こやしを、やらないからだよ。",
"これは、こやしがきいているんだね。"
],
[
"僕、毎朝、自転車にのって、もらいにいこうかな。",
"泉の家の前は、桑畑なんだぜ。だから、すこしばかり取ったって、かまわないのさ。"
],
[
"だから桑の木のこやしに火葬場の灰をやるんだよ。",
"えっ、火葬場の灰をやるの。",
"いってみたまえ、根のところが白くなってるから。",
"僕、もういくのをよした。",
"どうして。",
"だって、気味がわるいもの。"
],
[
"桑の葉を取りにきたの。",
"どこから。",
"私の家は、あの赤い屋根のお家よ。"
],
[
"おかいこをたくさん飼っているの。",
"五十匹ばかりいるの。",
"たくさんいるんだね。",
"もう、そろそろ上がりかけているわ。"
],
[
"お姉ちゃん、帰ろうよ。",
"僕が、取ってあげるから待っておいで。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「赤土へ来る子供たち」文昭社
1940(昭和15)年8月
※表題は底本では、「芽《め》は伸《の》びる」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年4月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051695",
"作品名": "芽は伸びる",
"作品名読み": "めはのびる",
"ソート用読み": "めはのひる",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-05-28T00:00:00",
"最終更新日": "2017-04-19T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51695.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "赤土へ来る子供たち",
"底本の親本出版社名1": "文昭社",
"底本の親本初版発行年1": "1940(昭和15)年8月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51695_ruby_61328.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-04-16T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51695_61371.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-04-16T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"ご機嫌よう、すぎの木さん。",
"おお、去年いらしたもずさんですか。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「小学文学童話」竹村書房
1937(昭和12)年5月
初出:「台湾日日新報」
1937(昭和12)年4月16日
※表題は底本では、「もずとすぎの木《き》」となっています。
※初出時の表題は「百舌と杉の木」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052115",
"作品名": "もずとすぎの木",
"作品名読み": "もずとすぎのき",
"ソート用読み": "もすとすきのき",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「台湾日日新報」1937(昭和12)年4月16日",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-12-25T00:00:00",
"最終更新日": "2017-11-24T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52115.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 11",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年9月10日第1刷",
"底本の親本名1": "小学文学童話",
"底本の親本出版社名1": "竹村書房",
"底本の親本初版発行年1": "1937(昭和12)年5月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52115_ruby_63223.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-11-24T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52115_63365.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-11-24T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"おかしいわ。いつも元気なのに、けんかをしてきたんでしょう。",
"ばか。だれがけんかなんかするものか。",
"じゃ、どうしたの?",
"なんでもないのだよ。"
],
[
"今日、僕、釣りにいったら、一匹の大きなへびがいなごをのんでいるのを見たんだよ。へびって、にくらしいやつだね。だから、石をなげてやった。",
"そうしたら、どうしたい?",
"どこかへはいって、見えなくなってしまったよ。"
],
[
"かわいそうだから、僕、いやだ。",
"かわいそうだから、逃がしてやるのよ。",
"雨がふったり、風が吹いたりするじゃないか。",
"それはしかたがないわ、やぶの中に住んでいるのだもの。それよりか、こんなせまいかごの中に入れておくほうが、よっぽどかわいそうだわ。"
],
[
"逃がしてやったら、お母さんにあえる?",
"それは、わからないけれど、きっとよろこぶにちがいありません。"
],
[
"そうものがわかると、敏ちゃんはいい子です。",
"ほんとうにいい子よ。",
"いい子だわね。"
],
[
"徳ちゃん、カチカチカチだよ。",
"カチカチなら、聞こうよ。いいおじさんだものね。",
"ああ、ドンドンなんか、これから聞くのをよそうよ。"
],
[
"ドンドンは、小さい子がころんでも、知らん顔をしているね。",
"泣くと、あっちへいけというだろう。あんな人は悪いおじさんだね。",
"僕、カチカチすきだ。",
"僕も。"
],
[
"黄金バットかな。",
"そうかもしれないよ。"
],
[
"子供だと思って、ばかにしているのだね。いまに、ばけねこにばけるかもしれないよ。",
"ああ、なかなかわるいやつだよ。このあいだ、お母さんが仏さまにあげておいたあんパンを一つ食べたのだよ。お母さんは、僕が食べたというんだもの。いくら僕でないといっても、お母さんは、ほんとうにしないのだ。こいつが食べたのだよ。",
"おばさん、どこかへいったの?",
"お使いにいったんだろう。"
],
[
"あったかい?",
"あった。"
],
[
"知っているんだね。",
"知っていたっていいや。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷
1983(昭和58)年1月19日第6刷
初出:「大毎コドモ」
1934(昭和9)年10月
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2015年5月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052116",
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"初出": "「大毎コドモ」1934(昭和9)年10月",
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[
[
"だれか、もらいてがあるといいんだがな。",
"警察へつれていくと、一ぴき三十銭になるぜ。君つれていかないか?"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 8」講談社
1977(昭和52)年6月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第6刷発行
底本の親本:「青空の下の原っぱ」六文館
1932(昭和7)年3月
※表題は底本では、「森《もり》の中《なか》の犬《いぬ》ころ」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:藤井南
2015年12月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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"作品ID": "052600",
"作品名": "森の中の犬ころ",
"作品名読み": "もりのなかのいぬころ",
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"分類番号": "NDC K913",
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"姓読み": "おがわ",
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"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
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"底本名1": "定本小川未明童話全集 8",
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"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年6月10日",
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"校正に使用した版1": "1982(昭和52)年9月10日第6刷",
"底本の親本名1": "青空の下の原っぱ",
"底本の親本出版社名1": "六文館",
"底本の親本初版発行年1": "1932(昭和7)年3月",
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"底本出版社名2": "",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
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} |
[
[
"ああ、あれはここへみえる、書家の方が、お書きなされたのだ。",
"うまく、書けているの。",
"みなさんが、おほめなさる。山高水長、やまたかく、みずながし、といってもよい。",
"おじいさんに、書いてくださったの。",
"そうだ、ここにある、この筆で、お書きになったのだ。私のつくった筆が、たいそう書きよいと喜ばれてな、一枚くださったのだよ。"
],
[
"ぼくのも白いね。この筆の毛は、やはり羊でない。",
"そう、羊の毛だ。"
],
[
"いちがいにいえぬが、細筆などは、たぬきの毛だろうな。",
"どうやって、たぬきをつかまえるの。",
"たぬきか。おとしや、わなでつかまえたり、また、子飼いにして育てたりするのだ。"
],
[
"来年の夏は、方々の山へまいります。私が見つけなければ、おちおうた行者に頼んで、どうにかして、手に入れてまいります。",
"ふしぎですな、自然にそんな草があるとは。",
"てんぐや、隠者が、それで字を書いたといいます。"
],
[
"筆草って、草があるの。",
"高い山へ、薬草をさがしにいくと、まだ人の知らない、ふしぎな草があるという話だ。",
"あの薬屋さんは、これからどこへいくの。",
"まだ方々を歩いて年の暮れに、山国の町へ帰るといった。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「心の芽」文寿堂出版株式会社
1948(昭和23)年10月
※表題は底本では、「山《やま》に雪《ゆき》光《ひか》る」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年1月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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"作品ID": "051701",
"作品名": "山に雪光る",
"作品名読み": "やまにゆきひかる",
"ソート用読み": "やまにゆきひかる",
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"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "心の芽",
"底本の親本出版社名1": "文寿堂出版株式会社",
"底本の親本初版発行年1": "1948(昭和23)年10月",
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"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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} |
[
[
"すずめたちと同じ木に止まって、小さくなって、寝たかしらん。",
"すずめは、やさしい鳥だから、意地悪なんかしないよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「僕はこれからだ」フタバ書院成光館
1942(昭和17)年11月
初出:「愛育 7巻1号」
1941(昭和16)年1月
※表題は底本では、「山《やま》へ帰《かえ》ったやまがら」となっています。
※初出時の表題は「山へ帰つた山雀」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2018年8月28日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051703",
"作品名": "山へ帰ったやまがら",
"作品名読み": "やまへかえったやまがら",
"ソート用読み": "やまへかえつたやまから",
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"原題": "",
"初出": "「愛育 7巻1号」1941(昭和16)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2018-09-21T00:00:00",
"最終更新日": "2018-08-28T00:00:00",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "僕はこれからだ",
"底本の親本出版社名1": "フタバ書院成光館",
"底本の親本初版発行年1": "1942(昭和17)年11月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
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"校正に使用した版2": "",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51703_ruby_65665.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2018-08-28T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"お父さん、おもしろい芝居が、はじまりましたから、いってごらんになりませんか。",
"いいや、見たくない。",
"お父さん、これから、なにかうまいものを食べに出かけましょう。",
"いいや、なにも食べたくない。"
],
[
"あんなに、お年をとっていられるから、道中なにか変わったことがなければいいが……。",
"いまごろ、汽車はどのあたりを通っているだろうか……。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 4」講談社
1977(昭和52)年2月10日第1刷発行
1977(昭和52)年C第2刷発行
初出:「中央公論」
1923(大正12)年12月
※表題は底本では、「山《やま》へ帰《かえ》りゆく父《ちち》」となっています。
※初出時の表題は、「山へ帰り行く父」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:栗田美恵子
2020年5月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052989",
"作品名": "山へ帰りゆく父",
"作品名読み": "やまへかえりゆくちち",
"ソート用読み": "やまへかえりゆくちち",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「中央公論」1923(大正12)年12月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2020-06-11T00:00:00",
"最終更新日": "2020-05-27T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card52989.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 4",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年2月10日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年C第2刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年C第2刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "栗田美恵子",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52989_ruby_71091.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2020-05-27T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52989_71136.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2020-05-27T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"明日、私、どこへもいかずに、お家にいるわ。",
"じゃ、明日ばかりは、染めましょうね。"
],
[
"おかげで、さっぱりしました。もも子などは、これから大きくなって、世の中というものを知るのですけれど、お母さんのように年をとると、髪は白くなるし、肩は凝るし、目はかすんで、しかたがありません。きょうは、よく家にいてくれました。さあ外へいって遊んでいらっしゃい。",
"お母さん、こんど按摩さんに、もんでもらうといいわ。",
"きましたら、もんでもらいましょうね。"
],
[
"こんどの日曜に、もも子さんくりを拾いにいかない。",
"どこかに、くりの木があって。",
"すこし遠いけど、人の住んでいない荒れた屋敷で、大きなくりの木があるの。学校の帰りに、松野さんがつれていってくれたのよ。",
"お化け屋敷でない。",
"ほ、ほ、ほ、そんなものではないわ。"
],
[
"そう、何時ごろかしらん、もう三時過ぎたのでない。",
"ちょうど、三時ごろよ。"
],
[
"おばあさん、うちのお母さんをもんであげてちょうだい。",
"はい、はい、ありがとうございます。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「亀の子と人形」フタバ書院
1941(昭和16)年4月
※表題は底本では、「夕雲《ゆうぐも》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年9月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051704",
"作品名": "夕雲",
"作品名読み": "ゆうぐも",
"ソート用読み": "ゆうくも",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-10-09T00:00:00",
"最終更新日": "2017-09-24T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51704.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "亀の子と人形",
"底本の親本出版社名1": "フタバ書院",
"底本の親本初版発行年1": "1941(昭和16)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51704_ruby_62762.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-09-24T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"達夫、どうして、こんなにおそかったのだい。",
"おそくとも、心配しなくていいといったのに。",
"でも、もう十一時過ぎじゃないか。",
"お母さん、僕、夜業をしてきたんだよ。",
"まあ、夜まで働いては、おまえの体にさわるでしょう。"
],
[
"お母さんは、おまえ一人が、頼りなんだよ。おまえのからだは、大事なんだからね。",
"だいじょうぶですよ、お母さん。そう心配するなら、明日から早く帰ります。",
"ああ、どうか、そうしておくれ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「夜の進軍喇叭」アルス
1940(昭和15)年4月
※表題は底本では、「夕焼《ゆうや》けがうすれて」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年8月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051708",
"作品名": "夕焼けがうすれて",
"作品名読み": "ゆうやけがうすれて",
"ソート用読み": "ゆうやけかうすれて",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-09-18T00:00:00",
"最終更新日": "2017-08-25T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51708.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
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"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "夜の進軍喇叭",
"底本の親本出版社名1": "アルス",
"底本の親本初版発行年1": "1940(昭和15)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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"テキストファイル最終更新日": "2017-08-25T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"黒い鳥だろうか?",
"鳥なもんか、海馬か、オットセイだろう。"
],
[
"これは、しめたものだ",
"しめたぞ!"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 5」講談社
1977(昭和52)年3月10日第1刷
初出:「赤い鳥」
1924(大正13)年11月
※表題は底本では、「幽霊船《ゆうれいぶね》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:江村秀之
2014年2月14日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053479",
"作品名": "幽霊船",
"作品名読み": "ゆうれいぶね",
"ソート用読み": "ゆうれいふね",
"副題": "",
"副題読み": "",
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"初出": "「赤い鳥」1924(大正13)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2014-03-11T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
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"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 5",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年3月10日",
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"校正に使用した版1": "1978(昭和53)年C第2刷",
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"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "江村秀之",
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"テキストファイル最終更新日": "2014-02-14T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"おまりをついたり、鬼ごっこをしたりして遊べるわね。",
"だから、早く、僕、雪を消そうと思っているのさ。",
"私も、おてつだいをしましょうか。",
"とめ子さんは、自分の家の前の雪を消せばいいだろう。",
"じゃ、そうするわ。"
],
[
"せっかく、雪をなくしたのに、つまらないわ。",
"年ちゃん、じきに晴れるよ。あっちの方が明るいだろう。"
],
[
"大きなみかんね。",
"こんな大きいみかんのなっているところへいってみたいな。",
"私、ご本で、みかんのなっているお山を見たわ。",
"絵なんか、つまらないよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「小学四年生」
1939(昭和14)年3月号
初出:「小学四年生」
1939(昭和14)年3月号
※表題は底本では、「雪消《ゆきぎ》え近《ちか》く」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年1月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051710",
"作品名": "雪消え近く",
"作品名読み": "ゆきぎえちかく",
"ソート用読み": "ゆききえちかく",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「小学四年生」1939(昭和14)年3月号",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-03-29T00:00:00",
"最終更新日": "2017-01-12T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51710.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "小学四年生",
"底本の親本出版社名1": " ",
"底本の親本初版発行年1": "1939(昭和14)年3月号",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51710_ruby_60873.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-01-12T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51710_60915.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2017-01-12T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"次郎ちゃん、おはよう、雪だるまは凍って光っているね。",
"夜中に、勇ちゃんは、外に出て、ハーモニカを吹いた? 僕は、夜中に、ハーモニカの鳴るのを聞いたよ。",
"うそだい。だれが、そんな夜中に、ハーモニカを吹くものか?",
"そんなら、きっとお化けだよ。",
"お化けなんか、あるものか、次郎ちゃんは、夢を見たんだよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 2」講談社
1976(昭和51)年12月10日第1刷
1982(昭和57)年9月10日第7刷
初出:「小学少年」
1923(大正12)年1月
※表題は底本では、「雪《ゆき》だるま」となっています。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:江村秀之
2013年11月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051058",
"作品名": "雪だるま",
"作品名読み": "ゆきだるま",
"ソート用読み": "ゆきたるま",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「小学少年」1923(大正12)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2013-12-12T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51058.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 2",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1976(昭和51)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第7刷",
"校正に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日7刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "ぷろぼの青空工作員チーム入力班",
"校正者": "江村秀之",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51058_ruby_51730.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2013-11-05T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51058_51770.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-11-05T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"おじいさん、万歳!",
"万歳!",
"おじいさん、万歳! 万歳!"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 3」講談社
1977(昭和52)年1月10日第1刷
1981(昭和56)年1月6日第7刷
初出:「童話」
1922(大正11)年1月
※表題は底本では、「雪《ゆき》の上《うえ》のおじいさん」となっています。
※初出時の表題は「雪の上のお爺さん」です。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:本読み小僧
2014年4月23日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051073",
"作品名": "雪の上のおじいさん",
"作品名読み": "ゆきのうえのおじいさん",
"ソート用読み": "ゆきのうえのおしいさん",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「童話」1922(大正11)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2014-05-28T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51073.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 3",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年1月10日",
"入力に使用した版1": "1981(昭和56)年1月6日第7刷",
"校正に使用した版1": "1978(昭和53)年G第4刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "ぷろぼの青空工作員チーム入力班",
"校正者": "本読み小僧",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51073_ruby_53323.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2014-04-23T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51073_53367.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2014-04-23T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"おい、君が悪いんじゃないか、いちばん先に君が逃げたんだぜ。",
"僕じゃない、いちばん先に逃げ出したのは君だぜ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 1」講談社
1976(昭和51)年11月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第7刷発行
※表題は底本では、「雪《ゆき》の国《くに》と太郎《たろう》」となっています。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:ぷろぼの青空工作員チーム校正班
2011年11月2日作成
2012年9月27日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "050986",
"作品名": "雪の国と太郎",
"作品名読み": "ゆきのくにとたろう",
"ソート用読み": "ゆきのくにとたろう",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2012-01-11T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card50986.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 1",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1976(昭和51)年11月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第7刷",
"校正に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第7刷",
"底本の親本名1": "",
"底本の親本出版社名1": "",
"底本の親本初版発行年1": "",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "ぷろぼの青空工作員チーム入力班",
"校正者": "ぷろぼの青空工作員チーム校正班",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/50986_ruby_46370.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2012-09-27T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "1",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/50986_46416.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2012-09-27T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "1"
} |
[
[
"なんなの、おじいさん。",
"そうだな。あれは、貧乏のくず屋さんだ。"
],
[
"なにをさがしているんだろうか。",
"あれは、紙や、金くずや、こわれたびんのようなものを撰り分けているのさ。",
"あんな菜っ葉も、持っていくのかしらん。",
"きっと、家へ持っていって食べるんだよ。",
"汚いなあ。"
],
[
"雪や、こんこん、あられや、こんこん、降っておくれ。",
"雪が降ってきたわ。"
],
[
"あの人ですか、くず屋さんです。",
"なにしにきたの。"
],
[
"お礼にいっていらっしゃい。",
"はい、いってまいります。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「日本の子供」文昭社
1938(昭和13)年12月
初出:「お話の木」
1938(昭和13)年2月
※表題は底本では、「雪《ゆき》の降《ふ》った日《ひ》」となっています。
※初出時の表題は「雪の降つた日」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2016年11月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051714",
"作品名": "雪の降った日",
"作品名読み": "ゆきのふったひ",
"ソート用読み": "ゆきのふつたひ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「お話の木」1938(昭和13)年2月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2016-12-21T00:00:00",
"最終更新日": "2016-11-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51714.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
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} |
[
[
"おいしくないの?",
"ああ、すっぱくて、たべられないのだ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「小学文学童話」竹村書房
1937(昭和12)年5月
※表題は底本では、「ゆずの話《はなし》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2016年9月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052118",
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"姓ローマ字": "Ogawa",
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"没年月日": "1961-05-11",
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} |
[
[
"あまり飛んできたから、びっくりしたんだよ。たった一匹なの?",
"まるこの子だよ。尾の短いの二匹より、一匹でも、このほうがいいだろう。"
],
[
"どうして、こんなきれいな魚があるんだろうね。",
"ほんとうにふしぎだね。"
],
[
"前のおねえさん、かぜをひいたのかしらん。",
"どうして?",
"お薬のかおりがして、窓が暗いのだもの。",
"そうかもしれません。かぜがはやりますから。"
],
[
"昔から、戦争があると、こんなことがたびたびあったのですよ。平和な春の晩にはお琴の音がしたり、お茶をにるかおりがして、歌にも『あおによし奈良の都は咲く花の、におうがごとくいまさかりなり』と、たたえられた都も、今はあとかたなく、草がぼうぼうとしているのですから、考えれば、ほんとうにさびしいものです。",
"戦争がなければ、いいんですね。",
"だれでも、その当座は、戦争の悪いこと、恐ろしいことを身にしみて感じますが、それを、じき忘れてしまうのです。",
"そんなら、どうしたらいいの。",
"にがい経験を、いつまでも忘れぬことです。そして、世界じゅうが、平和のために骨をおり、力を合わせて、わがままや、傲慢心をおさえなければなりません。"
],
[
"けんかだな。",
"いやですね。おたがいが大事なからだですのに。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 13」講談社
1977(昭和52)年11月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「僕の通るみち」南北書園
1947(昭和22)年2月
初出:「良い子の友」
1946(昭和21)年6、7月合併号
※表題は底本では、「夢《ゆめ》のような昼《ひる》と晩《ばん》」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年12月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051716",
"作品名": "夢のような昼と晩",
"作品名読み": "ゆめのようなひるとばん",
"ソート用読み": "ゆめのようなひるとはん",
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"初出": "「良い子の友」1946(昭和21)年6、7月合併号",
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"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"最終更新日": "2017-12-10T00:00:00",
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"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
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"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
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"底本名1": "定本小川未明童話全集 13",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年11月10日",
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"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年11月10日第1刷",
"底本の親本名1": "僕の通るみち",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"ほんとうにお呉れか。",
"それはきっと上げるさ。",
"いつ呉れるのだい。",
"明日。",
"何時に。",
"朝上げるよ。",
"でも、また独楽割られるから厭だ……。"
],
[
"勇さん、この間割ったのは堪忍しておくれ? 今日はきっと割らんから。",
"でも、力を入れて撃つんだもの……。",
"力を入れないから。",
"お婆さんが買ってくれたんだもの……。",
"え、お婆さん? が買ってくれたの?……。",
"ああ、もう割っていけんって、今度割ると私が叱られるもの……。",
"鉄胴の独楽かい?",
"いいえ、木独楽だ。",
"大きいのかい……。",
"ああ、大きいんだ。"
],
[
"太郎さんは私にあの絵紙呉れないか? そうせば僕独楽を廻すけも……。",
"牛に子供の乗っている絵紙かい?",
"あれ、呉れればいいがなあ……誰か呉れんかしらん。",
"お月様が出ていて、笛を吹いている絵紙だろう?"
],
[
"あれを上げれば、独楽をお廻しかい。",
"廻すけども割るんなら厭だ。",
"僕はもう割らんよ。",
"じゃ絵紙は呉れるの……。",
"ああ、上げよう。",
"銀蜻蛉は明日の朝呉れるの?",
"ああ、明日の朝捕って上げるよ……。",
"独楽を割るんでないよ。え、きっと!",
"ああ、割らないってば。家に独楽はあるの……じゃ早く行って持ってお出で、待っているから。"
],
[
"太郎さん、お前さんが先にお廻しよ。",
"僕?",
"そうっとお廻しよ。",
"ああ。",
"割るんでないよ、さあ手をお出し。"
],
[
"太郎さん、私の独楽は強いだろう。",
"強くないわい。",
"君は軽く廻すんだよ。だってこっちは木独楽だもの。"
],
[
"お花ちゃん好く来てお呉れだった。僕は一人で寂しかったよ。",
"太郎さんはいつここへ来たの。",
"今少し前に。",
"おお、美しい清水だことね。",
"お花ちゃんは、萩原のお婆さん見たかい。",
"ああ見た、大そう怒っててよ。",
"怒っていたかい?",
"太郎さんを探していたわ。"
],
[
"なんでしょうね、太郎さん。",
"なんだろう、お花ちゃん。",
"妾は焦ったくなってよ。"
],
[
"まあ、美しい手毬だことねえ、太郎さん妾にお呉れでないの。",
"みんな上げるよ。僕の独楽はどこへ行ったろうか。",
"あら、見えんのね。"
],
[
"太郎さん、妾が萩原のお婆さんにお詫びをして上げるから帰りましょうね。",
"じゃお花ちゃんお詫びをしてくれるの。",
"ああ、妾がしてあげるのよ。",
"婆さん、許して呉れればいいが……お花ちゃん晩になって暗くなるまでここにいておくれでないか。僕は暗くなるまで待っていよう。",
"でも、妾、母さんが心配するもの。",
"お花ちゃん、いておくれよ。暗くなったら、じき帰るから。",
"遅く帰ると母さんに叱られますもの。",
"いやか?",
"…………。",
"お花ちゃん、いやなのか……。"
],
[
"お花ちゃん!",
"太郎さん!",
"あれ、独楽が見える。",
"あれ、音楽がこの中で聞えてよ。",
"まだ光るものが見えて?",
"星の影が映ってる。",
"あれあれまた二人の顔が映ってよ。",
"お花ちゃん中へ入って見よう。",
"あれ、太郎さん一しょに入りましょう。"
]
] | 底本:「文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船」ちくま文庫、筑摩書房
2008(平成20)年8月10日第1刷発行
2010(平成22)年5月25日第2刷発行
底本の親本:「小川未明作品集 第1巻」大日本雄辯會講談社
1954(昭和29)年
初出:「趣味」
1906(明治39)年7月号
入力:門田裕志
校正:坂本真一
2015年9月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "053166",
"作品名": "百合の花",
"作品名読み": "ゆりのはな",
"ソート用読み": "ゆりのはな",
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"副題読み": "",
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"初出": "「趣味」1906(明治39)年7月号",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2015-11-19T00:00:00",
"最終更新日": "2016-06-21T00:00:00",
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"名": "未明",
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"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船",
"底本出版社名1": "ちくま文庫、筑摩書房",
"底本初版発行年1": "2008(平成20)年8月10日",
"入力に使用した版1": "2010(平成22)年5月25日第2刷",
"校正に使用した版1": "2010(平成22)年5月25日第2刷",
"底本の親本名1": "小川未明作品集 第1巻",
"底本の親本出版社名1": "大日本雄辯會講談社",
"底本の親本初版発行年1": "1954(昭和29)年",
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} |
[
[
"そう、運命とは、人間の力以上のものとでもいうのかな。",
"あまり、この世の中には、運命ということが、多すぎますね。",
"考えれば、そうもいえるのう。"
],
[
"どうしてですか。正しいことを主張して、それがいけないのは。",
"正しいことも、正しくないと、いいはる人たちがあり、そういうもののほうが、いつの世の中でも勢力を持つからだ。"
],
[
"そうすると、悪い人がはびこるのは、正直でも、勇気のある人が、少ないからなんですね。",
"そのとおり、たとえば、横暴の殿さまがあっても、まわりのものは、にらまれるのをおそれて反対しない。そればかりか、気が弱いところから、いっしょになって、善人をいじめるということになるのだ。昔とかぎらず、それが、いままでの世の中のありさまだった。"
],
[
"いままで、運命といって、あきらめたことも、協同の努力で、征服することができるんですね。",
"そうだ、真理に奉仕する、野口英世のような人が出れば、これまで発見の困難とされた病菌とたたかって、人間を死の恐怖から、解放するであろうし、そういう科学者が幾人も出れば、どれほど、世界を明るくし、人類を幸福にみちびくかしれない。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 14」講談社
1977(昭和52)年12月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第5刷発行
底本の親本:「みどり色の時計」新子供社
1950(昭和25)年4月
初出:「少国民の友」
1947(昭和22)年4月
※表題は底本では、「世《よ》の中《なか》のために」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2018年4月26日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051718",
"作品名": "世の中のために",
"作品名読み": "よのなかのために",
"ソート用読み": "よのなかのために",
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"初出": "「少国民の友」1947(昭和22)年4月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2018-05-11T00:00:00",
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"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 14",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月10日第1刷",
"底本の親本名1": "みどり色の時計",
"底本の親本出版社名1": "新子供社",
"底本の親本初版発行年1": "1950(昭和25)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51718_ruby_64557.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2018-04-26T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"しかし、お母さんは、お達者なのだろう。",
"ああ、病気ってしたことがないよ。それも、二人の子供を自分の手で養育しなければならぬので、気が張っているんだね。"
],
[
"そう長くは、いっていないのだろう。",
"ああ、しかし、こちらにいい口があるまでは、どの途、しかたがないのさ。",
"きっと、そのうちにはあるよ。"
],
[
"出発の日には、送るからね。",
"会社が、忙しいなら、いいよ。",
"なに、どうか都合するさ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 12」講談社
1977(昭和52)年10月10日第1刷発行
1982(昭和57)年9月10日第5刷発行
底本の親本:「夜の進軍喇叭」アルス
1940(昭和15)年4月
初出:「婦人朝日」
1939(昭和14)年1月
※表題は底本では、「世《よ》の中《なか》へ出《で》る子供《こども》たち」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年10月25日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051719",
"作品名": "世の中へ出る子供たち",
"作品名読み": "よのなかへでるこどもたち",
"ソート用読み": "よのなかへてることもたち",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「婦人朝日」1939(昭和14)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2017-11-24T00:00:00",
"最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/card51719.html",
"人物ID": "001475",
"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 12",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年10月10日",
"入力に使用した版1": "1982(昭和57)年9月10日第5刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年10月10日第1刷",
"底本の親本名1": "夜の進軍喇叭",
"底本の親本出版社名1": "アルス",
"底本の親本初版発行年1": "1940(昭和15)年4月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "特定非営利活動法人はるかぜ",
"校正者": "酒井裕二",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51719_ruby_63042.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2017-10-25T00:00:00",
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"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"いくらなら手放すかな。",
"いや、これは、楽しみに、持っていようよ。"
],
[
"君、これは、どこのらんかね。",
"故郷の山にあるらんだよ。そこは、南傾斜の深い谷になっていて、らんの花のたくさんあるところだ。嶮しいから、めったに人がいかないが、春いくと、じつにいい香いがするそうだ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 11」講談社
1977(昭和52)年9月10日
1983(昭和58)年1月19日第5刷
底本の親本:「未明童話 お話の木」竹村書房
1938(昭和13)年4月
初出:「真理」
1936(昭和11)年6月
※表題は底本では、「らんの花《はな》」となっています。
※初出時の表題は「蘭の花」です。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:酒井裕二
2017年5月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "055008",
"作品名": "らんの花",
"作品名読み": "らんのはな",
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"初出": "「真理」1936(昭和11)年6月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"公開日": "2017-06-07T00:00:00",
"最終更新日": "2017-05-29T00:00:00",
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"生年月日": "1882-04-07",
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"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年9月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第5刷",
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[
[
"なぜ、あの子は笑わないだろう。",
"まんざらものをいわないこともないから、おしではないが、いったいどうした子だろう。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 2」講談社
1976(昭和51)年12月10日第1刷
1982(昭和57)年9月10日第7刷
初出:「婦人之友」
1921(大正10)年4月
※表題は底本では、「笑《わら》わない娘《むすめ》」となっています。
入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正:江村秀之
2013年11月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "051029",
"作品名": "笑わない娘",
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"初出": "「婦人之友」1921(大正10)年4月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"姓読み": "おがわ",
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"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
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[
[
"お母さんが、僕のために、自分の大事になさっているものもなくして、買ってくださるのを、僕がありがたく思っているといって、いけないのですか。",
"いえ、正直にいって、すこしも悪いことはないんですけど……。"
],
[
"おはよう。",
"いっしょにいこうよ。"
]
] | 底本:「定本小川未明童話全集 10」講談社
1977(昭和52)年8月10日第1刷発行
1983(昭和58)年1月19日第6刷発行
※表題は底本では、「笑《わら》わなかった少年《しょうねん》」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:仙酔ゑびす
2012年2月19日作成
2012年9月28日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "052121",
"作品名": "笑わなかった少年",
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"ソート用読み": "わらわなかつたしようねん",
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"分類番号": "NDC K913",
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"姓": "小川",
"名": "未明",
"姓読み": "おがわ",
"名読み": "みめい",
"姓読みソート用": "おかわ",
"名読みソート用": "みめい",
"姓ローマ字": "Ogawa",
"名ローマ字": "Mimei",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1882-04-07",
"没年月日": "1961-05-11",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "定本小川未明童話全集 10",
"底本出版社名1": "講談社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年8月10日",
"入力に使用した版1": "1983(昭和58)年1月19日第6刷",
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"XHTML/HTMLファイル修正回数": "3"
} |
[
[
"ちがひますよ。これはね、こんや 町の 公会堂に お話が あるって、くゎうこくして あったんですよ。それが 赤インキで 書いて あったもので、ゆうべの 雨に うたれて、こんなに ながれて しまったんです。",
"さうですか。それで わかった。"
],
[
"何と ふしぎな ねこだね。",
"赤ねこなんて、はじめて 見たよ。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「ひらがな童話集」金の星社
1941(昭和16)年11月
初出:「金の船」キンノツノ社
1922(大正11)年2月
※初出時の表題は「赤い猫の話」です。
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2013年8月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "054166",
"作品名": "赤いねこ",
"作品名読み": "あかいねこ",
"ソート用読み": "あかいねこ",
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"初出": "「金の船」キンノツノ社、1922(大正11)年2月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字旧仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2013-10-22T00:00:00",
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"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
"姓読みソート用": "おきの",
"名読みソート用": "いわさふろう",
"姓ローマ字": "Okino",
"名ローマ字": "Iwasaburo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1876-01-05",
"没年月日": "1956-01-30",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "日本児童文学大系 第一一巻",
"底本出版社名1": "ほるぷ出版",
"底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日",
"入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷",
"校正に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷",
"底本の親本名1": "ひらがな童話集 ",
"底本の親本出版社名1": "金の星社",
"底本の親本初版発行年1": "1941(昭和16)年11月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
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"底本の親本名2": "",
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"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "菅野朋子",
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"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/54166_ruby_51222.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2013-08-12T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/54166_51223.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2013-08-12T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"あの川岸にありました、大きな岩を、私が両手に力をこめて、うんと担ぎ上げ、山路を登つてまゐりましたが、途中で、右と左から、山と山との、さし出た所で、岩が両方の岸に、がつちり、挟まつてしまひましたのでございます。",
"うん、あの山と山との間は、狭いから、岩が引つかかつたかも知れない。それからどうしたのだ。",
"はい。此の民部大輔、非常に困つてゐますと、後から大きな声で、何だつて、こんな所へ、大きな岩なんか、担ぎ込んだのだ。途が塞がつて、誰も通ることが出来ないぢやないか。と、呶鳴る者がありました。",
"その、大輔を叱つた者は、何者であつたか。",
"それは、あの、法螺貝を吹いて、御祈祷をいたします、山伏の一人でございました。",
"山伏は、どんなことをしたか。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「童話読本 六年生」金の星社
1939(昭和14)年2月
初出:「金の星」金の星社
1927(昭和2)年1月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "045177",
"作品名": "岩を小くする",
"作品名読み": "いわをちいさくする",
"ソート用読み": "いわをちいさくする",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「金の星」金の星社、1927(昭和2)年1月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字旧仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2007-04-08T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/card45177.html",
"人物ID": "001180",
"姓": "沖野",
"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
"姓読みソート用": "おきの",
"名読みソート用": "いわさふろう",
"姓ローマ字": "Okino",
"名ローマ字": "Iwasaburo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1876-01-05",
"没年月日": "1956-01-30",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "日本児童文学大系 第一一巻",
"底本出版社名1": "ほるぷ出版",
"底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日",
"入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷",
"校正に使用した版1": "1979(昭和54)年4月1日2刷",
"底本の親本名1": "童話読本 六年生",
"底本の親本出版社名1": "金の星社",
"底本の親本初版発行年1": "1939(昭和14)年2月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
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"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "tatsuki",
"校正者": "田中敬三",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/45177_ruby_26184.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2007-02-21T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/45177_26296.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-21T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"あなたはどなたでございます? 私は万作ですが……",
"私は仙人ぢや。お前に用事があつて来たのぢや。",
"どんな御用でございます。",
"私はこの隣国の殿様になる人を一人見付けたいと思つて今まで尋ねてゐたのぢや。",
"では爺さん、私をその国の殿様にして呉れるのですか。",
"うん、さうぢや。今から私は万作さんを隣の国の殿様にするから、さあそこへきちんとお坐り。",
"はい、畏りました。"
],
[
"うん宜しい。その十二円で蚊帳を一つ買つて来て下さいよ。",
"蚊帳? あの夏になつてつる蚊帳をですか。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「赤い猫」金の星社
1923(大正12)年3月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "045172",
"作品名": "蚊帳の釣手",
"作品名読み": "かやのつりて",
"ソート用読み": "かやのつりて",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字旧仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2007-04-08T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/card45172.html",
"人物ID": "001180",
"姓": "沖野",
"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
"姓読みソート用": "おきの",
"名読みソート用": "いわさふろう",
"姓ローマ字": "Okino",
"名ローマ字": "Iwasaburo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1876-01-05",
"没年月日": "1956-01-30",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "日本児童文学大系 第一一巻",
"底本出版社名1": "ほるぷ出版",
"底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日",
"入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷",
"校正に使用した版1": "1979(昭和54)年4月1日2刷",
"底本の親本名1": "赤い猫",
"底本の親本出版社名1": "金の星社",
"底本の親本初版発行年1": "1923(大正12)年3月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "tatsuki",
"校正者": "田中敬三",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/45172_ruby_26185.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2007-02-21T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/45172_26297.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-21T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"あの画家さんに頼んで、和尚様が、どこかへ持つて行つた掛軸を、描いて貰はうではないか。",
"それはいい。では描いてもらひませう。"
],
[
"妙な人間が、円いものの向ふに立つてゐたつけ。",
"何人居たつけね。",
"六七人だつたらう。",
"いや、五人だらう。"
],
[
"愚助さん、どんな絵を描くのですか。",
"明日の朝まで待つて下さい。今晩見て置きますから。"
],
[
"孔子様の隣りに、老子様を描くのです。老子さまは、おつ母さんのお腹に、七十年居たのださうな。だから産れた時、もう髪が真白で、歯が抜けてゐたのだつて。",
"誰だつて産れた時は、歯が無いんですよ。"
],
[
"今日はね、老子様の傍へ、悉達太子を描くんですよ。悉達太子といふのは、中天竺マカダ国、浄飯王のお子様で、カビラ城にゐなすつたのだが、或時城の外を通る老人を見て、人間はなぜあんなに、年をとつて、病気になつて、そして死ぬのかといふ事を考へたのです。(生れて老人になつて病気になつて死ぬ)どうしても其のわけが解らない、人間が老人にもならず、病人にもならず、死なない方法はないかと考へたが、わからないので、たうとう太子様はお城をぬけ出して、雪山といふ所へ行つて、アララ、カララといふ仙人について、何年も何年も修行した末、やつと、わけが解つたのです。",
"どんなに解つたのですか。"
],
[
"生れなかつたら……生れなかつたらいいんですよ。",
"生れなかつたら。",
"生れなかつたら、年もとらず、病気にもかからない。死にもしない。",
"何だい、そんな事……",
"だつて、それだけの事が、人間にはなかなか、わからないんだよ。それが本当に解つたので、悉達太子様は、今にお釈迦様と云つて尊敬されるのです。",
"ええ、それがお釈迦様ですか。",
"うん、さうだよ。其のお釈迦様が、かうして小指をはねてゐらつしやるんだよ。"
],
[
"それで終りですか。",
"さうです。それで此の掛軸は元の通りに出来るのです。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「童話読本 六年生」金の星社
1939(昭和14)年2月
初出:「金の星」金の星社
1925(大正14)年4月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "045175",
"作品名": "愚助大和尚",
"作品名読み": "ぐすけだいおしょう",
"ソート用読み": "くすけたいおしよう",
"副題": "",
"副題読み": "",
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"初出": "「金の星」金の星社、1925(大正14)年4月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字旧仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2007-04-08T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-21T00:00:00",
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"姓": "沖野",
"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
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"姓ローマ字": "Okino",
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"生年月日": "1876-01-05",
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"底本出版社名1": "ほるぷ出版",
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[
[
"お父さんは一人でも宜いや、大人だもの。俺ア子供だから、里へ行つて皆なと鬼ごつこをして遊びたい。",
"そんな気儘を言ふものぢや無い。さ、私と一緒に木を伐りに行かう。"
],
[
"おい、こりや、それは親不幸といふものだぞ!",
"不孝でもコーコーでも宜いや、里へ行つて遊ぶんだ。"
],
[
"オツパイ嫌よ。もつと〳〵旨しいもの頂戴な。",
"オツパイが一番旨しいのよ、ね、駄々を捏ねないで、さ、お食り……",
"嫌だつて云ふのに、オツパイなんか飲ませたら、おツ母さんの乳頸を噛み切つてやるぞ。"
],
[
"お乳は嫌、もつと〳〵旨しいもの頂戴。",
"そんな無理を、お言ひで無い。それは親不幸といふものです。",
"不幸でもコーコーでも宜いワ。もつと旨しいもの食べさしてお呉れ、え、おツ母さん。"
],
[
"食べた事無いワ、蟹なんて……そんな物旨しい? え、本当に旨しい?",
"えゝ〳〵、夫れは本当に旨しいのよ。これから谷川へ行つて、うんと捕つて来てあげるから、此所で温順しく待つておいで。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「赤い猫」金の星社
1923(大正12)年3月
初出:「金の船」キンノツク社
1919(大正8)年12月
※「不幸」と「不孝」の混在は、底本通りです。
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
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| {
"作品ID": "045170",
"作品名": "熊と猪",
"作品名読み": "くまといのしし",
"ソート用読み": "くまといのしし",
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"初出": "「金の船」キンノツノ社、1919(大正8)年12月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字旧仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
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[
[
"はい、わたしは、かつけで、困つてゐます。",
"さうですか、それは、お気のどくですなあ。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「童話読本 四年生」金の星社
1938(昭和13)年12月
初出:「金の星」金の星社
1928(昭和3)年1月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
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"作品ID": "045178",
"作品名": "源八栗",
"作品名読み": "げんぱちぐり",
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"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
"姓読みソート用": "おきの",
"名読みソート用": "いわさふろう",
"姓ローマ字": "Okino",
"名ローマ字": "Iwasaburo",
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[
[
"石之助、お前は殿様のお名前を、知つてゐるだらう。",
"知つてゐます。山野紀伊の守です。",
"さうだ。元は三万八千石の殿様で、今は子爵様だ。東京にゐらつしやる。",
"馬に乗るのが上手でせう。",
"その殿様は、もう、お亡くなりになつて、今は若殿様が子爵さまになつてゐられる。山野紀伊の守様が、東京へお引越になられてから、もう五十七年になる。その間に一度もこの町へお帰りにならないので、この町の人たちは、だんだんと、殿様の事を忘れてしまひさうだ。昨年若殿様が御病気なされた時、ひとりも、お見舞ひの手紙をさし上げたものがなかつた。それは町の人もわるいが、五十七年間、一度もこの町へおいでにならなかつた殿様も悪い。そこで、殿様とこの町の人たちが、もつと仲よくなるために、今年からこの町の学校を卒業する優等生に、殿様から御褒美を下さることになつたのだ。中学校の優等生には鉄側時計、女学校の優等生には銀側時計、小学校の優等生には硯箱を下さるんだ。御定紋のついた硯箱だよ。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「特選童話 三年生」金の星社
1938(昭和13)年7月
初出:「金の星」金の星社
1926(大正15)年1月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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| {
"作品ID": "045176",
"作品名": "硯箱と時計",
"作品名読み": "すずりばこととけい",
"ソート用読み": "すすりはこととけい",
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"副題読み": "",
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"初出": "「金の星」金の星社、1926(大正15)年1月",
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"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
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"名読みソート用": "いわさふろう",
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"名ローマ字": "Iwasaburo",
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[
[
"たたいても、こはれない瓦。",
"投げても、こはれない瓦。"
],
[
"たたいても、こはれない方、しつかりしろ。",
"投げても、こはれない方、しつかりしろ。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「童話読本 五年生」金の星社
1939(昭和14)年2月
初出:「金の星」金の星社
1925(大正14)年2月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
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| {
"作品ID": "045173",
"作品名": "にらめつくらの鬼瓦",
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"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/card45173.html",
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"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
"姓読みソート用": "おきの",
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"姓ローマ字": "Okino",
"名ローマ字": "Iwasaburo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1876-01-05",
"没年月日": "1956-01-30",
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"底本名1": "日本児童文学大系 第一一巻",
"底本出版社名1": "ほるぷ出版",
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"校正に使用した版1": "1979(昭和54)年4月1日2刷",
"底本の親本名1": "童話読本 五年生",
"底本の親本出版社名1": "金の星社",
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"入力者": "tatsuki",
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[
[
"いゝえ、この通り生きてゐます。私は山火事が起つたので、直ぐ隣りの国へ杉苗を買ひに参りました。御覧なさい。この通り杉苗を三千本買つて参りました。",
"まア、小い杉苗ですね。これを何うするつもりですか。",
"これをあの狸山へ植ゑて、元の通りの森にするのです。",
"こんな小い苗を植ゑて、元の森にする? 何年後に大きな森になると思ふ?",
"さうさなア、三百年も経てば……。"
]
] | 底本:「日本児童文学大系 第一一巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「赤い猫」金の星社
1923(大正12)年3月
初出:「金の船」キンノツク社
1919(大正8)年11月
入力:tatsuki
校正:田中敬三
2007年2月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "045169",
"作品名": "馬鹿七",
"作品名読み": "ばかしち",
"ソート用読み": "はかしち",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「金の船」キンノツノ社、1919(大正8)年11月",
"分類番号": "NDC K913",
"文字遣い種別": "新字旧仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2007-04-11T00:00:00",
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"姓": "沖野",
"名": "岩三郎",
"姓読み": "おきの",
"名読み": "いわさぶろう",
"姓読みソート用": "おきの",
"名読みソート用": "いわさふろう",
"姓ローマ字": "Okino",
"名ローマ字": "Iwasaburo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1876-01-05",
"没年月日": "1956-01-30",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "日本児童文学大系 第一一巻",
"底本出版社名1": "ほるぷ出版",
"底本初版発行年1": "1978(昭和53)年11月30日",
"入力に使用した版1": "1978(昭和53)年11月30日初刷",
"校正に使用した版1": "1979(昭和54)年4月1日2刷",
"底本の親本名1": "赤い猫",
"底本の親本出版社名1": "金の星社",
"底本の親本初版発行年1": "1923(大正12)年3月",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "tatsuki",
"校正者": "田中敬三",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001180/files/45169_ruby_26191.zip",
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[
[
"どうぞ――",
"ははあ、人道主義者の家だな"
],
[
"いち〳〵ことわつて入る奴があるか、ずつと通れ",
"ははあ、こゝは刑務所だな"
],
[
"同志といふ呼び名をいつかふんだんに使ひ合つたね",
"あれは一体、何時のことだつたけね"
]
] | 底本:未収録詩編・俳優女流諷刺詩篇
「新版・小熊秀雄全集第四巻」創樹社
1991(平成3)年4月10日新版第1刷発行
雑纂・補遺詩編
「新版・小熊秀雄全集第五巻」創樹社
1991(平成3)年11月30日新版第1刷発行
※「未収録詩編・俳優女流諷刺詩篇」は、第五巻の「新版小熊秀雄全集完結にあたって――訂正、ご案内、お礼」をもとに誤植等の訂正を加えた。
※伏せ字は、底本のままにした。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:八巻美恵
校正:浜野 智
2006年2月23日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "001315",
"作品名": "小熊秀雄全集-13",
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[
[
"踊つたらいゝさ",
"あたい踊るわ、おぢちやん何か歌つてね"
],
[
"大西君、それだけはやめてくれ給へ!",
"教育上、よくないかね",
"さうはいはない、たゞ困るのだ"
]
] | 底本:「新版・小熊秀雄全集第1巻」創樹社
1990(平成2)年11月15日第1刷
入力:八巻美恵
校正:浜野智
1999年6月18日公開
1999年8月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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"作品ID": "000662",
"作品名": "小熊秀雄全集-07",
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[
[
"まつたく涼しくなりましたわね――",
"お涼しくて結構でございますわ――",
"気候がおよろしくなりまして",
"ほんとうに、しのぎ良くなりまして――"
],
[
"いまの若い連中は、おじぎをすることを忘れてしまつて、まことに嘆かはしい時代になつたものだ――",
"ことに怪しからんのは、神社やお寺の前に行つても帽子をぬがんことぢや――"
]
] | 底本:「新版・小熊秀雄全集第一巻」創樹社
1990(平成2)年11月15日新版第1刷発行
入力:八巻美恵
校正:浜野 智
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
2006年3月1日作成
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| {
"作品ID": "002417",
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} |
[
[
"踊つたらいゝさ",
"あたい踊るわ、おぢちやん何か歌つてね"
],
[
"大西君、それだけはやめてくれ給へ!",
"教育上、よくないかね",
"さうはいはない、たゞ困るのだ"
]
] | 底本:「新版・小熊秀雄全集第一巻」創樹社
1990(平成2)年11月15日新版・第1刷発行
底本の親本:「槐」
1939(昭和14)年5月
初出:「槐」
1939(昭和14)年5月
入力:八巻美恵
校正:浜野智
1999年6月18日公開
2014年8月10日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "056920",
"作品名": "託児所をつくれ",
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"没年月日": "1940-11-20",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "新版・小熊秀雄全集第一巻",
"底本出版社名1": "創樹社",
"底本初版発行年1": "1990(平成2)年11月15日",
"入力に使用した版1": "1990(平成2)年12月15日新版・第1刷",
"校正に使用した版1": "1990(平成2)年12月15日新版・第1刷",
"底本の親本名1": "槐",
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"底本の親本初版発行年1": "1939(昭和14)年5月",
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"入力者": "八巻美恵",
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"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"お前は何も知るまいが、俺は毎日ここへ来て立っているぜ。真の事だ、毎日来て立っている!",
"何故さ。"
],
[
"だって、私は源様という歴とした亭主があるんだもの、よしんばどうしようたってしょうがないじゃないか。",
"ないかあるかそんな事は俺の知った事じゃねえ。俺は唯お前を思って思って、俺の思がお前に届くまで思凝めようと思って、思凝に思凝めているのだけれど、それがお前に届かねえとこを見りゃ、まだ俺の思いようが足りねえのかも知れねえ。お前が源様を思うその倍も、俺がお前を思ったら、なんぼ亭主持だって、ちっとは俺の切ない思も酌んでくれそうなものだけれど、それがないとこを見ると、俺のお前を思うよりか、お前が源様を思う方が深いと見える。"
],
[
"だが、俺はもうこの上お前を思いようはない。真によ、俺はお前の事を思凝に思凝めて、気が狂いそうだ! 命も奪られそうだ! いっそ一思に死んでのけたら、この苦しいのが失なるだろうと思って、毎日ここへ来ては飛込もうかと思うけれど、さて死のうとすると、どうもお前を遺いて死ぬのが残念で、お前と一緒でなくては死ぬにも死なれねえ。歴とした亭主のあるお前に、俺もまあ何という因果な事だか、自分ながら訳が解らねえ!",
"もうもう、そんなことは云わないで……。"
],
[
"それでなくても、私ゃ、真に私ゃ……。",
"え!"
],
[
"お止しよ! 亭主のあるものをそんな事して、もし私が何して御覧、それこそ私もお前も怖しい……二人が二人、生ちゃいられないような罪人になるじゃないか。",
"その時は、死んでしまうまでの事さ!"
]
] | 底本:「天変動く 大震災と作家たち」インパクト出版会
2011(平成23)年9月11日第1刷発行
底本の親本:「文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説」博文館
1896(明治29)年7月25日
初出:「文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説」博文館
1896(明治29)年7月25日
入力:持田和踏
校正:noriko saito
2023年1月3日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "061285",
"作品名": "片男波",
"作品名読み": "かたおなみ",
"ソート用読み": "かたおなみ",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説」博文館、1896(明治29)年7月25日",
"分類番号": "",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2023-02-03T00:00:00",
"最終更新日": "2023-01-28T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000241/card61285.html",
"人物ID": "000241",
"姓": "小栗",
"名": "風葉",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "ふうよう",
"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "ふうよう",
"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Fuyo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1875-02-03",
"没年月日": "1926-01-15",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "天変動く 大震災と作家たち",
"底本出版社名1": "インパクト出版会",
"底本初版発行年1": "2011(平成23)年9月11日",
"入力に使用した版1": "2011(平成23)年9月11日第1刷",
"校正に使用した版1": "2011(平成23)年9月11日第1刷",
"底本の親本名1": "文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説",
"底本の親本出版社名1": "博文館",
"底本の親本初版発行年1": "1896(明治29)年7月25日",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
"入力に使用した版2": "",
"校正に使用した版2": "",
"底本の親本名2": "",
"底本の親本出版社名2": "",
"底本の親本初版発行年2": "",
"入力者": "持田和踏",
"校正者": "noriko saito",
"テキストファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000241/files/61285_ruby_76843.zip",
"テキストファイル最終更新日": "2023-01-03T00:00:00",
"テキストファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000241/files/61285_76844.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2023-01-03T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
} |
[
[
"ちょっと伺いますが、ここはいったい何という所でしょう、やっぱり何町の内なんですか。",
"なあにお前さん、ここはもう何々村って、村でさ。"
],
[
"その……宿代だが、明朝じゃいかんでしょうか。",
"明朝――今夜持合せがないのかね。"
],
[
"明日だって、どうせ外へ出てでかすんだろうがね、それじゃ私の方で困らあね。今夜何か品物でも預かっとこう。",
"品物といって――何しろ着のみ着のままで……",
"さっきお前さんが持って上った日和下駄、あれは桐だね。鼻緒は皮か何だね。",
"皮でしょう。",
"お見せ。"
],
[
"君はそれじゃ、今日出たってどこへ行く当もねんだろう。",
"え、まったくはそうなんです。このへんに知った者なんか一人もないんですから、どこでどうする当もちっともないんです。"
],
[
"銀行の事って――どういうことです。",
"支払停止とかすると、金を預けた者はどうなるんだね。",
"さあ……よく私も知らないが、整理がつくまでは、預金を払還してくれないわけなんでしょう。",
"支払停止といや、その銀行はまあ潰れたも同じことなんかね。",
"そんなことはない。支払停止というのは幾日間と日を切って、その間に整理がつきゃ、元のとおりまた営業するんだから――知った銀行でも支払停止をしたんですか。",
"え、私どもの方の銀行が支払停止をしたって、さっきね、内の人が薬屋へ行ったら、店の者が新聞を見て談してたのを聞いてきたんでさ。私どもでも少しばかし預けてあるもんだから、内の人も心配して出かけたんだが……とてももうだめかしら。",
"いったいどこです、所は?",
"何々町といって、ここから二十里もあるんだもの。"
],
[
"へ、人の嚊を張ったり樗蒲一張ったり、そうは張りきれねえやな。",
"何だと?",
"なあに、お前は深切者だってことよ。"
],
[
"お上さん、お前の深切ぶりはもう舎してくんな。俺あ痛くもねえ腹探られて、気色が悪くてならねえ。",
"でも、いろいろお世話になるから、私ゃ礼心のつもりだもの。",
"それにゃ及ばねえってことさ。あっちへ行っててくんねえ。"
],
[
"おい、皆目が覚めてるなら聞いてくんな。俺あ痛くねえ腹探ぐられてるのも忌々しい、こうなりゃくそやけだ、皆の思うとおりになってみせるから、印に一杯買おうよ。今夜の塩梅じゃどうせ明日は降りだ、夜が明けたら皆で飲んでくんな、いいか。",
"いいともいいとも、早くそう分ってでりゃ文句はねえんだ。",
"明日はそれじゃ、祝って飲むか。",
"俺あ飲むより肖かりてえ。",
"何でもいい、飲めりゃあけっこうよ。"
],
[
"うぬ、うぬだな!",
"俺ならどうした。女だって活物だ、なぜその日に困らねえようにしておいてやらねえ。食わせりゃこっちが飼主よ、指でも指しやがると承知しねえぞ!"
],
[
"君は幾歳だったっけね。",
"十九です。",
"じゃ来年は二十だ。私なんかそのころはもう旅から旅を渡り歩いていた。君はそれで、家も双親も国にはあるんだっけね。じゃ、早く国へお帰んなせえ。こんなとこにいつまでも転々していたってしようがねえ、旅用だけの事は何とか工面してあげるから。"
],
[
"本当ですか。",
"本当とも、じつはね、こんな所にこんなに永く逗留するつもりじゃなかったんだが、君とも心安くなるし、ついこんなに永逗留をしてしまったわけさ、それでね、君に旅用だけでも遺してってあげようと思ったんだが、広くもねえ町を、あまりいつまでも荒したもんだから、人がもう寄らなくなって、昨夜なんか思った半分も商売がなかったんだ。そんなわけだからね、この五十銭で二三日のところを君がここで辛抱してりゃ、私が向地から旅用の足しぐらいは間違いなく送ってあげらあ、ね。そのつもりで、私がいなくなったってすぐよそへ行かねえで、――いいかね。"
],
[
"慰物にしたんかしねえんか、そんなことあ考えてもみねえから自分でも分らねえ、どうともお前の方で好なように取りねえ、昨日は昨日、今日は今日よ。お前が何と言ったところで、俺てえものがここに根を据えていられるもんでもねえし、思いたったんだから、今日は何でも海を越さねえじゃならねえ。",
"私ゃどこまでもついて行く。",
"笑談言っちゃいけねえ。俺あ旅から旅と果なしに渡り歩く体だ、お前なんかに夤わられてたまるものか。いいじゃねえか、お前も女と生れた仕合せにゃ、誰でもまた食わしてくれらあ。それも気がなきゃ、元の万年屋がとこへ還るのさ。",
"ばかにおしでない! 今さらどの面下げて亭主のとこへ行かれるかよ。",
"まあそう言わねえでさ。俺あ何もお前と夫婦約束をしたわけでもねえし、ただ何だ、お前は食わせる人がいねえで困ってるし、俺は独者だし、の、それだけの事で、ほかにゃ綾も何にもありゃしねえんだから、お前も旅の者らしくさっぱりしてくんねえな。俺あどこまでも好自由な独者で渡りてえんだから、それを抗わることだけは、どうか勘弁してくんねえ、お願いだ。お前にしてからが、俺のような一生世間師で果てようてえ者に緊ついてくより、元の亭主の――ああいう辛抱人へ還った方が末始終のためだぜ。お前さえ還る気になりゃ、あの人あいつ何時でもひき取ってくれらあ、それだけは俺が受合う。悪いことは言わねえから、そうしねえ、よ。"
]
] | 底本:「日本文学全集88 名作集(一)[#「(一)」は縦中横]」集英社
1970(昭和45)年1月25日初版発行
入力:住吉
校正:小林繁雄
2011年5月21日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "053034",
"作品名": "世間師",
"作品名読み": "せけんし",
"ソート用読み": "せけんし",
"副題": "",
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"原題": "",
"初出": "",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2011-07-01T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-16T00:00:00",
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"人物ID": "000241",
"姓": "小栗",
"名": "風葉",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "ふうよう",
"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "ふうよう",
"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Fuyo",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1875-02-03",
"没年月日": "1926-01-15",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "日本文学全集88 名作集(一)",
"底本出版社名1": "集英社",
"底本初版発行年1": "1970(昭和45)年1月25日",
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[
[
"まあ私は……それよりもお酌しましょう",
"おっと、零れる零れる。何しろこうしてお光さんのお酌で飲むのも三年振りだからな。あれはいつだったっけ、何でも俺が船へ乗り込む二三日前だった、お前のところへ暇乞いに行ったら、お前の父が恐ろしく景気つけてくれて、そら、白痘痕のある何とかいう清元の師匠が来るやら、夜一夜大騒ぎをやらかしたあげく、父がしまいにステテコを踊り出した。ね、酔ってるものだからヒョロヒョロして、あの大きな体を三味線の上へ尻餅突いて、三味線の棹は折れる、清元の師匠はいい年して泣き出す、あの時の様子ったらなかったぜ、俺は今だに目に残ってる……だが、あんな元気のよかった父が死んだとは、何だか夢のようで本当にゃならねえ、一体何病気で死んだんだい?",
"病気も何もありゃしないのさ。いつもの通り晩に一口飲んで、いい機嫌になって鼻唄か何かで湯へ出かけると、じき湯屋の上さんが飛んで来て、お前さんとこの阿父さんがこれこれだと言うから、びっくらして行って見ると、阿父さんは湯槽に捉まったままもう冷たくなってたのさ。やっぱり卒中で……お酒を飲んで湯へ入るのはごくいけないんだってね",
"そうかなあ、酒呑みは気をつけることだ。そのくせ俺は湯が好きでね",
"そうね。金さんは元から熱湯好きだったね。だけど、酔ってる時だけは気をおつけよ、人事じゃないんだよ",
"大きに! まだどうも死ぬにゃ早いからな",
"当り前さ、今から死んでたまるものかね。そう言えば、お前さん今年幾歳になったんだっけね?",
"九さ、たまらねえじゃねえか、来年はもう三十面下げるんだ。お光さんは今年三だね?"
],
[
"私ゃまた、鳥居のところでお光さんお光さんて呼ぶから、誰かと思ってヒョイと振り返って見ると、金さんだもの、本当にびっくらしたわ。一体まあ東京を経ってから今日までどうしておいでだったの?",
"さあ、いろいろ談せば長いけれど……あれからすぐ船へ乗り込んで横浜を出て、翌年の春から夏へ、主に朝鮮の周囲で膃肭獣を逐っていたのさ。ところが、あの年は馬鹿にまた猟がなくて、これじゃとてもしようがないからというので、船長始め皆が相談の上、一番度胸を据えて露西亜の方へ密猟と出かけたんだ。すると、運の悪い時は悪いもので、コマンドルスキーというとこでバッタリ出合したのが向うの軍艦! こっちはただの帆前船で、逃げも手向いも出来たものじゃねえ、いきなり船は抑えられてしまうし、乗ってる者は残らず珠数繋ぎにされて、向うの政府の猟船が出張って来るまで、そこの土人へ一同お預けさ",
"まあ! さぞねえ。それじゃ便りのなかったのも無理はないね",
"便りがしたくたって、便りのしようがねえんだもの"
],
[
"それから、間もなく露西亜の猟船というのがやって来たんだ。ところが、向うの船は積荷が一杯で、今度は載ッけて行くわけに行かねえからこの次まで待てと言うんで、俺たちはそのまま島へ残されたんだ。今になると残されてよかったので、あの時連れて行かれようものなら、浦塩かどこかの牢で今ごろはこッぴどい目に遭ってる奴さ。すると、そのうちに今度の戦争が押ッ始まったものだから、もう露西亜も糞もあったものじゃねえ、日本の猟船はドシドシコマンドルスキー辺へもやって来るという始末で、島から救い出されると、俺はすぐその船で今日まで稼いで来たんだが……考えて見りゃ運がよかったんだ。辞も何にも分らねえ髭ムクチャの土人の中で、食物もろくろく与われなかった時にゃ、こうして日本へ帰って無事にお光さんに逢おうとは、全く夢にも思わなかったよ",
"そうだろうともねえ、察しるよ! 私も――縁起でもないけど――何しろお前さんの便りはなし、それにあちこち聞き合わして見ると、てんで船の行方からして分らないというんだもの。ああ気の毒に! 金さんはそれじゃ船ぐるみ吹き流されるか、それとも沖中で沈んでしまって、今ごろは魚の餌食になっておいでだろうとそう思ってね、私ゃ弔供養をしないばかりでいたんだよ。本当にまあ、それでもよく無事で帰っておいでだったね"
],
[
"何だい卑怯なことを、お前も父の子じゃねえか",
"だって、女の飲んだくれはあんまりドッとしないからね",
"なあに、人はドッとしなくっても、俺はちょいとこう、目の縁を赤くして端唄でも転がすようなのが好きだ",
"おや、御馳走様! どこかのお惚気なんだね",
"そうおい、逸らかしちゃいけねえ。俺は真剣事でお光さんに言ってるんだぜ",
"私に言ってるのならお生憎様。そりゃお酒を飲んだら赤くはなろうけど、端唄を転がすなんて、そんな意気な真似はお光さんの格にないんだから",
"あんまりそうでもなかろうぜ。忘れもしねえが、何でもあれは清元の師匠の花見の時だっけ、飛鳥山の茶店で多勢芸者や落語家を連れた一巻と落ち合って、向うがからかい半分に無理強いした酒に、お前は恐ろしく酔ってしまって、それでも負けん気で『江戸桜』か何か唄って皆をアッと言わせた、ね、覚えてるだろう"
],
[
"ははは、何だか馬鹿に年寄り染みたことを言うじゃねえか。お光さんなんざまだ女の盛りなんだもの、本当の面白いことはこれからさ",
"いいえ、もうこんな年になっちゃだめだよ。そりゃ男はね、三十が四十でも気の持ちよう一つで、いつまでも若くていられるけど、女は全く意気地がありませんよ。第一、傍がそういつまでも若い気じゃ置かせないからね。だから意気地がないというより、女はつまり男に比べて割が悪いのさね"
],
[
"深川は分ってるが、町は?",
"町は清住町、永代のじき傍さ",
"そうか、永代の傍で清住町というんだね、遊びに行くよ。番地は何番地だい?",
"清住町の二十四番地。吉田って聞きゃじき分るわ",
"吉田? 何だい、その吉田てえのは?"
],
[
"あら、本当だよ。去年の秋嫁いて……金さんも知っておいでだろう、以前やっぱり佃にいた魚屋の吉新、吉田新造って……",
"吉田新造! 知ってるとも。じゃお光さん、本当かい?"
],
[
"ええ、そりゃもうね",
"せめて何か、口約束でもした中と言うならだが、元々そんなことのあったわけじゃなし、それにお前の話を聞いて見りゃ一々もっともで、どうもこれ、怨みたくも怨みようがねえ……けれど、俺は理屈はなしに怨めしいんで……",
"…………",
"何もお光さんで見りゃそんな気があって言ったんじゃあるめえが、俺がいよいよ横浜へ立つという朝、出がけにお前の家へ寄ったら、お前が繰り返し待ってるからと言ってくれた、それを俺はどんなに胸に刻んで出かけたろう! けれど、考えて見りゃ誰だってそのくらいのことはお世辞に言うことで……"
],
[
"どうもお前さんが、そう捌けて言っておくれだと、私はなおと済まないようで……",
"何がお光さんに済まねえことがあるものか、済まねえのは俺よ。だが、そんなことはまあどうでもいいとして、この後もやっぱりこれまで通り付き合っちゃくれるだろうね?",
"なぜ? 当り前じゃないかね?"
],
[
"ひどく改まったね。何だい、相談てえのは?",
"ほかではないがね、お前さんに一人お上さんを取り持とうと思うんだが……",
"女房を? そうさね……何だか異りきに聞えるじゃねえか、早く一人押ッ付けなきゃ寝覚めが悪いとでも言うのかい?",
"おや、とんだ廻り気さ。私はね、お前さんが親類付合いとお言いだったから、それからふと考えたんだが……お前さんだってどうせ貰わなきゃならないんだから、一人よさそうなのを世話して上げたら私たちが仲人というので、この後も何ぞにつけ相談対手にもなれようと思って、それで私はそう言って見たんだが……どうだね、私たちの仲人じゃ気に入らないかね?"
],
[
"え?",
"せめてお光さんの影法師ぐらいのがあるだろうか?",
"何だね、この人は! 私ゃ真面目で談してるんだよ",
"俺も真面目さ",
"まあ笑談は措いて、きっとこれから金さんの気に入ろうというのを世話するから、私に一つお任せなね",
"そりゃ任せようとも、お前に似てさえいりゃ俺の気に入るんだから",
"およしよ、からかうのは。私のようなこんな気の利かないお多福でなしに、縹致なら気立てなら、どこへ出しても恥かしくないというのを捜して上げるから、ね、今から楽しみにして待っておいでな",
"まあその気で待っていようよ。おいお光さん、談してばかりいて一向やらねえじゃねえか。どうだい酒が迷惑なら飯をそう言おう",
"いえ、もうお飯も何もたくさん。さっきから遠慮なしに戴いて、お腹が一杯だから",
"だって、一膳ぐらいいいだろう? 俺も付き合う",
"お前さんはまだお酒じゃないか、私ゃ本当にたくさんなの。それにあんまり遅くなっても……",
"なるほど、違えねえ、新さんが案じてるだろう",
"癪をお言いでないよ! だが、全くのことがね、この節内のは体が悪くて寝てるものだからね",
"そうか、そいつはいけねえな"
],
[
"そうだね、何でも為さん(若衆の名)が得意廻りに出るとじきだったよ",
"それにしちゃ馬鹿に遅いじゃねいか。何だかこの節お上さんの様子が変だぜ、店の方も打遣らかしにして、いやにソワソワ出歩いてばかりいるが……",
"なあにね、今日は不漁で店が閑だから、こんな時でなけりゃゆっくり用足しにも出られないって",
"へ! 何の用足しだか知れたものじゃねえ、こう三公、いいことを手前に訓えてやらあ、今度お上さんが出かけるだったらな、どうもお楽しみでございますねって、そう言って見や、鼻薬の十銭や二十銭黙ってくれるから",
"おいらはそんなことを言わなくたって、お上さんにゃしょっちゅう小使いを貰ってらあ"
],
[
"何だね? 為さん",
"そら、こないだお上さんのとこへ訪ねて来た男があるだろう……",
"為さんはまたお上さんのことばっかり言ってるね",
"ふざけるない! こいつ悪く気を廻しやがって……なあ、こないだ金之助てえ男が訪ねて来たろう",
"うむ、海に棲んでる馬だって、あの大きな牙を親方のとこへ土産に持って来たあの人だろう",
"あいつさ、あいつはあれ限りもう来ねえのか?",
"来ねえようだよ",
"偽つけ! 来ねえことがあるものか",
"じゃ、為さん見たのか?",
"俺は手前、毎日得意廻りに出ていねえんだもの、見やしねえけれど大抵当りはつかあ",
"そうかね",
"そうとも。きっと何だろう、店先へ買物にでも来たような風をして、親方の気のつかねえように、何かボソボソお上さんと内密話をしちゃ、帰って行くんだろう。なあ、どうだ三公、当ったろう?"
],
[
"本当か?",
"ああ、本当に!"
],
[
"三公三公って一々呼ばなくても、三公はここにいるよ",
"お上さんのとこへ、この節郵便が来やしねえか?",
"郵便はしょっちゅう来るよ",
"なあに、しょっちゅう来るのでなしに、お上さんが親方へ見せずに独りで読むのが?",
"どうだか、俺はそんなことは気をつけてねえから……や! お上さん"
],
[
"精が出るね",
"へへ、ちっともお帰んなすったのを知らねえで……外はお寒うがしょう?"
],
[
"三公、手前お上さんの帰ったのを知って、黙ってたな?",
"偽だよ! 俺はこっちを向いて話してたもんだから、あの時まで知らなかったんだよ",
"俺の喋ってたことを聞いたかしら?",
"聞いたかも知れんよ"
],
[
"別にどこも……相変らずズキズキ疼くだけよ",
"どうかその、疼くだけでも早く医者の力で直らないものかねえ! あまり痛むなら、菎蒻でも茹でて上げようか?",
"なに、懐炉を当ててるから……今日はそれに、一度も通じがねえから、さっき下剤を飲んで見たがまだ利かねえ、そのせいか胸がムカムカしてな",
"いけないね、じゃもう一度下剤をかけて見たらどうだね!"
],
[
"まあ九分までは出来たようなものさ、何しろ阿母さんが大弾みでね",
"お母の大弾みはそのはずだが、当人のお仙ちゃんはどうなんだい?",
"どうと言って、別にこうと決った考えがあるのでもないから、つまり阿母さん次第さ。もっともあの娘の始めの口振りじゃ、何でも勤人のところへ行きたい様子で、どうも船乗りではと、進まないらしいようだったがね、私がだんだん詳しい話をして、並みの船乗りではない、これこれでこういうことをする人だと割って聞かしたものだから、しまいにはいろいろ自分の方から問いを出して考えていたっけ。あの通り縹致はいいし、それに読み書きが好きで、しょっちゅう新聞や小説本ばかり覗いてるような風だから、幾らか気位が高くなってるんでしょう",
"だってお前、気位が高いから船乗りが厭だてえのは間違ってる。そりゃ三文渡しの船頭も船乗りなりゃ川蒸気の石炭焚きも船乗りだが、そのかわりまた汽船の船長だって軍艦の士官だってやっぱり船乗りじゃねえか。金さんの話で見りゃなかなか大したものだ、いわば世界中の海を跨にかけた男らしい為事で、端月給を取って上役にピョコピョコ頭を下げてるような勤人よりか、どのくらい亭主に持って肩身が広いか知れやしねえ",
"本当にね、私もそう思うのさ。第一気楽じゃないか、亭主は一年の半分上から留守で、高々三月か四月しか陸にいないんだから、後は寝て暮らそうとどうしょうと気儘なもので……それに、貰う方でなるべく年寄りのある方がいいという注文なんだから、こんないい口がほかにあるものかね。お仙ちゃんが片づけば、どうしたってあの阿母さんは引き取るか貢ぐかしなけりゃならないのだが、まあ大抵の男は、そんな厄介附きは厭がるからね"
],
[
"あいよ。何だね、騒々しい!",
"お上さん!",
"あいよったら!"
],
[
"お上さん!",
"何だよ! さっきから返事をしてるじゃないか"
],
[
"あれ、なぜ黙って行くのさ。呼んだのは何の用だい?",
"へい、お客様で……こないだ馬の骨を持って来たあの人が……"
],
[
"いいえ、きっとあの金さんのことなんですよ",
"ええ、その金さんのことなんで",
"金さんだなんて、お前なぞがそんな生意気な口を利くものじゃない!",
"へい"
],
[
"どうも相変らずでね",
"やっぱり方々が疼くんだね?"
],
[
"まあ、何だか知らないが、来るたび頂戴して済まないねえ。じゃ、取り散らかしてあるが二階へ通っておくれか",
"そうしよう"
],
[
"お前さん、こんな物を頂戴しましたよ",
"そうか。いや金さん、こんなことをしておくんなすっちゃ困るね。この前はこの前であんな金目の物を貰うしまたどうもこんな結構なものを……",
"なに、そんなに言いなさるほどの物じゃねえんで……ほんのお見舞いの印でさ"
],
[
"いえ、まだ詳しいことは……",
"じゃ、詳しく話したらどうだい?"
],
[
"そうですね、私にゃ少し過ぎてるかも知れねえて",
"そんなことはないけど、写真で見るよりかもう少し品があって、口数の少ないオットリした、それはいい娘ですよ",
"そんないい娘が、私のような乱暴者を亭主に持って、辛抱が出来るかしら"
],
[
"だって、先方が承知でぜひ行きたいと言うんだもの",
"ははは、あんまりそうでもあるめえて、ねえ新さん"
],
[
"だが金さん、その写真は気に入ったか入らないか……まあさ、それだけお聞かせなね",
"どうもこう詰開きにされちゃ驚くね。そりゃ縹致はこれなら申し分はねえが……",
"縹致は申し分ないが、ほかに何か申し分が……",
"まあま、お光さん、とにかく一つ考えさせてもらわなけりゃ……何しろまだ家もねえような始末だから、女房を貰うにしても、さしあたり寝さすところから拵えてかからねえじゃならねえんだからね"
],
[
"まあ! じゃその尿毒性とやらになりますと、もうむずかしいんでございますか?",
"だが、私の見立て違いかも知れんから、も一人誰かにお見せなさい",
"はい、それは見せますにしましても、先生のお見立てではもう……",
"そうです。もう疑いなく尿毒性と診断したんです! しかしほかの医者は、どうまた違った意見があるかも分りません"
],
[
"尿毒性であると、よほどこれは危険で……お上さん、私は気安めを言うのはかえって不深切と思うから、本当のことを言って上げるが、もし尿毒性に違いないとすると、まずむずかしいものと思わねばなりませんぞ!",
"…………",
"とにかく、ほかの医者にも見ておもらいなさい、私ももう二三日経過を見て見るから",
"はい",
"今日から薬が少し変るから、そのつもりで",
"はい"
],
[
"へい、ただついてりゃいいんですか?",
"そんなこと聞かなくたって……親方がさすってくれと言ったらさすって上げるんじゃないか"
],
[
"吉田さん、郵便!",
"はい",
"ここへ置きますよ"
],
[
"火種を一つ貰えませんか?",
"火鉢をお貸し"
],
[
"お上さん、親方はどんなあんばいですね?",
"どうもね、快くないんで困ってしまうわ",
"ああどうも長引いちゃ、お上さんもお寂しいでしょう?"
],
[
"あの人は何でしょう、前から何も親方と知合いというわけじゃないんでしょう?",
"深い知合いというでもないが、小児の時学校が一緒とかで、顔は前から知ってるんだって",
"そうですか。私ゃまたお上さんがお近しいから、そんな縁引きで今度親方のとこへも来なすったんだと思いまして……いえね、金さんの方じゃ知んなさらねえようだが、私ゃ以前あの人の家のじき近所に小僧をしていて、あの人のことはよく知ってますのさ",
"そう、いつごろのこと?",
"そうですね、もう四五年前のことでしょう、お上さんがまだ島田なんぞ結ってなすったころで",
"へえい、じゃ私のこともそのころ知ってて?"
],
[
"へへ、誰も人は聞いてやしませんから大丈夫でさ",
"あれ、まだこの人はあんなことを言って! 金さんと私とは、娘の時からの知合いというだけで――それは親同士が近しく暮らしてたものだから、お互いに行ったり来たり、随分一緒にもなって同胞のようにしてたけど……してたというだけで、ただそれだけのものじゃないか、お前さんもよっぽど廻り気の人だね"
],
[
"あれがね、阿母さん、遅れてつい今し方着いたんですよ",
"まあ、そうですかよ。やっぱり字の書きようが拙いので、読めにくくってそれで遅れたんでございましょうね。それじゃお光さんにも読みづらかったでしょう、昔者の私が書いたのですからねえ",
"いいえ、そんなことはありませんよ。私にはよく分りましたけど、全くそういうわけで御返事を上げなかったんですから……さあどうぞお敷き下さい"
],
[
"ほほほ、阿母さんもあまりそれは、安く自分で落し過ぎますよ。可哀そうにお仙ちゃんは、縹致だって気立てだってあの通り申し分ないんですもの、そりゃ行こうとなさりゃどんなところへでも……",
"いいえ、そんなことを思っていると大間違いです。こないだもね、お光さんがおいで下すった時に、何だかあれが煮えきらない様子でしたから、後で私がそう言って聞かしたことですよ。お前なんぞ年が若いから、もしね、人並みの顔や姿でとんだ自惚れでも持って、あの、口なくして玉の輿なんて草双紙にでもあるようなことを考えてるなら、それこそ大間違い! 妾手掛けなら知らないこと、この世知辛い世に顔や縹致で女房を貰う者は、唐天竺にだってありはしない。縹致よりは支度、支度よりは持参、嫁の年よりはまず親の身代を聞こうという代世界だもの、そんな自惚れなんぞ決してお持ちでないって、ねえ、そう言ったことですよ"
],
[
"ええ、それは見せました、こないだ私がお宅から帰ると、都合よくちょうど先の人が来合わせたものですから",
"それで、御覧なさいましてどんなお口振りでした?"
],
[
"ですがね、あの写真は変に目が怖く写っていますから……",
"そんなことはありゃしませんよ。けれど、ただね、ちとどうも若過ぎやしないかって……",
"ええ、私もそれを言わないことじゃなかったのですよ、あまりあれじゃはで作りで、どう見ても七か八に見えますもの。正真なところ、二月生まれの十九ですから……お光さんからもそうちょっと断っておもらい申すでしたにねえ",
"そりゃ言いましたとも。お世話をしようてのに、年を言わないってことがあるものですか、ほほほほ、何ですよ! 阿母さん"
],
[
"じゃ、ちっとは新さんも快い方だと見えるね? そうやってお前が出歩くとこを見ると",
"いえね、あの病気は始終そう附き限りでいなけりゃならないというのでもないから……それに、今日佃の方から雇い婆さんを一人よこしてもらって、その婆さんの方が、私よりよっぽど病人の世話にも慣れてるんだから",
"それじゃ、病人の方は格別快いてえわけでもねえんだね?",
"ええ、どうもね",
"その代り、大して悪くもならねえんだろう"
],
[
"そういうのはどうしても直りが遅いわけさね。新さんもじれッたかろうが、お光さんも大抵じゃあるめえ",
"そりゃ随分ね何も病人の言うことを一々気にかけるじゃないけど、こっちがそれだけにしてもやっぱり不足たらだらで、私もつくづく厭になっちまうことがありますよ。誰でも言うことだけど、人間はもう体の健なのが何よりね",
"だが、俺のように体ばかり健で、ほかに取得のねえのも困ったものさ。俺はちっとは病ってもいいから、新さんの果報の半分でもあやかりてえもんだ",
"まあ、とんだ物好きね。内のがどう果報なんだろう?",
"果報じゃねえか、第一金はあるしよ……",
"御笑談もんですよ! 金なんか一文もあるものかね。資本だって何だって、皆佃の方から廻してもらってやってるんだもの、私たちはいわば佃の出店を預ってるようなものさ",
"そりゃどうだか知らねえが、何しろ新さんはお光さんてえいいお上さんを持って……ねえ、こいつは金で買われねえ果報ださ"
],
[
"うむ、あれか、可愛らしいね",
"可愛らしいからどうなの?",
"どうてえこともねえさ",
"何だね! この人は。お前さん考えとくと言って持って帰ったんじゃないかね?",
"そうさ",
"じゃ、考えたの?",
"別に考えて見もしねえが、くれるなら貰ってもいい",
"貰ってもいいんだなんて、何だか一向弾まない返事だね",
"なに、弾まねえてえわけでもねえんだが……何しろこうして宿屋の二階に燻ってるような始末で、まるで旅へでも来た心持なんだからね。まあ家でも持って、ちゃんと一所帯構えねえことにゃ女房の話も真剣事になれねえじゃねえか"
],
[
"だが、向うは返事を急いででもいるのかい?",
"向うはなに、別に急いでもいやしないけどね",
"急がなくたって、何もこれ、早くくれてしまわなきゃ腐るてえものでもねえんだからな",
"当り前さ、夏のお萩餅か何ぞじゃあるまいし……ありようを言うとね、娘もまだ年は行ってても全小姐なんだから、親ももう少し先へなってからの方が望みなんかも知れないのさ",
"じゃ、とにかくもう少し待ってもらおうじゃねえか。第一お前、肝心の仲人があの通りの始末なんだもの",
"仲人があの通りってどう?",
"新さんの今のとこさ"
],
[
"ついでにお茶椀も洗って来ましょうね",
"姐さん、あの、便所はどちらですの?",
"便所ですか? 御案内しましょう",
"はばかりさま"
],
[
"何が? 馬鹿言え",
"隠したって駄目よ。どこの芸者?",
"芸者だ? 馬鹿言え! よその立派な上さんだ",
"とか何とかおっしゃいますね。白粉っけなしの、わざと櫛巻か何かで堅気らしく見せたって、商売人はどこかこう意気だからたまらないわね。どこの芸者? 隠さずに言っておしまいなさいよ",
"ちょ! 芸者じゃねえってのに、しつこい奴だな",
"まだ隠してるよ! あなたが言わなきゃ俥屋に聞いてやる"
],
[
"何のことなの? 女中の言ったのは",
"なあに、馬鹿馬鹿しいのさ。お光さんのことをどこの芸者だって……",
"まあ、厭よ……",
"芸者なものか、よその歴としたお上さんだと言っても、どうしても承知しやがらねえで、俺が隠してるから俥屋に聞いて見るって、そう言ってるところへヒョッコリお光さんが帰って来たのさ。お多福め、苦しがりやがって俥屋の尻が何だとか……はははは、腹の皮を綯らしやがった。だが、そう見られるほど意気に出来てりゃしようがねえ"
],
[
"むむ、あの店にいる三十近くの?",
"あれさ、為といって佃の方の店で担人をしていた者でね、内のが病気中、代りに得意廻りをさすのによこしてもらったんだが、あれがまた、金さんと私の間を変に疑ってておかしいのさ。私が吉新へ片づかない前に、何でも金さんとわけがあったに違いないんだって",
"へええ、どうしてお光さんの片づかねえ前のことなんか――お互いに何も後暗いことはねえから、何と言おうがかまわねえけれど、どうしてまたそんなころのことを知ってるんだろう?",
"それがさ、お前さんをその時分よく知ってて、それから私のことも知ってるんだって",
"はてね、俺が佃にいる時分、為ってえそんな奴があったかしら",
"それは金さんの方じゃ知らないだろうって、自分でも言ってるんだが、何でもね、あの近辺で小僧か何かしていて、それでお前さんを知ってるんだそうだが、寄席なぞでよく私と二人のとこを見かけたって……変な奴がまた、家へ来たものさねえ",
"そりゃしかし、お光さんも迷惑だろうな。くだらねえこと言やがって、もしか新さんの耳にでも入ったら痛くねえ腹も探られなきゃならねえ"
],
[
"持ってくかい?",
"え、あれはほかでちょいと借りたんだから"
],
[
"お仙ちゃん、どうぞもうかまわずにね、お客様じゃないんだから",
"え、何にもかまやしないことよ"
],
[
"あら、厭な姉さん!",
"だって、本当なんだもの。束髪も気が変っていいのね",
"結いつけないから変よ"
],
[
"変らないことがあるものですか、商売が商売ですし、それに手は足りないし、装も振りもかまっちゃいられないんですもの、爺穢くなるばかりですのさ",
"まあ、それで爺穢いのなら、お仙なぞもなるべく爺穢くさせたいものでございますね……あの、お仙やお前さっきの小袖を一走り届けておいでな、ついでに男物の方の寸法を聞いて来るように"
],
[
"始めの話じゃ恐ろしく急ぎのようでしたけど、今日の口振りで見ると、まず家でも持って、ちゃんと体も落ち着いてしまって、それからのことにしたいって……何だかどうも気の永い話なんですよ",
"ですが、家をお持ちなさるぐらいのことに、別に手間も日間も要らないじゃございませんか",
"それがなかなかそうは行かないんですって。何しろこれまで船に乗り通しで、陸で要る物と言っちゃ下駄一足持たないんでしょう、そんなんですから、当人で見るとまた、私たちの考えるようにゃ行かないらしいんですね",
"ですがねえ。私なぞの考えで見ると、何も家をお持ちなさるからって、暮に遣う煤掃きの煤取りから、正月飾る鏡餅のお三方まで一度に買い調えなきゃならないというものじゃなし、お竈を据えて、長火鉢を置いて、一軒のお住居をなさるにむつかしいことも何もないと思いますがね",
"それに何なんでしょう、今はまだ少し星が悪いんでしょう。そんなことも言ってましたよ",
"じゃ、話だけでも決めておいていただいたら……",
"え、それは私も言ったんですがね、向うの言うのじゃ、決めておくのはいいが、お互いにまたどういう思いも寄らない故障が起らないとも限らないから、まあもう少しとにかく待ってくれって、そう言うものですからね"
],
[
"あれ、阿母さん、私ゃ本当のことを言ってるんですよ、全く向うの人はそう言ってるんですよ",
"つまりそれじゃ、体よくそう言ってお断りなさいましたんでしょう?"
],
[
"けれど、いつまで待ってくれとおっしゃるのだか、それも分らないのでしょうねえ。あれも来年は二十でございますからね、もう一だの二だのという声がかかった日にゃ、それこそ縁遠いのがなお縁遠くなりますからねえ",
"阿母さんもまあ! 何ぼ何だって、そんなに一年も二年も待たされてたまるもんですか。ですからね、向うの話は向うの話にしておいて、ほかにまた話がありゃそれも聞いて見て、ちっとでもいい方へ片づけてお上げなさりゃいいじゃありませんか",
"そんなにどこから話があるものですか",
"阿母さんはじきそんなことをお言いだけど、お仙ちゃんのようなあんないい娘を……誰だって欲しがるわ。私もまだほかにも心当りがあるから、その方へも談して見ましょう。今度のもそれは悪くはないけど何しろ船乗りという商売はあぶない商売ですからね、それにどこか気風の暴ッぽい者ですから、お仙ちゃんのようなおとなしい娘には、もう少しどうかいう人の方がとそうも思うんですよ"
],
[
"婆やさん、私が出てから親方はどんなだったね?",
"別に変った御様子も見えませんでございますよ。ウトウト睡ってばかりおいでなさいましてね、時々床瘡が痛いと言っちゃ目をお覚ましなさるぐらいで……"
],
[
"おや、そう。それでいつ阿父さんは帰ったね?",
"つい今し方帰っておいででした。何ですか、昨日の話の病人を佃の方へ移すことは、まあ少し見合わせるように……今動かしちゃ病人のためにもよくなかろうし、それから佃の方は手広いことには手広いが、人の出入りが劇しくって騒々しいから、それよりもこっちで当分店を休んだ方がよかろうと思うから、そう言ってたとお上さんに言えってことでした。明日は朝からおいでなさるそうです"
],
[
"お上さんはどこへ行ったんだって、佃の親方が聞いてましたぜ",
"…………",
"私ゃ金さんてえ人のとこへ遊びにおいででしょうって、そう言っときましたぜ",
"…………",
"ね、お上さん",
"…………"
],
[
"言ったってかまわないけど……どんな用事があるか分りもしないのに、遊びに行ったなんて、なぜそんなよけいなことをお言いだね?",
"じゃ、やっぱり金さんのとこへ? へへへへそうだろうと思ってちょっと鎌かけたんで",
"まあ、人が悪いね?"
],
[
"どうかお光の力になってやって……阿父さん、お光を頼みますよ……",
"いいとも! お光のことは心配しねえでも、俺が引き受けてやるから安心しな",
"お光……",
"はい……",
"お前も阿父さんを便りにして……阿父さん、お光はまだ若いから、あなたが世話してやって……",
"よし! それも承知してる、心配しねえでもいい",
"お光……",
"はい……",
"このあいだから阿父さんにも頼んどいたが、お前はまだ若いから……若い今のうちに片づくがいいよ……"
],
[
"それがどうしたのさ?",
"どうもしやしませんが、親方もなかなか死際まで粋を利かしたもので……それじゃお上さんも寝覚めがようがさね",
"寝覚めがいいの悪いのと、一体何のことだね? 私にゃさっぱり分らないよ"
],
[
"何を阿父さんが承知しないのさ?",
"何をって、金さんとお上さんと一緒になることでなくって、ほかにお前さん……",
"まあ! 呆れもしない。いつ私が金さんと一緒になるって言ったね?",
"言わないたって、まあその見当でしょう?",
"馬鹿なことをお言い!"
]
] | 底本:「日本の文学 77 名作集(一)」中央公論社
1970(昭和45)年7月5日初版発行
1971(昭和46)年4月30日再版
初出:「新小説」
1905(明治38)年3月
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年2月13日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "046647",
"作品名": "深川女房",
"作品名読み": "ふかがわにょうぼう",
"ソート用読み": "ふかかわにようほう",
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"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「新小説」1905(明治38)年3月",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2007-03-08T00:00:00",
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"姓": "小栗",
"名": "風葉",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "ふうよう",
"姓読みソート用": "おくり",
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"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Fuyo",
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"生年月日": "1875-02-03",
"没年月日": "1926-01-15",
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[
[
"このね、マハナディ川の上流には、ダイアモンド鉱地がある。昔とちがって、いまは萎靡凋落のどん底にあるが、それでも、肉紅玉髄、柘榴石などに混ってたまたま出ることがある。それもなんだ、藩王の経営だから採収法が古い。警備も、南阿の諸鉱地とは、てんで比較にならんのだ。鉄条網もない。電気柵もない。南阿じゃ、着物を縫目まで解いて身体検査をするというが、ここじゃそれほどでもあるまい",
"では、発見した鉱夫が逃げられるじゃありませんか",
"そこなんだ。宝石が、たまたま出るとそれを持ち逃げして追手を避け避け、外国船に売り込む……。いや、あれがそうだとは、必ずしも云わんよ。しかし、万事こうしたことは、カン一つだからね"
],
[
"じゃ誰よ、そこにいんのは? さっきから、かさこそ音をさせていて、給仕?",
"いや、僕です。パドミーニは、さっきからここには居りません",
"ああ、なんだ、チャンドさんか"
],
[
"じゃ、ここへ置きますから",
"そう。有難う。でも、ちょっとの間なら、ここにいてもいいわ"
],
[
"なにがです",
"知っているくせに。……もっと黒檀紳士は、明けっ放しの人かと思っていたわ。つまり、四十碼スクラムからスリークォーター・パスになって、それを、私がカットして好蹴をタッチに蹴出す。一挙これじゃ、三十碼挽回ね",
"分りませんね。何です、それは",
"分らないの、マアいいわ。いいから、出てないと水を引っかけるわよ"
],
[
"アッ、あれ、きっと何だわ",
"なるほど",
"あらッ、私まだなんにも云ってないのに……"
],
[
"分りましたよ、非常時の馬鹿力というのが、あれほど、お痛みだったのが土民がとおると、瞬間ケロリと忘れてしまう……。いや、気が張っとりますと、感じないのですなア",
"そうかしら",
"処世上、その点には、つどつど考えさせられます",
"じゃ、処生哲学ね"
],
[
"あたし、まえにはチャンドさんを、ちがう人かと思ってたわ。口説き上手で、パドミーニのような娘を悦ばせるかわりに、かならずただじゃ済ませない。よく、世間にあるあの類型ね?",
"…………",
"ところが"
],
[
"ただ、あんたは実にまめだと思う",
"まめですか。僕は",
"そう、ほかにも良いところが、きっとあるんだろうと思うわ。だけど、なにしろまめすぎるんでほかが分らなくなるの"
],
[
"はやく、チャンドさん、引っ張って来てよう",
"ですが"
],
[
"考えてみますと……あれから、もう四、五時間も見えないのですから",
"そう、そう云えば……"
]
] | 底本:「潜航艇「鷹の城」」現代教養文庫、社会思想社
1977(昭和52)年12月15日初版第1刷発行
底本の親本:「地中海」ラヂオ科学社
1938(昭和13)年9月
初出:「新青年」博文館
1938(昭和13)年8月号
入力:ロクス・ソルス
校正:Juki
2008年10月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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"作品ID": "043677",
"作品名": "一週一夜物語",
"作品名読み": "いっしゅういちやものがたり",
"ソート用読み": "いつしゆういちやものかたり",
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"副題読み": "",
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"初出": "「新青年」博文館、1938(昭和13)年8月",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
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"名": "虫太郎",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "むしたろう",
"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "むしたろう",
"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Mushitaro",
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"生年月日": "1901-03-14",
"没年月日": "1946-02-10",
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"底本名1": "潜航艇「鷹の城」",
"底本出版社名1": "現代教養文庫、社会思想社",
"底本初版発行年1": "1977(昭和52)年12月15日",
"入力に使用した版1": "1977(昭和52)年12月15日初版第1刷",
"校正に使用した版1": "1977(昭和52)年12月15日初版第1刷",
"底本の親本名1": "地中海",
"底本の親本出版社名1": "ラヂオ科学社",
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[
[
"ねえ、何を泣いているんです。貴方のお父さんの行衛なら、僕はその健在を、断言してもいいと思いますがね。いいえ、大丈夫――十日の興業が終ってからでも、結構間に合うんですから。今朝の英字新聞で、僕の事を畏敬すべき――と云いましたっけね。だがそれは、一体どっちなんでしょうか。俳優としてか、それとも、探偵としての法水にでしょうか",
"ええ、お話したいのは父の事なんですけど"
],
[
"では、その吹き換えの謎を、淡路君に訊ねてみましたか。合憎とあの男は、僕の剣を喰ったが最後なんです。何しろ殺されたポローニアスなんですからね。あの狭い中で、動けばこそですよ。それで、僕に斯んな愚痴話をしましたがね。――苦しいの何んのって、垂幕に向っては、碌々充分に呼吸さえつけないって",
"ええ、あの方は、私にいい加減な嘘を並べ立てました。だって、あの亡霊は、擬れもない父だったのですから"
],
[
"それは斯うなんですの。ねえ法水さん。貴方だけは真面目にお聴き下さるでしょうね。いまの幕の間に、私は下手の舞台練習室に居りました。それは、入水(小川に落ちて溺れるオフェリヤ最後の場面)の際の廻転に馴れるよう、実は稽古して居たからなんです。と云いますのは、身体の調子のせいですかしら、どうも廻っているうちに、胸苦しくなって来るのです。それで、母も孔雀さんも、前々から、身体だけは馴らして置いた方がいい――と云うものですから、彼処の廻転椅子で、その稽古をする気になりました。所が、その椅子にかけて、緩く廻って居りますうちに、いきなり私の身体が慄と凍り付いて、頭の頂辺にまで、動悸がガンガンと鳴り響いて参りました",
"そうですか。しかし、貴女に休演されることは、この際何よりの打撃なんですからね。出来ることなら、少しくらいの無理は押し通して頂きたいんですよ。本当は、二、三日静養なさるといいのですがね。わけてもそう云う、幻覚を見るような状態の時には……"
],
[
"しかし、髭が動いたと云う事に、何か特別の理由でもあるのですか",
"ええ、無論のこってすとも。それが隠そうたって、隠し了せない、父の習慣なんですから。父はいつも、顔にチック(ビクビク顔を顰める無意識運動)を起す癖があるんですの。ですから、懐かしさ半分、怖さ半分で、言葉が咽喉にからまり、目の前に靄のようなものが現われて来て、もしやしたら、父は死んでいるのでないかと思うと、その顔に覗き込まれたように慄然となって、もう矢も楯もなく、私はハッと眼を瞑じてしまいました。すると、その反動で、廻転椅子が廻り始めたのですが、それが幾分緩くなったかと思うと、今度はそれに手をかけて、いきなりグイと、反対の方へ廻したものがありました。父――私は、ただそうとのみ感じただけで、その瞬間、神経が寸断寸断にされたような、痳痺を覚えました。けれども、一方にはまた、妙に強い力が高まって来て、いっそ父と話してみたい欲求に駆られて来たのです。それで、眼を開いてみますと、亡霊の後姿はもうそこにはないので、私は思い切って、舞台裏の方へ駈けて行きました。すると、道具裏の垂幕の蔭には――そこには、淡路さんが居りましたのですけど",
"ああ、それが淡路君なんでしたか。それなら、何もそう、奇異がる理由はない訳じゃありませんか。きっと、あの男ですよ――貴女にそう云う悪戯をしたのが――。で、その時は、まだ亡霊の扮装で居りましたか?"
],
[
"ねえお父さん、貴方は私を戦かしている、恐怖の事などは考えられないのでしょう。ああ、いつまでも、あの意地悪い幻にとりつかれているのでしょうか。いまも貴方のお声が――あの圧しつけるような響が、まざまざと耳に入って参ります。でも私だけには、見ない振りをして、通り過ぎて下さるでしょうね。お父さん、あの最後の夜、貴方は私達を前にして、斯う云う言葉を仰言いましたわね。この劇場には形体も美もなく、云わば、幇間は如何なるものであるかと云う画幅に過ぎない――と",
"幇間――。ああ貴女も、お父さんと同じ皮肉を僕に云うのですか。此処に穢わしき者あり、彼処へ去れ――なんでしょう。ハハハハ"
],
[
"なるほど支倉君、君と云う法律の化物には、韻文の必要はないだろう。然し、さっきの告白悲劇はどうするんだい。あの悲痛極まる黙劇の中で、幡江が父に、何を訴えたかと思うね",
"なに、告白悲劇……とにかく、冗談は止めにして貰おう"
],
[
"然し、それだけでは、決して深奥だとは云われない。第一それでは、風間が吾が子を殺さねばならなかった心理が説明されていない",
"それから王妃の衣川暁子には、二つの花の名を云ったにも拘らず、折れた雪の下を渡した……"
],
[
"それなら、私が黒苺を貰ったとしたら、どうするんですの、曰く、正義は遂行されん――でしょう。私、幡江さんの事なら、何んでも聴いて貰いたいと思って、やって来たんですの",
"然し、幡江と云う人は、父親に殺される理由が、一番少ない人物なんじゃありませんか"
],
[
"たしかこの花降しは、警察の注意で、今夜からしたのでしたね。だが、これに僕は、妙な逆説を感じているんですよ。あの真に迫った殺し場を、隠そうとしたものが、却って……",
"じゃ、私が犯人だって云うんですの"
],
[
"サア見て頂戴。キプルスでは口に入れた穀粒に、唾のついていない時には、その人間が犯人なんですってね。たとえ、あの時、雪のように降って来る花弁が、私の身体を隠し了せたにしてもだわ。どうして、あの短い間に、奈落まで往復出来るでしょうか。ああ私、ほんとうは隠し通そうとしたのでしたけど、思い切って云ってしまいますわ。実は、父を見たのです。見たどころかいきなり後から脊を打たれて……",
"なに、脊を打たれて……"
],
[
"僕は円錐形の影が、一体何処を指していたか、知りたいのですよ。貴女はミルトンの『失楽園』の事を、誰からかお聴きになった事がありますか。これは、天上から見た地球の話ですが、太陽の蔭になった方には円錐形の影が出来て、それが天頂に達すると夜半。そこと六時との間が、ほぼ九時になると云うのです。つまり、童話の神様が見る時計なんですよ",
"ああ、あの悪魔がやって来た時のこと……"
],
[
"法水さん、貴方ほどの方が、不在証明なんて云う、運命的な代物を信じようとはなさいますまいね。僕はこの通り、不在証明もなければ、空寝入りしようともしませんよ",
"いや、運命的なのは、オフェリヤ狂乱そのものじゃありませんか"
],
[
"君は早々に、この事件の賽の目を、二つだけにしてくれた――その事は、何んと云っても感謝するよ。幡江が、自分の仇敵であるロンネから離れられず、あまつさえ、その種を宿しているのだとしたら、風間の憎悪は、第一自分の肉身にかかって行くだろう。また、妻のあるロンネにとると、幡江が仇し子を生むと云う事は、どんなに怖しい事か。そして、幡江から堕胎を拒絶されたとすれば、それは母子ごと葬ろうとしたと云っても、もはや心理上の謎でなくなるのだ。おまけに不在証明はないのだし、六尺豊かなあの男なら、幡江の咽喉を下から刺し貫く事も出来るだろう",
"いや、そうされるのは、多分法水さんの方でしょうよ。いま小保内のやつが、最後の幕で彼奴の胸をぶん抜いてやる――と力味返っていましたぜ"
],
[
"何しろ小保内には、照明掛りの証言があるんですからね。自然気の強い事も云える訳ですが僕は今始めて、舞台裏にも、絶海の孤島と云うやつがあるのを知りましたよ。所で、これだけ云ってしまえば、もうそれ以外に、お訊ねになる事はないと思いますが、ああそうそう、貴方から幡江さんの幻覚論を伺うんでしたっけな",
"いや、あの両所存在(同時に一人の人物が異なった場所に出現する事)の謎なら、とうから僕は問題にしちゃいませんがね"
],
[
"あの時、亡霊に吹き変ってから、君はたしか奈落へ下りたでしょう。そうすると、君にとって何んとも不幸な暗合が生まれてしまうのです。君は、クリテウムヌスの『虚言堂』を読んだ事がありますか。羅馬の婦人は、男の腰骨を疲れさせるばかりではなかったそうです。凍らせた月桂樹の葉で、手頸の脈管を切ったとか云いますからね",
"なに、それでは僕が、その間に何か、仕掛でも作って置いたと云うのですか"
],
[
"どうしたって云うんでしょう。あのメデアみたいな男が、捕まらないなんて。彼奴は、自分の目的のためなら、それが吾が子だって、殺し兼ねませんわ。私、あの男の眼も胸も剥り抜いてやって、いっそ片輪にしてしまいたいんですの",
"いや、僕は決して、そうとは信じませんね"
],
[
"そうなったら第一、人間生活の鉄則がどうなってしまうのでしょう。父と娘――その間には無意識ですが、極く微妙な×××な結合があるのです。いっそこの事件は、父に依っては絶対に行えないものだ――と云いましょうか",
"では、父でないとすると"
],
[
"冗談じゃない。常套を嫌う君の趣味は、いつもながらの事だが、然し、隠伏奏楽所の入口と云えば、下手の遙か外れじゃないか。そして、そこと奈落の壁には、ほんの腿が入る位の丸窓が二つ三つ明いているに過ぎないのだ。だから、道具方が開閉器室に入るのを、見定めてからだと、彼処へ行くまでに、時間の裕りがない。第一君は、刺されたのが奈落の中央だと云う事を、忘れているらしいね",
"そうなるかねえ"
],
[
"ですけど、風間の方は一体どうなるんでしょう。なるほど、そう云う仮説は、貴方がたには是非必要でしょうけれども、私達には、風間の身体一つさえあればいいのですからね",
"それは次の幕に……"
],
[
"それでは、オフェリヤの棺槨の外から、君が風間九十郎を透視した理由を聴こう。僕は、それを不思議現象だけで葬りたくはないのだよ",
"それは支倉君、実は斯うなのだ。孔雀の瞬きが、ある一つの微妙な言葉となって、僕に伝えてくれたのだよ。よく会話中に見る事だが、酸いような感覚を覚えると、僕等はどっちかの眼を閉じるものなのだ。所が、オフェリヤの棺と――僕が云った時に、孔雀は無意識にそれを行った。それで僕は、もしかしたらその感覚に、孔雀は死臭を経験しているではないかと考えたのだ。また、その神経現象は、奈落――と云った時の淡路君にも現われたけれども、それは却って、無辜を証明するものになってしまった。と云うのは、あの当時は、奈落にニスの臭いが罩っていたので、酸味の表出で、淡路君が余儀ない偽りを吐いたと云う事が判ったのだよ",
"それでは、一体、九十郎は何時誰に殺されたのだね"
],
[
"それでは、舞台の上にいた孔雀が、どうして奈落の幡江を殺す事が出来たのだね",
"それがこの事件の才智の魔術さ。詳しく云うと、オフェリヤの裳裾と繰り出しの調帯に孔雀が驚くべき技巧を施したからなんだ。君も知っての通り、オフェリヤが小川に落ちたと見せて、幡江が函の中に入ると、下からの風で、裳裾がパッと拡がるじゃないか。そして、その拡がった裳裾を、傘のように凋めながら、如何にもはまり込んで行くかの体で、腰を落して行ったのだ。だが、そうすると熊城君、風が裳裾の周りを激しく吹き上げるので、当然オフェリヤの頭上には、その輪廓なりに、気洞の円柱が出来てしまう。すると、それには対流の関係で、下行する気流が起る道理だから、当然頭上の金雀枝の花弁はあたりに散らばらず、その気流なりに、裳裾の中へ落ちて行くだろう。然しその花弁には、多分クラーレあたりの、皮膚を痳痺させる毒物が塗られていたに違いない。それが、幡江の鼻から吸収されるので、次第に全身が気懶るくなって行く。わけても、頭から上に触覚が鈍くなって、漸く横にはなったものの、それからは夢心地で奈落へ運ばれて行った事だろう。すると、恰度その折、観客は揺ぐような錯覚を感じて、総立ちになったのだ。然し、孔雀だけは自若としていて、最後の止めを幡江に加えたのだよ。と云うのは、予め二条の調帯のうちどれかの一本に、孔雀は鋭利な薄刃を挾んで置いた。そして、折からの騒ぎにまぎれて、その調帯の上を絶えず踏み付けたのだ。すると、緩く張った調帯が当然引き緊まって、廻転が早められる道理だから、アッと云う間もなく、その刃物は恐しい速力で幡江に追い付いた。そして、グタリと垂れた頸を、横様に掻き切ってしまったばかりじゃない、その瞬後には、再び孔雀の眼前に戻っていた理由だよ"
]
] | 底本:「二十世紀鉄仮面 小栗虫太郎全作品4」桃源社
1979(昭和54)年3月15日発行
底本の親本:「二十世紀鉄仮面」桃源社
1971(昭和46)年11月15日初版
初出:「改造」改造社
1935(昭和10)年2月号
※明らかに誤植と思われる箇所は、「オフエリヤ殺し 覆刻」沖積社 2000(平成12)年11月25日発行に基づいて修正し、入力者注を付しておきました。
※「In his costumes he recites」中の「Hinder」は、底本では「Hirder」となっています。
入力:ロクス・ソルス
校正:土屋隆
2007年1月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "045231",
"作品名": "オフェリヤ殺し",
"作品名読み": "オフェリヤごろし",
"ソート用読み": "おふえりやころし",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2007-02-20T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-21T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000125/card45231.html",
"人物ID": "000125",
"姓": "小栗",
"名": "虫太郎",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "むしたろう",
"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "むしたろう",
"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Mushitaro",
"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1901-03-14",
"没年月日": "1946-02-10",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "二十世紀鉄仮面 小栗虫太郎全作品4",
"底本出版社名1": "桃源社",
"底本初版発行年1": "1979(昭和54)年3月15日",
"入力に使用した版1": "1979(昭和54)年3月15日",
"校正に使用した版1": "1997(平成9)年9月15日第4回配本",
"底本の親本名1": "二十世紀鉄仮面",
"底本の親本出版社名1": "桃源社",
"底本の親本初版発行年1": "1971(昭和46)年11月15日",
"底本名2": "",
"底本出版社名2": "",
"底本初版発行年2": "",
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[
[
"ちょうど、寅の刻の太鼓を聴いたとき、風にがたつく物の響き、兄の吐くうめきの声に入り交じって、それは、薄気味悪い物音を聴いたのじゃ。のう姉上、儂の室の扉の前を離れて、コトリコトリと兄のいる、隣室に向かう足音があったのだ",
"いやいや、何かそちは、空想におびやかされているのであろうのう。気配とやらいうものは、もともと衣としか見えぬ、ちぎれ雲のようなものじゃ",
"ところが、それには歴然とした、明証がありおった……。通例の歩き方で、二歩というところが一歩というぐあいで、その間隔が非常に遠いのじゃ、それで、なにか考えながら歩いておったと儂は推測したのだが……",
"おお、それでは……"
],
[
"馬鹿な、短慮にはやって、せっかく手に入ろうとする、黄金郷を失おうとする大痴者めが。したが奥方、とくと胸に手を置いて、もう一度勘考したほうが、お為でありましょうぞ",
"ホホホホホ、なんと黄金郷とお言いやるのか……"
],
[
"でも、ほんとうでしょうか、奥方様。ほんとうに、黄金郷の所在を御存じなのでございますか",
"知らないで、なんとしようぞ。フローラ、そもじに、その所在を明らかにするについては、陸では聴く耳があるかもしれませぬ。私たち二人は、沖に出て話すことにしましょう"
],
[
"おや、奥方さま、なぜにお泣きでございますの。御兄弟お二人を失ったとはいえ、ラショワ島の御主、黄金郷の女王となったあなたさまに、涙は不吉でございますのよ",
"いえいえフローラ、私たちは、いまこそ島に別れを告げねばならぬのです。おお、あの岩城、横蔵、慈悲太郎――これからは、二人の塚を訪れる者とてないであろう。したが、そもじは気づかぬであろうけれど、あの二人がこの世を去ったとすれば、当然火器を作って、土民たちを従えるに足る者が、島にはいのうなったはずじゃ。その理由がようわかれば、なぜ私が、無辜のグレプニツキーを殺めたか、合点がいったであろうのう。私たちが島を去ったのち、見す見すあの者に、支配されるのを口惜しゅう思ったからじゃ。もう私は、ラショワ島の主でも、黄金郷の女王でもない。そもじと同じ、ただの女にすぎませぬのじゃ"
],
[
"あ、あまりな御短慮ですわ。見す見すあの黄金郷を捨てて、奥方様はどこへおいでになるおつもりでございます?",
"いえいえ、私たちは、黄金郷へ行くのですよ"
],
[
"実を言うと、グレプニツキーをはじめ、島の頂きにある鉱脈に惑わされたのじゃ。あれは、黄銅といって、色は黄金に似ているとはいえ、価格に至っては振り向くものもない、その一部分が、露出しているために、背後に太陽があり、切れ海霧が丸うなってそばを通ると、あのとおり、金色の幻暈を現わすのじゃ。したが私は、誓って終局の鍵が、ベーリング島にあると思うのです。そして、ベーリングの空骸に印された遺書を見るまでは、なんで黄金郷の夢が捨てられましょうぞ",
"おお、それでは……それでは、これからベーリング島へ行くのでございますか"
]
] | 底本:「ひとりで夜読むな 新青年傑作選 怪奇編」角川ホラー文庫、角川書店
1977(昭和52)年10月15日初版発行
1980(昭和55)年10月25日6版発行
2001(平成13)年1月10日改版初版発行
初出:「新青年」
1935(昭和10)年10月号
入力:網迫、土屋隆
校正:ロクス・ソルス
2005年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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"作品ID": "043653",
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[
"すると、僕だけということになるね。これを手に入れたばかりに、算哲博士と古代呪法との因縁を知っているのは。いや、真実怖ろしい事なんだよ。もし、ウイチグス呪法書が黒死館のどこかに残されているとしたら、犯人の外に、もう一人僕等の敵がふえてしまうのだからね",
"そりゃまた何故だい。魔法本と降矢木にいったい何が?",
"ウイチグス呪法典はいわゆる技巧呪術で、今日の正確科学を、呪詛と邪悪の衣で包んだものと云われているからだよ。元来ウイチグスという人は、亜剌比亜・希臘の科学を呼称したシルヴェスター二世十三使徒の一人なんだ。ところが、無謀にもその一派は羅馬教会に大啓蒙運動を起した。で、結局十二人は異端焚殺に逢ってしまったのだが、ウイチグスのみは秘かに遁れ、この大技巧呪術書を完成したと伝えられている。それが後年になって、ボッカネグロの築城術やヴォーバンの攻城法、また、デイやクロウサアの魔鏡術やカリオストロの煉金術、それに、ボッチゲルの磁器製造法からホーヘンハイムやグラハムの治療医学にまで素因をなしていると云われるのだから、驚くべきじゃないか。また、猶太秘釈義法からは、四百二十の暗号がつくれると云うけれども、それ以外のものはいわゆる純正呪術であって、荒唐無稽もきわまった代物ばかりなんだ。だから支倉君、僕等が真実怖れていいのは、ウイチグス呪法典一つのみと云っていいのさ"
],
[
"それが、テレーズ夫人の記憶像さ。博士がコペツキイ一家(ボヘミアの名操人形工)に作らせたとかいう等身の自働人形だそうだ。しかし、何より不可解なのは、四重奏団の四人なんだよ。算哲博士が乳呑児のうちに海外から連れて来て、四十余年の間館から外の空気を、一度も吸わせたことがないと云うのだからね",
"ウン、少数の批評家だけが、年一回の演奏会で顔を見ると云うじゃないか"
],
[
"この甲冑武者は、いつもここにあるのかね",
"どういたしまして、昨夜からでございます。七時前には階段の両裾に置いてありましたものが、八時過ぎにはここまで飛び上っておりました。いったい、誰がいたしましたものか?"
],
[
"とりもなおさず、これが今度の降矢木事件の象徴という訳さ。犯人はこの大旆を掲げて、陰微のうちに殺戮を宣言している。あるいは、僕等に対する、挑戦の意志かもしれないよ。だいたい支倉君、二つの甲冑武者が、右のは右手に、左のは左手に旌旗の柄を握っているだろう。しかし、階段の裾にある時を考えると、右の方は左手に、左の方は右手に持って、構図から均斉を失わないのが定法じゃないか。そうすると、現在の形は、左右を入れ違えて置いたことになるだろう。つまり、左の方から云って、富貴の英町旗――信仰の弥撒旗となっていたのが、逆になったのだから……そこに怖ろしい犯人の意志が現われてくるんだ",
"何が?"
],
[
"それから、絶命時刻は?",
"今朝八時の検屍で死後八時間と云うのだから、絶命時刻も、洋橙を食べた刻限とピッタリ符合している。発見は暁方の五時半で、それまで附添は二人ともに、変事を知らなかったのだし、また、十一時以後は誰もこの室に入った者がなかったと云うのだし、家族の動静もいっさい不明だ。で、その洋橙が載っていた、果物皿と云うのがこれなんだがね"
],
[
"ところで熊城君、指紋は?",
"説明のつくものなら無数にある。それに、昨夜この空室に被害者を入れた時だが、その時寝台の掃除と、床だけに真空掃除器を使ったというからね。生憎足跡といっては何もない始末だ"
],
[
"算哲様がお歿くなりになってから、御家族の誰もかもが、落着きを失ってまいりました。それまでは口争い一つしたことのない四人の外人の方も、しだいに言葉数が少なくなって、お互いに警戒するような素振りが日増しに募ってゆきました。そして、今月に入ると、誰方も滅多にお室から出ないようになり、ことにダンネベルグ様の御様子は、ほとんど狂的としか思われません。御信頼なさっている私か易介のほかには、誰にも食事さえ運ばせなくなりました",
"その恐怖の原因に、貴女は何か解釈がおつきですかな。個人的な暗闘ならばともかく、あの四人の方々には、遺産という問題はないはずです",
"原因は判らなくても、あの方々が、御自身の生命に危険を感じておられたことだけは確かでございましょう",
"その空気が、今月に入って酷くなったと云うのは"
],
[
"算哲様は、異様なものを残して置きました。マックレンブルグ魔法の一つとかで、絞死体の手首を酢漬けにしたものを乾燥した――栄光の手の一本一本の指の上に、これも絞死罪人の脂肪から作った、死体蝋燭を立てるのです。そして、それに火を点じますと、邪心のある者は身体が竦んで心気を失ってしまうとか申すそうでございます。で、その会が始まったのは、昨夜の正九時。列席者は当主旗太郎様のほかに四人の方々と、それに、私と紙谷伸子さんとでございました。もっとも、押鐘の奥様(津多子)がしばらく御逗留でしたけれども、昨日は早朝お帰りになりましたので",
"そして、その光は誰を射抜きましたか"
],
[
"何がです?",
"ああ算哲――と叫んだのです。と思うと、バタリとその場へ"
],
[
"ハァ、旗太郎様と伸子さんとが、御様子を見にお出でになりました。ところが、ダンネベルグ様は、果物は後にして何か飲物が欲しいと仰言るので、易介がレモナーデを持ってまいりました。すると、あの方は御要心深くも、それに毒味をお命じになったのです",
"ハハァ、恐ろしい神経ですね。では、誰が?",
"伸子さんでした。ダンネベルグ様もそれを見て御安心になったらしく、三度も盃をお換えになったほどでございます。それから、御寝になったらしいので、旗太郎様が寝室の壁にあるテレーズの額をはずして、伸子さんと二人でお持ち帰りになりました。いいえ、テレーズはこの館では不吉な悪霊のように思われていて、ことにダンネベルグ様が大のお嫌いなのでございますから、旗太郎様がそれに気付かれたというのは、非常に賢い思い遣りと申してよろしいのです"
],
[
"勿論太陽の心霊学から離れて、ジッターの説を人体生理の上に移してみるのです。すると、宇宙の半径を横切って長年月を経過していても、実体と映像が異ならない――その理法が、人間生理のうちで何事を意味しているでしょうか。たとえば、ここに病理的な潜在物があって、それが、発生から生命の終焉に至るまで、生育もしなければ減衰もせず、常に不変な形を保っているものと云えば……",
"と云うと"
],
[
"それは……",
"第一に、連続殺人の暗示なんだ。犯人は、すでに甲冑武者の位置を変えて、それで殺人を宣言しているが、この方はもっと具体的だ。殺される人間の数とその方法が明らかに語られている。ところで、ファウストの呪文に現われる妖精の数が判ると、それがグイと胸を衝き上げてくるだろう。何故なら、旗太郎をはじめ四人の外人の中で、その一人が犯人だとしたら、殺す数の最大限は、当然四人でなければなるまい。それから、これが殺人方法と関聯していると云うのは、最初に水精を提示しているからだよ。よもや君は、人形の足型を作って敷物の下から現われた、あの異様な水の跡を忘れやしまいね"
],
[
"そうなんだ。だから、そこにもし殺人動機があるものとすれば、ファウスト博士の隠れ蓑――あの五芒星の円が判るよ。しかし、どのみち一つの角度には相違ないけれども、なにしろ四人の帰化入籍というような、思いもつかぬものがあるほどだからね。その深さは並大抵のものじゃあるまい。いや、かえって僕は、それを迂闊に首肯してはならないものを握っているんだ",
"いったい何を?",
"先刻君が質問した中の、(一)・(二)・(五)の箇条なんだよ。甲冑武者が階段廊の上へ飛び上っていて――、召使は聞えない音を聴いているし――、それから拱廊では、ボードの法則が相変らず、海王星のみを証明出来ないのだがね"
],
[
"そうです。無論史家である貴方は、中世ウェールスを風靡したバルダス信経を御存じでしょう。あのドルイデ(九世紀レゲンスブルグの僧正魔法師)の流れを汲んだ、呪法経典の信条は何でしたろうか(宇宙にはあらゆる象徴瀰漫す。しかして、その神秘的な法則と配列の妙義は、隠れたる事象を人に告げ、あるいは予め告げ知らしむ。)",
"しかし、それが"
],
[
"嘘だ……算哲様はやはり室の中央で死んでいたのだ……。しかし、この光栄ある一族のために……儂は世間の耳目を怖れて、その現場から取り除いたものがあった……",
"何をです?",
"それが黒死館の悪霊、テレーズの人形でした……背後から負さったような形で死体の下になり、短剣を握った算哲様の右手の上に両掌を重ねていたので……それで、衣服を通した出血が少なかったことから……儂は易介に命じて"
],
[
"実をいうと、あれは僕の一番厭な恫愒訊問なんだよ。真斎を見た瞬間に直感したものがあったので、応急に組み上げたのだったけれど、真実の目的と云えば、実はほかにあったのだ。ただ真斎よりも、精神的に優越な地位を占めたい――というそれだけの事なんだよ。この事件を解決するためには、まずあの頑迷な甲羅を砕く必要があるのだ",
"すると、扉の窪みは"
],
[
"と云うのは……",
"その時残響が少なかったからだよ。だいたい鐘には、洋琴みたいに振動を止める装置がないので、これほど残響のいちじるしいものはない。それに、鐘鳴器は一つ一つに音色も音階も違うのだから、距離の近い点や同じ建物の中で聴いていると、後から後からと引き続いて起る音に干渉し合って、終いには、不愉快な噪音としか感ぜられなくなってしまうのだ。それを、シャールシュタインは色彩円の廻転に喩えて、初め赤と緑を同時にうけて、その中央に黄を感じたような感覚が起るが、終いには、一面に灰色のものしか見えなくなってしまう――と。まさに至言なんだよ。まして、この館には、所々円天井や曲面の壁や、また気柱を作っているような部分もあるので、僕は混沌としたものを想像していた。ところが、先刻はあんな澄んだ音が聞えたのだ。外気の中へ散開すれば、当然残響が稀薄になるのだから、その音は明らかに、テラスと続いている仏蘭西窓から入って来る。それを知って、僕は思わず愕然としたのだ。では何故かと云うと、どこかに、建物の中から広がってくる、噪音を遮断したものがなけりゃならない。区劃扉は前後とも閉じられているのだから、残っているのは、拱廊の円廊側に開いている扉一つじゃないか。しかし、先刻二度目に行った時は、確か左手の吊具足側の一枚を、僕は開け放しにしておいたような記憶がする。それに、あそこは他の意味で僕の心臓に等しいのだから、絶対に手をつけぬように云いつけてあるんだ。無論それが閉じられてしまえば、この一劃には、吸音装置が完成して、まず残響に対しては無響室に近くなってしまうからだ。だから、僕等に聞えてくるのは、テラスから入る、強い一つの基音よりほかになくなってしまうのだよ",
"すると、その扉は何が閉じたのだ?",
"易介の死体さ。生から死へ移って行く凄惨な時間のうちに、易介自身ではどうにもならない、この重い鎧を動かしたものがあったのだ。見るとおりに、左右が全部斜めになっていて、その向きが、一つ置きに左、右、左となっているだろう。つまり、中央の萌黄匂が廻転したので、その肩罩板が隣りの肩罩を横から押して、その具足も廻転させ、順次にその波動が最終のものにまで伝わっていったのだ。そして、最終の肩罩板が把手を叩いて、扉を閉めてしまったのだよ",
"すると、この鎧を廻転させたものは?"
],
[
"すると、それから君は、易介が具足の中に入るのを見たのかね",
"いいえ、ここにある全部の吊具足が、グラグラ動いておりましたので……たぶんそれが、一時を少し廻った頃だったと思いますが、御覧のとおり円廊の方の扉が閉っていて、内部は真暗でございました。ところが金具の動く微かな光が、眼に入りましたのです。それで、一つ一つ具足を調べておりますうちに、偶然この萌黄匂の射籠罩の蔭で、あの男の掌を掴んでしまったのです。咄嗟に私は、ハハアこれは易介だなと悟りました。だいたいあんな小男でなければ、誰が具足の中へ身体を隠せるものですか。ですからその時、オイ易介さんと声を掛けましたが、返事もいたしませんでした。しかし、その手は非常に熱ばんでおりまして、四十度は確かにあったろうと思われました"
],
[
"では、遺産の配分に預かる人達は?",
"それが奇怪な事には、旗太郎様以外に、四人の帰化入籍をされた方々が加わっております。しかし、人員はその五人だけですが、その内容となると、知ってか知らずか、誰しも一言半句さえ洩らそうとはせんのです"
],
[
"旗太郎以外にたった一人の血縁を除外しているなんて。だが、そこには何か不和とでも云うような原因が……",
"それがないのですから。算哲様は津多子様を一番愛しておられました。また、その意外な権利が、四人の方々には恐らく寝耳に水だったでしょう。ことにレヴェズ様のごときは、夢ではないかと申されたほどでした"
],
[
"なんですと。たかが人形一つを。それは、また何故にです?",
"そりゃ、人形だけなら死物でしょうがね。とにかく、私どもは防衛手段を講ぜねばなりません。つまり、犯人の偶像を破棄して欲しいのです。時に貴方は、レヴェンスチイムの『迷信と刑事法典(註)』――をお読みになったことがございまして?"
],
[
"ところで田郷さん、見掛けたところ埃がありませんけど、この時計室はいつ頃掃除したのです?",
"ちょうど昨日でした。一週に一回することになっておりますので"
],
[
"いいかね熊城君、あの女は、非常に体力を要する鐘鳴器で、経文歌を三回繰り返して弾いたのだ。そうなると、モッソウの『疲労』を引き出さなくても、神経病発作や催眠誘示には、すこぶるつきの好条件になってしまう。そこに、あの女を朦朧状態に誘い込んだものがあったのだよ",
"ではなんという化物だい。だいたい鐘楼の点鬼簿には、人間の亡者の名が、一人も記されていないのだからね"
],
[
"だって私は、あの当時樹皮亭(本館の左端近くにあり)の中にいたんですもの。あそこは美男桂の袖垣に囲まれていてどこからも見えはいたしませんわ。それに、クリヴォフ様が吊された武具室の窓だっても、ちょうどあの辺だけが、美男桂の籬に遮られているのです。ですから、ああいう動物曲芸のあった事さえ、私はてんで知らなかったのです",
"でも、夫人の悲鳴だけは、お聴きになったでしょうな"
],
[
"しかし、結局それが、どういう現象を起したのだね?",
"つまり、僕等には伸子の不在証明を認めさせた、また、現象的に云うと、それが、上空へ上った飛沫に対流を起させたのだよ。何故なら、1から4までの順序を考えると、一番最後に上った飛沫の右側が最も高く、続いてそれ以下の順序どおりに、ほぼ疑問符の形をなして低くなってゆくだろう。そこへ、五回目の飛沫が上ったのだから、その気動に煽られて、それまで落ちかかっていた四つの飛沫が、再びその形のままで上昇してゆくだろう。すると、当然最後の飛沫との間に対流の関係が起らねばならない。それが、あの微動もしない空気の中で、五回目の飛沫をふわふわ動かしていったのだ。つまり、その1から4までのものと云うのは、最後に上った濛気をある一点に送り込む――詳しく云えば、それに一つの方向を決定するために必要だったのだよ"
],
[
"そうすると、以前から帷幕の蔭にいたのを、知らなかったのでは",
"いいえ、たぶん私を探しに、寝室の中へお入りになったのだろうと思いますわ。その証拠には、あの方の姿が、帷幕の隙間からチラと見えた時には、そこから少し右肩をお出しになっていて、そのままの形でしばらく立っていらっしゃったのですから。そのうち側の椅子を引き寄せになって、やはりその、二つの帷幕の中間の所へお掛けになりました。ねえいかが法水さん、私の陳述の中には、どの一つだって、算哲様をはじめ黒死館の精霊主義が現われてはおりませんでしょう――だって、正直は最上の術策なりと申しますもの"
],
[
"で、それと云うのは、この事件の動機に、三つの潮流があるということなのです",
"なんですと、動機に三つの潮流が……。いや、たしかそれは一つのはずです。法水さん、貴方は津多子を――遺産の配分に洩れた一人をお忘れかな"
],
[
"法水さん、儂は元来非幻想的な動物です。しかし、だいたい貴方という方には、どうも遊戯的な衝動が多い。いかにも、虹を送ったことだけは肯定しましょう。しかし、儂は絶対に犯人ではない。ダンネベルグ夫人との関係などは、実に驚くべき誹謗です",
"いや、御安心下さい。これが二時間前ならばともかく、現在では、あの禁制があってもすでに無効です。もう何人といえども、貴方の持ち分相続を妨げることは不可能なのですから。それより問題と云うのは、あの虹と窓にあるのですが……"
],
[
"それから、その時他の三人はどうしていたね?",
"それは御各自に、一応はお室に引き上げられたようでございました。そして、曲目の次が始まるちょうど五分前頃に、三人の方はお連れ立ちになり、また伸子さんは、それから幾分遅れ気味にいらっしゃったよう、記憶しておりますが"
],
[
"そうすると、この館にあの四人を入籍させて、動産の配分に紛糾を起させたというのも、つまりが、結論を見出さんがための筋書だったのですね",
"さようでございます。あの方の御父上も同様の頭蓋形体だったそうですが、それもございましたのでしょう、算哲様は御自分の説に、ほとんど狂的な偏執を持っていらっしゃいました。しかし、あの方のような異常な性格な方には、我々の云う正規の思考などというものは問題ではございません。没頭――それが生命の全部であり、遺産や情愛や肉身などという瑣事は、あの方の広大無辺な、知的意識の世界にとれば、わずかな塵にしかすぎないのでございます。そこで、私の父と算哲様は後年を約して、その成否を私が見届けることになりました。ところが、その際算哲様は、すこぶる陰険な策動をなさったのでございます。と申しますのは、クリヴォフ様についてでございますが、あの方が日本に到着すると間もなく、剖見の発表が取り違えられていたという通知がまいりました。そこで、算哲様は一計を案じて、四人の名を『グスタフス・アドルフス伝』の中から採ったのでございます。つまり、その頭蓋による遺伝素質のないクリヴォフ様には、暗殺者の名を。他の三人には、暗殺者ブラーエの手に狙撃された、ワレンシュタイン軍の戦没者の名を附けたのでした。そして、この書庫の中から、グスタフス王の正伝をことごとく省いてしまって、それに『リシュリュウ機密閣史』を当てたのでしたけれども、恐らくその人名は、家族の者にも、また貴方がた捜査官にも、なんらかの使嗾を起さずにいまいと考えられておりました。ですから法水さん、これで、いつぞや貴方に申し上げた、霊性という言葉の意味が――つまり、父から子に、人間の種子が必ず一度は彷徨わねばならぬ、あの荒野の意味がお判りでございましょう。そうして、今日クリヴォフ様が斃されたのですから、そうなると、当然算哲様の影が、あの疑心暗鬼の中から消えてしまうではございませんか。ああ、この事件はあらゆる犯罪の中で、道徳の最も頽廃した型式なのでございます。そして、その黝ずんだ溝臭い溜水の中で、あの五人の方々が喘ぎ競いていたのでございますわ"
]
] | 底本:「黒死館殺人事件」現代教養文庫、社会思想社
1977(昭和52)年4月25日初版第1刷発行
1984(昭和59)年6月15日初版第6刷発行
底本の親本:「黒死館殺人事件」新潮社
1935(昭和10)年5月
初出:「新青年」博文館
1934(昭和9)年4月号~12月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、「法定期限は二ヶ月しかない」以外は大振りにつくっています。
※ヘブライ文字の認定にあたっては、「国際符号化文字集合(UCS)――第1部:大系及び基本多言語面 JIS X 0221-1:2001 (ISO/IEC 10646-1:2000)」日本規格協会を参照し、同規格の文字の名前を鍵括弧内に記載しました。
※「カルテット」と「クワルテット」、「オブ」と「オヴ」、「甲冑」と「甲胄」、「佝僂《せむし》」と「傴僂《せむし》」、「ボーデの法則」と「ボードの法則」、「ザラマンダー」と「サラマンダー」、「鐘鳴器《カリリヨン》」と「鐘鳴器《カリルロン》、「侘《わび》」と「佗《わび》」、「四重奏団《クワルテット》」と「四重奏《クワルテット》団」と「四重奏《クワルテット》曲」、「純護謨製《ピュアー・ラバー》」と「純護謨製《ピュアラバー》」と「純護謨製《ピュアラバァ》」、「ウエイルズ」と「ウエールス」、「天馬星《ペガスス》」と「天馬座《ペガスス》」、「毘沙門天《ヴァイシュラヴァナ》」と「毘沙門天《ヴィシュラヴァナ》」、「フィート」と「フイート」、「白羊宮《アリエス》」と「白羊宮《アリース》」、「巨蟹宮《カンセル》」と「巨蟹宮《カンケル》」、「クミエルニツキー」と「クメルニツキー」、「ボルケン・ハウス」と「ボルケンハウス」、「何人《なんぴと》」と「何人《なんびと》」の混在は、底本通りです。
※底本は、空白の罫囲み以外を、破線でつくっています。
※底本は、傍線下部に、1~7の注記をつくっています。
入力:ロクス・ソルス
校正:小林繁雄
2006年5月17日作成
2014年5月24日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "001317",
"作品名": "黒死館殺人事件",
"作品名読み": "こくしかんさつじんじけん",
"ソート用読み": "こくしかんさつしんしけん",
"副題": "",
"副題読み": "",
"原題": "",
"初出": "「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2006-05-31T00:00:00",
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"人物ID": "000125",
"姓": "小栗",
"名": "虫太郎",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "むしたろう",
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"姓ローマ字": "Oguri",
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"役割フラグ": "著者",
"生年月日": "1901-03-14",
"没年月日": "1946-02-10",
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"底本名1": "小栗虫太郎傑作選1 黒死館殺人事件",
"底本出版社名1": "現代教養文庫、社会思想社",
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} |
[
[
"それは、被害者の胎龍だけが、繁くこの堂に出入りしていたと云うからね。多分その辺に原因があるに違いないぜ。それから、今朝八時に検屍したのだが、死後十時間以上十二時間と云う鑑定だ。然し、傷口の中に羽蟻が二匹捲き込まれている所を見ると、絶命は八時から九時迄の間と云えるだろう。昨夜はその頃に、羽蟻の猛烈な襲来があったそうだよ",
"すると、兇器は?",
"それがまだ発見からんのだ。それから、この日和下駄は被害者が履いていたのだそうだ"
],
[
"場所もあろうに、頭の頂天に孔を空けられて、それでいて抵抗も苦悶もした様子がないなんて――。こんな判らずずくめの事件には、ひょっとすると、極くつまらない所に解決点があるのかも判らない。時に君は、手口に何か特徴を発見したかね?",
"たった、これだけのものさ。――尖鋭な鏨様のものが兇器らしいが、それも強打したのではなく、割合脆弱な縫合部を狙って、錐揉み状に押し込んだと云うだけだ。所が見た通り、それが即死に等しい効果を挙げているんだ"
],
[
"と云うと、何を考え付いたのだ?",
"大した事じゃないがね。僕は地史学者じゃないが、一つの骨片を発見したのだよ。それで、骨格の全貌だけでも想像付くと云うものさ",
"フム、そうすると",
"と云って、指紋のような直接犯人の特徴を指摘出来るものではない。今も云った通り、屍体の謎を貫いている凄まじい底流なんだ、つまり殺人技巧の純粋理論なんだが、その軌道以外には、この変種が絶対に咲かない事を記憶して欲しいと思うね"
],
[
"関係者を訊問して何か収穫があったかね",
"所が、動機らしいものを持った人物が一人もいない始末だが、その代り、どれもこれも、一目で強烈な印象をうける――宛然仮面舞踏会なんだよ。然し、そう云う連中が、神経病患者の行列ではなくて、真実芝居しているのだとすると、その複雑さは君でも到底読み切れまいと思うがね。とにかく訊問してみ給え。恰度今し方、この傷口にピッタリと合う彫刻用の鏨が、同居人の厨川朔郎と云う洋画学生の室で発見された所なんだ"
],
[
"ハハハハ熊城君、多分この矛盾は、間もなく判る筈だよ。それから奥さん、その時御主人の様子に、何か平生と変った点があったのをお気付きになりませんでしたか?",
"ハァ、別に最近の主人と変ったような所は御座いませんでしたが、どうした訳か、空闥さんの日和を履いてしまったので御座います。それから十五分程経って、慈昶が戻ったらしい咳払いを聴きましたけれども、空闥さんはその時、本堂脇の室で檀家の者と葬儀の相談をしていた様子で御座いました。主人は二、三日来咽喉を痛めて居りますので、黙祷と見えて読経の声も聴こえず、夕食にも戻りませんでした。ですから、毎夜の例で十時頃に、私が池の方へ散歩に参りました途中、薬師堂の中で見掛けましたのが、最後の姿だったので御座います",
"所が、その時とうに、御主人は玄白堂の中で屍体になってた筈なんですがね"
],
[
"ただ、護摩の煙が大分薄いな――と思った位の事で、主人は行儀よく坐って居りましたし、他には何処ぞと云って……",
"では、帰りにはどうでした?",
"帰り途は、薬師堂の裏を通りましたので……。それから十一時半頃でしたが、主人の室の方で歩き廻るような物音が致しました。私は、その時戻ったのだと信じて居りましたのですが"
],
[
"そうでしょう。あの大師外道めは、誰かの念入りな悪戯だと云いますでな。てんで念頭にはありますまい。然し、科学とやらでは、どうして解く事が出来ましょうか。いや、解けぬのが道理なのですじゃよ",
"すると、像の後光はその時だけでしたか",
"いや、その後にもう一度、五月十日にありました。その時見たのは、つい先達暇をとった福と云う下女でしてな",
"今度のは何時頃でしたか?",
"左様、確か九時十分頃だったと思いますが、恰度その時私は時計の捻子を捲いて居りましたので、時刻は正確に記憶しとりますので"
],
[
"それから池の畔に行ったのですが、真暗なので犬を深す事が出来ません。それで致し方なく、口笛を鳴らしながら彼此三十分近くも蹲んで居りますうちに、向う岸の雫石さんの裏手辺りに誰かいたと見えて、莨の吸殻を池の中へ投げ捨てたのが眼に入りましたので。その癖、寺では莨喫みが儂一人だけで御座いますが",
"では、帰りにも提灯が点いていたかね?",
"いいえ、提灯どころか、扉が閉っていて真暗でしたが"
],
[
"所が、いま全体の陰画が判ったのだよ。胎龍の心理が、どう云う風に蝕ばまれ変化して行ったかと云う……",
"フム、と云うのは",
"それはこうなんだ。実は、先刻胎龍の室を捜して、僕は手記めいたものを発見したのだ。勿論他には注目するに足る記述はないけれども、夢を書き遺してくれたので、大変に助かったよ。――五月二十一日に、近頃幾晩となく、木の錠前に腰を掛けた夢を見るのはどうした事だろうとある。それから六月十九日に、自分の一つしかない右眼を刳り抜いて、天人像に欠けている左眼の中に入れた――とあるのだよ。所で、僕はフロイトじゃないが、早速この夢判断をする事にした。実にそれが、胎龍の歪められて行く心理を、正確に描写してあるのだ。で、まず最初に、三月頃胎龍に時々起った失神状態と云うのを説明して置くが、それは、性的機能の抑欝から起る麻痺性の疲労なんだ。その証拠が、面皰云々の夢で、それが充たされない性慾に対する願望だと云うのは、面皰を潰した痕が女性性器の象徴だからだよ。つまり、それに依って、柳江の方で、胎龍から遠ざかって行ったと云う事が判るだろう。それから、次の木の錠前だが、錠前もやはり女性性器を現わしている。然し、木と云う言葉は、結局木像を意味しているのではないだろうか⁉ すると、像の不思議な後光に打衝って、初老期の禁ぜられた性的願望が、如何なる症状に転化して行ったか――その行程が明瞭になる。それは、彫像愛好症なんだよ。そうして、胎龍は精神の転落を続けて行ったのだが、勿論それに伴って、性的機能が衰滅する事は云う迄もない。で、その症状を自覚したのが一転機となって、その後の事が最後の夢なのだ。胎龍が自分の一つしかない眼を刳り抜いて天人像に捧げると云うのは、沙門の身であられもない尊像冒涜の罪業を冒した懲罰として、仏の断罪を願望としたからなんだ。ねえ、ジャネーが云ってるだろう。肉体にうける苦痛を楽しむよりかも、精神上の自己膺懲に快楽を感ずると云う方が、よりも典型的なマゾヒィストだと。そう云う風に非常に変った態だけれども、ともかく一種の奇蹟に対する憧憬とでも云えるものが、胎龍の堕ち込んだ最終の帰結点だったのだよ。すると、今年に入ってから胎龍の心理に起った変化が、此れで判然説明が付くじゃないか。そして、それが僕の想像する去勢法の行程を辿っているので、その間主要な点には、必ず外部から働き掛けたものがあったに相違ないのだ。だから、もう少し判って来れば、兇器の推定がつくと云う訳さ"
],
[
"で、此処迄判れば、屍体が絶命前の強直状態をその儘持続したと云う事が確実になる。事実、珠数の緊縛を解いて重心を定めたので、恰度祈祷中宛然の姿を保つ事が出来たのだ。おまけに、蝋受の皿がペッタリと冠さったので、流血が略々火山型に凝結してしまったと云う訳なんだよ。さてそれから、薬師堂の扉を開け放して提灯を点し、目撃者を作った事は云う迄もないが、久八が通り過ぎたのを見定めると、今度は胎龍の日和下駄を履いて、坐像の屍体を玄白堂に運び入れたのだ。つまり、支倉君が少し溝が深いと云ったのは、その時の足跡なので、帰りは裸足で石の上から左壁近くに跳び、その足跡をすぐ、池溝の堰を開いて消したのだ。そうして厨川君は、犯行の全部を終ったのだよ",
"成程、それで提灯を灯した理由が判る"
],
[
"何しろ、血に染んだ個所と云うのが、鉄芯から蝋受皿の内側にかけてだけだろう。だから、その部分を洗ったにした所で、後で蝋燭を鉄芯の間際迄灯すから、尖鋭な槍先から下の不自然な部分が流れる蝋ですっかり隠されてしまう。併し、それを吊して人目に曝したのは、狡猾な擾乱手段に過ぎないのだ",
"すると、堰を切ったのも厨川だろう"
]
] | 底本:「二十世紀鉄仮面」桃源社
1969(昭和44)年5月10日発行
入力:酔尻焼猿人
校正:土屋隆
2004年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "004841",
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[
[
"僕が坐魚礁(失楽園の所在地)に、一度も足を踏み込んだ事がないといったら、君はさだめし不審に思うだろう。けれども、それが微塵も偽りのない実相なので、事実河竹に杏丸という二人の助手以外には、この私でさえも入ることを許されていなかったのだ。つまりあの一廓は、院長が作った絶対不侵の秘密境だったのだよ",
"所で、殺されたのは?",
"助手の河竹医学士だ。これは明白な他殺だそうだが、妙なことには、同時に院長も異様な急死を遂げている。とにかく、斯んな田舎警察にも、万代不朽の調書を残してやってくれ給え"
],
[
"所が、法規上屍体保存の許可と取引代価を、遺族の者に交渉することになりますと、偶然三人の代表が島へ渡って来ました。それが、一昨々日、つまり十一日の事だったのです",
"すると、まだ滞在しているのですね"
],
[
"所で、事件を発見した顛末を伺いましょう。院長と河竹医学士とどちらが先でしたか",
"院長の方です"
],
[
"所が法水さん、此処に見逃してはならぬ、出来事があるのです。というのは、院長の死を発見する直前に、屍蝋室の窓下で、番匠鹿子が卒倒しているのを見付けたのでした。勿論すぐ室に抱え込んで気付を与えましたが、その後は顧る暇がないので、十一時ごろになって漸っと見舞ってみました。すると、その時は平常通りケロリとなっていて、何時の間にか寝台から離れて起き上っていたのです",
"すると、河竹の死に対して、鹿子は明白な不在証明を欠いているという訳ですね"
],
[
"空気栓塞には、猛烈な苦悶が伴いますし、流涎や偏転の形跡もないのですから、脳溢血とも思われませんし……。それに、こんな開放された室内では、有毒瓦斯は用をなさんでしょう",
"そうです。そうあってくれると、実に助かるんですよ"
],
[
"実は私も不審に思っているのです。これは、幹枝の腹水と一緒に取り出された、膜嚢なんですからね。当時、三十幾つか取り出されて、現在は屍蝋室の硝子盤の中に貯蔵されているのですがなかには膜が、相当強靭なものもあるのですよ",
"なるほど"
],
[
"全く腹腔内の異物が、こんな所に散乱しているなんて、実に薄気味悪い話です。けれども、そう思うのは、これを犯罪の表徴だとするからですよ。もし、兇器の一部だとしたら……",
"オヤオヤ、他殺説を持ち出されると、前が私の室ですからね。しかし、この膜嚢に有毒瓦斯を詰めたと仮定しても、これだけの距離を投擲する前に、第一この薄い膜が無事ではいないでしょう。そうすると今度は、中庭に足跡がないと、いうことになってしまうのです"
],
[
"こりゃ全く、手の付けようがない。内出血が起って、外部へ流れた血が少ないので、刺された時の位置さえ判らんのですよ",
"然し、二時前後に博士を殺して、それから夜が明けて、八時ごろ河竹を殺すまでに、犯人は一体どこに潜んでいたのでしょうな"
],
[
"たった一目妹を見たいと思ったばかりでした。昨夜一時ごろ、あのひどい濃霧の中を、私は屍蝋室の窓下へ参りました。でどうやらこうやら、鎧窓の桟だけを、水平にする事が出来ましたが見えたのは、嚢のようなものが浮いている、硝子盤らしいものだけで、それが擦った、燐寸の火に映っただけで御座います。けれども、その時あの室の中に誰かいるような気配が致しました",
"冗談じゃない。三つの死蝋の他誰がいるものですか。あの室は、院長以外には絶対に開けられんのですよ"
],
[
"僕には、貴方が得たり顔をした、理由が判りません。疑問はいよいよ深くなる一方じゃありませんか。破れた膜嚢がないのですから、第一浮動した説明が、付かないでしょう。それに、鹿子が見た光というのが、また問題です。それが、ガラス窓越しに中庭の向うから放たれたのだとすると、見た通りガラス盤の後方は、二人の死蝋が着ている、朱丹と緑青色の布とで塞がっているのですから、あの様に真白に見える、気遣いはないのです。いよいよ以って、妖しい光は、ガラス盤の周囲で起ったことになりますよ。犯人は、明白に吾々四人以外の、霧のような人物です。それなのに、どうして貴方は?",
"その理由はほかにあるのですよ"
],
[
"で、こういったら、或は皮肉と考えられるかも知れませんが、鹿子の目撃談が、真実に証明されたからなんです。ねえ杏丸さん、その刻限が、恰度博士の絶命時刻に、符号しているでしょう。ですから、暈とした気体のようなものから、結晶を作ってくれる、媒剤を発見した気持がしたのですよ。つまり、以毒制毒の法則が使えるからです。謎を以って謎を制すのです",
"だが、犯罪の捜査に弁証法は信ぜられませんな"
],
[
"何より直覚ですよ。貴方は何故鹿子を追求しないのです?",
"ハハハハハ、ところが、鹿子より以上の嫌疑者がいますぜ",
"なに、鹿子以上の?"
],
[
"犯人が解りました",
"コスター聖書の在所もですか"
],
[
"如何にも、あの目撃談は真実です。まさに、妖しい白光が起り、内部の膜嚢は動いたのでした。すると、無論その光の光源が、硝子盤の附近にあれば、事実あの室に人間が潜んでいたか、それとも、超自然の妖怪現象になるのですが、飽くまでも実在性を信じたい私は、その光源を、硝子盤の遙か後方に持って行ったのです。けれども、硝子盤の背後には死蝋が着ている、朱丹と緑青色の衣裳があって、それが障碍になります。然し、この場合は却ってその障碍が、鹿子さんの眼にあり得ない不思議を映したのでした。鹿子さん、たしか貴方の眼は、軽微な赤緑色盲に罹っているのですね",
"それを、よくマア御存知で……"
],
[
"御覧の通り、杏丸氏の実験室からでは、位置が一寸斜いになっているので、弧線のために、隣室に打衝ってしまうのです。また、煙硝が直接火を呼ばないためには、導火線の長さも考えなければなりません。そうすると、飛去来器使用の犯行が、すっかり行き詰まってしまうのですが、私は不図した思い付きで、復路が終ろうとする際に、もう一度、飛来する力を与えたらと思いました",
"なに、もう一度……"
],
[
"要するにこれは、犯罪を転嫁しようという行為なのですが、飛去来器といい花火といい、十分理学的に計算出来る性質のものですから、この犯行には相当の確実性があります。使った有毒気体は、屍体に青酸死の徴候がない所を見ると、多分砒化水素だったのでしょう",
"だが、瓦斯は散逸してしまうぜ"
],
[
"所で、霧の中へ、温度の違う気流が流れると、霧が二つに分れる現象を御存知でしょうか。つまり、ヘルムホルツなどという、偉い学者の名を使わなくても、水蒸気の壁と温度の相違が、散逸を防ぐからなのです、ですから、昨夜の濃霧は、犯人にとると此の上もない好機だったのですが膜嚢が破れて飛び出した砒化水素は、炸裂に際して起る旋廻気流が上方にあったため、それに押されて、長い紐状となって下降して行きました。そして、その一端が、博士の鼻孔に触れたのです",
"すると、犯人は?",
"無論、河竹医学士です",
"では、その河竹を殺した者は?",
"所が、河竹は自殺したのです"
],
[
"河竹の捻れた性根は、自分の悲運を何人かにも負担させようとして、実に驚くべき技巧を案出しました。あの短剣は、横手にある実験用瓦斯の口栓から、発射されたのでした。まず河竹は短剣の柄を栓の口に嵌め込んでから、そこと元捻迄の鉛管に小さな孔を開けて、其の部分の空気を排気唧筒で抜いてしまったのです。そして元捻には蝶形の一方に糸を結び付け、片方の端を、鳩時計の小さい扉の中にある、螺旋に結び付けました。その螺旋は、一時間毎に弛んで、弛んだ時に小扉が開き鳩が動くのですが、勿論その仕事は、時間が来て小扉が開く、直前になされたと見なければなりません。すると、時刻が来て、鳩の出る扉が開くと、糸が押されてピインと張るので、蝶形を引いて瓦斯の栓を開きます。そして、真空の中に噴出する悽じい力が、口元の短剣を発射させたのでした。然し、計量器のねじが閉っているので、噴出した僅かな量は、瞬く間に散逸してしまいました。また、一方の糸は手許に引いた機みに蝶形から抜けて、その後一時間の間に、鳩時計の螺旋の中に納められてしまったのですよ",
"では、やはり河竹が犯人だったのか。それにしても、一体どう云う動機で……"
],
[
"で、その動機をいうと、自分に兼常博士を殺させたものが、途方もない正体を現わしたからで、それはいうまでもなく、コスター聖書でした。河竹は、漸くその在所を知ることが出来たので、強奪を企んで兼常博士を殺したのですが、不思議なことにコスター聖書は、自身を河竹に奪わせなかったのです",
"おお"
],
[
"お戯れは止めて下さい。サア早く、コスター聖書を",
"これがそうなのです。兼常博士は、この胎児の木乃伊をコスター聖書に比喩えたのですが、その理由はというと、双胎の一方が圧し潰されて出来る紙形胎児を、単に他の美しい言葉と換えたに過ぎなかったのです"
]
] | 底本:「二十世紀鉄仮面」桃源社
1971(昭和46)年11月15日発行
入力:野口英司
校正:小浜真由美
1998年8月8日公開
2011年2月27日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "000667",
"作品名": "失楽園殺人事件",
"作品名読み": "しつらくえんさつじんじけん",
"ソート用読み": "しつらくえんさつしんしけん",
"副題": "",
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"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
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"人物ID": "000125",
"姓": "小栗",
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"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "むしたろう",
"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Mushitaro",
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"生年月日": "1901-03-14",
"没年月日": "1946-02-10",
"人物著作権フラグ": "なし",
"底本名1": "二十世紀鉄仮面",
"底本出版社名1": "桃源社",
"底本初版発行年1": "1971(昭和46)年11月15日",
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"校正に使用した版1": "1971(昭和46)年11月15日初版",
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[
[
"ねえ旦那、こりゃ他殺でしょうかねえ。きょう日は、裸で涼むような、時候でもねえんだし……",
"サア、そりゃ、どうとも分らんよ"
],
[
"出せ、船を出せ",
"冗談じゃないよ、時間切れだぜ。これでも、東京市橋梁課の渡船なんだ。お役所仕事だぜ。銭をとる渡しと、ちったァわけがちがうんだ",
"頼む、今夜は洲蘆の出島に、ぜひにもの用があるんだ。ねえ君、判任官閣下、頼むから君、かけ合ってくれ給えな"
],
[
"なるほど、事情を知らん君は、そう思うだろうがね。いまの男を、君は誰だと思う。知っておるじゃろう――つい四、五年まえ、主任検事級で鳴らした左枝八郎という方を……",
"ああ、左枝八郎……"
],
[
"だが、どうにもそれは信じられませんよ。あの変りかたは、いったいなんということです。左枝八郎ともあろう人が、『欧航組』の、組織を木葉微塵に叩き潰した方が、なんという……",
"そうだ、あの方がああなるについては、いまの、『欧航組』の大検挙に原因があった。――それでと云うても勤務中だが、君に警察医が来るまで、かいつまんで話してあげよう"
],
[
"その、『欧航組』というやつは、君も知っとるであろうが、以前船員だった連中が企んだ、大仕掛な密輸団だった。おまけに、港々には、春婦宿を経営していたし、大規模な、世界を股にかけた、人肉買売までもやっておった。ところで、その組織を云うと、四人の秘密組合になっておってな。そのなかで、高坂三伝というのが、マア首領株で、他にはたしか――それが、三、四、五と順になるような名前じゃったと思うたが――それぞれ船場四郎太、それから矢伏五太夫、もう一人は、ちょっと度忘れしたが、そうだった、成戸六松というその四人じゃったと思うたよ。ところが、しまいには、仲間割れをしおってな。なにしろ、その三伝という男が、冷血なことこの上なしという辣腕家だったで、自然独裁の形にもなるし、他の三人も、自衛上三伝と対立するようになった。つまりが、勢力争いじゃ。そうして、感情やら、利害の衝突やらがつのりきった結果が、誰も知るとおり三伝の死ということで終ったのだよ。それも、一味が検挙されてから、はじめて分ったことで、三伝は横浜の事務所で、矢伏五太夫のために心臓を狙い撃ちにされた。屍体はそのまま、窓から海に落ちて分らずじまいになってしもうたが、いや三伝の死は、無類この上なしという確実なんじゃ。まさか、射ちはしまいと、軽く考えていたのじゃろう。三伝はせせら笑って、弾莢までも調べさせ、サア射てとばかりに、麗々しく胸をはだけたそうだ",
"なるほど、度胸も相当だし……芝居気たっぷりな奴ですね"
],
[
"ですが、居合せたもののなかで、誰かその辺の機微を、知っている者はなかったのでしょうか",
"ところが君、耳というやつはじゃよ。両側で、同時に非常な高い音を出された場合、その人間には、音の見当というのがてんで付かなくなってしまうそうだよ。そのことは、居合せた証人で、抱え淫売婦のお悦という女が証言しておる。それに、船場の女中の話によると、その遺書は、わずか五、六分の間に認められたのだし、むろん、筆跡には寸分の相違もないし、そうこうの事で、左枝検事はポンと辞表を投げ出してしもうた",
"自分が起訴をして、死刑になった男が、無罪という……。そりゃ、左枝検事でなくても、たまらないでしょうからね",
"それで、職を退いた後の左枝検事は、自暴自棄という有様で、奥様には去られるし、もともと資産というほどのものもないし、今では、どうして暮しておられるのか、まったく沙汰の限りじゃよ。ああ、憔悴れ果て、うらぶれた姿を見たら、誰が、法衣に包まれた昔の検事を思うじゃろうか。だが儂には、そういう気持が、てんで分らんがねえ。自分の起訴が正しかったか正しくなかったかって。ハハハハ、あの御仁は哲学者じゃよ"
],
[
"なんでございますか、もしなんぞ、御用件がおありでしたら",
"実は"
],
[
"今夜お訪ねをしたわけは、貴女なら僕をお救け下さるだろうと思ったからです",
"な、なにをおっしゃるのです"
],
[
"貴女が、僕をどう思っていらっしゃるか……。僕は、貴女のお父さんを起訴して、絞首台に送りました。しかし後で、その事実が、間違っていることが分りました。貴女はお父さんが、理由のない首を絞められたのを御存知でしょう",
"いいえ、そのことについては、私、少しもお怨みはしておりませんの、何事も、運命ですわ。それに、父の方だって、私の知らない間に、大変悪いことをして……",
"では、僕が控訴したのをお忘れになったのですね。それがあったばかりに、一審の有期刑が、どうなったと思います? もし僕が、お父さんにそのままの服役を許したとしたら、船場四郎太の告白で、殺人の罪が消えてしまったことになるのです。御覧なさい、この手です。この手が、むざとせっかくの機会を捥り取ってしまったのです"
],
[
"でも、そんなことより、貴方には復職のことが大切じゃございませんの。四郎太の遺書が、もしかして偽造とでもなったら、その悪い夢もきっと消えてしまうと思いますわ",
"ああ、あの遺書がですか、だが僕には、遺書よりも、もっと大切なことがあるのです。それは、船場という男ですが、あの人間には、悔悟とか自殺とかいう性格は、微塵もありませんからね"
],
[
"当時『船』と云や、もぐりの遊び場の中で、歴としたものだったよ。いまと違って、組が二つほどあってね。『白星組』に『青いリボン組』という、女にだっても、やれ『金の矢』とか『銀の翼』とか、いちいちそれは穿った、船の名前がつけられていたんだよ。それに、お前さんのようなのを小蒸気と云ってね。『水精の蕊』なんて源氏名があったものねえ",
"じゃ、そのとき姐さんは、なんという名だったの",
"私かえ、私は、『ブーランジェ将軍』号さ"
],
[
"なにを云うのかと思っていたら、姐さんも、案外心理学者ね。だけど、私の気持おんなじよ。たとい、お金を貰ったにしろ、この稼業は当分続けてゆこうと思うの",
"マア、呆れたよ。すると、お前さんのような人間が、ほんとうの淫売婦なんだね。お金を持っていて、どうやら暮してゆけるくせに、それでいて、男を道楽したいというのが、ほんとうのお女郎なんだよ。それじゃ、私から相談があるんだけど……"
],
[
"お悦ちゃん、大変なことになってしまったんだよ。本当に、私たちを信用しておくれね。とても、夢でもなけりゃ、信じられない事が起ってしまって……。実はお前さん、先刻成戸さんに、金を取りに行ってもらうと、銀行じゃ、それを四年前にお渡ししてしまったと云うじゃないか。その渡した日というのが、三伝が死んでからちょうど四日目のことで……それも、受取った当人が……お、お前さん、しっかりしておくれよ……それが、さ、三伝だと云うのさ",
"え、三伝が生きていた……"
],
[
"あたいは、何が何だかいっこうに分らないんだけど、とにかく成戸さんが、ドロドロだって云うんだからね。莫迦にしてるじゃないの。高坂三伝が、三伝が生きてるんだって。三伝が、死んで四日目に銀行へ現われたんだとさ",
"そうか、ついでに何かと思ったら、お化け話か。三伝が、三伝が現われた、死んだはずの、高坂三伝が、蘇ったときたな"
],
[
"なに、男の屍体だって。左枝さん、まさかお前さんは、冗談を云うんじゃないだろうね",
"それどころか、曳舟の推進機で、首のなくなった奴を、この眼で見てきたんだ。下腹を一文字にやられてね、しかも、殺ったそいつが、左利きときてるんだ",
"ああ、それじゃ稲野谷……"
],
[
"ですがねえ女将、此奴がお悦を殺した、理由が分らねえように思うんだ。云わせたら、どうでしょうね。オイ左枝、何もかも、ここで打ち明けてしまったらどうかね",
"吐くとも、腹の底まで吐いてしまうよ。そこで、まずこの機械錐だがね。君も見るとおり、一抉りというにしては、少々先が鈍すぎるんだ。こんなもので、お悦の眼を醒まさずに、やり了せられると思うなら、それは君の方から伺いたいものだよ。ハハハハ、いくら鈍いお悦の神経だって、これじゃ、どうやら魔睡が必要になってくるぜ"
],
[
"だから、白状すると、犯人はこの僕じゃないということになるんだ。僕が、どうして殺るもんか。君は、この女を、人世の虱を――僕が捻り潰したとでも云うのかね",
"いいえ、貴方ですわ"
],
[
"ここへ連れて来られるとき、貴方は前後不覚だったじゃないの。間違えて……、ほんとうに、姐さんの可哀想なことったらね。私と感違いして、顔もろくろく見ずに、貴方が殺ってしまったにちがいないわ",
"さ、早苗"
],
[
"じゃ早苗、すると君は、僕がこの室を出て、お悦を射殺してからまた入って来たと云うんだね。だが、僕のどこに、そんな銃器があるだろうか。君はお悦が、どうして殺されたかも知らないでいて……",
"なに、銃器"
],
[
"だが、それは別として、君に訊きたいんだが、君は昨夜、瓦斯ストーブの栓に躓いたようだったね。それまでに、栓がどうなっていたか、気づかなかったかね",
"開いてましたわ、ごくほんの少しね。だけど……"
],
[
"それから、もう一つ訊きたいんだが、君は一度でも、稲野谷の顔を見たことがあったかね",
"いいえ、顔は一度も見ませんでした。ただ一度、今年の正月でしたか、開橋式の花火をみんなが見ているとき、女将さんがいそいそと廊下を通りかかり、その時、帰ってゆくらしい後姿を見ましたの。中背の小肥りな人で、女将さんは、あの方を見られるのを、そりゃ嫌がっていましたわ"
],
[
"だいぶ今夜は、お前さん、気込んでいるらしいが、なんだい、ここでお悦の身体を焼きたいとでも云うのかね",
"君に三伝を出してもらいたいんだ。どこにいる、あの稲野谷兵助は、三伝の別名じゃないか",
"え、なにを云うのさ"
],
[
"じゃ、ど、どこにいるって云うのよ。貴方は三伝が、いったいどこにいるって云うのよ",
"たぶん、成戸がいる、お悦の部屋だと思うがね"
]
] | 底本:「潜航艇「鷹の城」」現代教養文庫、社会思想社
1977(昭和52)年12月15日初版第1刷発行
底本の親本:「地中海」ラヂオ科学社
1938(昭和13)年9月
初出:「新青年」博文館
1937(昭和12)年2月号
入力:ロクス・ソルス
校正:安里努
2013年1月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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[
[
"なぜいかんのだ。ゴリラが獲れるなんて千載に一遇ではないか",
"それがです。旦那は、野象の穴へ落ちたとき、磁針をお壊しなすったので、儂らは、どっちへどう出たらこの森を抜けられるか、いま途方に暮れているでがす。そこへ、あのゴリラが教えてくれたでがすよ。つまり、おらが歩んでゆく先が北に当るぞちゅうて……",
"そんなことが、お前にどうして分るね?",
"あのゴリラは、いま森の墓場へ死ににゆこうとしているのだ。それが、わしらにはゆけねえ悪魔の尿溜にあるちゅうだ。ゴリラはな、雨が降るとあんなには歩きましねえ。ぼんやりと、手を頭にのせてじっと蹲んでおりますだ。わしらは、幼けなときからゴリラをみてるだが、雨んなかを、死神にひかれて歩かせられてゆくような、ゴリラにかぎって北へゆかねえものはねえでがす"
],
[
"座間君、カークが僕になにを見せようというのだね。僕が、アッと魂消るようなものというから船を下りたんだが……",
"秘中の秘です。なんとでも、先生のご想像にお任せしましょう",
"じゃ、オカピか、ゴリラかね",
"はっはっはっは、そんな月並みなものなら、お引き止めはしませんよ"
],
[
"すると、これを獲ってから大分になるんだね",
"いいえ、此処へきてまだ七日ばかりですよ。第一ドドが、僕の手に落ちてから二週間とはなりません",
"ドドとは……",
"僕らがつけた、この紳士の名前です",
"はっはっはっは、じゃ、有尾人ドド氏というわけだね"
],
[
"僕は陥穽をにらんで四昼夜も頑張っていました。すると、五日目の昼になってとうとうやって来ました。それが、なん歳ぐらいのものか藪の密生で分りませんが、とにかく、ぴしぴし枝を折りながら樹洞のほうへやってくる。やがて、えらい音がしてどっと土煙があがりました。しめた、生きたゴリラなら十万ドルもんだと、さっと土人と一緒に勢いよく飛びだすと……どうでしょう、たしかに落ちたはずのゴリラの真正面に向きあってしまったのです。しかし、すぐ相手は四足で逃げ出しましたがね",
"ほほ、陥穽に落ちたのがそのゴリラでないとすると……ドドかね",
"そうなんです、しかし、覗きこんだときはさすが驚きましたよ",
"そうだろう。君みたいな……、コンゴ野獣の親戚でも、これには驚くだろう。しかし、最初のうちは抵抗しただろうが",
"それがしないのです。じつに、ひどい苺果痘にかかっていたのです。僕は、なにより可愛想になってきて、さっそく皮膚に水銀膏をなすってやると、大分落ちついてきました。もう以前のように幹へからだを擦ったり、泥を手につけて掻きむしるようなことはしません。ただ、目をほそめて僕の手にある、水銀膏の罐をものほしそうにながめているのです。それで僕はこいつは物になると思って、その罐を囮に手近かの部落まで、とうとうドドをなにもせずにひっ張ってきたのです",
"なるほど、さすがはジャングルの名人芸だね"
],
[
"じゃ、ドドが原人なんでございますね。とうに、数百万年もまえに死滅しているはずの……",
"とにかく、人間黒猩々の雑交児という説に、これはむろん並行していえると思うね。いや、わしは断言しよう。古来、いかなる蛮人にもこれほど下等な頭骨はない――と"
],
[
"まだ捕獲した場所を聴いてなかったね。いったい、このドドをどこで見つけたんだ?",
"それが、ほぼ東経二十八度北緯四度のあたりです。英領スーダンと白領コンゴの境、……イツーリの類人猿棲息地帯から北東へ百キロ、『悪魔の尿溜』の魔所へは三十マイル程度でしょう"
],
[
"君、あれなんだがね",
"あれって? 飛行機がどうしたというんだね",
"つまり、ドドのことなんだ。ドドは、飛行機をみてもけっして恐がらないのだぜ。かえって、嬉しそうな目付きで、奇声さえあげる。そうかといって、『悪魔の尿溜』の近傍に航空路はないよ。英帝国航空も、フランスの亜弗利加航空も、それぞれ地図のうえで半度以上も隔っている。奇怪だ。猿人、原人といわれるドドが飛行機に驚かない。それでいて、王蛇や豹をみるとひどく恐がる",
"きっと『悪魔の尿溜』探検の飛行機でもみたんだろうよ。しかし、五度や六度で、馴れるとは思われないな"
],
[
"さっき、ヤンがたいへんな目をして、ハアハアいいながら水を飲んでいましたよ。それからカークさんは、拳固のへんに辛子膏をなすっていらっしゃるんですの",
"じゃ、やったんでしょう。カークは、いつかやってやると言ってましたからね。ジャングルの主が野牛を殴りとばすような勢いでやったんじゃ、ヤン君もさぞ痛かったでしょう。しかし、ヤン君の身にもなれば……",
"え? なんのことですの"
],
[
"火がわかったのが三週まえでしたね。手工はどうでしょう?",
"まだ、そんなにお急きになったって……。でも、先生から言いつけられたことは、ちゃんちゃんとしてますわ。ちかごろは、いったいドドがどんな機嫌でいるか――つまり、ドドの感情表出も見ています",
"はあ、それがわかりますかね",
"ええ、第一ドドは笑われるのを嫌います。それに、色も知っているし記憶力もたしかです。また、相当な学習能力もあります。それで、いつもあたしが使っている水仙色の封筒ね、あれを、構内のポストに入れるのを昨日あたりから覚えましたの",
"ほう、そりゃお手柄だ、それから、先生がいわれた餌料による実験は?"
],
[
"君、馴育掛りのお嬢さんへようくいわなきァ駄目だぜ。鍵を忘れたもんだから勝手にでちまって、それに、此奴までがえらく亢奮している",
"どこにいたんだ?",
"患者面会人室の廊下の羽目際だ。なにか、こいつが亢奮するようなことがあったらしい"
],
[
"君、僕は旅行しようと思う",
"よかろう、君はきのうの晩ちょっと変だったが、きっと、過労のせいだと思う。どこへゆくね? スイスかウィーンかね",
"いや、この大陸のずうっと内核へゆきたいんだ。コンゴのイツーリからずうっと北へ――僕は、未踏地帯にゆく",
"え?",
"ぼくは『悪魔の尿溜』へゆくんだ!"
],
[
"よし、聴こう。しかし、命がけの観光なんてないからね。むろん、目的もあり見込みもあってのことだろう",
"そうだ。ときにカーク、君はコンゴへいり込んで禁獣を狩る。それで、いちばん金になったときはどのくらいなもんだ",
"マア、五万ドルかね。オカピを獲ったときは、そのくらいになったが",
"ゴリラは?",
"あれは獲れん。あいつは、遅鈍ついているようだがそりゃ狡猾で、おまけに残忍ときてるんだから始末がわるいよ。いっそ、猩々のような教授然としたやつか、黒猩々みたいな社交家ならいいがね、どうも、厭世主義者とか懐疑主義者というやつは、猟師にはいちばん扱いにくいんだよ。しかし、射殺しただけでも二、三万にはなるだろう",
"じゃ、そのゴリラが……、無数と、死体をならべている渓谷があったとしたら……。ざっと、世界の大学を六百とみて、それに、骨格一つずつ売ったにしても、千万長者にはなれる。だが、それは君の仕事だ。僕の目的は別のほうにある"
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"僕は、友情にかけ君の勇気を信じていう。ところで、君は、ヘロドトスという歴史家を知っているかね",
"むろん、みたことはないが名だけは知っている。ギリシアに、昔いたという博識だろう",
"そうだ。ところが、そのヘロドトスが書いたなかに、ナイル河の水源についてこういうことがある"
],
[
"なるほど、しかしその、むずかしいラテン語を説明してもらおうじゃないか",
"それはね、『盤根の沼』というのは、錯綜たる根の沼だ。沼が盤根錯綜たる、叢林のしたにあるという意味だ。それから『知られざる森の墓場』というのは、巨獣の終焉地だ。死体をみせぬ象や類人猿がそこにきて眠るという。ねえカーク、どっちにしても、悪魔の尿溜じゃないか。しかも、有尾人ドドの故郷だ"
],
[
"どうもしませんよ。僕は、相変らずの僕ですが",
"いいえ、ちがっています。まえは、そんな冷ややかな七郎ではありませんでした。女は、そんな点にはいちばん敏感ですのよ。ねえ、なにか、お気に障るようなことがあって?"
],
[
"逃げやしないかな",
"大丈夫、武器は取りあげてないから、まさかと思っているだろう。第一、石階には番人がいるし……そこを逃げても、マコンデ方面は網目のようだからな"
],
[
"どうしました? なぜ、黙っているんです",
"疲れたんですわ。あたし、なにか言おうにも、言い表せないんです",
"いや、モザンビイクへ帰れる確実な方法が唯一つあるんです。それは、バイエルタールのところへまた引っ返すことだ。ねえ、あの男は白人の女を欲している"
],
[
"僕とあなたがゆきァ、バイエルタールがなんで殺しましょう。そうして観念してあすこにいるうちにゃ、いつか抜けだす機会がきっとくると思うんです。ねえ、あなたの分別一つでモザンビイクへ帰れる。それとも、奴らに義理をたてて、ここで野垂死にしますかね",
"でもあたし、あなたのいう意味がすこしも分りませんけど",
"それがいかん。あいつら二人は、僕が今夜のうちにきっと片付けてみせます。熱がさがったとき、不寝番になるはずですからね"
],
[
"じつはカーク、いまマヌエラとも相談したことだがね。ここで、君一人に自由行動をとってもらいたいのだ",
"なぜだ"
],
[
"あんまり、唐突な話で訳がわからんが",
"それは、こういう訳だ。君ならここを抜けだして人里へゆけるだろう。なまじ、僕ら二人という足手まといがあるばかりに、せっかく、ある命を君が失うことになる。お願いだ。明日、僕らにかまわずここを発ってくれないか",
"そうか"
],
[
"なるほど、君らを捨ててゆくのはいと容易いが、しかし、ここに残ってどうするつもりだ",
"悪魔の尿溜へ、僕とマヌエラが踏みいるつもりなんだ",
"なに"
],
[
"じゃ君らは、あの大陥没地へ身を投げるつもりか……",
"そうだ、初志を貫く。だいたいこれが、僕の因循姑息からはじまったことだから、むろん、じぶんが蒔いた種はじぶんで苅るつもりだよ。マヌエラも、僕と一緒によろこんで死んでくれる。ただ、君だけは友情としても、どうにも僕らの巻添えにはしたくないんだ"
],
[
"座間、名案があるぞ。僕にそんな莫迦気たことを、いわないでもすむようになるぞ",
"えっ、なにがあるんだ?",
"それは、この蔦葛のうえを“Kintefwetefwe”に利用するんだ",
"…………",
"つまり、コンゴの土語でいう『自然草の橋』という意味だ。ああ、これまでなぜ気がつかなかったんだろう"
],
[
"有難うカーク、どれほど君のために助かったことだろう",
"ほんとうですわ"
]
] | 底本:「人外魔境」角川ホラー文庫、角川書店
1995(平成7)年1月10日初版発行
底本の親本:「人外魔境」角川文庫、角川書店
1978(昭和53)年6月10日発行
※副題は底本では、「有尾人《ホモ・コウダッス》」となっています。
入力:藤真新一
校正:鈴木厚司
2001年7月20日公開
2014年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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"作品ID": "001320",
"作品名": "人外魔境",
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"ソート用読み": "しんかいまきよう",
"副題": "01 有尾人",
"副題読み": "01 ホモ・コウダッス",
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"君が、まさか往ったのではないだろうね",
"いや、往けばこそだよ。あすこは、米国地学協会のダネック君が、ここ数年間執拗な攻撃を続けていた。僕は、その最後の四回目のとき往ったのだが……そのときの、想像を絶する悲劇のさまを君に話したい。じっさい僕も、そのときの衝撃で休養が必要になったのだ"
],
[
"ではまず、本談に入るまえにだね。ダネックの、失敗中にも収穫があったことを話しておこう。それは、バダジャッカのある洪積層の谿谷から、前世界犀の完全な化石が発見されたことだ。こいつは、高さが十八フィートもあるおそろしい動物で、まだそのころは犀角もなく、皮膚も今とちがってすべすべとしていた。ところが、こいつがいたのが二十万年ほどまえの、第三紀時代のちょうど中ごろなんだ。洪積層は、それから十万年もあとだよ。すると、後代の地層中にいる気遣いのない生物がいるとなると、当然まだ、『天母生上の雲湖』にはそういうものが残っているのではないか。第三紀ごろから出た原始人類も、やや進化した程度でそのままいるんじゃないか。とマア、こういうような想像もできるわけだね",
"うん、できるだろう。それで、その連中の史前文化のさまを唱ったのが、とりも直さず孔雀王経ではないかとなるね",
"そうだ、だが、いまのところは話だけにすぎんよ。ところで、ダネックは紅蓮峰の彩光をラジウムのせいだといっているね。なるほど、いちばん毛唐にピンとくるのは欲の話だからね。しかし僕は、どんな富源でも後廻しにしなきァならん",
"なぜだね",
"それはね。香港封鎖後の新援蒋ルートなんだ。インドシナから、雲南の昆明をとおってゆくやつは爆撃圏にある。彼らは、じつに不自由な思いをする夜間輸送しかできんのだ。ところが、事実は然らずというわけで、さかんにイギリス製の軍需品がはいってくる。これは、可怪しいというので僕へ指令がきた。イギリスの勢力圏であるチベットをとおって、重慶へ通ずる新ルートがあるのではないか⁈ しかしそれは、『天母生上の雲湖』の裾続きで遮断される。裾といっても、二万フィートを下る山はないのだからね",
"すると",
"ところが、僕は予想を裏切られた。マアこれは、本談のなかで詳しく話すことにしよう。で、『天母生上の雲湖』で起ったおそろしい出来事だが……惜しいことに、僕には君のような文士を納得させるような喋り方が出来ない。サア、なんというか文学的というのかね。それほど、これは人間のいちばん奥ふかいものに触れている"
],
[
"しかしだよ、木戸君の犠牲でやっと分かったのは、あの『天母生上の雲湖』の主峰の雲の正体だ。あれは、おおきな気流の渦巻なんだ。海には、ノルーウェーの海岸にメールストレームの渦がある。メッシナ海峡にはカリブジスがあるね。しかしそういう、退潮と逆潮とでできる海流の渦のような気流は、残念なことにあの上空にはない。きっと僕は、主峰があるといわれるあの雲の下が、もの凄い大空洞ではないかと思うんだ。サア、陥没地、大梯状盆地というかね。それも、上空に渦をおこさせるほど、ものすごく深いもんだ",
"じゃそれを、木戸君が確めたのかね",
"いや、ただ最後の無電でそう推察できるんだ。機はいま、旋流にまきこまれ、主峰の雲へ近付いていく――それがまず最初のものだった。続いて、もう我らには旋流をのがれる手段はない。神よ、隊員諸君とともにあれ――とあった。と間もなく、たしか五、六分経ってからだろう、とつぜん『大渦巻』というあの一言がはいった。僕らは、もう絶望し胸せまって十字を切った。するとだよ",
"ふむ",
"それからは、誰も感慨ぶかげな顔でものも言わない。そこへ、もうないと断念めていたころ、ふいに最後の通信がきた。見た――という、たった一言だが、見たというんだ。そして木戸は、その謎語をのこしたまま無電のオーハラとともに、おそろしい魔境の神に召されたのだ"
],
[
"さっき、白夷人の召使が聴き噛ってきたんだがね。ここへ何でも、『天母生上の雲湖』ゆきの新隊がのり込んできたというのだ",
"なに、われわれ以外の探検家とはどこの国のだ⁈"
],
[
"あなたのは、つまり、教室だけの『天母生上の雲湖』でしょう。あの辺と、古代インドの交通を書いた大集月蔵という経がありますね。しかし、登行には科学的準備が要ります。もちろん、科学的鍛練、経験もものをいいます。僕は、これでも氷河とは十年も暮してますが、あの、『天母生上の雲湖』には赤児のように捻られますぜ",
"では、私なんぞには登れぬと仰言るのですね。なるほど、私にはなんの鍛練もない。氷斧を、どう使うかも知らないし、アルプスの空気も知りません。素人です。僕は、全然の無経験者です"
],
[
"君が、そんな魔法使いなら羽くらいはあるだろう。どうだ、僕を『天母生上の雲湖』まで、乗せて飛んでいってくれ",
"いやいや、ただ私という男がけっして無価値なものでない――それを、ともかくお知らせしとこうと思うのです。ところで、あの外輪四山のうちの紅蓮峰の嶺ですね。あれは、東南からのぞめば角笛形をしているが、ちょっと、西へまわると隠れていた稜角がでて、その形が円錐になりますね"
],
[
"さあ、足を踏んばって……、おいケティ、ケルミッシュ君に肩を貸してやれ",
"なんて、意気地がない。男ざかりが、泡アふっくらって可笑しくなるよ。おや、なんてえ滑っこい肌だろう"
],
[
"どうしたって⁈ 僕は相変わらずの僕さ",
"いや違う。まえには、もっと剛毅不屈なダネックだったね。それが、山男のくせに女の尻を追いまわす。それも白痴のケティとは、呆れたもんだと思うよ。ケティは……やはり白痴で醜い女さ。ただ、それをみる君たちの目が、妙な工合に違ってきただけなんだ",
"そうか、僕もそういや気がついていることがあるんだ。君がケティをみる目も尋常じゃないよ"
],
[
"えっ、一体どんなことがあるんだ?",
"それはね、氷河の表面をゆかず底をゆくことなんだ。たとえ、どんな大科学者がどんな発明をしようと、たとえば、千ポンドの錘りをつけようと、この風のなかは往けぬよ。しかし、氷罅をくだって洞を掘ったら、どうだ"
]
] | 底本:「人外魔境」角川ホラー文庫、角川書店
1995(平成7)年1月10日初版発行
底本の親本:「人外魔境」角川文庫、角川書店
1978(昭和53)年6月10日発行
※副題は底本では、「天母峰《ハーモ・サムバ・チョウ》」となっています。
※底本は新字です。なお「癡呆」は、底本通りです。
入力:笠原正純
校正:福地博文
1999年2月13日公開
2014年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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[
[
"やあ大将、拾っといてくれたね",
"番をしてたよ。どうせ、出てけ――を喰わされるようじゃ、だいじな財産だろう。さあ、たしかにお渡ししたよ"
],
[
"だが、たしかに君のだね",
"ハッハッハッハ、大将は聴いてたんだろうが"
],
[
"俺は、女形をやれる軽口師という触れこみで、つい四日ほどまえ『恋鳩』に雇われた。初舞台――。ご婦人の下着などを取りだして、すっきりと笑わせる。と、行ってくれりゃ何のこたあなかったよ",
"引っ込め――か",
"いわれたよ。しかし、ものというのは、とりようだと思う。俺がずぶの素人でいてやかまし屋の『恋鳩』の舞台を、よく三晩も保ったかと思えば、われながら感心するよ"
],
[
"君は、軽口師のガの字も知らんのじゃないか",
"そうとも、窮すればなんでもするよ。浪人数十回となれば、女中にもなれる"
],
[
"君、これは盗ったやつかね。それとも脱税品か",
"マア、言や後のほうだろう。ところで、見受けたところ大将は、日本人らしい。日本人でも、サントスやサン・パウロにいるならお移民さんだが、リオにおいでのようじゃ大使館だね。まったく、どこの税関でもお関いなしに通れる、結構なご身分というもんさ。こっちも、そういう御仁相手でなけりゃ話しても無駄だし、また、大将なら乗ってくれるだろう。どうだ、いい値で売るが、いくらに付ける"
],
[
"君、これはブラジルのじゃないね。南阿かね、英領ギニアかね",
"どうして、泥のついた掘りたてのホヤホヤだ。といって、ブラジルでもなし蘭領ギアナでもない。こいつは、おなじ南米でも新礦地のもんだ"
],
[
"人間は、ちいさな機会などに目をくれていたら、大きなのを失うよ。誰にも、一生に一度はやってくる大かいやつを、俺は捕まえようってんだ。これはね、女にだって同じことだろうと思うよ。男が、生涯に惚れる女はたった一人しかない。ドン・ファンや、カザノヴァが女を漁ったね。だがあれは、ひとりの永遠の女性を見付けるためだったと――俺はマアそういうふうに解釈している。つまり、俺のは最上主義なんだ",
"それが、君の放浪哲学だね。些細な、富貴、幸福、何するものぞという……",
"そうだ。時に、喋っているうちに気が付いたがね、今夜は、“Bicho”の発表の晩じゃないか"
],
[
"ううい、動物富籖を一枚、てめえ大切候に持ってやがって……。おいカムポス、俺はなんだか、可笑しくって仕様がねえ",
"ハッハッハッハッハ、なけなしの俺が一枚看板みたいに、動物富籖をもっているのが、そんなに可笑しいか。だが、俺だって当ると思っちゃいないよ。易いだ。未来を卜すには、これに限るよ"
],
[
"どうした、カムポス、当ったのかい",
"一番ちがい、大将、これをみてくれよ"
],
[
"上手いもんだね",
"そうとも、お針だって料理だって、出来ないものはないよ。俺は、コルセットの紐鉤に新案さえもっている"
],
[
"なんでだ",
"つまり、俺の国でいう一番違いという意味は、運の、じき側までゆくがどうしても追い付けない、その、たった一番だけの距離をどうしても詰められない、とうとう、追っ付けずに一生を終ってしまうという、ごくごく悪い意味になるよ"
],
[
"とにかく、俺は俺の考えをあくまでも押し通す。そういう気力には、逃げようとする運までも、寄ってくるというもんだ。で、大将にたいへんなお願いだがね、俺は、ここでいちばん運試しをしようと思う。一番先にある運をつかまえてやろうと思うんだ",
"それには――",
"大将に金を借りる。それで、俺は今夜、賭博場へゆく"
],
[
"では、勝負の方法はなんに致しましょう。ですがこれは、三本勝負となるようなことは、あくまで避けねばなりません。一本勝負――それにご異存はないと思いますが",
"でも、こういう場所でやりますカードの遊び方を、私は、あまり知っていないのです"
],
[
"折竹さん、あなたは三上重四郎というお国の医学者を、ご存知でいらっしゃいますね? パタゴニア人に保護区政策をとれと、アルゼンチン政府と喧嘩をした……",
"知ってますとも。去年パタゴニアで行方不明になった……",
"いいえ、それがパタゴニアではなかったのです。それからあのう、三上が学生時代に発表した『Petrin 堆積説』も、折竹さんはご存知でございましょう"
],
[
"お嬢さんは、では三上君をお愛しになってる……",
"はあ、二人ともおなじ大学でしたし……"
],
[
"でも、結局は断念めねばなりませんでした。随分、金を惜しまずあらゆる手段を尽しましたが、三上の行方はどうしても分らないのです。私は、半分自棄でリオへ来て、話に聴いたナイトクラブとはどんなところだろうと、なんだか覗くような気持で『恋鳩』へゆきました",
"では、どうして、カムポスと一勝負という気になりましたね。貴女に、五十万ミルぐらいの金は何でもないでしょうが"
],
[
"君は、ロイスさんにどんな気持でいるんだね",
"………………",
"そういう気配は、君がはじめてロイスさんをみた、その時から分っていたよ。惚れもしなけりゃ五十万ミルを棒に振ってまで、君がわざと負ける道理はないだろう"
],
[
"君はよく、水棲人というと笑ったじゃないか。人間の三上がどうして沼の底へ入りそして生きられるか――君に、それが分ったのかね",
"分ったかもしらん。あれは、君はともかくジメネスも見ている。僕は、水棲人が実在するものとして、考えている"
],
[
"ここはね、いわば地下の大密林というのでしょう。むかしは樹がしげった渓谷だったでしょうが、地辷りもあってすっかり埋れた。そこへ、ピルコマヨが流路を求めてきた。水が、沖積層のやわらかな土に滲みながら、だんだん地下の埋れ木のあいだへ道をあけていったのです。どこまで行くか、どこで終るのか、形も蟻穴のように多岐怪曲をきわめた――『蕨の切り株』の地下の大迷路です。それも、上から水がくるために、絶えず形が変ってゆく。また、沼の水面下に大穴が空いても、すぐピルコマヨが運んでくる藻のために埋まってしまうのです",
"では、三上はここへ落ちたのでしょうね。カムポスさんに会ったときは、ここから出たのでしょうね",
"そうですよ。しかし、生きていられることは、期待せんほうがいいでしょうね"
],
[
"駄目だ。俺は、もう駄目だから、君らは帰ってくれ。ホラ、みろ、上の土がだんだん崩れてくるじゃないか",
"カムポスさん、私のことから、なんてすまないことに"
]
] | 底本:「人外魔境」角川文庫、角川書店
1978(昭和53)年6月10日発行
※底本は副題に、「水棲人《インコラ・パルストリス》」とルビを振っています。
入力:笠原正純
校正:大西敦子
2000年9月15日公開
2014年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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[
"なるほど、君も『冥路の国』について、ちっとは知っているね。だが一つだけ、君がいま言ったなかに間違いがあるよ。というのは、『冥路の国』の招きでエスキモーが橇を走らせる。まるで、とっ憑かれたようになって、夢中でゆく。というなかに、一つだけある",
"へええ、というと何だね",
"つまり、生きた人間ではないからだ。その、橇をはしらせるエスキモーは、死んだやつなんだ"
],
[
"ケプナラ君、君はエスキモー土人がいう、“A-Pellah”を知っているかね",
"アー・ペラー⁈ いっこうに知らんが、なんだね",
"海豹と海象の混血児だ。学名を“Orca Lupinum”といって、じつに稀に出る。その狂暴さ加減は学名の訳語のとおり、まさに『鯨狼』という名がぴたりと来るようなやつ。孤独で、南下すれば膃肭獣群をあらす。滅多にでないから、標本もない。マア、僕らは、きょう千載に一遇の機会で、お目にかかれたというわけだ"
],
[
"じつは、高名な先生にお願いの筋がござんして。と、申しますのは余の儀でもござんせん。ここで、分りのいい先生にぐいと呑みこんで頂いて……",
"なにをだ",
"すべて、どこへ行くとか何をするとか――その辺のところは一切お訊きにならず、ただ手前の指図どおり親船に乗った気で、ちかく“Salem”をでる『フラム号』という船にのって頂く",
"おいおい、俺をどこかの殴りこみに連れてゆくのか"
],
[
"で、その船は北へ北へとゆく。すると、そのどこかの氷のなかにだね。ぜひ先生のお力を拝借せにゃならねえものが、おいでを、じっと待ってるんですよ",
"では、そこは何処なんだね。また、僕の力を借りるとは、何をすることなんだ?",
"どうか、それだけはお訊きにならねえで。ただ、申しあげておくのは、けっして邪しいことじゃない。法律に触れるようなことでは絶対にないという……その点だけはご安心願いたいもんで"
],
[
"マア、これをご縁にちょいちょい伺ううちにゃ、先生だって情にからむだろう。なにも、殴り込みばかりが能じゃねえ。誠心誠意という、こんな手もありまさア",
"おいおい、ギャングの情にからまれるのか",
"そう仰言られちゃ、身も蓋もねえが"
],
[
"時に、あっしらしくもねえ妙なことを伺いやすが……最近、先生んところへ匿名の手紙が来やしませんか",
"来たよ。しかし、地獄耳というか、よく知ってるね",
"ご注意しますが、絶対あんなものには係わらねえほうが、いい。ずいぶんコマゴマしたことで、無駄な殺生をしたり、ケチな強請をするために大変な筋書を書く――というような奴が、ゴロゴロしていますから。そこへゆくと、あっしらのは実業で……"
],
[
"だが、よくこの鯨狼は餌につきましたね",
"そこです。最初は、誰がやっても見向きもせんでした。ところが、相縁奇縁というかたった一人だけ、この先生に餌を食わせる女がいる。呼びましょう。オイ、牝河馬のマダムに、ここへ来るようにって"
],
[
"なんぼ、私とこの大将と恰好が似ているからって、別に、親類のオバサンが来たなんてんで、懐いたんじゃないよ。つまり、相縁奇縁ってやつだろうね。私もこいつも、知らぬ他国を流浪の身の上だから、言葉は通じなくても以心伝心てやつ",
"おい姐さん、以心伝心で口説いちゃいけねえよ"
],
[
"折竹さん、あなたは五年ほどまえ北極探検用として、潜水客船というのを考案したミュンツァ博士をご存知ですか",
"知っています。じゃ、おなじミュンツァとなると、あなたは?"
],
[
"なにしろ、無電が壊れているんで、サッパリ消息が分りません。すると、そこへ運よく一隻の捕鯨船が通りかかって、僕は無電の修理材料をもらいました。修理が成った、と、それから三日ばかり経った夜、偶然、ネモ号の通信をとらえたのです。ご想像ください。まるで、蒼白いランプのような真夜中の太陽のしたで父の通信と分ったときの、私の悦び。しかしでした",
"では、その通信にはなんとありましたね"
],
[
"僕は、その意味がいまだに分りません。もっと、上等な頭で考えたら分るのかもしれないが、僕にはどうも投げ出すより仕様がない。で、その無電はそれで切れました。あとは、待てど暮せど、なんの音沙汰もない。仕方なく、僕は父をあきらめて、その峡湾を出ていったのです",
"なるほど、お父さんのミュンツァ博士は、死を確認されている"
],
[
"なに、鯨狼を捕獲した場所⁈",
"そうです。父のあの無電を現実付けるものが、鯨狼の捕獲位置にあるのです。それが、北緯七十四度八分。西経……"
],
[
"どうもね、あの横帆船にゃ見覚えがあるんですがね",
"とは、どういう事だね",
"あっしゃ、あれがルチアノ一味の『フラム号』じゃねえかと思います。全部、新品の帆なんてえ船は、たんとねえんだから……"
],
[
"なんのために……。君は、あの二人を殺してしまったも、同じだ",
"殺していいでしょう。どうせ、殺さなければ今夜あたり、あんたが殺られるにきまっているから……",
"なに"
],
[
"だが、どうして君は、それを知ったんだ",
"立ち聴きさ。あんたが、曲馬団にくるまえケプナラがやってきて、親方とひそひそ話をやっていた。うちの親方だって、猶太仲間だから",
"いったい、猶太人がどうしたというんだ",
"あの、ツイオン議定書とかにある、猶太建国さ。こんな氷の島だから何にもなるまいけれど、とにかく、ながい懸案だった猶太国ができあがる。そのため書いたロングウェルの筋書に、うかうかお前さんが乗っちまったというわけさ。馬鹿、私がいなかったら、どうなったと思う。とうに、ニューヨークにいるうち打ち明けようと思ったけれど、私の言うことなんぞは信用しまいと思ったし……。第一、お前さんは私が嫌いだろう"
]
] | 底本:「人外魔境」角川ホラー文庫、角川書店
1995(平成7)年1月10日初版発行
底本の親本:「人外魔境」角川文庫、角川書店
1978(昭和53)年6月10日発行
初出:「新青年」1940(昭和15)年6月号
※副題は底本では、「遊魂境《セル・ミク・シュア》」となっています。
※校正には「人外魔境」桃源社、1969(昭和44)年1月25日2刷、「「新青年」復刻版 昭和15年(第21巻)」本の友社、2002(平成14)年8月10日復刻版第1刷を参照しました。
※地図画像は、初出誌と同じ桃源社版のものを用いました。地図右上の「探検家エリクゼン死去地」は、底本では、「探検家エリクゼン基地」になっています。
入力:藤真新一
校正:鈴木厚司
2003年2月10日作成
2014年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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"作品ID": "001321",
"作品名": "人外魔境",
"作品名読み": "じんがいまきょう",
"ソート用読み": "しんかいまきよう",
"副題": "08 遊魂境",
"副題読み": "08 セル・ミク・シュア",
"原題": "",
"初出": "「新青年」1940(昭和15)年6月号",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2003-03-02T00:00:00",
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"姓": "小栗",
"名": "虫太郎",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "むしたろう",
"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "むしたろう",
"姓ローマ字": "Oguri",
"名ローマ字": "Mushitaro",
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"生年月日": "1901-03-14",
"没年月日": "1946-02-10",
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"底本名1": "人外魔境",
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"別に、どうこういうような派手派手しい理由はない。風……。僕の翻意の原因は、風にある",
"へえ。風がね"
],
[
"つまり、仰言る意味の風は、季節風でしょうね。しかしそれはとうに計画のなかへ織り込みずみじゃありませんか。季節風の影響のない五、六月中に、探検を完了するというのが既定の計画だとしたら風の影響などは何もないじゃないですか。むしろ、驚異の征服をなし遂げた、引き上げ時にですね、季節風の猛雨くらいあるほうが、劇的でいいですよ。征服者折竹の風貌いよいよ颯爽となり……映画班も悦ぶし、われわれも助かる",
"ハッハッハッハ、人の苦しみを悦ぶのは、ジャーナリストくらいだろう。だが、季節風以外にも、風の問題はあるよ"
],
[
"温霧谷の、速流氷河をどうして登るかという点で、僕はハタと詰ったんだ。普通の氷河なら、ザッと十マイルばかりを六十年もかかる。ところが、温霧谷の先生ときたら、化物以上だからね。猛速、強震動を発し、登行者を苦しめる。突然、数丈もある氷塔が頭上に落ちてくるだろう。また、なにもない足下に千仭の氷罅が空くだろう。なんていうのがザラだろうという訳も、すべてあの氷河の猛速の禍いだ。それに、氷擦のはげしさで、濃稠な蒸気が湧く。それが原因となる氷河疲労に、マア僕らは二時間とは堪えられまい",
"驚いた。あなたにも似ない、大変な弱音ですね"
],
[
"君、昨日あのザチという婦人は、来なかったかね",
"いらっしゃいませんわ。でも随分、あの方変った服装をしていらっしゃいますわね。顔隠しをしたり皮鞋をはいたり……やはりあの方は近東の方でしょうね",
"そうらしい"
],
[
"あの方を、ほんとに旦那さまは、ご存知ないのですか",
"知らんねえ、一向イランやあの辺の人には、近付きがないからね",
"そう、じゃ私、勘違いしてたのかしら……",
"どんな事だ",
"じつは、私、こう考えていたんですの。どこか、近東の古いお寺から、旦那さまが宝物をお盗みになった。その跡を蹤けてはるばるあの方が、『月長石』のように追ってきたんじゃないかしら……。宝物を返せ、さもなくば殺してしまうぞ――って、いま、旦那さまは嚇されてるんじゃない⁈ ホホホホホホ、お怒りになっちゃあたくし、困りますわ"
],
[
"ポルトガルの御使節、エスピノーザ閣下にいらせられましょう",
"へえっ"
],
[
"日本人だ。いくら、日本と葡萄牙人が似ているからって、間違うにもほどがある。まして、俺は閣下じゃない",
"ご冗談を"
],
[
"オーマンの、華の御儀へご参加になるエスピノーザ閣下であることは、手前よく存じております。また、お気さくの方で下々のことまで、よくおわきまえでいらっしゃる事も……",
"ハッハッハッハ、上にも下にも、下情しかしらん男だよ"
],
[
"儂は、ある任務の男で、セルカークといいます。今夜は、あなたとは大変不本意な会見で……",
"驚いたですよ。マア、大抵なところでご大赦に願いたいですな"
],
[
"時に、ここは何というところで……",
"なるほど"
],
[
"とにかく、危険な存在は殺らにゃなりませんでな。あなたは、アフガニスタンのダワダールで降りて、『大地軸孔』へゆくつもり……ねえ",
"いや、大変なちがいだ。このまま僕は、ずうっと本国へ帰る",
"ハッハッハッハッ、こっちでそう信じている以上、釈明は要りません。つまり、あなたをあの『大地軸孔』へは遣りたくない――その意味はお分りだろうと思います。あの辺のすべてが不明であるということが、わがインドの貴重な守りになっている。しかし、もし貴方がゆけば、どうなるか分らない。ヒルト博士らのほかの人たちはとにかく、こっちは、貴方一人の超人力をおそれている。インドを、ソ連の南下策から完全に護らにゃならない",
"ふむ"
],
[
"あまり、偉そうに見られたのが、とんだ災難でしたよ。いや、デモクラシーも当てにはならん",
"お気の毒です。しかし、これが任務ですから"
],
[
"なるほど、その想像洞のうえは、大沙漠帯ですね。それに、所々方々に油田が散らばっている",
"そうですよ。全部油脈は岩塩油田であるか、それでなければ、石灰岩層に入っています。おそらくその大盲谷はソ連領にも伸びているでしょう。ねえ、エンバの油井は岩塩油田でしょう。また、コーカサスのは石灰岩層にあります。とにかく、岩塩を溶かし、石灰岩を溶かし地下へ滴る石油が大盲谷をつくったといわれる"
],
[
"しかし、それは実際問題ではありませんね。ただ奇想であり、頭脳の遊戯であり……。お話だけはひじょうに面白いですが",
"では、イランの大塩沙漠を、どうお考えになる"
],
[
"そこで、あの沙漠に噴出孔があるか、ないか。たぶん、地軸までもというような、裂け目があるだろう。多量の天然ガスを絶えず噴きだしている、地底までの穴がきっとあるにちがいない。しかも、それが大盲谷へ達している。と、僕はこう睨んでいるのです。ねえ、地下からの採油も乙なもんですぜ",
"航空用良質油"
],
[
"じゃ、なんでしょう。『大地軸孔』の怪焔も、おなじ意味合いのもんで",
"そうです。あれも、『大盲谷』中の一つの覗き穴です。しかし、大盲谷をうずめる全部の油量は? セルカークさん、測れますかね"
],
[
"もう、おいではこれだけであろう",
"ふむ、いかさますみ申したようであるが"
],
[
"次第書にございませんので、お言葉を願います。いずれの国の、どなた様でいられましょう",
"キンメリアの女王",
"へっ",
"このオーマンは、なんという無礼な国である"
],
[
"わたくしは、前もって儀式書を頂いている。それには、使節の随員は宮廷よりの馬車に分乗し、使節の馬車に前行すべし――とありますが、随員のはおろか、わたくしのも参りませぬ。当国は格式を重んじ典礼を尊ぶ点に於いて、回教国一と聴いておりますが",
"恐れいります"
],
[
"失礼ですが、奥さまとはどこでお目にかかりましたでしょうか",
"お忘れ?"
],
[
"ロンドンでお目にかかったではございませんの",
"サア",
"あたくし、ザチでございますの"
],
[
"僕がここへ来たことが、どうして分ったのです",
"そりゃね、あたくしにも知る方法がありますわ。あなたは、シャルジャーで旅客機をお下りになり、それからセルカークと此処へいらっしたのでしょう",
"ふうむ。よく"
],
[
"いつぞや、僕の『大地軸孔』ゆきにご勧告がありましたね",
"ええ、ぜひそうお願いしたいと、思うのです。覗き穴のしたにわずか固っている、未開の可哀想な連中です。別に、この世に引き出したところで、見世物にもなりません。お捨て置きになれば、有難く思いますわ",
"しかし、あなたはフランス語をお喋りになりますね。そこは大体、地上と交通のない地底の国のはず。その点がどうも解せませんよ"
],
[
"こんな齢になって泣くなんて、可笑しいですわね。でも、こういう時は、誰でもそうよ。誰でも、感傷が先走って、悲しくなるものですわ。もう、あなたとはお目に掛れないでしょうから",
"そうでしょう。僕も大塩沙漠へゆきますから……"
],
[
"死ぬだろうよ。日中ゆけば燃えてしまうだろう",
"脅かすな"
],
[
"頼むよ。俺は君に、全幅の信頼をかけている",
"マアね、君を燃やすことは万が一にもあるまいが……、とにかく、われわれは日中を避けねばならん。夜ゆく。それで、今夜の強行軍でどこまで行けるかということが、覗き穴発見のいちばん大切なところになる。ねえ、地図でみると、台地があるね。ちょうど真中辺で、奇怪な形をした……",
"ふん、“Yazde Kubeda”か。その『神々敗れるところ』というペルシア語の意味から、あすこは『驕魔台』とかいわれている",
"そうだ。で、これは僕のカンにすぎないがね。得てして、ああいう所には裂け目があるもんだ。まず覗き穴は、彼処らしいといえるだろう。するとだよ、然らば黒焦げになる日中はどうするか。それは、深い穴を掘ってじっと潜っている。マアそれで、体力が続くのは一日ぐらいだろうから、夜になったら強行軍で逃げるのさ",
"驚いた"
],
[
"取らぬ狸の、皮算用かもしれんがね。いずれは大盲谷の油層が、われわれの手に入るだろう。しかし、そうなったとき分け前が出るようじゃ、儂は馬鹿馬鹿しいと思うんだよ",
"へえ、というのはどういう意味だね",
"それは、オフシェンコのことだ"
],
[
"それでだよ。儂も、殺るとか除くとかいうようなことは、この際したくない。一つ、君によく説いてもらって、ヒルトらと一緒に帰そうと思うんだ",
"そうか"
],
[
"どうだ。たがいに運だけは、無駄にせんように、しようぜ。百億人に一人、千万年に一度、あるかなしかというような、どえらいもんだから……",
"勝手だ"
],
[
"大体、僕の計画にしてからが、九分どおりが運なんだ。妙に、度胸がいいのが玉に瑕かもしらんが、これも千万年に一度、百億人に一人ど偉い馬鹿みたいなのが出たとき、言いだすような事だ。ねえ、まず吾々は九分通り、死ぬだろう",
"脅かしちゃ、いかん",
"いや、すべては渡れてからのことだ。しかし、僕は君よりも、オフシェンコを、尊敬する。ただ任務――とは、偉い!"
],
[
"その、ザチという婦人のことは、じつにいいですね。大盲谷にさえ入れれば、お遇いになれるでしょう",
"サア、『大地軸孔』の近傍くらいじゃ、どうかしら……。広いよ、とにかく『大盲谷』は両大陸にまたがっている。それも今までは、伝説にすぎなかったんだ",
"楽しみですね。しかし、僕のはただ任務だけですから",
"じゃ君は、何処までも行くのか",
"そうですとも。国から与えられたものを、疑うようなことはしません"
],
[
"折竹君、ガスのにおいが全然ないと思うが……",
"そうらしい。たといあるにしろ、小ぽけなやつだろう。採油など、覚束ないようなね",
"ふむ"
],
[
"君、君、何なんだよ。もう開口へ出るまでの、水がないんだ",
"全然か",
"いや、三人分のがない"
],
[
"じゃ、どのくらいあるね",
"一人分だ。俺だけは、生きて帰る"
]
] | 底本:「人外魔境」角川ホラー文庫、角川書店
1995(平成7)年1月10日初版発行
底本の親本:「人外魔境」角川文庫、角川書店
1978(昭和53)年6月10日発行
初出:「新青年」1940(昭和15)年8月号
※副題は底本では、「地軸二万哩《カラ・ジルナガン》」となっています。
※校正には「人外魔境」桃源社、1969(昭和44)年1月25日2刷を参照しました。
入力:笠原正純
校正:鈴木厚司
2014年7月1日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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[
"君が昨夜ここを出る時に、この蝋燭がどのぐらいの長さだったか憶えているかね?",
"さよう、五分ばかりでしたかな。しかし、その後にラザレフが使ったかもしれません。"
],
[
"ところで、鐘の音をお聴きになったでしょうな。",
"ところが、それ以前に気味の悪いできごとがございまして。四時半頃眼が醒めると、階段の壁燈が点っているのです。父は御存知の通りなので、ルキーンが戻ったかなとも思いましたが、来れば鳴子が鳴るはずです。しかし、大して気にも留めずにいたところが、間もなくこの室の扉の前辺から離れて、コトリコトリと遠ざかって行く跫音が、鐘楼に起りました。",
"それには、何か特徴がありましたか?",
"それが、通例の歩き方で二歩のところが一歩と云う具合で、非常に一足ごとの間が遠いのです。何か考えながら歩いているようでした。"
],
[
"法水先生、鐘ですか? しかしあの大鐘は今も上って見たところですが、二三人かかって手で押したくらいでは、歯車があるのでビクともしませんぜ。また、内部の振錘を手で動かしたにしたところで、音だけは妙に詰ったような鳴り方をしますが、肝腎の鐘が動かないのですから、振動を上の小鐘に伝えることが出来ないのです。",
"なるほど、すると、鐘を傾けるのは、振綱以外にないと云うのだね。いや有難う。"
],
[
"時に妙な質問ですが、貴女がいられた修道院と云うのは?",
"ハア、ビーンロセルフスクにありましたが、",
"すると、何派ですか。",
"トラヴィストでございます。"
],
[
"いずれ劇的な秘密のあることだろうがね。とにかく動機としての資格は充分にある。だけど法水君、そうなると、一人殺すも三人殺すも同じことになるがね。それだのに、どうして外側から下した鍵をそのままにして逃げ出したのだろう。",
"それが判れば犯人の目星がつくぜ。だが僕の想像するところでは、その原因が床の採光窓だろうと思うね。ここから外壁の回転窓が見えるのだから、あれがちょうど階段の天井に当っているのだよ。だから、姉妹の誰か一人が金網をはずして硝子を踏み抜きさえすれば、犯人が迂回して窓の下に着く頃には、充分戸外へ飛び出してしまうことが出来る。つまり、明敏な犯人はそう云う危険な条件を悟って、昨夜は障碍を一つ除いたのみに止めておき、さらに次の機会を狙うことにしたのだろうと思うね。"
],
[
"あの人は姉さんには大変な逆上せ方なんですから。でも、姉さんと云う人は、人間の一番人間らしいところにはてんで興味がないのですから、一寸法師でも綺麗なワシレンコでも、同じものにしか見えないでしょうよ。",
"すると、ワシレンコは姉さんの愛人ではないのですね。"
],
[
"カルメル教会派って?",
"例の裸足の尼僧団のことさ。裸足の上に、夏冬ともセルの服一枚で過し、板の上に眠るばかりか、絶対菜食で、昔は一年のうち八ヶ月は断食すると云う、驚くべき苦行が教則だったとか云う話だがねえ。",
"だが、どうしてそれが判ったね?",
"と云うのは、僕がさっき、自分の心霊を一つの花園と考え、そこに主が歩みたもうと想像するこそ楽しからずや――と云ったっけね。その時ジナイーダは確かに驚いたらしい。無論僕のつもりでは、それを一つの脅迫的な比喩として使ったに過ぎないのだが、しかしジナイーダを驚かせたのは、自分が犯人に擬せられたのを悟ったからではない。元来犯罪者と云うものは、そう云う点には予め用意があるものだからね。では、なぜかと云うと、その一句の文章と云うのが、自身の不思議な夢幻状態を語った、カルメル派の創始者聖テレザの言葉だからだよ。西班牙の女はカルメンだけと思っちゃ間違いだぜ。その昔、神秘神学の一派を率いて、物体浮揚や両所存在まで行ったと云う偉大な神秘家がいたのだ。それにもう一つ――これはまず日本に五百人と馴染のない顔だけど、聖テレザの後継者と呼ばれる僧モリノスの画像が、寝台の横手の壁にかかっていたからだよ。"
],
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"冗談じゃない。君は鍵のことを忘れてしまったのか。",
"それがさ。ここの扉口は回転窓もないし、下に隙もない。けれども、糸で鍵を操る術はヴァンダインの『ケンネル殺人事件』だけでつきちゃいないよ。君、お化け結びと云う結び方を知ってるだろう――一方の糸は喰い込む一方だが、片方のを引くと、スルリと解けてしまうのを。マア、実験すれば判ることだ。"
],
[
"ホホウ、と云うと、",
"それは、構内に足跡がないからだよ。と云って、犯人を姉妹の中に想像することは、鐘声が明確な反証を挙げているのだからね。結局、犯人は霙の降りやんだ二時頃にはすでに堂内にいて、兇行を終えてから、地上に踵を触れず遁れ去ったと観察するほかにない。その際は鐘が鳴ったことは云うまでもないが、しかし、脱出の径路はすこぶる単純なんだよ。まず振綱に攀じ登ってから塔の窓に出て、そこで兇器を裏門の方へ投げ捨ててから、架空線を伝わって円蓋を下り、そして、回転窓の下に引き込まれてある動力線に吊り下って、スルスル猿みたいに構外へ出てしまったのだ。ところで、何が僕にそう云う推定をさせたかと云うに、第一が動力線に霙の氷結がないことで、次が振綱に刺さっていた白薔薇だ。――あれは、ルキーンが拾ってそれでジナイーダの移香を偲んでいたものが、綱を登る際に何かの拍子で移ったのだよ。それからもう一つは、そう云う離業を演って退けられる膂力と習練を備えた人物が、現在この事件の登場人物のうちにあるからだ。三丈もある綱を軽々と登れるばかりでなく、動力線を猿渡りする場合に、もし普通人程度の膂力と体重だとすれば、引込個所や電柱上の接合部分に、相当眼にとどまる程度の損傷が現われるだろう! おそらく一町以上の距離は容易に渡り切れぬだろうと思うね。そうなると、人並優れた腕力とそれに反比例する小児程度の体重――と云う至極難条件が、ルキーンによってやすやすと解決されるのだよ。しかも、綱に織物の繊維が残っていないと云うことが、かえって防水服で固めたルキーンを、逆説的に証明することになるだろう。"
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"マア、聴き給え。いま綱の振動で鐘が鳴ったと云ったけれども、それは、あの不可解な鳴り方をした時を指して云うのではない。それ以前にあったのだ。つまり、時刻はずれに鐘の鳴ったのが二度あったのだよ。その二度目の時が君達始め姉妹の耳に入ったので、最初脱出の時のは、おそらく聴えぬ程度の弱音だったに違いない。なぜなら、ルキーン程度の腕力を備えた人物だと、尺蠖みたいな伸縮をしなくても、最初グッと一杯に引いて鐘を一方に傾けておき、その位置が戻らぬように腕だけを使って登ることが出来るだろうからね。そうすると、始めと終りの二度だけ、ガチャリとかすかに打衝る音しか立たんわけだよ。",
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"ねえ熊城君、死体は他殺死体には類例のない妙な格好で、跼んだまま死んでるんだぜ。そればかりでなく、死体を繞って謎だらけなんだ。第一格闘の形跡がないし、苦悶に引ん歪んだ顔や指先をしていても、のた打ち廻ったり逃れようとして床を掻き毮った跡もなければ、傷口を押えた形跡も見られない。いくら君でも、気管を切断されただけで、雷撃的な即死は考えられないだろう。それから、外傷は一つだけで、しかもその創道が自殺者以外には見ることのない方向を示していて咽喉を斜上に突き上げている。そう云うふうに目標の困難な個所を狙って一撃で効果を収ると云うことは、被害者が故意に便宜な姿勢をとらない限りは、まず不可能と見て差支えあるまい。もちろんルキーンでは、跳躍しないと傷口に届かないし、逆にラザレフが跼んでいたと考えれば、すべてがより以上に不可解になってしまう。それにまた、手燭は上から取り落された形跡がなく、着衣にも焦痕がないばかりか、しかも、ああ行儀よく据えられているんだ。だから、僕にはあらゆる状況に渉って、ラザレフの意志が現われているように思われるのだがね。熊城君、僕はラザレフの死に自殺を主張するぜ。",
"すると、死体はどう云う方法で、兇器を堂外に持ち出したのだね?",
"それは後から抜き取られたのだよ。君はその抜き取った人物を指して、犯人だと云ってるんだ。ところで、奇抜な想像かもしれないが、なにがラザレフを自殺させたか――述べることにしよう。僕はナデコフの置洋燈を見てから、ラザレフとルキーンとの間にもっと深刻な秘密――、と云うより、ルキーンがこの老人の致命的な弱点を握っているのではないか、と考えられて来た。で、それと交換条件にルキーンはジナイーダを求めたのだろうと思うね。しかし、ジナイーダは頑強に拒み続けるので、縺れに縺れた紛争は恐らく夜半を越えたに違いないのだ。だから、ルキーンは電報がきても実際は行かずに食堂の中に止っていたのだよ。ところが、そうして抜差のならない窮地に陥ったラザレフは、たちまち一策を案じたのだ。それは、妹のイリヤに含めてルキーンに挑ませることだよ。あの女はどこか変態的なところがあると見えて、自分からルキーンに対する感情を告白しているぜ。しかし、ジナイーダに対する執着の飽くまで強いルキーンは、妹娘には手を触れようともしない。それがために、そのなりゆきを扉の隙から窺っていたラザレフは、ついに絶望のあげく自殺をとげてしまったのだよ。君は点け放しになっていた壁燈を憶えているだろう。多分ルキーンが消し忘れたのだろうが、あれがあったばかりに、ルキーン対イリヤの鳴神式な色模様を、ラザレフは見ることが出来たのだ。"
],
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"なるほど、各人各説と云うわけだね。それでは支倉君、君は手燭をどう説明する?",
"それはこうなんだ。その時ラザレフは、最初五分ばかりに残った蝋燭を点して、扉の前に立ったのだが、左手が不髄なために一まず手燭を床の上においてから、扉を細目に開いたのだ。そうして、手燭を消すのも忘れて凝視しているうちに、やがて蝋燭は燃え尽きてしまい、その暗黒の中で、最後の怖ろしい断定を前方に認めねばならなかったのだ。ところで、ラザレフの自殺を発見したルキーンが、それからどうしたかと云うに、彼はそれを利用して、対ジナイーダの関係を有利に展開させようと試みた。と云うのは、ルキーンの邪推からジナイーダの蔭にあり――と信じたワシレンコを除くことで、深夜会堂の周囲を狂人のように徘徊している姿を目撃したからだよ。そしてイリヤに口止をしてから、短剣を抜き取って姉妹の室に鍵を下し、それから、君の推定通りの径路を辿って、構外に脱出したのだ。さて、そうなると鐘をルキーンが鳴らしたことは云うまでもあるまい。その幻妙不可思議な手法は無論ルキーンだけの秘密だけども、発見を一刻でも早めることが彼奴にとってこの上もない利益なのだからね。鳴らさねばならない理由はこれで立派に判ってたことになる。だから熊城君、この事件には一人の犯人もないことになってしまうのだよ。",
"すると、死体の謎はどうなるね?",
"それは、或る病理上の可能性を信ずる以外にないと思うね。刃を突き立てた瞬間に、それまで健康だった脳髄の左半葉に溢血して、自由な右半身に中風性麻痺が起ったのだ。半身不随者が絶えず不意の顛倒を神経的に警戒しているのを見ても判るだろうが、異常な精神衝撃や肉体に打撃をうけると、残り半葉によく続発症状が発するものなんだ。その意味で剖検の発表が待たれてならないと云うわけさ。"
],
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"昨夜は大変な騒ぎだったそうですね。",
"ええ、でも捕らないのはなぜでしょう。入ったのが明らかなのに、足跡はないし、鐘があんな鳴り方をするなんて。"
],
[
"その目的は、大鐘を傾斜させていたものを取り除くにあったのです。で、それを云う前にぜひ触れておかねばならないのは、一昨日の天候です。なぜかと云うと、横殴りの風を伴った霙の真最中五時頃に、姉さんは犯行の最初の階段を踏んだからです。あの時振綱の真下で父娘が猛烈な争論をしたと云いましたが、姉さんの真実の心は他にあったのです。足でだんだんと綱の端を踏みながら、片手に渾身の力と体重をかけて徐々に綱を引き、鐘を傾けました。無論小鐘は水平になったでしょうが、大鐘はやや傾いて振錘が内壁に接触します。ところが、あの吹き降りです。間断なく吹き込んでくる霙は、やがて振錘と内壁とをペッタリ氷結させてしまうではありませんか。しかし、上方に隠れている小鐘には無論影響ありませんが、大鐘は後で綱を戻しても、重たい振錘が一方の壁に密着しているので、当然重心の偏しただけ傾かねばなりません。",
"そうしますと、鳴らしたのは。",
"電流が振錘の氷結を溶したからです。で、その径路を説明すると……、鉄管の端に集った水滴が感光膜の上に伝わり落ちますが、ツルツルしたセルロイド面からは滑り落ちて、凹凸のあるアルミニウム粉の上にだけ溜ります。そして、そこに出来上った氷柱が、線状なりに長さを増すとともに、その下端が感光膜の巻軸を押して、徐々に伸ばして行くのです――それが、姉さんの思いついたすばらしい趣向なんですよ。そうしてついに伸び切った時、アルミニウム粉の線の末端が、動力線の被覆を傷つけた個所に触れるのですから、否が応でも瞬間電流が塔上の大鐘にまで伝わらなくてはなりません。で、その結果は云うまでもなく明白です。無論氷柱は瞬時に消失して感光膜が発火しますが、やがて銀色の軽金属粉を包んだ白い灰が、水滴の重さに耐えず地上に崩れ落ちるのです。しかし比重が軽く積雪に対して擬色のある金属粉は、次第に散逸して行って、捜査官の視力の限度を越えてしまうと同時に、それで機構のいっさいが消滅してしまうのですよ。ですから、伝った瞬間電流が振錘の氷結を解けば、当然振錘が反対側にぶつかるとともに傾斜が戻るのですから、その結果振綱を引く以外には動かすことの出来ない鐘の振動が起って、ああ云う奇蹟が現われたわけですよ。無論昨夜の鐘は、折よく天候に恵まれたので、僕がそのままを再演したに過ぎません。しかし何より貴重な暗示だったのが、あの髪飾りの薔薇でした。踏み躙られていたものが、振綱の下から五寸程のところに刺さっていたのですからね。"
]
] | 底本:「新青年傑作選(1)推理小説編」立風書房
1974(昭和49)年12月30日新装第1刷発行
入力:南野輝
校正:ちはる
2001年7月16日公開
2012年3月2日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "001318",
"作品名": "聖アレキセイ寺院の惨劇",
"作品名読み": "せいアレキセイじいんのさんげき",
"ソート用読み": "せいあれきせいしいんのさんけき",
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"初出": "",
"分類番号": "NDC 913",
"文字遣い種別": "新字新仮名",
"作品著作権フラグ": "なし",
"公開日": "2001-07-16T00:00:00",
"最終更新日": "2014-09-17T00:00:00",
"図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000125/card1318.html",
"人物ID": "000125",
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"名": "虫太郎",
"姓読み": "おぐり",
"名読み": "むしたろう",
"姓読みソート用": "おくり",
"名読みソート用": "むしたろう",
"姓ローマ字": "Oguri",
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[
"実を申しますと、お祖母さまは、私があの世にお導きしたので御座います。と申すよりも、あの大観覧車に殺されたと云った方が――いいえ、その原因と云うのも、あの紅色の一等車にあったのです。あの時お祖母様は、御云い付け通りになったのを見て御安心になり、すぐ部屋の中へお入りになられたのですが、それから少し経つと、いきなり観覧車が逆立ちして、あの紅の箱が、お祖母さまが一番お嫌いの色と変わってしまったのでした。私はまだお教えは致しませんでしたが、総じてものの色と云うものは、周囲が暗くなるにつれて、白が黄に、赤が黒に変ってしまうものなのです……。あの観覧車にも、陽が沈んで。残陽ばかりになってしまうと、此方から見る紅の色が殆んど黒ずんでしまうのです。またそれにつれて、支柱の銀色も黄ばんでしまうので、恰度その形が大きな黒頭の笄に似て来て、しかも、それがニョキリと突っ立っているようでは御座いませんか。けれども、それだけでは、到底お祖母様を駭かせて、心臓に手をかけるだけの働きはないのです。実は光子さん、この私が、あの観覧車を逆立ちさせたので御座いますよ",
"それは先生、どうしてなんで御座いますよ。まるでお伽噺みたいに、そんなことって……"
]
] | 底本:「幻の探偵雑誌1 「ぷろふいる」傑作選」光文社文庫、光文社
2000(平成12)年3月20日初版1刷発行
初出:「ぷろふいる」ぷろふいる社
1935(昭和10)年1月号
入力:網迫、土屋隆
校正:大野 晋
2004年11月2日作成
2016年2月20日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
| {
"作品ID": "043418",
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[
[
"とにかく、夜明けまでには、晩香波へ着く。それに、本船には大砲があるのだ。ヴィデ君、君も、砲術にかけては、撰り抜きの名手じゃないか。ハハハハ、出たらグワンと一つ、御見舞申してもらいたいもんだな。なアに、君の腕なら、潜航艇も抹香鯨も同じことさね",
"いやかえって、明日入港というような晩が危険なんです。船長、甲板で葉巻は止めていただきましょう"
],
[
"なんだか知りませんが、僕にこの花のことを聴かせていただけませんか",
"それは叔父さま、こうなのですわ"
],
[
"では、お聴かせいたしますけど……。はじめのは、あなたが二匹の猪にさいなまれていて、みるみる、野の草のうえに血が滴ってゆくのでした",
"そんなこと、なんでもないじゃないか。いいから、次のをお話し……"
],
[
"分ったって……、いったい何が分ったのだ?",
"つまり、葉と十字形さ。いわばこいつは、ジーグフリードの致命点だったからね。それに、傍線を引いて、フォン・エッセンに示したところをみると、何かそこになくてはならぬわけだろう",
"なるほど、辻褄は合うがね。だが僕は、君の云うような、安手な満足はせんよ。大いに出来ん。とにかく、もっと先を読んでみよう"
],
[
"どうしたんだい、いやァに感激しているじゃないか。しかし、仏様のことだけは、忘れんようにしてもらいたいね",
"じゃ、なにか君は分ったというのかね。君は、あの傍線にとっ憑かれているようだが……",
"僕は、なにか艇長の肉体に、秘密があるんじゃないかと思うんだ。それを妻らしく、ウルリーケがお気をつけなさい――と注意したのではないかね。いや、なにも決定的なものじゃないさ。ただ、対象がジーグフリードなんでね。あて推量だけでは、図星がそこへいくというわけになるだろう。とにかく、菩提樹の葉で出来たというジーグフリードの致命点が、この場合、フォン・エッセンの何にあたるか――さっぱりぼくには、この取り合せが呑みこめんのだがね"
],
[
"だって、あの戦女みたいな、てんで意志だけしかないような冷たい女にだって、ときおりは愛使が扉を叩くことがあるだろう。ところが、亭主の八住ときたら、いつも精神的な澄まし汁みたいなもので、その中には肉片もなければ、団子一つ浮いちゃいないんだ",
"なるほど、そうなるかねえ"
],
[
"いや、それどころじゃない、怖ろしい空想です。そんなことから、この事件はいっそう面倒なものになりましょう",
"僕は、そうとはけっして思いませんがね"
],
[
"それがこの事件に、ある種の解決をもたらすでしょう",
"驚いた。何のことか、僕にはさっぱり分らん"
],
[
"あなたは、これが実務だということを忘れていらっしゃる。陰気な、間違えば、ひとを引摺り込むような、危険な遊戯に耽っておられる。いったい、なんです。たかが、伝説じゃありませんか、それが、この屍体の流血になんの関係があります!?",
"われわれには、そうと信じてよい立派な理由があるのですよ。伝説にも、犬射さん、いろいろありますからね"
],
[
"ハハハハ、『ニーベルンゲン伝説』の講釈なら、僕からあなたに、お聴かせしてもかまいませんがね。しかし、一言御注意だけしておきますが、これがもし私でないとしたら……。もし、さっき近よったときの貴方だとしたら、御自分をいったいどうなさいます!? ば、莫迦らしい!",
"そうです、やめましょう"
],
[
"叔父さま、まったく犬射さんのおっしゃるとおりなんですわ。ジーグフリードは、けっして父さんではございません。これはミーメ(ジーグフリードを養育した矮人の刀剣工。ジーグフリードを殺さんとしたが、かえって殺さる)なんですわ。ジーグフリードを殺そうとして、殺された……",
"ミーメ……"
],
[
"ねえ夫人、艇内日誌には、わずか一、二枚しか残っていないのですが、貴女は切り取られた内容を御存知ですか――そして、誰がいつ切り取ったかも",
"いいえ、どっちも存じませんわ"
],
[
"あれが、もし完全でしたら、きっとテオバルトの忠誠が報われたにちがいないと信じております",
"しかし、生還は……夢にも信じてはおいでにならなかったのでしょうね"
],
[
"お言葉の意味が、はっきりとは判りませんけれど、私が怖ろしがっている男というのは、そりゃいったい誰のことなんですの。夜になると裏の防堤に来る――と、いまたしかにそうおっしゃいましたわね。では、その名を打ち明けて下さいましな――ああ誰なんでしょうね。またその男が、貴方は、どこから来るとおっしゃるんですの",
"その名は、まだ不幸にして指摘する時機には達しておりません。しかし、その男の出現には、れっきとした証拠があがっているのです。夫人、実は彼方からなんですよ"
],
[
"法水君、君はもっと野蛮で、壮大であって欲しいと思うよ。きまって殺人事件となると、肝腎の犯人よりも、すぐに空や砂、水の瑠璃色などを気にしたがるのだからね。そこで断っておくが、ここには、黒死舘風景はないんだぜ。豪華な大画舫や、綺びやかな鯨骨を張った下袴などが、この荒ら家のどこから現われて来るもんか。だから、今度という今度、書架の前だけは素通りしてくれると思っていたよ。『鷹の城』を快走艇に外装した――それが、古臭いバドミントン叢書になんの関係があるんだい。そんな暗闇の中で、見えもせぬ本を楯に、君はなにを考えているのだ?",
"そうは云うがねえ支倉君、もしこの銅版画が、僕の幻を実在に移すものだとしたら、どうするね。見給え――一八四三年八月、王立カリンティアン倶楽部賞盃獲得艇『神秘』とある……"
],
[
"すると、緑、紺青、灰――というと、この点十字の三角旗にある、色合の全部じゃないか。だが、その倶楽部にいた艇長は、すでに死んでいる……ああやはり、君は自分勝手で小説を作ったり、我を忘れて、豊楽な気分に陶酔しているんだ。そんな石鹸玉みたいなもので、あの海底の密室が、開かれると云うのならやって見給え。では、兇器をどこから捜し出すね。それに、あの室から姿を消したお化けは、いったい誰なんだ。また、あの時胸を抉られたにもかかわらず、八住は悲鳴をあげなかった――それも、すこぶる重大な疑問じゃないかと思うよ。僕は、そうしている君を見ると、じつにやりきれない気持になるのだがね。まして君は、夜な夜な海から上がって、防堤に来る男がある――と云う。もし、それが真実だったら、この朦朧とした結合には、永劫解ける望みがない",
"そうなんだ支倉君、まさに時は過ぎたり――さ。この事件の帰するところは、さしづめ、この一点以外にはないと思うよ"
],
[
"ところが、その心理を前提として……、艇長とジーグフリード、ウルリーケとクリームヒルト――という符合に憑つかれることだ。肝腎なニーベルンゲンの神秘隠れ衣が、そうした心理的な壁に、隔てられてしまうのだ。ねえ支倉君、『ニーベルンゲン譚詩』のこの事件における意義は、けっして後半の匈牙利王宮にはない、むしろ前半の、しかも氷島の中にあるんだ。つまり、ジーグフリードが姿を消すに用いる、魔法の隠れ衣がいつどこで使われたか……。また、その氷島というのが、この事件ではどこに当るか――だ。繰り返して云うがね、ウルリーケは絶対にクリームヒルトではなく、氷島の女王ブルンヒルトなんだ。しかも、この事件のブルンヒルトは、魔女のように悪狡こく、邪悪なスペードの女王なんだよ",
"ブルンヒルト……"
],
[
"と云うのは、クリームヒルトなら、ただの人間の女にすぎないさ。ところが、ブルンヒルトとなると、その運命がさらに暗く宿命的で、彼女を繞るものは、みな狂気のような超自然の世界ばかりだ。最初焔の砦を消したジーグフリードを見て、その男々しさに秘かに胸をときめかした。ところが、そのジーグフリードは、隠れ衣で姿を消し、グンテル王の身代りとなった。支倉君、君はこの比喩の意味が判るかね",
"隠れ衣……"
],
[
"すると、その形容の意味からして、君は、維納の鉄仮面を云うのか。それとも、また一面にはシュテッヘ、艇長、今度の事件――と『鷹の城』の怪奇にも通じていると思うが……ああなるほど、いかにもブルンヒルトは、グンテル王の身代りに瞞されたんだ。その隠れ衣たるや、とりもなおさず、あの日誌じゃないかね。八住はその影に隠れて、ウルリーケを招き寄せた。しかも、重要な部分を破り棄てて、彼女が再起しようとする望みをへし折ってしまった。それが判ったとしたら、いかにもブルンヒルトはジーグフリードを殺しかねないだろう",
"ああ君には、どこまで手数が掛るんだろうね"
],
[
"ところで、末尾にある註を見ると、これにもラハマン教授が不審を述べているのだが、その隠れ衣は一度氷島で使われたきり、その後は杳として姿を消してしまったのだ。支倉君、氷島なんだよ――しかもその時は、ブルンヒルトの面前で行われ、また、それが動機となって、女王の不思議な運命悲劇が始まったのだ。ところが、この今様ニーベルンゲン譚詩になると、その氷島というのが何処あろうトリエステなんだよ",
"なに、トリエステ……",
"そうなんだよ。そこで支倉君、トリエステで隠れ衣を冠った、ジーグフリードというと、それはいったい、誰のことなんだろうね",
"すると君は、シュテッヘ大尉のことを云うのか。あの男は生きながら、『鷹の城』の中で消え失せてしまったのだ……",
"いやいや、その名はまだ、口にする時機じゃないがね。しかし、いま判っているのは、ジーグフリードがその隠れ衣を、自分で冠ったのではなく、ブルンヒルトに被せられた――という一事なんだ。そして、それ以来地上から姿を消して、とうてい理法では信ぜられぬ生存を続けているのだが、ときおり海上に姿を現わして、いまなお七つの海を漂浪っているのだ。ねえ支倉君、あの神秘の扉を開く鍵は、隠れ衣をつけたジーグフリード――この隠語一つの上にかかっているのだがね、いずれは防堤の上で、君にその姿を、御覧に入れる機会があるだろうよ"
],
[
"気がつきませんで……。またなにかお訊ねになりたいことが、あるかとも思いまして。それより私、申し上げたいことがございますの",
"と云うと……",
"それは、父のことなんですけど、とうに母の口からお聴きかもしれませんが、ここ十四、五日の間というものは、きまって暁け方になると、五時を跨いで戸外に出るのです。御存知のとおりの不自由な身で、それがどうあっても、行かねばならぬものと見えまして、戻って来ると、それは息をきらして、暑苦しそうに頬を赤くしているのですわ。それでも、私に訊ねられますと、妙にドギマギして、なあに、入江の曲り角まで行って来たのさ――と答えるのでしたが、また妙に、その不思議な行動が一日も欠かしませず、実は、今朝がたまで続いていたのです。その入江の角というのを、御存知でいらっしゃいますか。裏の防堤がずうと伸びて、岬を少し縫ったところで終っているのですが、その曲ろうとする角が、そうなのでございます。その崖下には、今月の一日から『鷹の城』がつながれているのですわ"
],
[
"すると、その辺のことを、正確に記憶していますか。お父さんが、そういう行動を始めたのは、何日ごろだったか",
"でも、それ以前はどうであったか存じませんが、とにかく臥せりながら気づきましたのは、さあ半月ほどまえ、今月の十日からでございます。つまり、『鷹の城』が来てから十日の後、また三人の盲人の方は、その二日まえ――五月二十九日にここへ参りましたのです"
],
[
"また、朝枝が何か喋っていたようでしたわね。私、あの子が先刻のアマリリスといい、なぜ肉親の母親を、そんなにまで憎しみたいのか理由が判りませんの。ですけど、八住が夜な夜な、きまって暁け方になると、『鷹の城』のある岬の角に、行くことだけは事実でございます。どうして、不自由な身体を押してまでも、八住はそうしなくてはならなかったのでしょうか。そこへ貴方は、毎夜防堤に来る男がある――とおっしゃいます。あああの夢が、だんだんと濃くなるではございませんか",
"なるほど――しかし、他人の夢にはおかまいなさらず、御自分の悪夢の方を、おっしゃって下さい。時偶は、トリエステの血のような夢を御覧になるでしょうな"
],
[
"悪夢……。すると貴方は、シュテッヘのことをおっしゃるんですのね。なるほど、あの方が失踪したおりには、テオバルトも一応は疑われました。現に維納の人は、そういった迷信的な解釈をいまだ棄てずにおります。いつまでもテオバルトのことを、『さまよえる和蘭人』のように考えていて、シュテッヘという悪魔を冒涜したために、七つの海を漂浪わねばならなくなったと信じているのです。でもまあ、あのまたとない友情の間に、どうしてそんなことが……いいえ判りましたわ。――貴方もやはり、シュテッヘの失踪について、テオバルトを疑っていらっしゃるのです。ようございますわ。もし、飽くまでもそういう夢をお捨てにならないのでしたら、一つ防堤に来る男というのを、シュテッヘに証明していただきましょうか",
"ところが夫人"
],
[
"つまり、ヴェネチア湾の海底で、生きながら消え失せたのは、シュテッヘではなく、フォン・エッセンだったのですよ。もっと明瞭り云えば、シュテッヘをかくまった、UR―4号に、乗り込んだのを最後に、艇長の地上の生活は失われたことになりましょう。なぜなら、そのおりシュテッヘのために、艇長は生とも死ともつかぬ不思議な抹殺をされて、シュテッヘはその場から、フォン・エッセンになりすましました。ですから、その後貴女の閨を訪れた人も、コマンドルスキーの海底でこの世を去った艇長も、同様シュテッヘでありまして、しかもなお奇異な事には、艇長はそのまま『鷹の城』の中で肉眼には見えぬ不可解な生活を続けていたのです。ですから、僕はいま、その漂浪える人を、防堤の上で証明しようとしているのですよ",
"そうしますと法水さん。その一人二役の意味を、童話以上のものに証明お出来になりまして"
],
[
"だいたい他人の姿に変るということは、小説では容易であっても、事実は全然不可能だろうと思われるのです。それでは、シュテッヘの顔を御存知なのでいらっしゃいますか。実は一枚、あの方の写真があるのですけど、それはまだ、お眼にかけてはおりません",
"ところが夫人、だいたいが、トリエステの早代りさえも映ろうという僕の眼に、そんなものは、てんから不必要なのですよ。たしかシュテッヘは、黒髪で、細い唇よりの髭と、三角の顎髯をつけておりましたね。そして、だいたいの眼鼻立ちや輪廓が、艇長と大差なかったのではありませんか",
"ああ、どうしてそれが"
],
[
"ですけど、あのテオバルトが、どうしてシュテッヘなものですか。貴方は、私を淫らな不義者にして、いっそこんな恥辱をうけるのなら、私、この場で死んでしまいたい……",
"それでは、なぜ貴女は、艇長の写真を壁の小孔に当てて、掛けて置いたのです。僕はあの孔一つから、貴女の心の閨を覗き込みましたよ"
],
[
"ところで、八住が殺された際に、貴方だけは椅子に落着いていて、動かなかったそうでしたね",
"無論そうなりましょうとも"
],
[
"というのは、いったい何処からなんです?",
"それが、貯蔵庫の方角からでした"
],
[
"事によると、思い過ごしかもしれないがね。どうやら僕には、毒殺者のもう一人が、ヴィデではないかと思われるのだよ。いまもあの男は、艇内に秘密の扉がある――などとほざいたんだがすぐに彼自身で、それを嘘だと告白しているのだ",
"嘘……あの俗物が、どうして冗談じゃないぜ"
],
[
"だが問題というのは、あの男が気動を感じたという、貯蔵庫にあるのだ。ところで、ヴィデの大言壮語の中に、ムーンの訓盲字という言葉があったっけね。その、ムーンの文字なんだよ。あの法式の欠点というのは、左から辿っていって次の行になると、今度は逆に、その下の右端から始めるにある。つまり、馴れないうちは、一つの字に二つの重複した記号を感ずるからなんだが、あの時ヴィデの右手には、そっくりその字を読む際と同じ、運動が現われていたのだ。そうすると支倉君、Bim()の逆を、もしヴィデの真意とすれば、それが Lie()嘘になるじゃないか。つまり、問わず語らずのうちに、ウルリーケを陥れようとした、邪まな心を曝露してしまったのだ",
"なるほど、ウルリーケはフォン・エッセンの妻だったのだ。しかし、艇長のために盲目とまでなった事を思えば、おそらくあの夜の毒殺だけでは、飽き足らなかったかもしれんよ"
],
[
"またまた、菩提樹の葉と十字形なんですが、僕は今になって、ようやく貴女の真意を知ることができました。そして、今まではシュテッヘという名で怖れられていた悪鬼に、いよいよ改名の機が迫ったのです。ねえ夫人、現に、今も朝枝の頸を絞めたものは、シュテッヘではなく、フォン・エッセン艇長だったのです",
"何をおっしゃるんです"
],
[
"貴方は、私が覆うていたものを、残らず剥ぎ取っておしまいになりましたわね。それでは、私をテオバルトに遇わせて下さいましな。法水さん、それにはいったい、何処へ参ったらよろしいのでしょうか",
"ともかく、この場所においで下さい。いま、すぐに連れてまいりましょう"
],
[
"フォン・エッセン男爵、もう宜い加減に、その黒眼鏡を除されたら、いかがですかな。貴方が、遭難の夜ヴィデを殺したという事も、三人に木精をあてがって盲目にし、それなりヴィデになり済ましたという事も、また、妻を奪った八住を殺したばかりでなく、娘の朝枝までも手にかけようとした事も――ハハハハ、あのまんまと仕組んだ屍体消失の仕掛でさえ、僕の眼だけは、あざむくことができなかったのです。貴方が、髪を洗って、傷や腫物の跡を埋め、またしばらく、過マンガン酸加里で洗面さえしなければ、再び旧の美しい、アドリアチックの英雄に戻るでしょうからね",
"な、なにを云う……"
],
[
"僕がフォン・エッセンだとは――莫迦らしい、いったいどこを押せばそんな音が出るのです。すると貴方は、八住を刺した兇器を、僕がどこへ隠したと云われますか",
"なにも、あの流動体には、隠す必要なんてないじゃありませんか。しばらく貴方は、それを傷口の中に、隠しておいたのでしょう。そして、後になって、朝枝と二人の盲人といっしょに再び艇内に入ると、そこで眼が見える貴方は、屍体を俯向けにしました。すると、あの流血と同時に、兇器はしだいに凝血の間を縫って、やがてかなりの後に流れ出ました。ところが、その附近には、砕けた検圧計の水銀が飛び散っていた……",
"水銀……"
],
[
"ああ偶像の黄昏――僕は貴方を見て、一つの生きた人間の詩を感じましたよ。生命に対する執着・流浪愛憎。ですが男爵、ニイチェの中にこんな言葉がありましたね――時の選択を誤れる死は、怯惰な死である――と",
"よろしい、僕は誇らしげな死につきましょう"
]
] | 底本:「潜航艇「鷹の城」」現代教養文庫、社会思想社
1977(昭和52)年12月15日初版第1刷発行
底本の親本:「地中海」ラヂオ科学社
1938(昭和13)年9月
初出:「新青年」博文館
1935(昭和10)年4~5月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※底本で使用されている「〔〕」はアクセント分解を表す括弧と重複しますので「【】」に改めました。
※「防堤に書かれた符号の図(fig43656_02.png)」中の、「次第に圖をなして」を、「次第に圓をなして」に改めました。この際、「小栗虫太郎全作品4 二十世紀鉄仮面」桃源社、1979(昭和54)年3月15日発行を参考にしました。
※「鷹の城」にかかるルビ、「ハビヒツブルク」と「ハビヒツブルグ」の混在は底本通りです。
入力:ロクス・ソルス
校正:A子
2007年2月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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"作品ID": "043656",
"作品名": "潜航艇「鷹の城」",
"作品名読み": "せんこうてい「ハビヒツブルグ」",
"ソート用読み": "せんこうていはひひつふるく",
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"初出": "「新青年」博文館、1935(昭和10)年4~5月号",
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"テキストファイル文字集合": "JIS X 0208",
"テキストファイル修正回数": "0",
"XHTML/HTMLファイルURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000125/files/43656_26294.html",
"XHTML/HTMLファイル最終更新日": "2007-02-20T00:00:00",
"XHTML/HTMLファイル符号化方式": "ShiftJIS",
"XHTML/HTMLファイル文字集合": "JIS X 0208",
"XHTML/HTMLファイル修正回数": "0"
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